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フッ素樹脂とは?~種類・特徴から活用方法までまとめ~

フッ素樹脂は今日の工業界に欠くことのできないプラスチック材料です。とくにPTFEが有名ですが、他にも組成の違いにより数多くのバリエーションがあり、さまざまな分野で活用されています。
この記事では、フッ素樹脂の基礎知識をまとめました。
最後にはよくある疑問にもお答えしていますので、ぜひチェックしてください。

フッ素樹脂とは

フッ素樹脂は、分子構造のなかにフッ素原子を含み、蛍石という7色に光るハロゲン系鉱物を原料に製造される熱可塑性プラスチックのひとつです。

分子構造の違いから大きくは「パーフルオロ系」と「部分フッ素系」の2種類に分類されます。パーフルオロ系のフッ素樹脂としては、PTFE、FEP、PFAがあります。また部分フッ素系のものとしては、ETFE、ECTFE、PVdFなどがあります。
フッ素樹脂は、非粘着性、撥水性、滑り性、耐熱性、耐候性、電気特性、難燃性、純粋性など優れた特性を発揮し、自動車・半導体・医療・食品・化学・航空宇宙分野など多くの産業を支えています。

フッ素樹脂の原材料蛍石
フッ素樹脂の原料蛍石

フッ素樹脂(テフロン™PTFE)の発見

1938年、米国デュポン社のR.J.プランケット博士(1910-1994)がフレオンガスと関係したガスの研究中、シリンダー内のテトラフルオロエチレンを冷凍で圧縮されたものに、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を形成する白い固体が自然に重合したことを発見しました。 その後、研究開発が進められて1945年、「TEFLON®」(テフロン®)はデュポン社に商標登録され市場に出されました。

フッ素樹脂の種類と特徴

現在フッ素樹脂は、以下のようにさまざまな種類があり、それぞれ特徴や最高使用温度も異なります。

名称 特徴 最高使用温度(耐熱温度)
PTFE Poly Tetra Fluoro Ethylene フッ素樹脂の中で最も多く生産される白色の結晶性樹脂で、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、潤滑性に優れます。 260℃
FEP Fluorinated Ethylene Propylene PFAより早く開発された溶融性パーフルオロポリマーで、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体です。PTFEに比べ耐熱性は低いですが耐薬品性、非粘着性に優れています。 200℃
PFA Per Fluoro Alkoxy polymer PTFEの溶融粘度を下げて射出成形できるように開発された樹脂で、テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロビニルエーテル(PFVE)との共重合体でPTFEに匹敵する特性ながら、熱溶融成型が可能です。 260℃
ETFE Ethylene Tetra Fluoro Ethylen copolymer TFEとエチレンとの共重合体で、非常に加工性が良い樹脂ですパーフルオロポリマーでないため、耐熱性、耐薬品性は少し低下します。 150℃
ECTFE Ethylene Chloro Tri Fluoro Ethylene copolymer クロロトリフルオロエチレン(CTFE)とエチレンとの共重合体で、機械的強度や加工性に優れます。ETFEに比べ難燃性と硬さに優れています。 150℃
PCTFE Poly Chloro Tri Fluoro Ethylene クロロトリフルオロエチレン(CTFE)の単独重合体で透明で硬く、ガス透過性がフッ素樹脂の中で最も小さいです。 120℃
PVdF Poly Vinyli dene Fluoride フッ化ビニリデン(VdF)の単独重合体で、硬く、フッ素樹脂のなかで最も誘電率が高く、高温で極性溶媒に溶解します。 150℃
PVF Poly Vinyl Fluoride フッ化ビニル(VF)の単独重合体で成型が難しいため、フィルムが主用途となっています。  
TFE/PDD Tetra Fluoro Ethylene/2,2-bistrifluoro-methyl-4,5-difluoro-1,3-dioxole 非晶質フッ素樹脂で透明な樹脂です。紫外領域から赤外領域まで光透過性に優れ、低反射率、低屈折率などの光学特性を持ちます。  

分子構造からみるフッ素樹脂の特徴

フッ素樹脂の構造がもつ次のような特長が、フッ素樹脂のさまざまな特徴や機能を生み出します。

  • 炭素の結合がフッ素原子によって密に覆われており保護されている。
PTFEの分子構造
PTFEの分子構造
  • 炭素原子(C)とフッ素原子(F)からなる直鎖状の高分子で、炭素原子とフッ素原子の結合力は有機結合の中で最も強く炭素原子同士の結合力も高い。
結合エネルギーの大きい炭素・フッ素結合
結合エネルギーの大きい炭素・フッ素結合
  • 分子量が100万~数千万と非常に長い分子鎖でできている高分子。
  • 分子内の原子の配列が緊密で対称的になっており、電化の分極がとても小さい。
  • 特徴的な分子構造により低い表面エネルギーをもつ。

フッ素樹脂の特性と応用分野

フッ素樹脂の特性

【非粘着性】
付着性の強い粘着物に対しても離型がよく、付着しないか、または、付着しにくい性質のことです。
【撥水・撥油性】
表面に水や油がついても良く弾きます。よって汚れがつきにくく簡単に洗浄できます。
【耐熱性】
樹脂の中では耐熱性が高く、260℃の高温に耐えます。
【低摩擦性】
大変滑りやすく固体の中で最小の静摩擦係数をもっています。また、潤滑性に非常に優れています。
【耐薬品性】
ほとんどすべて※の酸やアルカリ等の化学薬品に侵されたり、腐食することがほとんどありません。
※例外として溶融アルカリ金属や高温高圧環境でのフッ素ガスなどがあります。
【電気特性】
絶縁耐力(絶縁破壊の強さ)、体積抵抗率、表面抵抗率は大きく、電気絶縁性に優れます。
【耐候性】
紫外線の影響を受けにくく長い時間屋外使用しても劣化することがありません。
【難燃性】
限界酸素指数(LOI)が95%以上の難燃性材料です。
【純粋性】
化学的に不活性で純粋性に優れます。

フッ素樹脂の応用分野別特性

フッ素樹脂の特性は、以下のように多くの産業分野で利用されています。

自動車部品分野非粘着性/低摩擦性/耐熱性/電気絶縁性
半導体分野非粘着性/耐薬品性/純粋性
医療医薬分野非粘着性/低摩擦性/耐薬品性/純粋性
化学工業分野非粘着性/耐薬品性/電気絶縁性
食品工業分野非粘着性/低摩擦性/撥水・撥油性
一般工業分野非粘着性/低摩擦性/耐薬品性/難燃性

フッ素樹脂の活用例

フッ素樹脂成形品

フッ素樹脂は熱可塑性樹脂のため、融点以上の温度で成形することでさまざまな製品を作ることができます。また、PFAは熱流動性があるため一般の熱可塑性樹脂と同じ成形方法で成形ができます。

種類 成形方法 成形されるもの 吉田SKTの取扱製品例
PTFE 圧縮成形 シートやビレットなど TEFPASS® SHEET
アイソスタティック成形 ビーカーやパイプなど  
含侵コーティング法 フッ素樹脂ガラスクロスシート

マックスライナーベルト®

フッ素樹脂粘着テープ

ラム押出成形 丸棒など  
PFA 溶融押出成形 フィルムやシート、チューブなど

フッ素樹脂 熱収縮チューブ

PFAチューブ&パイプ

射出成形 一般製品の成形 PFA厚肉シート&ロッド(高純度品)
トランスファー成形 バルブや配管類のライニング  
回転成形 タンク配管類へのライニング ロトライニング
ブロー成形 ボトルなど  

フッ素樹脂コーティング(フッ素樹脂塗装)

フッ素樹脂コーティングは表面処理のなかの塗装に分類されます。液体や粉体の塗料を塗布して焼付(焼成)することで塗膜化し、コーティング被膜を形成します。おもに金属やセラミック製の基材にフッ素樹脂の特性(非粘着性、低摩擦性、撥水性、耐薬品性、電気絶縁性など)を付与して表面改質に用いられる方法です。また、フッ素樹脂自体は付着しにくい性質があるため特殊な加工方法が必要になります。そのため、一般の塗装とは異なる加工方法が必要です。

>フッ素樹脂コーティング(テフロン™コーティング)の解説

フッ素樹脂(コーティング)のよくあるご質問

Q1:テフロンTMフッ素樹脂と一般的なフッ素樹脂の違いは何ですか?

「テフロンTM」はケマーズ社のフッ素樹脂の商品名です。
フッ素樹脂にはPTFE、PFA、FEPなどの種類があり、テフロンTMにもテフロンTMPTFE、テフロンTMPFA、テフロンTMFEPなどがあります。

Q2:家庭用のフライパンのフッ素樹脂加工と吉田SKTのフッ素樹脂コーティングは何が違いますか?

フライパンのフッ素樹脂加工はフッ素樹脂のなかで、主にPTFEという樹脂を使用しています。膜厚も20-50μmのものです。
当社はこれらのコーティングも加工できますが、ものがくっつきにくくなる特性をもつ非粘着性コーティングだけでも、膜厚が1μm程度の「ナノプロセス®」や、フッ素樹脂のみで凹凸を付けた「TPシリーズ」、「スーパーTPシリーズ」などの複数のコーティングがあります。コーティング材料もPTFE以外にPFA、FEPさらにはシリコーン材料など、非粘着性コーティングや製品で100種類以上あります。

>フッ素樹脂加工のフライパンについてはこちらをご覧ください

Q3:PTFEとPFAの違いを教えてください

PTFEとPFAの違いとしては、まずは融点に違いがあります。
PTFEが327℃に比べ、PFAはだいたい305-308℃になります。さらにPTFEは結晶化度が高く、真っ白な色をしています。
PFAはPTFEより結晶化度が低く半透明です。潤滑性は結晶度の高いPTFEのほうが摩擦係数は低くなります。
またPTFEは融点以上になってもほとんど流動せず成形性が悪いのに比べ、PFAは良く流動し射出成形やフィルム押し出し、厚塗りコーティングなど加工性に優れています。

Q4 フッ素樹脂とシリコーン(シリコン)樹脂の違いを教えてください

代表的なフッ素樹脂のPTFEは、炭素原子(C)とフッ素原子(F)が直鎖的につながった分子構造です。
炭素原子同士(C-C)の結合部はフッ素原子で隙間なく覆われてフッ素原子によって保護されています。
また、分子量が100万~数千万と非常に長い分子鎖でできています。このような特徴的な分子構造により、非粘着性、低摩擦性、耐熱性、耐薬品性、電気特性などの特性を発揮します。
一方、シリコーン樹脂はシロキサン結合(-Si-O-Si-)を基本構造として、有機基が結合した合成高分子です。シロキサン結合の結合力の強さにより耐熱性や化学的安定性に優れ、表面を覆っているメチル基の作用により表面張力が低く撥水性や離型性に優れます。

>シリコーンとシリコンの違いについてはこちらをご覧ください