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5分で読める!色を感じるメカニズムから測定方法まで

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赤や青、緑など、私たちはその言葉を聞いただけで、無意識にそれがどんな色なのかイメージすることができます。でもなぜ色が見えるのか、どうしてその色に見えるのかご存知でしょうか。

この記事では、身近にあるのに意外と知らない、光と色の関係や、色の測定についてご紹介していきます。

光と色

私たちが物の色を認識するためには、色を知りたい「物」が必要なのはもちろんですが、そのほかに、物を照らす「光」と、それを受け取り信号化するための「目」が必要です。
「光」とは、電磁波のうちの1つで、私たちが認識することのできる電磁波は可視光と呼ばれています。下図に、電磁波の波長範囲を示します。

光の波長
光の波長

可視光はおよそ380-780nmの電磁波で、私たちが色として認識できる“紫から赤”の波長の範囲です。
そして私たちの「目」には、赤、緑、青の「光」を受け取るセンサーがあり、受け取った信号が脳に伝わることで初めて「色」を感じ取ることができます。

光の受信

では、物質が持つ色はどのようにして決まっているのでしょうか。

私たちが物の色を見る時、物に当たって反射した光を受け取ることで、色を感じています。しかし同じ太陽の光が当たっていても、りんごは赤色、レモンは黄色と、異なった色であると感じます。

その理由は、物体に光が当たった時、物体の表面では光の”吸収”が起こっているためです。
太陽の光は、紫から赤色のさまざまな波長を含んだ白色の光です。その中から、りんごは紫から黄色を吸収し、赤色を多く反射するため赤色に見え、 レモンは紫から緑、橙から赤を吸収し、黄色を多く反射しているため黄色に見えています。

光の吸収

このように、物質によって吸収する色、反射する色、透過する色が決まっているため、同じ光が当たっていても、異なった色であると認識することができます。

ちなみに、可視光の外側の、“紫より波長が短い”ものを「紫外線」、“赤より長い”ものを「赤外線」と呼んでいます。

私たち人間の目は紫外線や赤外線を見ることはできませんが、ほかの生き物の中には、これらを識別できるものもいるようです。例えば、蝶などの昆虫の一部には紫外線を認識でき、蛇の一部は赤外線が認識できるといわれています。

色の測定

色の測定には、「刺激値直読方法」「分光測色方法」があります。いずれも、測定試料に光源から光を照射し、反射した光を受光部で受け取って数値化します。

「刺激値直読方法」は、人の目と同じように、光を赤、緑、青の3つの光に対して応答するセンサーで受け取って色の測定を行います。

それに対し「分光測色方法」は、試料から反射された光を、回折格子等で“分光”して測定を行います。

私たちが普段目にしている光はさまざまな波長をもっています。それらを、特定の波長ごとに分けることを“分光”といいます。分光された光を複数のセンサーで受け取ることで、各波長の反射率を測定します。複数のセンサーを持つため、高精度での測定を行うことができます。

色の表記

色を表す表色系には、さまざまな表し方が存在します。ここでは、JIS規格にも採用されているマンセル表色系L*a*b*表色系をご紹介します。

1.マンセル表色系

マンセル表色系では、ひとつの色彩を表す際、「色相」「明度」「彩度」の3つの属性に分けて考えられています。マンセル表色系は、JIS規格(JIS Z 8721)に「色の表示方法−三属性による表示」として採用されています。

色相

色相

「色相」とは、赤や青、緑などの色みを表すものです。
マンセル表色系では、10種の基本色の頭文字と、その色みの度合い(0~10)を組み合わせ、10R、5Y、3Bのように表されます。

明度

明度

「明度」は色の明るさを表します。明度が低くなれば黒に近づき、高くなれば白に近づきます。
0~10の数値で表されますが、実際は黒色で1.0程度、白色で9.5程度です。

彩度

彩度

「彩度」は、色の鮮やかさを表します。彩度が低くなると白や黒、グレーなどのくすんだ色に、高くなると鮮やかな色になります。
0~14の数値で表されますが、彩度の最大値は色みによって異なり、赤や橙などは14程度、青緑や青などは8程度です。
彩度が0の場合は無彩色となります。
彩度のあるものは、色相(色み)、明度/彩度を組み合わせて表記されますが、無彩色には色み、彩度がないため、ニュートラルを表すNと明度を組み合わせて表記されます。

例えば、下図のように「5YR(色相) 7(明度)/12(彩度)」や、「N5」のように表されます。

マンセル表記例

※これらの色は、表示される環境によって見え方が異なる場合があります。

このように、要素ごとに分けて表すことで、より細かく色を種類分けすることができます。

2.L*a*b*表色系

L*a*b*表色系は製品など、物の色を表すのに最も多く使用されており、JIS規格(JIS Z 8781-4)において採用されています。

下の図は、明るさの要素(L*)と色みの要素(a*、b*)を取り出した、L*a*b*色空間のイメージです。

Lab表色系

L*値は明るさを表し、数値が大きいほど明るく、小さいほど暗くなります。

a*、b*の値は、赤や青などの色みを表し、a*がプラスの方向に大きくなると赤色、マイナスの方向に大きくなると緑色が強くなります。

またb*がプラスの方向に大きくなると黄色、マイナスの方向に大きくなると青色が強くなります。

色差測定

実際にものづくりの現場で色の測定を行うケースの多くは、製品の色が基準を満たすかどうかを評価するために、標準となるサンプルとの「色差(しきさ)」の測定を行っています。そして色差がいくつまでを合格、とするような基準を定めていることが多くあります。

色差とは、ある2色を比較したとき、どの程度違いがあるのかを表すものです。L*、a*、b*の各成分の値が標準と比較してどれだけ離れているかを計算し、それらを用いて色差を求めます。色差が小さければ色の違いは小さく、色差が大きくなると色の違いは大きくなります。

例えばある2色が(L*1, a*1, b*1)(L*2, a*2, b*2)で表されるとき、L*a*b*表色系において、色差(ΔE*ab)は下の式で計算することができます。

色差公式

この、ΔL*、Δa*、Δb*は各成分の値の差であり、
ΔL*=L*2-L*1
Δa*=a*2-a*1
Δb*=b*2-b*1
となります。

ここで実際に、先ほどマンセル表色系の説明で例に出した5YR 7/12と5YR 5/6の色差を計算してみましょう。この2色それぞれのL*、a*、b*は、以下の値で表されます。

Lab数値

5YR 7/12を基準としたときの5YR 5/6との色差を求めていきます。

まず、L*、a*、b*それぞれの差を計算すると、
ΔL*=51-72=-21
Δa*=18-26=-8
Δb*=31-52=-21
となります。

色差(ΔE*ab)を求める式にこれを当てはめると、

計算式

となり、この2色の色差ΔE*abは約31と求めることができました。

この2色では、違う色であることが目視でも判断できますが、それがどの程度の違いなのかを言葉で説明することは困難です。しかし今回ご紹介したような方法で色の違いを数値化することによって、客観的に評価することができるのです。

まとめ

光が物質に当たって反射した光が私たちの目に届くことで、その色を感じられます。そんな物質の色は色差計などによって数値化され、ものづくりの現場でも重視されています。

色に限らず、人の感覚では区別がつかなかったり、状況により変化するような性質の差を客観的に評価するには、機器を使った測定が有効です。

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