液体の「滑落性」とは?撥水性との違いと、コーティングによる改善効果を解説
製造現場で、塗料や薬液を保管したり移し替えたりするのに使用する容器や器具の内面に液体が付着して残ってしまい、材料ロスや洗浄工数の増加につながるケースは少なくありません。
こうした課題を解決するポイントとなるのが、液体の「滑落性」です。
「滑落性」とは、表面に付着した液体がどれだけスムーズに流れ落ちるかを示す性質であり、よく知られる「撥水性」や「撥油性」とは異なる視点による指標です。製造効率の改善を考えるうえでぜひ注目しておきたいポイントとなります。
そこで本記事では、滑落性の基本的な考え方から、フッ素樹脂コーティングによる改善効果まで、実験結果も交えてご説明します。
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滑落性とは何か? ―「はじく」と「流れ落ちる」は違う
固体表面の液体に対する性質として、まず思い浮かぶのは「撥水性」や「撥油性」ではないでしょうか。これらは、固体の表面が水や油をはじく性質のことであり、液体が濡れ広がりにくいことを意味します。
一方、滑落性とは、表面に付着した液体がどれだけスムーズに流れ落ちるかを示す性質です。
この2つは似ているように見えますが、実は異なる性質です。
たとえば、撥水性が高い表面で、液滴が玉状にはじいていても表面にとどまり、傾けても転がり落ちないことがあります。つまり、「液体をはじくこと」と「液体が流れ落ちること」は必ずしも一致しないのです。
製造現場では、液体ができるだけ器具の表面に残らず、速やかに流れ落ちることが求められます。容器に残った液体は材料ロスになり、さらに固着もすれば洗浄の時間も増大するからです。滑落性に注目することで、撥水・撥油だけでは分からなかった工程改善の糸口が見えてきます。
滑落性についてもっと詳しく知りたい方へ
固体表面の撥水・撥油性や滑落性の評価方法について詳しく知りたい方は、当社のコーティング性能測定サービスをご確認ください。 →コーティング性能測定サービスはこちら
なぜフッ素樹脂コーティングで滑落性が向上するのか
さて、固体表面の滑落性を向上させる方法のひとつが、フッ素樹脂コーティングです。
フッ素樹脂には以下のような特性があります。
- 表面自由エネルギーが非常に小さい
→液体が表面に広がりにくい - 優れた耐薬品性
→薬品や有機溶剤と反応しにくく、化学的に安定 - 耐熱性・耐摩耗性
→過酷な使用環境でも性能が持続
このなかで、とりわけ滑落性の向上に直結するのが、「表面自由エネルギーの小ささ」です。
表面自由エネルギーが小さいということは、多くの液体に対して親和性が低いことを意味します。分かりやすく言うと、液体が表面になじみにくく、濡れ広がらないため、結果として付着が抑えられ、スムーズに流れ落ちるようになります。
この性質を活かし、液体を扱う器具や設備にフッ素樹脂コーティングを施すことで、液残りを減らしたり洗浄性を改善することができます。
実験で検証 ― 金属漏斗へのコーティングで塗料の滑落性はどう変わるか
当社の商品開発部でも、塗料を調製する際にビーカーや漏斗、攪拌羽根などさまざまな器具を使用していますが、滑落性が不十分な器具を使用すると、原料や調製した塗料のロスにつながったり、洗浄にかかる時間が取られたりしています。
そこで、漏斗を用いて、フッ素樹脂コーティングが滑落性にどのような効果をもたらすのかを検証しました。
実験方法
以下の3種類の漏斗を用意しました。
| No. | 漏斗の種類 | 素材 | コーティング |
|---|---|---|---|
| ① | PP(ポリプロピレン)製漏斗 | 樹脂 | なし |
| ② | ステンレス製漏斗 | 金属(SUS) | なし |
| ③ | ステンレス製漏斗 | 金属(SUS) | フッ素樹脂コーティング済み |
そして各漏斗に同量の塗料を注ぎ、注いだ直後と1分経過後の表面の残留状態を観察しました。
実験結果
💡PP製漏斗(コーティングなし)
注いだ直後に付着した塗料が、1分経過後もほとんど変わらず表面に残留していました。
💡ステンレス製漏斗(コーティングなし)
PP製と同様に、塗料の残留がみられました。
💡ステンレス製漏斗(フッ素樹脂コーティング済み)
塗料の付着や停滞が明らかに抑えられ、時間の経過とともに塗料がスムーズに流れ落ちました。
実験結果から得られたこと
フッ素樹脂コーティングを施した漏斗は、未処理のPP製・ステンレス製漏斗と比較して、塗料の滑落しやすさが大きく向上することが確認できました。
この結果は、コーティングによって以下の改善効果が期待できることを示しています。
- 塗料ロスの削減
器具内面に残る塗料が減少し、原材料の歩留まりが向上 - 洗浄性の向上
付着量が少ないため洗浄が容易になり、清掃時間を短縮 - 作業効率の改善
液切れが良くなることで、注ぎ・移し替え作業がスムーズに
滑落性の改善は漏斗だけではない ― 広がる適用範囲
今回は金属漏斗での事例をご紹介しましたが、フッ素樹脂コーティングによる滑落性の向上は、さまざまな器具・設備に展開できます。
液体を扱うあらゆる場面(たとえばビーカー、攪拌容器、配管、シュート、タンク内壁、ノズルなど)で同様の改善効果が期待できます。
液残りや液切れの悪さの問題は、製造コストや品質に直結する課題です。コーティングによる滑落性の向上は、これらの課題に対するひとつの効果的なアプローチといえます。
液滑落性に優れる「ナノプロセス® NCFPCシリーズ」という選択肢
滑落性の改善には、一般的なフッ素樹脂コーティングだけでなく、液滑落性に特化した超薄膜コーティングという選択肢もあります。そのひとつが、吉田SKTのナノプロセス®(超薄膜コーティング)です。
ナノプロセス®は、ナノレベルから1μm程度 の薄い膜で、撥水性・撥油性・非粘着性・液滑落性などの機能を追求したコーティングプロセスです。膜が薄いため、寸法変化をほとんど起こさず、光学特性を維持できる点も特徴です。
なかでもNCFPCシリーズ(液滑落性・耐熱性特化グレード)は、撥水性・撥油性に加えて、液体に対する優れた滑落性を発揮します。特に水だけでなく油の滑落性にも優れるため、オイルの流れを改善し、液切れの改善も期待できます。
【ナノプロセス® NCFPCシリーズの主な特長・効果】
- 液体の滑落性に優れる
- 優れた耐熱性
- 高い撥水性・撥油性
- 高い寸法安定性
滑落性を重視しつつ、寸法精度や耐熱性といった特性も同時に求められる場合、NCFPCシリーズは有力な選定候補となります。
実際の設計・仕様選定にあたっては、使用温度、相手液(油・溶剤・薬液など)、部品材質や形状などの条件に応じた検討が必要なため、ぜひ一度ご相談ください。実績と知見が豊富な専門業者へ相談することが、成功の鍵となります。
まとめ
- 滑落性とは、表面に付着した液体の流れ落ちやすさを示す性質であり、撥水性・撥油性とは異なる評価軸です。
- フッ素樹脂は表面自由エネルギーが小さく、多くの液体に対する親和性が低い(なじみにくい)ため、コーティングすることで滑落性を大きく向上させることができます。
- フッ素樹脂コーティング済みの金属漏斗を使用した実験により、実際に塗料の液切れ性が向上し、材料ロス削減・洗浄性向上・作業効率改善につながる可能性の高さが確認されました。
貴社でも液残りや滑落性の課題でお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
お客様のニーズに合わせて最適なコーティングをご提案させていただきます。

