【商品開発部メルマガVOL.11】帯電トラブルを解決する!「電気抵抗」から学ぶ帯電防止コーティング
こんにちは、㈱吉田SKT商品開発部の白頭 菜帆(はくとう なお)と申します。
今回は、身近な現象から産業界の課題にまで繋がる、静電気とコーティングの関係についてご紹介します。
皆さんは、冬場の乾燥した日にドアノブに触れて「バチッ!」とくる静電気に驚いた経験はありませんか?
この静電気、実は産業の現場では、製品の品質低下や電子部品の故障、さらには火災や爆発のリスクに繋がる深刻な問題となることがあります。
特に、フッ素樹脂のような電気を通しにくい材料では、摩擦などによって発生した静電気が帯電しやすく、その帯電を防ぐことが非常に重要となります。
今回のメルマガでは、コーティングの電気的性質を評価する上で欠かせない『電気抵抗率』について、その詳細から測定方法、そして当社の帯電防止フッ素樹脂コーティング『セーフロン®』まで、ご紹介します。
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目次
- 静電気と帯電防止コーティングの重要性
- コーティングの電気抵抗率とは?
- 体積抵抗率と表面抵抗率、その違いと測定方法
- 帯電を防止するフッ素樹脂コーティング『セーフロン®』のご紹介
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1.静電気と帯電防止コーティングの重要性
私たちの身の回りでもおなじみの静電気ですが、冒頭でも触れたように、特に産業現場では深刻な問題を引き起こすことがあります。
フッ素樹脂のような『絶縁体』は電気を通しにくいため、摩擦などで静電気が発生すると、電気を逃がすことができずに表面に電荷が溜まってしまいます。これが『帯電』です。
帯電がおきると、ホコリ付着による品質低下、電子部品の誤動作や破壊、さらには可燃性ガスや粉塵による火災・爆発のリスクといった問題を引き起こすことがあります。
こうした静電気による様々なリスクを回避するために不可欠なのが、『帯電防止コーティング』です。
これは、本来電気を通しにくい材料に導電性を付与し、発生した静電気を速やかに拡散・除去することで、トラブルの発生を防ぐ技術です。
2.コーティングの電気抵抗率とは?
さて、帯電防止コーティングの性能評価に重要なのが『電気抵抗率』です。
これは『物質がどれくらい電気を通しにくいか』を示す値で、
この値が低いほど電気を通しやすく(帯電しにくい)、高いほど電気を通しにくい(帯電しやすい)と言えます。
電気抵抗率には、電流が流れる経路の違いで『体積抵抗率』と『表面抵抗率』の2種類があります。
3.体積抵抗率と表面抵抗率、その違いと測定方法
では、この2つの抵抗率について、もう少し詳しく見ていきましょう。
体積抵抗率 (Volume Resistivity)
体積抵抗率は、物質の内部を電流が流れる際の抵抗を示す値です。
この抵抗を単位体積当たりで示した値が体積抵抗率です。塗膜から基材(金属)へ直接逃げる際の電気の通りにくさを評価します。

ρv=RWt/L
ここで、ρvは体積抵抗率で、Rは抵抗、W×tは断面積、Lは距離(コーティングでは膜厚)です。
単位はオームメートル(Ω⋅m)やオームセンチメートル(Ω⋅cm)などが使われます。
この値が低いほど、物質内部の導電性が高いと言えます。
実際の測定では、下図のように対向する面に電極を置き、内部を流れる電流を測定して求められます。

表面抵抗率 (Surface Resistivity)
一方、表面抵抗率は、物質の表面を電流が流れる際の電気の通りにくさを示す値です。
表面抵抗率の測定では、試料の表面に電極を押し当て、表面を流れてくる電流を検出します。
JIS K 6911-1995では、試料の下にガード電極を置くことにより、
試料の厚み方向に回り込んだ電流をグランドに流し、純粋に表面を流れる電極のみを測定します。

ρs=Rs×RCF(S)
ここで、
ρsは表面抵抗率、RCF(S)は表面抵抗率補正係数で、単位はオーム/スクエア(Ω/□)などが使われます。
表面抵抗率が低いほど、表面で発生した静電気が逃げやすくなるため、帯電防止効果が高いと言えます。
5.帯電を防止するフッ素樹脂コーティング『セーフロン®』のご紹介
私たちの主力製品であるフッ素樹脂コーティングは、優れた離型性や耐薬品性などの特性を持つ一方で、
電気を通しにくい『絶縁性』という性質があります。
そのため、使用環境によっては帯電が起こりやすく、ごみの付着などによる品質低下や電子部品の損傷、火災・爆発といったトラブルの原因となることがありました。
こうしたお客様の課題を解決するため開発されたのが、当社の帯電防止フッ素樹脂コーティング『セーフロン®』です。
セーフロン®は、フッ素樹脂が持つ優れた特性はそのままに、特殊な技術で導電性を付与することで、抵抗率を適切な範囲に調整しています。
これにより、発生した静電気を速やかに逃がすことが可能になりました。
その結果、製品品質の向上、電子部品の保護、作業環境の安全性向上に貢献しています。
セーフロン®について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ以下の当社ウェブサイトをご覧ください!
当社の帯電防止フッ素樹脂コーティング『セーフロン®』の詳細はこちら
コーティングの静電気でお困りのことがございましたら、ぜひ一度、当社にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後もメルマガでは、私が普段行っている測定や、気になったことなどを配信していきますので、また次回もよろしくお願いいたします。


