表面処理のご相談

フッ素樹脂FEPとは?特徴やPTFEとの違い、PFAとの違いも解説

こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。

吉田SKTではフッ素樹脂コーティングやフッ素樹脂製品でお客様の生産設備のお悩みを改善しています。

ご相談はこちらから>

この記事ではフッ素樹脂の種類の1つであるFEPの開発経緯や特徴、用途、さらにPTFEやPFAとの違いについても詳しく解説します。

FEPとは

FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)はフッ素樹脂の中の1つの種類で、PTFEの次に開発されたフッ素樹脂です。FEPはテトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体でテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体とも呼ばれ、1960年にデュポン社によって発売されました。

FEPの開発経緯

米国デュポン社によって最初に開発されたPTFEはフッ素樹脂の中でも最も有名ですが、製品加工の点では扱いにくいところがありました。PTFEは327℃と非常に高い融点で連続使用温度も260℃と高いのですが、熱可塑性樹脂でありながら、融点を超えても粘度が高く流動しにくいため、一般的な方法で成形ができませんでした。そこでTFEとHFPを共重合させ、PTFEに比べて融点や溶融粘度が低いFEP樹脂が開発されました。

FEPの特徴

FEPは分子鎖中にトリフルオロメチル基CF₃が存在しPTFEと同等の非粘着性、耐薬品性を有しながら、融点や連続使用温度が低いのが特徴です。
そのため、溶融押出し成形や射出成形、トランスファー成形などの成型方法で製品を作ることができます。

FEPの分子構造
FEPの分子構造
  • 連続使用温度・・・200℃
  • 融点・・・・・・・260~270℃

FEPの耐薬品性と耐食性

FEPは、PTFEやPFAと同様にほとんどの薬品に侵されることはありません。非常に高い耐薬品性を持ったFEPは耐食材料としても優れた素材です。基材の耐食性を向上させるためにFEPを利用する場合、溶融粘度の低いFEPはピンホールの無い連続した膜でコーティングやライニングが可能です。そのため、高い耐食性を持ったコーティング・ライニング加工が可能です。

参考記事:「薬品にも強い!」テフロン™フッ素樹脂の耐薬品性を解説

FEPの非粘着性

フッ素樹脂は非粘着性に優れるため、フライパンや炊飯器などの家庭用調理器具に、くっつき防止目的でPTFEやPFAがコーティングされています。FEPも非粘着性に優れるため、工業用分野でゴムや樹脂などくっつき防止やインクや薬液の清掃性向上などの目的で広く利用されています。

参考記事:「なぜくっつかない!?」テフロン™フッ素樹脂の非粘着性を解説

FEPとPTFEの違いとは

FEPとPTFEはどちらもフッ素樹脂です。PTFEの連続使用温度が260℃であるのに対して、FEPの連続使用温度は200℃と、耐熱性が大きく異なります。一方でFEPは溶融粘度が低いためフッ素樹脂コーティングで使用した場合、ピンホールのない連続した膜を得ることができ、耐食性が必要な用途などで利用されます。

参考記事:PTFEとは?~テフロン™樹脂との違いも解説~

FEPとPFAの違いとは

PFAはFEPよりも後に開発されたフッ素樹脂です。PFAはFEPと同様に溶融粘度が低い樹脂ですが、連続使用温度は260℃と、FEPの200℃に比べて耐熱性が改善されています。

参考記事:PFAとは?特徴・分子構造・成形方法について詳しく解説

FEPを利用した製品・用途

FEPは次のような製品や用途で使用されています。

  • 非粘着コーティング
  • 耐食用ライニング
  • 電線の絶縁被覆
  • フィルム
  • 搬送チューブ
  • 熱収縮チューブ

FEPをはじめとするフッ素樹脂製品をお探しの場合やFEPコーティングをご検討の際は、吉田SKTにご相談ください。製品のお見積りやコーティングのご提案をいたします。

ご相談はこちらから>

FEPコーティングや熱収縮チューブの情報はこちらもご確認ください。

フッ素樹脂FEP特性表

特性 単位 JIS試験法 ISO試験法 ASTM試験法 FEP
物理的 融点 K6935 12086 D4591 260-270
Tg K7121 3146 D3418  
密度 g/cm3 K7112 1183 D792 2.15-2.17
機械的 引張強さ MPa K7161 K7162 527 D638 20-30
伸び 同上 250-330
圧縮強さ MPa(10%変形) K7181 604 D695 14-19
アイゾット衝撃強さ J/m K7110 180 D256A 破壊せず
ロックウェル硬さ (Rスケール) K7202 2939 D785 R 50
ショアー硬さ (Dスケール) K7215 2089 D2240 D60-65
曲げ弾性率 GPa K7171 178 D790 0.55-0.67
引張弾性率 GPa K7162 527 D638 0.32-0.36
動摩擦係数 (0.69MPa,10MP a、3.8m K6935   D1894 0.3
磨耗係数 10MPa、3.8m /S、1018S        
熱的 熱伝導率 W/m・K A1412 8902 C177 0.25
比熱 103J/Kg・K K7123 11357 E1269 1.2
線膨張係数 10-5/℃ K7197 11359 D696 9
ボールプレッシャー温度 参照1 170
熱変形温度 1.81MPa K7191 75 D648 50
0.45MPa 72
最高使用温度(連続) K7226 2578 200
電気的 体積抵抗率 Ω・ cm(50%RH,23℃) K6911 C2139 IEC60093 D257 >1018
絶縁耐力(短時間) MV/m 3.2mm厚 K6911 C2110 IEC60243 D149 22
比誘電率 (60Hz) K6911 C2138 IEC60250 D150 2.1
(103Hz) 2.1
(106Hz) 2.1
誘電正接 (60Hz) K6911 C2138 IEC60250 D150 0.0002
(103Hz) 0.0003
(106Hz) 0.0005
耐アーク性 sec C3125 IEC61621 D495 >300
耐久性その他 吸水性 %(24H) K7209 62 D570 0.01
燃焼性 3.2mm厚 K7140 1210 UL-94 V-0
限界酸素指数 K6935 K7201 4589 D2863 >95
直射日光の影響   なし
耐薬品性   K7114 175 D543 超優秀
アルカリ 超優秀
有機溶剤 超優秀

備考
超優秀:ほとんどの薬品、溶剤に過酷な条件下でも侵されない。
優秀:一部の薬品、溶剤には特定の条件下では使用を留意する必要がある。
秀:使用する薬品、溶剤、使用条件を詳細に検討する必要がある。
良:一部の薬品、溶剤に溶ける。

参照1:電気用品に用いられる熱可塑性プラスチックのボールプレッシャーの登録制度に関する報告書準拠