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難燃性とは?燃焼の仕組みからプラスチックの難燃性についてまで解説

難燃性とは、文字通り燃えにくい性質のことで、おもにプラスチックが直に炎にさらされたときに、燃焼に対して抵抗することをいいます。
プラスチックはあらゆる分野で使用され、より安全性の高い製品が求められます。とくに電子・OA・医療等の分野で材料として使用されるケースでは、難燃性が重視されます。
プラスチックは可燃性のものから難燃性のものまで幅広く、材料評価は欠かせません。

この記事では、

  • 燃焼の3要素
  • 酸素指数や規格から見たプラスチックの難燃性
  • 難燃性材料(フッ素樹脂PTFE)の特徴

について詳しくご紹介します。

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燃焼の3要素

燃焼とは、「物質が熱と光を発生しながら酸素と激しく化合する酸化反応」のことをいいます。
燃焼は、

  • 燃えるもの(可燃性物質:合成樹脂類、木材、糸類等)
  • 酸素を与えるもの(酸素供給源:空気等)
  • 火の元(点火源:ライターやマッチ、電気、衝撃、摩擦熱等)

の3要素からなり、このどれかひとつでも欠けると燃焼は起こりません。

燃焼の条件

ある製品の燃焼を防ぐには、可燃性物質でなく、「燃えにくい=難燃性に優れた」材料の選定が必要となります。

酸素指数や規格から見たプラスチックの難燃性

冒頭でお話したように、難燃性とは燃えにくい性質を指します。
難燃性には規格があり、代表的なものにJISの「酸素指数(OI)」、「UL94規格」があります。プラスチックは、この規格により「可燃性」や「難燃性」に分類されます。
ただし難燃性を示すプラスチックでも、可燃性の添加剤による影響で性質が変わってしまうこともあるため注意が必要です。

難燃性を示すプラスチックの特徴のひとつとして分子構造があり、なかでもハロゲン系(フッ素、塩素、臭素など)やリン系が含まれると燃えにくいとされています。
フッ素樹脂(PTFE)はプラスチックのなかで最も燃えにくい代表的な材料として有名です。

酸素指数(Oxygen Index)

JISで定められている酸素指数(Oxygen Index)とは、プラスチックに火をつけた状態でその燃焼が持続するのに必要な最低酸素濃度を示したものです。

一般的な空気中の酸素濃度は約21%とされており、酸素指数(OI)の数値が21より高いほど燃えにくい材料という見方ができます。

【酸素指数(OI)】

22以下    可燃性で燃える
23から27   燃えるが自己消化性あり
27以上    難燃性

下の表からフッ素樹脂(PTFE)の酸素指数は95以上で他のプラスチックと比較してもずば抜けて難燃性に優れていることがわかります。

プラスチックの種類 酸素指数
ポリアセタール 15から16
メタクリル樹脂(アクリル樹脂) 17から18
ポリエチレン 18から19
ポリプロピレン 18から19
ポリエステル 18から19
ポリスチレン 18から19
ポリアミド(ナイロン66) 24から25
ポリカーボネート 24から25
ポリ塩化ビニル 28から38
ポリフェニレンオキサイド 27から29
難燃 EPゴム 24から28
架橋ポリエチレン 34から36
難燃クロロプレンゴム 30から35
ポリビニリデンフロライド 40から44
シリコーンゴム(RTV)※室温硬化型 26から32
テトラフロロエチレン(重合するとテフロン) 95

UL94規格

UL94規格とはプラスチック材料における難燃性のグレードを判定するための、世界的に認められている規格です(ULは米国の製品安全認証機関“UNDERWRITERS・LABORATORIES・INC”の頭文字の略)。

試験方法は、プラスチック試験片に既定の位置から火を当てる水平燃焼試験(Horizontal Burning Test=HB)・垂直燃焼試験(Vertical Burning Test=VB、下図)を行い、試験片の燃焼の程度からグレードを判別します。

垂直燃焼試験
垂直燃焼試験(Vertical Burning Test)

【UL94規格のグレード】

  UL94 判定基準(一部抜粋)
水平燃焼試験 HB 自己消化性はないが、遅燃性であることを示す。3mm以上の厚さの試験片なら、燃焼速度が40mm/min以下であることが求められる。
垂直燃焼試験 5V-A もっとも難燃性が高い。5回目に火を接触させた際に燃焼時間が60秒以下
5V-B もっとも難燃性が高い。5回目に火を接触させた際に燃焼時間が60秒以下
V-0 2回(各10秒間)、炎に接触させても、燃焼時間が10秒以下
V-1 2回(各10秒間)、炎に接触させても、燃焼時間が30秒以下
V-2 2回(各10秒間)、炎に接触させても、燃焼時間が30秒以下
難燃グレード

UL94規格に基づく難燃グレードには、難燃性が高い順に5V-AからHBまでのグレードが定められています。
HBは自己消火性はありませんが、遅燃性があることを示します。
5V-AからV-2までは自己消火性があるため、熱源から離れれば火は消えます。

例えば家電製品で難燃性の材料を使用する場合、V-0以上が望ましいとされています。
フッ素樹脂(PTFE、PFA、EFP)はUL94規格でV-0のグレードです。
5V-Aや5V-Bのグレードは基準が厳しく、最高レベルの難燃性能ですが通常の用途でこのレベルまで求められることは少ないです。

【各グレードに分類される代表的な材料】

グレード 代表的な材料
V-0 PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PI(ポリイミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)
V-1 変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)
V-2 PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)
HB PBT(ポリブチレンテレフタレート) 、POM(ポリオキシメチレン)

難燃性材料(フッ素樹脂PTFE)の特徴

なぜフッ素樹脂(PTFE)は難燃性に優れるのでしょうか?その理由は分子構造にあります。

強固なC-C結合

ここでは、PE(ポリエチレン)とPTFEを比べてみましょう。PEもPTFEも分子構造内にC-C結合を持っていますが、下のイラストを見比べるとPEのC-C結合は剝き出しになっている部分が多いのに比べてPTFEのC-C結合はフッ素原子に覆われてほぼ見えない状態になっています。
これにより、PTFEのC-C結合はPEのC-C結合よりも外部からの影響を受けにくくなり、安定した分子構造を保っていられるのです。

酸素と結合しにくい

一般的な汎用樹脂(PE、PPなど)は、分子構造中に酸素と結合しやすい水素原子を持っています。
これに対しフッ素樹脂は水素原子を持たず、また分子構造内のC-F結合が強固なため、フッ素原子は酸素と結合しにくく、燃えにくいのです。

PEとPTFEの結合エネルギー比較

このようなことから、フッ素樹脂は優れた難燃性材料といえます。

フッ素樹脂の難燃性を利用してできること

フッ素樹脂はその優れた難燃性から、さまざまな産業用途で利用されています。
また自己消火性も持ち合わせているため災害時における安全性も高く、多くは耐熱性・耐侯性など他の性能と組み合わせて

  • 燃えにくくする
  • 仮に燃焼しても延焼させない

ことを目的として、電子機器や電線・LANケーブルへの被覆をはじめ、建造物の屋根(PTFEコーティングされた屋根用クロス)などに用いられています。

吉田SKTでは、難燃性に優れるフッ素樹脂を用いた表面処理(コーティング)をご提供しています。フッ素樹脂コーティングの解説はこちらをご覧ください。

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