表面処理のご相談

【メルマガVOL.40】<こんなはずじゃなかった!をなくす>「寸法安定性」に優れた表面処理

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こんにちは!㈱吉田SKTの小島と申します。

私は冬になるとニットが欠かせないのですが、先日うっかり乾燥機に入れてしまい、
お気に入りのニットを見事に縮ませてしまいました。
「まあ、着られなくはないけど……」
そんな小さな日常の失敗、皆さまにも心当たりはありませんか?

ニットに限らず、モノの寸法が変わると困ってしまうのは、実は工業の世界でも同じです。
例えば、線路に一定の間隔で「隙間」が設けられているのをご存じでしょうか。
もうすっかり有名な話かもしれませんが、これは、気温の変化によってレールが伸び縮みすることを想定した設計です。
もしこの「余裕」がなければ、レールは変形し、最悪の場合、重大なトラブルにつながります。

この「寸法変化」の問題は、私たちが扱うコーティングの世界でも起こり得るのです。
そこで重要になるキーワードが、「寸法安定性」。

今回は、寸法変化で「こんなはずじゃなかった…」とならないために知っておきたい、寸法安定性に優れた吉田SKTオリジナルの表面処理をご紹介します。
最後までお読みいただけると嬉しいです。

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■INDEX■
 1.「寸法安定性」とは?
 2.「こんなはずじゃなかった!」事例紹介
 3.寸法安定性に優れた表面処理
   ~バイコート®
   ~ナノプロセス®
   ~MRSコーティング~
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1.「寸法安定性」とは?

表面処理を行うと、基材の表面に被膜が付くことで寸法が変わったり、加工時の熱によって形状が変化したりと、少なからず基材へ影響が出ます。
「寸法安定性」とは、そのような基材への影響が少ない性質のことです。
機械部品では、離型性・非粘着性・摺動性の向上を目的に表面処理を行うケースが多くありますが、その結果、
・寸法が合わなくなった
・嵌めあいが悪くなった
・本来の性能を発揮できなくなった
といった理由で、「使えなくなってしまう」ことも珍しくありません。
たとえば精密金型や、製品との嵌めあいが必要な治具、切れ味が必要な刃物などです。
寸法は、基材の種類や形状、表面処理の被膜の厚みや加工温度などさまざまな要素が複雑に絡み合って変化します。
だからこそ、用途や使用環境に合わせて適切な表面処理を選ぶことが重要なのです。

2.「こんなはずじゃなかった!」事例紹介

テフロン™フッ素樹脂コーティングは離型性・非粘着性に優れた信頼性の高い表面処理ですが、用途や基材の条件によっては、寸法安定性の面で課題が生じるケースがあります。
ここでは、実際にご相談いただくことの多い事例をご紹介します。

●精密金型の寸法変化
金型の離型性向上を目的にテフロン™フッ素樹脂コーティングを施工。
しかし、加工時の熱処理によって金型にわずかな寸法変化が発生。
その結果、成形品に寸法不良が出てしまいました。

熱処理による寸法変化

【解説】
テフロンコーティングは一般的に400℃程度の熱処理を伴います。
基材全体を炉に入れるため、コーティングしていない部分にも熱がかかり、変形や歪みが生じる可能性があります。

●治具の嵌めあい不良
テフロン™フッ素樹脂コーティングを施した治具同士を嵌め合わせようとしたところ、コーティング部が干渉し、うまく嵌らなくなってしまいました。

治具の嵌め合い不良

【解説】
弊社のテフロン™フッ素樹脂コーティングは、一品一様の基材に合わせて丁寧に手作業で施工しています。
ただし、形状や部位によっては被膜の厚みが均一になりにくい場合もあり、嵌めあい精度が求められる用途では注意が必要です。
マスキングなどの対策も可能ですが、納期やコストへの影響に加え、熱処理による寸法変化のリスクも考慮する必要があります。

●切れ味が必要な刃物
粘着物を切断する刃物に、くっつき防止目的でテフロン™フッ素樹脂コーティングを施工。
しかし、コーティングの被膜によって刃先が丸くなり、切れ味が低下してしまいました。

刃物の刃先の変化

【解説】
元の切れ味を保つためには、コーティング後に「刃出し」工程が必要になります。
これにより、納期・コストが増えるだけでなく、刃先部分のコーティングがなくなり、結局そこに粘着物が付着してしまうことも。
また、一般的なテフロンコーティングの加工温度は400℃程度と高温のため、刃物の焼き入れ硬度が低下してしまう(焼きなまし状態になる)可能性もあります。

離型性や摺動性を高めるためのコーティングが、思わぬトラブルにつながってしまう。
「こんなはずじゃなかった!」という声が聞こえてきそうです。
ですが、ご安心ください。
弊社には、これらの課題を解決できる独自の表面処理技術があります。

3.寸法安定性に優れた表面処理

ここからは、寸法安定性に優れた吉田SKTオリジナルの表面処理をご紹介します。

~バイコート®

フッ素系・シロキサン系材料の離型性と、無機系材料の高硬度を両立した表面処理です。
離型性・摺動性に加え、ミクロン単位の寸法安定性が求められる精密金型にも対応可能。
無機系・有機系の組み合わせにより、用途に応じたカスタマイズも行えます。

【膜厚】3~30μm(シリーズにより異なる)
【硬度】HV200~1200(シリーズにより異なる)

バイコート®のカタログはコチラから

~ナノプロセス®

ナノレベル~1μm程度の超薄膜で、撥水性・撥油性・非粘着性・液滑落性を付与する表面処理です。
一部シリーズでは100℃以下の低温加工が可能で、寸法変化をほとんど起こさず、光学特性を維持したままの加工も可能です。
撥水性・親水性など、用途に応じた表面特性の付与も可能です。

ナノプロセス®の資料はコチラから

~MRSコーティング~

圧倒的な離型性を持つシリコーン系コーティングに、
・低温加工性(80℃以下)
・耐溶剤性
・高耐熱性
・高硬度
といった、生産現場が求める使い勝手をプラスしました。
薄膜のため、刃物などでも刃出し不要で切れ味を維持できます。

MRSコーティングの資料はコチラから

前章の事例に当てはめると、精密金型の事例には「低温加工可能で非粘着性に優れたナノプロセス®」が、治具の嵌めあいの事例には「ミクロ単位での膜厚コントロールが可能なバイコート®」が、刃物の事例には「加工温度が比較的低く、コーティング膜厚が薄いため刃出し不要なMRSコーティング」などが有力な選択肢になります。
用途によっては、複数案をご提案することも可能です。
(※当社製造工程上で注意が必要になるため、必ず事前のお打合せをお願いしております)

弊社では、お客様のご使用環境やお困りごとを丁寧にヒアリングし、数多くのラインナップの中から最適な表面処理をご提案しています。
「これって表面処理で解決できる?」
そんなちょっとした疑問でも、ぜひお気軽にご相談ください。

今回もメルマガを読んでいただきありがとうございました。

皆様のお役に立つ情報を月1回配信しています。