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耐候性とは?試験方法や樹脂素材ごとの違いを解説

こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
吉田SKTは耐候性に優れるフッ素樹脂コーティングの加工実績を多数もつ加工メーカーです。

樹脂素材は日光や風雨のような自然環境への耐性がそれぞれ異なり、素材ごとが持つこの耐性のことを耐候性と呼びます。
この記事では耐候性の概要やさまざまな測定方法、耐候性の低い素材と高い素材について紹介します。
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耐候性とは

耐候性とは、素材が持つ自然環境に対する耐性を指す言葉です。測定の対象となるものとしては太陽光・温度・湿度・雨などが挙げられます。温度については単純な高い低いだけではなく、昼夜の気温差の大小も含まれます。また、日常で意識しにくいものとして、酸素も素材を劣化させる原因となる自然環境のひとつです。

耐候性の数値が高いほど、屋外の自然環境において変形・変色・劣化が起こりにくいと判断できます。長期にわたって屋外で使う物を設計する際は、できる限り耐候性の高い素材を使うことが望ましいといえます。

耐候性を含めた試験の概要・種類

屋外で使われる建造物は、自然のさまざまな環境に晒されることで少しずつ劣化します。例えば、道端のガードレールやポストなどに錆やひび割れが生じている場合、その原因は自然環境による劣化の可能性が考えられるでしょう。

素材にこのような劣化が起こる要因や時間を調べるために行われる試験が、耐候性試験です。素材や使用用途によってさまざまな試験方法があり、試験にかかる時間も異なります。ここからは、耐候性を調べる試験にどのような物があるのかを解説します。

屋外暴露試験

屋外暴露試験とは、対象を屋外に晒して状態の変化を調べる試験方法です。比較的厳しい環境に長時間晒すことで劣化の速度や程度を測定します。

屋外で使用される物は通常長い時間をかけて環境に晒されることで劣化します。そのため、屋外暴露試験であれば、使用時の劣化に近い状況での確認が可能です。

ただし、試験開始から結果が出るまでに長い時間がかかるという欠点を持ちます。紙やプラスチックなどの比較的劣化が速い素材でも数時間から数日の時間を要し、塗料やゴムなど劣化の遅い素材では数年かかる場合もあります。また、10年後の劣化の程度を正確に確認するためには、試験にも10年近い年月が必要です。これらの理由のため、近年では用いられることが少なくなりつつある試験方法だといえます。

促進耐候性試験

促進耐候性試験とは、対象に人工光源から光を当てたり、水をかけたりして変化を確認する試験です。本来屋外で使用した場合に試験対象物を劣化させる自然環境はさまざまですが、この試験ではそこから主要と思われるものを抜粋・整理し、光・熱・水の3要素として試験を実施することが一般的です。

屋外暴露試験では数年かけて観察しなくてはならない劣化でも、促進耐候性試験では数週間で観測できるため、近年用いられるケースが増加しています。

ただし、太陽光10年分の強さの光を1年間当て続けても、自然環境における10年分の太陽光に晒した状態と同一ではありません。屋外暴露試験に比べると通常対象物が置かれることの無い環境に置くことになるため、精度では劣ります。

耐食性試験

耐食性試験は、塩水や硫化水素ガスなどを噴霧し、人工的に素材が腐食する環境を作り出すことで試験が行われます。腐食・錆への耐性を調べることが試験の目的です。また、腐食や錆への耐性は、屋外暴露試験によって測定されることもあります。金属メッキのような塗膜や、腐食したり錆びたりしやすい状況で用いる素材に対して多く実施されます。

耐候性の高い樹脂素材

屋外で用いる素材は耐候性の高いものを使いたいものですが、具体的にはどのような素材であれば耐候性が高いのでしょうか。ここからは、よく用いられる樹脂素材のうち、比較的耐候性が高い素材について紹介します。

アクリル

アクリルの水槽

アクリルは、水族館の水槽や看板、電飾カバーやカタログケースなどに使われる樹脂素材です。ガラスよりも透明度が高く、光透過率は93%に達します。分厚く重ねても色が出ないため、素材の向こう側を快適に視認したいときに使われます。太陽光や雨風に伴う劣化や衝撃への耐性に優れることに加えて、万が一破損した際に破片が飛び散りにくいことも利点です。また、接着剤を使って貼り合わせられるため、比較的安易に加工できます。

ポリ塩化ビニル(塩ビ)

塩ビのサッシ

ポリ塩化ビニルは通称塩ビとも呼ばれ、硬質と軟質の2種類があります。日常でよく目にする素材で、五大汎用樹脂の1つです。衝撃への強度の高さが特徴で、看板や電飾カバーのほか、配管や水道管のパイプなど工業用の部品を作る際にも多く用いられます。最近では、断熱性能の高い住宅の樹脂サッシなどにも利用されています。

高い耐候性を持つと同時に安価で加工性にも優れるため、さまざまな場面で見られる素材です。耐候性だけではなく耐薬品性も高く、酸・アルカリ・塩類とさまざまな物質からの浸食に耐えられます。

関連記事:PVC(ポリ塩化ビニル・塩ビ)の特徴やメリット・デメリット、加工例や危険性を解説

ポリカーボネート

ヘッドライト

ポリカーボネートは、高い衝撃強度と、ガラスと同等の透明度を併せ持つ樹脂素材です。また、着火しても自然に消火されます。その特性から、カメラレンズや自動車のヘッドランプに使われます。

衝撃だけでなく低温や高温にも強いものの、有機溶剤や界面活性剤には弱いことが欠点です。ポリカーボネートで作られた製品の手入れにアルカリ性の洗剤を用いると、ひび割れや変形を起こす恐れがあるためよく確認しましょう。

フッ素樹脂(PTFE)

フッ素樹脂の屋根

フッ素樹脂は高機能樹脂に分類される樹脂素材で、代表的なものとしてPTFEが挙げられます。屋外で長期間使用しても劣化が起こりにくいほか、耐熱温度が高く耐摩耗性にも優れます。身近な所では、フライパンのコーティングに使われることで有名です。

そのほかには、ドーム状建築物の膜材にもフッ素樹脂のコーティング素材が用いられています。屋外で劣化しにくく、吸水性の低さから雨水による劣化も小さいため、天井部のコーティングに適した素材といえます。

関連記事:PTFEとは?~テフロン™樹脂との違いも解説~

PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)

PFAは、フッ素樹脂の一種で、PTFE同様にさまざまな分野に対して高い耐候性を誇ります。低温にも高温にも耐えられるほか、酸・アルカリ両方の薬剤に対して高い抵抗性を持つため、さまざまな場面で活用します。

PFAは加工性が良く、日常よく目にするものでは自動車の部品などにも利用されています。そのほか、高い耐薬品性や純粋性を活かして、半導体分野でも多く採用されています。

関連記事:PFAとは?特徴・分子構造・成形方法について詳しく解説

耐候性の低い樹脂素材

耐候性の低い樹脂素材は、以下のものが例として挙げられます。

  • PE(ポリエチレン)
  • PP(ポリプロピレン)
  • PS(ポリスチレン)

これらの素材は紫外線や雨風などに弱く、日光によって劣化・変質してしまうため、屋外での長期の使用には向きません。また、保管方法を誤ると使っていなくても劣化する可能性があります。保管する際にはメーカーの定める期限を守りつつ日光の当たらない室内で常温保存したり、水漏れや異物付着を避けたりして劣化を防ぎましょう。

耐候性の低い素材を使った場合の変化

耐候性の低い素材を適していない環境で使い続けた場合は、時間経過とともに以下のような劣化が生じます。

劣化したプラスチック
  • 変色:白色や黄色に変化
  • 硬化:硬くなり、割れやすくなる
  • 変形・割れ:反りが生じたり、ひびが入ったり、欠けたりする

これらのような劣化が生じると製品は元の強度を保てず、壊れやすくなります。耐候性の高い素材も使い続ければ劣化はするものの、劣化が生じるスピードは遅いため、耐候性の低い素材で製品を作った場合と比較して長く使えます。

まとめ

この記事では、樹脂素材の耐候性について解説しました。自然環境にさらされることで物は劣化しますが、耐候性の高い素材であれば劣化速度が遅く、長期にわたって使用できるでしょう。また、耐候性の高い樹脂素材としては、アクリル・ポリ塩化ビニル・ポリカーボネート・フッ素樹脂などが存在します。

吉田SKTでは、耐候性に優れたフッ素樹脂製品やフッ素樹脂コーティングを取り扱っています。屋外で使用するものを樹脂コーティングによって長持ちさせたい場合はご利用をご検討ください。

また、不明点がある場合は下記フォームからお問い合わせが可能です。