表面処理のご相談

PFAとは?特徴・分子構造・成形方法について詳しく解説

こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
私たち吉田SKTは、PFAコーティングを含む多様なフッ素樹脂コーティングや表面処理を通じて、お客様の製品価値の向上、生産設備の改善による生産性の向上、製造業における生産効率の向上やコスト削減のための課題解決を行っています。
お問い合わせはこちらからどうぞ>

この記事では、フッ素樹脂PFAが生まれた経緯から化学的な特性、他のフッ素樹脂との違いや対応する幅広い成形方法まで、詳しく解説します。PFA材料による加工や製品開発を検討しているかたは、ぜひお読みください。

PFAとは

PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)はフッ素樹脂のひとつで、熱可塑性樹脂に分類されます。耐熱性・耐寒性・撥水性・耐薬品性・非粘着性・電気特性などの性質を兼ね備えていることからさまざまな分野で活躍する材料です。

また、フッ素樹脂のなかで最もポピュラーなPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と同等の連続使用温度で使用できる、パーフルオロ系のフッ素樹脂で、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFVE)の共重合体です。

PTFEとの違いのひとつは、PTFEは一般的な熱可塑性樹脂(加熱することで軟らかくなり、加工できる樹脂)の成形方法で成形することが難しいのに対し、PFAは、PTFEの耐熱性を生かしたまま、溶融粘度が低くなり、成形性や加工性が向上していることです。次の「開発経緯」でもう少し詳しくご説明します。

PFAの開発経緯

フッ素樹脂として最初に発見され、開発されたのはPTFEでした。しかしPTFEは、熱可塑性樹脂でありながら、融点以上においても溶融時の粘度が高く流動しにくいため、成形方法が限られ、圧縮成形や切削加工によって製品とすることがほとんどでした。そのため加工性の改良などを目的として、

PTFE(1938年)→FEP(1960年)→ETFE(1970年)→PFA(1972年)

の順に開発が進められました。PFAはPTFEの分子構造を改良することで、PTFEの加工性を改善することに成功し、1972年に発売されています。

PFA開発以前に発売されたPTFEやFEP、ETFEについての詳しい内容は以下の記事をご確認ください。

>PTFEとは?~テフロン™樹脂との違いも解説

>フッ素樹脂FEPとは?特徴やPTFEとの違い、PFAとの違いも解説

>ETFEとは?特長や分子構造、加工方法、用途まで解説

PFAの特徴とメリット

PFAは、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFVE)との共重合体で、その大きな特徴は溶融時の粘度の低さとPTFEに匹敵する性質にあります。
PTFEと同様に、連続使用温度が260℃と耐熱性に優れており、また耐薬品性の面でも強酸や強アルカリ、有機溶剤などほとんどの薬品に対して侵されることがありません。そのため、PFAはPTFEに近い性質を持ちながらも成形の幅が広がり、PTFEでは困難だった複雑な形状の成形できるようになったことが大きなメリットです。

PFAとPTFEの違い

PFAとPTFEは同じフッ素樹脂ですが、分子構造や見た目、熱的性質や成形方法などに違いがあります。そのため、適した用途にも違いがあります。

分子構造の違い

PFAとPTFEは分子構造に違いがあり、PFAは部分的にパーフルオロアルキル基を側鎖に持ちます。この分子構造の違いは、PFAとPTFEのさまざな違いの要因の一つになります。

PTFEの分子構造

透明性の違い

PFAはPTFEに比べると見た目に大きな違いがあります。下の写真は3㎜厚のPFAと2㎜厚のPTFEを印刷物の上において撮影しました。PFAは透明性が高いため、下の文字を読むことができます。一方で、PTFEは透明性が低く、下の文字を読み取ることができません。

PFAの透明性の写真
3㎜厚のPFAシート
PTFEの透明性の写真
2㎜厚のPTFEシート

このようにPFAはその高い透明性により、内容物の確認が可能です。これは、医療や研究分野、化学物質を搬送するチューブで内容物の流れを視覚的に確認できるため、安全性と効率の向上に寄与します。

熱的性質の違い

PFAはPTFEに比べて、溶融粘度が低いのが特徴です。溶融粘度の違いは加工性の違いにつながります。

  PFA PTFE
融点 約290~310℃ 327℃
粘度 103~105Pa・s(380℃)
(104~106ポイズ(380℃))
109~1010Pa・s(380℃)
(1010~1011ポイズ(380℃))
連続使用温度 260℃ 260℃

加工性の違い

PFAとPTFEは加工性に違いがあります。溶融粘度の低いPFAは一般的な熱可塑性樹脂と同様に、射出成形やブロー成型が可能です。一方で、溶融粘度の高いPTFEは圧縮成形や押出成形が主な成形方法です。

PTFEについての詳細はこちらをご確認ください。

PFAコーティング(テフロン™フッ素樹脂コーティング)

PFAはコーティング材料として多く利用され、塗装技術によりさまざまな形状への加工が可能です。
金属などの表面にコーティングすることで、フッ素樹脂のさまざまな特性を付与することができます。
テフロン™フッ素樹脂コーティングは、液体分散型や粉体型のPFA塗料を塗装機で基材に塗布し、焼付(焼成)により塗膜化します。
また塗り重ねることで厚膜化も可能です。厚膜仕様は主に化学業界など、耐薬品性が求められるような環境で活用されます。

PFAの特性

以下は、PFAの特性で代表的なものです。非粘着性、撥水・撥油性、低摩擦性、耐薬品性、耐熱性、電気特性、耐候性、難燃性、純粋性について解説します。

非粘着性

付着性の強い粘着物に対しても離型がよく、付着しないか、または、付着しにくい性質のことです。フッ素樹脂は表面エネルギー(表面張力)が低く、化学的に安定している分子構造により、多くの物質となじみにくく、非粘着性に優れます。

参考記事:「なぜくっつかない!?」テフロン™フッ素樹脂の非粘着性を解説

撥水性・撥油性

表面に水や油がついても良く弾きます。フッ素樹脂は表面エネルギー(表面張力)が低く、水や油との表面張力の差が大きいため、濡れにくくほとんどの液体を弾くことができます。

参考記事:テフロン™フッ素樹脂が撥水性/撥油性に優れる理由とは?撥水角や活用方法まで解説

低摩擦性

PFAもPTFEと同様に摩擦係数が小さく滑りやすい性質があります。動摩擦係数は、PTFEの0.1に対して0.2と若干大きいものの、ETFEの0.4に比べると小さく低摩擦性に優れると考えられます。

参考記事:「滑りを良くする!」テフロン™フッ素樹脂(PTFE)の低摩擦性を解説

耐薬品性

ほとんどすべての酸やアルカリ等の化学薬品に侵されたり、腐食することがほとんどありません。フッ素樹脂は分子間の結合力は大変強く、その安定した分子構造により優れた耐薬品性を発揮します。また、PFAの場合、ピンホールが発生しにくく耐食性に優れた被膜の形成が可能で、耐薬品性を生かしたコーティングが加工できます。
※例外として溶融アルカリ金属や高温高圧環境でのフッ素ガスなどがあります。

参考記事:「薬品にも強い!」テフロン™フッ素樹脂の耐薬品性を解説

耐熱性

樹脂の中では耐熱性が高く、PTFEと同等で約260℃の高温に耐えます。

参考記事:テフロンフッ素樹脂(PTFE)の耐熱性/耐寒性について解説

電気特性

絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表面抵抗率は大きく、電気絶縁性に優れます。

参考記事:「電気を通しにくい!」フッ素樹脂の電気特性を解説

耐候性

紫外線の影響を受けにくく長い時間屋外使用しても劣化することがありません。

参考記事:耐候性とは?試験方法や樹脂素材ごとの違いを解説

難燃性

限界酸素指数(LOI)が95%以上の難燃性材料です。

参考記事:難燃性とは?燃焼の仕組みからプラスチックの難燃性についてまで解説

純粋性

化学的に不活性で純粋性に優れます。

フッ素樹脂は種類によって異なる特長を発揮する場合があります。用途が決まっていて使い分けが分からない場合やもっと詳しく知りたいときはお気軽にお問い合わせください。フッ素樹脂のプロがご案内いたします。

PFAの成形方法と製品例

PFAは溶融粘度が改良されたことから、さまざまな成形方法で製品を作ることができます。
ここからPFAの代表的な成形方法と製品例をご紹介します

溶融押出成形

溶融押出成形では、押出機内でPFAペレットを溶融可塑化し、金型(ダイ)を通して押し出します。
押し出されたPFAは、その後冷却されて製品になります。

チューブ形状の場合は丸い形状のダイを、フィルムなどシート形状の場合は四角い形状のダイを使用するなど、ダイの形状を変えるだけで目的の成形品を連続かつ安定して生産することができます。

成形品としてはチューブやフィルムが多く生産されていますが、特に耐薬品性や耐熱性が求められるような、化学業界のタンク内面を保護したい場合などは、タンク内面にPFAシートを貼りつける「シートライニング」という手法があります。この時に使用されるPFAシートも溶融押出成形法で製造されます。

また、シートライニング時にできる、シート同士の隙間や継目を封止するための溶接棒や溶接帯もこの方法で成形されます。

<製品例:フィルム、シート、ロッド、チューブなど>

PFAシート
PFAシート
PFAチューブ
PFAチューブ
チューブの押出成形
チューブの押出成形イメージ

製品情報については下記ページをご確認ください。

>PFAチューブ&パイプ

>フッ素樹脂シート(TEFPASS® SHEET)

>PFA厚肉シート&ロッド(高純度品)

射出成形

射出成形では、ホッパーに複数回分のPFAペレットを投入し、加熱シリンダーの中でPFAが溶かされると同時にスクリューが回転し、溶融したPFAがシリンダー前方に運ばれます。

その後、溶融したPFAを金型へ一気に射出注入し、金型を冷却したあとで成形品を取り出します。このときシリンダー内には複数ショット分の溶融したPFAが入っているため、複雑形状の成形品を連続して大量に生産できるのがメリットです。

PFAの成形品は、半導体設備のように高純度が求められる環境や、化学業界などで薬品が直接触れるような環境で使用されます。

PFAの射出成形
部品の射出成形イメージ

ブロー成形

ブロー成形では、まずPFAペレットを押出機で円筒状に成形します。この成形品をパリソンといいます。

パリソンをブロー成形機の金型にセットし、円筒の一端から圧縮空気を送り込むことで成形し、冷却、固化させます。

この成形方法は、ボトル形状の成形品の量産に適しています。

PFA製のボトルは、汎用樹脂製のものに比べて耐熱性、耐薬品性に優れるため化学薬品を取り扱うような環境で使用されています。

PFAのブロー成形
ボトルのブロー成形イメージ

トランスファー成形

トランスファー成形では、1回分のPFAペレットをポット内で溶融させ、加圧したままの状態で、あらかじめPFAの融点以上に加熱した金型に注入して冷却し成形します。

特に複雑な形状をした成形品の少量生産に適しています。

この方法は、バルブや配管へのPFAライニング時にも用いられます。

トランスファー成形を行うことで、膜の厚みが均等で、継目のない被膜をバルブや配管内に施工することができます。

PFAでライニングされたバルブや配管は、耐熱性や耐薬品性、また金属溶出防止の目的で採用されます。

PFAのトランスファー成形
バルブのライニングイメージ

回転成形(ロトモールド)

回転成形(ロトモールド)は、大型の容器、ボトルなどの成形に適しており、肉厚のコントロールも可能な成形方法です。

金型内にPFA粉末を投入したものを加熱炉に入れ、炉内で金型を回転させることで中のPFAを溶融させ、金型内面に均一なPFA層を形成します。その後、加熱炉から取り出し、金型を冷却しながらさらに回転させ、固化したところで成形品を取り出します。

PFAのロトライニング
タンクの回転成形イメージ

またこの方法は、耐熱性・耐薬品性が求められるような化学プラント内のタンクの内壁や配管内面へのPFAライニング(ロトライニング)時にも用いられます。

ロトライニングでは、ライニングを施工する基材(タンクや配管など)の中にPFA粉末を投入し、ロトモールドと同じように基材を加熱しながら回転することでPFAを溶融させ、内面に均一なPFA層を形成し、冷却を行うことで被膜化します。
これにより基材内面に継目がなく、また配管などによく施工されるルーズライニングとは違って基材と密着した被膜が得られることが特徴です。

<製品例:配管内面へのロトライニング>

ロトライニング製品

ロトライニングについてはこちらをご確認ください

まとめ

以上のようにPFAは代表的なフッ素樹脂、PTFEよりも加工性に優れていることで、さまざまな成形方法が採れる材料です。さらに、回転成形(ロトモールディング)とほぼ同じ方法で、ライニング材料としても使用できます。

ご紹介しましたPFA製品、PFAコーティングやロトライニングについてご質問がある方は気軽に吉田SKTまでお問い合わせください。