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金属の耐食性とは?耐食性が高い金属も紹介

建造物や屋外で使う設備・機器を設計するにあたっては、錆や腐食が生じない素材を使うことが重要です。このような素材は「耐食性が高い素材」と呼ばれます。
この記事では耐食性のメカニズムや、耐食性の高い素材・低い素材を紹介し、錆や腐食の防ぎ方も解説します。

耐食性とは?

耐食性とは、素材の持つ「腐食・錆への耐性」のことです。金属の錆は酸化によって起こり、進行すると金属の質を低下させます。錆や腐食が進んだ金属は放置しておくとボロボロになり、安全に使用できません。そのため、金属は耐食性を基準にしていくつかの種類に分けられています。

「耐蝕性(たいしょくせい)」という言葉もありますが、「耐食性」とほぼ同じ意味です。

不動態被膜について

不動態被膜は、一部の金属に存在する薄い被膜で、酸化被膜とも呼ばれます。結晶構造を持たない物質で、緻密かつ安定した構造が特徴です。金属の表面を覆うことで、金属がイオンとなって離れることを防ぎ、腐食から守る性質を持ちます。

また、不動態被膜には自己修復機能があり、破られても再生します。そのため、長期間にわたって錆・腐食からの保護が可能です。

ただし、金属の種類によってはpHが一定以下の水溶液に不働態被膜が溶けてしまったり、大気中に塩化物イオンがある場合に耐食性を発揮できなかったりする場合があります。

腐食について

腐食した金属

金属の腐食が進行すると、ボロボロになったり、穴が空いたりして機能を果たせなくなります。ここからは、腐食が起こるメカニズムと、腐食が起こりやすい環境について解説します。腐食を防ぐために役立てましょう。

腐食はなぜ起こる?

金属における腐食とは、化学反応によって形が崩れたり機能が失われたりすることを指します。とくに溶接によって熱影響を受けた部分は腐食しやすいため、対策が必要です。

また、耐食性の低い金属を使用した製品は、環境によっては使っていなくても腐食が進むこともあります。経済的損失にもつながるため、腐食しやすい金属を用いる際は使用方法や保管場所に気を配りましょう。

腐食が起こりやすい環境

海に近い場所は海塩粒子が飛んでくるため、塩害耐性のない金属は腐食しやすくなります。そのため、海辺や海中で使われる構造物には塩分に強いチタンを用いるケースが多く見られます。

海辺のほか、火山・温泉地の近くや、鉄粉が舞い上がりやすい産業地帯なども、通常の内陸部よりも腐食が起こりやすい環境です。また、酸性雨が降る地域においては、通常の大気中では腐食しにくい金属でも腐食が進みやすくなります。

耐食性が高いといえる金属

金属には、耐食性が高いものと低いものがあります。ここからは、耐食性が高い金属の例を紹介します。

素材を選ぶ際は、耐食性と合わせて加工のしやすさや強度なども判断材料です。耐食性の高い各金属の特徴を把握しておきましょう。

貴金属

プラチナネックレス

貴金属とは、イオン化傾向が小さく安定している金属のことです。通常の環境下では化学反応をほとんど起こさず、錆びることはほぼないといえます。産出量が少ないため希少なことも特徴です。

装飾品や電子部品に使われ、豊富な使い道があります。貴金属に分類される金属は、金・銀・プラチナがよく知られています。プラチナの仲間である白金族に含まれる金属(パラジウム・ロジウム・ルテニウム・オスミウム・イリジウム)も貴金属です。

ステンレス

ステンレス管

ステンレスは、調理器具や食器類によく使われる金属です。耐食性が高い金属であると同時に貴金属よりも安価なため、さまざまな用途で使われます。

錆びにくい金属としてよく知られていますが、不動態被膜の抵抗性があまり強くないため、環境によっては錆びることもあります。とくに、他の錆びている金属の近くに置くと錆びやすくなるため、保管場所には気を配りましょう。

また、通常の内陸部では錆の心配は少ないものの、火山の近くや塩害地域では錆びることがあります。

アルミニウム

アルミニウム板

アルミニウムは、軽量なうえに非鉄金属のなかでも耐腐食性に優れているため、さまざまな用途で使われる素材です。ただし、不動態被膜の抵抗性があまり強くないため、環境によっては錆びることもあります。また、酸性・アルカリ性両方の環境で腐食します。

純粋なアルミニウムよりも、ほかの元素を混ぜてアルミニウム合金にして加工されることが主です。合金にすると純粋なアルミニウムよりも強度が増すほか、混ぜられた元素によって耐食性も変化します。

チタン

チタン

チタンは海水環境への耐性が高い素材で、海辺や海中で使う構造物に多く使われます。軽くて強度が高いうえ、不動態被膜の働きによって高い耐食性を持ちます。そのため、内陸ではほとんど錆・腐食の心配がありません。

チタンはステンレスよりも不動態被膜の抵抗性が強く、孔食(局所的に耐食性が失われること)が起きにくい点も特徴です。ただし、塩害には強いものの、フッ化水素では錆びるため、特性を理解して利用しましょう。

クロム

クロムは不動態被膜の抵抗性が強く、高い耐食性を発揮します。また、変色に強いことも特徴ですが、同時に壊れやすい性質を持ち、融点はほかの金属と比べてやや低いといえます。

高温ガス環境での耐食性が高い金属で、メッキによく使われる素材です。医療分野や電子機器に使われるほか、染料としても利用されます。また、鉄に金属クロムを添加すると、腐食・変色に強い素材を得られます。

銅の硬貨

銅はさまざまな用途において使われる金属で、身近なところでは硬貨に使われています。前述した耐食性の高い金属と比べて表面が錆びるまでの時間は短いものの、内部まで錆が侵食しにくいという特徴を持ちます。これは、腐食がはじまって最初にできる腐食生成物が、保護被膜として表面を覆って内部を守るためです。

錆によって外見が損なわれることはあるものの、使用不可能になるほど劣化するまでのスピードは遅く、長く利用できます。加工性にも優れ、電気や熱をよく通すことも特徴です。

鉛の板

鉛は表面が黒ずむように錆が進む特性を持ちます。銅と同様に、先に紹介した金属よりも表面が錆びるまでの時間は短いものの、錆が内部まで侵食しにくいことが利点です。

使用不可能な段階まで金属そのものの質が劣化するまでにかかる時間は長く、耐食性が高い素材の1つです。不純物が混ざると硬度を増し、合金としてさまざまな用途に利用されます。

鉛は蓄電池に主に使用されるほか、はんだの原料やガス管などにも利用されています。

耐食性が高くないといえる金属

日常よく利用される金属のうち耐食性が高くないものとしては鉄や、鉄に炭素を加えて強度を増した鋼が挙げられます。鋼は鉄よりも伸びやすく加工しやすいことが特徴です。

鉄や鋼はさまざまなところで利用されているなじみ深い金属ですが、耐食性は高いとはいえません。水分に触れると錆の被膜を作るものの、溶存酸素を遮る能力が低いため、継続して腐食が発生します。

ただし、濃硝酸や濃硫酸など酸化性の酸に対しては不動態被膜を形成して腐食を防ぐため、酸性環境においては耐食性が高いといえます。

腐食・錆を防ぐにはどのようにすればよい?

すでに利用されている道具や建造物について、あとから耐食性を高めたいときはどのような手段が用いられるのでしょうか。ここでは、腐食や錆を防ぐためにできる対処法を3つ紹介します。道具や建造物を長く使いたいときには、是非ご参考ください。

表面処理加工・コーティング

錆びやすい素材で作られたものの耐食性を上げたいときに有効な手段として、表面処理加工やコーティングが挙げられます。耐食性の高い金属や樹脂で表面を被膜することで、基材の金属を錆や腐食から守ることが可能です。

ただし、耐食性が高ければどのような表面処理やコーティングをしてもよいわけではなく、本体の素材と相性のよい金属や樹脂で覆う必要があります。

耐食性の向上だけではなく装飾目的や滑りをよくするために利用される表面処理やコーティングもあり、使われる素材は目的によって異なります。

塗料や防錆油を塗る

塗料や防錆油などで表面を覆うことで、金属の表面が直接錆の要因に触れにくくなります。どちらの場合も、塗布する面の汚れや水分をふき取ってから塗りましょう。

防錆油には水分を取り除く性質もあるため、水に触れると錆びやすくなる素材を保護するために使われます。

一方、塗料の特徴は、防錆油よりも酸素の遮断性が高い点です。ただし、環境によっては退色したり剥がれたりする可能性があるため、屋外で使用する場合は水分や紫外線などで劣化しにくい素材を選ぶことが重要です。

定期的に手入れをする

金属は水分が長い間付いたままだと錆びやすくなります。また、汚れが付くとその部分の吸湿性が高まるため、こちらも錆の促進につながります。

表面処理・コーティング加工や塗料などの処理は表面の状態を保つために役立ちますが、素材や予算の関係でできないときもあるでしょう。

表面に処理ができないときは、定期的に水分や汚れをふき取ることで錆や腐食を防げます。耐食性が高くない金属でも、定期的に手入れをすることで長く使えるため、汚れを放置しないようにすることが大切です。

まとめ

素材選びにおいて、耐食性は重要な基準の1つです。錆や腐食による劣化を防ぐことは、ものを長持ちさせることによる経済性の向上にもつながります。
一般的に耐食性の低い素材であっても、防食コーティングすることで耐食性を高めることができます。

吉田SKTでは、防錆・耐食性に優れたコーティングを取り扱っています。金属素材の錆・腐食を防いで長持ちさせたいときは、ぜひご利用を検討ください。