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ブリスターとは?フッ素樹脂ライニングの耐食性試験について詳しく解説

この記事では、フッ素樹脂ライニングの寿命に関係の深いブリスターについて、発生メカニズムや試験方法、そして耐ブリスター性に優れたライニングの紹介まで、詳しく解説します。

ブリスターとは

ブリスターは、英語で「水ぶくれ」の意味です。過酷な環境で使用されることの多いフッ素樹脂ライニングは、条件によっては、塗膜にブリスターが発生することがあります。

フッ素樹脂ライニングにおけるブリスターとは

この記事で紹介するフッ素樹脂ライニングは、一般的にはフッ素樹脂コーティングと呼ばれる場合もあります。ライニングは耐食性向上のため、多くの場合は厚膜で加工されます。しかし、膜厚の明確な定義はなく、被膜の厚みが1000μm以上のものをライニングと呼ぶ場合や、500μm以上をライニング、500μm以下をコーティングとすることもあれば、200μm以下でもライニングと呼ばれる場合もあります。

ブリスター発生のイメージ

ブリスター発生のメカニズム

(1)水分子(水蒸気)のように小さな分子は、フッ素樹脂ライニング(コーティング)表面の分子間から入り込みます。
(2)その水分子がフッ素樹脂ライニング(コーティング)膜の分子間を圧力の低い方へと拡散浸透します。
(3)やがて金属などの基材に到達し、冷えて液体の水になります。
(4)それが繰り返されると水が溜まっていきます。
(5)溜まった水は温度変化によって収縮、膨張を繰り返すことで水ぶくれとして成長していきます。

このように、フッ素樹脂ライニング(コーティング)に発生する「ブリスター」は、温度勾配によって被膜側の薬液が基材側に浸透することで発生します。

耐ブリスター性を評価する山崎式ライニングテスター

山崎式ライニングテスター
山崎式ライニングテスターのイメージ

山崎式ライニングテスターは、ライニング(コーティング)の耐食性(耐薬品性)を調べるための加速試験機です。ライニング(コーティング)を施した試験片2枚を、枝付きのリングの両サイドに取り付け、その中に試験液を入れ、液を直接加熱して試験を行います。
試験片のライニング(コーティング)側は試験液により温度が高くなりますが、基材側は外気で冷やされます。
山崎式ライニングテスターでの試験は、試験片を試験液に浸漬する方法に比べ、実際のライニング(コーティング)機器の運用に似た環境での試験が可能です。
また、ライニング(コーティング)側と基材側の温度勾配を大きくすることで、加速試験を行います。

吉田SKTは通常、試験液5%塩酸、液温は沸騰状態(100℃程度)、24時間のON/OFF繰り返しサイクルで試験し、性能比較を行います。

山崎式ライニングテスターによる耐食性の試験の様子を、短い動画でもご紹介しています。
気になる方はこちらもご覧ください。

ブリスターが発生している部分は塗膜に膨れが生じます。ブリスターが徐々に大きく成長していくことで、ライニング(コーティング)のはがれの原因となったり、浮いた膜が傷ついて薬液が基材に直接触れたりと、ライニング(コーティング)としての役割を果たせなくなってしまいます。そのため、

耐ブリスター性が良い≒ライニング寿命が長い

と考えることができます。

一般的なPFAライニングとETFEライニングの比較

ご紹介しました山崎式ライニングテスターなどの装置を用いることで、ブリスターが発生するまでの時間を測定、評価することができます。ブリスターが発生するまでの時間が長ければ長いほど、耐ブリスターに優れた耐食性の良いライニング(コーティング)であるといえます。

一般的なPFAライニング(コーティング)や、ETFEライニング(コーティング)を山崎式ライニングテスターで評価した結果は以下のようになります。

【加工内容】
*ETFE  膜厚:440-470μm程度
*PFA 膜厚:360-370μm程度

【試験条件】
試験液:5%塩酸
試験温度:100℃(液温)
評価サイクル:24時間

以下に、時間経過毎の塗膜表面の画像を示します。

ブリスターの発生経過

ETFEは、写真では見にくいですが、24時間後でブリスターが発生し、72時間以降では写真でもよく見えるほど、ブリスターが成長しています。
それに対し、PFAは120時間経過後もブリスターは発生しませんでした。

このことから、PFAはETFEと比較して5%塩酸に対する耐ブリスター性に優れるということが分かります。

耐ブリスター性に優れるフッ素樹脂ライニングのご紹介

吉田SKTでは、独自の技術で耐ブリスター性に特に優れたフッ素樹脂PFAライニングを開発、お客様にご提案しております。

「MYライニング®」は山崎式ライニングテスターでの試験で、一般的な通常のPFAライニングに比べて10倍以上の耐ブリスター性を発揮。長期間にわたりブリスターの発生を抑えることができました。