ETFEとは?特長や分子構造、加工方法、用途まで解説
この記事では、フッ素樹脂の種類の1つであるETFEについて、特長や分子構造、用途について解説します。最後に特性表をご用意しましたのでそちらもぜひご活用ください。
ETFEとは
ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylen)はフッ素樹脂の仲間の1つで、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体です。フッ素樹脂の歴史は、1938年に米国デュポン社のプランケット博士によるPTFEの発見、開発によってはじまります。ETFEは1970年にデュポン社よりテフゼルの名で発売されました。
ETFEの特長
ETFEは、それ以前に開発されたパーフルオロ系フッ素樹脂とは異なり、分子構造中に水素原子(H)を含みます。そのため、PTFEやFEPなどと比べて耐薬品性や耐熱性は低く、連続使用温度はPTFEの260℃、FEPの200℃に対してETFEは150℃です。一方で、ETFEの機械的強度は高く、低融点で加工ができるため、装置内部電線の被覆や建築資材としても利用されています。
- 連続使用温度・・・150℃
- 融点・・・・・・・220~270℃
- 溶融粘度・・・・・103~104ポイズ
ETFEの加工方法
ETFEは溶融粘度(※)が低いため、一般的な熱可塑性プラスチックと同様に、押出成形や射出成形、ブロー成形などの方法で加工が可能です。
(※溶融粘度とは樹脂が溶融した状態の流動性を表す指標で、溶融粘度が低いほど流動性が高く、成形に向いています。)
また、耐食ライニングの場合、粉体塗装だけでなく、回転成形(ロトライニング)によって1mm以上の厚い被膜を得ることができます。
ETFEライニングやコーティングについての詳しい情報はこちらもご確認ください。
参考記事:フッ素樹脂コーティング(テフロン™コーティング)の解説
ETFEの用途
ETFEは次のような用途で使用されています。
- 電気絶縁チューブ
- 搬送チューブ
- 建築用フィルム
- 結束バンド
- 耐食ライニング
- 耐食コーティング
ETFEの特性表
特性 | 単位 | JIS試験法 | ISO試験法 | ASTM試験法 | ETFE | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
物理的 | 融点 | ℃ | K6935 | 12086 | D4591 | 220-270 | |
Tg | ℃ | K7121 | 3146 | D3418 | |||
密度 | g/cm3 | K7112 | 1183 | D792 | 1.73-1.74 | ||
機械的 | 引張強さ | MPa | K7161 K7162 | 527 | D638 | 38-42 | |
伸び | % | 同上 | 300-400 | ||||
圧縮強さ | MPa(10%変形) | K7181 | 604 | D695 | 40-50 | ||
アイゾット衝撃強さ | J/m | K7110 | 180 | D256A | 破壊せず | ||
ロックウェル硬さ | (Rスケール) | K7202 | 2939 | D785 | R 50 | ||
ショアー硬さ | (Dスケール) | K7215 | 2089 | D2240 | D67-78 | ||
曲げ弾性率 | GPa | K7171 | 178 | D790 | 0.90-1.20 | ||
引張弾性率 | GPa | K7162 | 527 | D638 | 0.70-0.85 | ||
動摩擦係数 | (0.69MPa,10MP a、3.8m | K6935 | D1894 | 0.4 | |||
磨耗係数 | 10MPa、3.8m /S、1018S | ||||||
熱的 | 熱伝導率 | W/m・K | A1412 | 8902 | C177 | 0.24 | |
比熱 | 103J/Kg・K | K7123 | 11357 | E1269 | 2 | ||
線膨張係数 | 10-5/℃ | K7197 | 11359 | D696 | 6 | ||
ボールプレッシャー温度 | ℃ | 参照1 | 185 | ||||
熱変形温度 | 1.81MPa | ℃ | K7191 | 75 | D648 | 74 | |
0.45MPa | ℃ | 104 | |||||
最高使用温度(連続) | ℃ | K7226 | 2578 | — | 150 | ||
電気的 | 体積抵抗率 | Ω・ cm(50%RH,23℃) | K6911 C2139 | IEC60093 | D257 | >1018 | |
絶縁耐力(短時間) | MV/m 3.2mm厚 | K6911 C2110 | IEC60243 | D149 | 16 | ||
比誘電率 | (60Hz) | K6911 C2138 | IEC60250 | D150 | 2.6 | ||
(103Hz) | 2.6 | ||||||
(106Hz) | 2.6 | ||||||
誘電正接 | (60Hz) | K6911 C2138 | IEC60250 | D150 | 0.0006 | ||
(103Hz) | 0.0008 | ||||||
(106Hz) | 0.005 | ||||||
耐アーク性 | sec | C3125 | IEC61621 | D495 | 75 | ||
耐久性その他 | 吸水性 | %(24H) | K7209 | 62 | D570 | 0.03 | |
燃焼性 | 3.2mm厚 | K7140 | 1210 | UL-94 | V-0 | ||
限界酸素指数 | - | K6935 K7201 | 4589 | D2863 | 32 | ||
直射日光の影響 | - | — | — | なし | |||
耐薬品性 | 酸 | K7114 | 175 | D543 | 優秀 | ||
アルカリ | 優秀 | ||||||
有機溶剤 | 優秀 |
備考
超優秀:ほとんどの薬品、溶剤に過酷な条件下でも侵されない。
優秀:一部の薬品、溶剤には特定の条件下では使用を留意する必要がある。
秀:使用する薬品、溶剤、使用条件を詳細に検討する必要がある。
良:一部の薬品、溶剤に溶ける。
参照1:電気用品に用いられる熱可塑性プラスチックのボールプレッシャーの登録制度に関する報告書準拠