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ポリアミドイミド(PAI)とは?特徴・用途・PEEKとの比較を解説

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ポリアミドイミドは、高い性能と多くの特性を備えた熱可塑性のプラスチック素材です。
この記事では、ポリアミドイミドの特徴や使途、また同じく高性能の熱可塑性プラスチックであるPEEKとの比較について解説します。

目次 [閉じる]

  • 1 ポリアミドイミドとは
    • 1.1 化学的特徴
    • 1.2 優れた物性
    • 1.3 強度と剛性
    • 1.4 耐薬品性や紫外線の耐性
  • 2 ポリアミドイミドのデメリット
  • 3 ポリアミドイミドの用途
    • 3.1 金属の代替材料
    • 3.2 高性能のコーティング材料
  • 4 ポリアミドイミドとPEEKの比較
    • 4.1 主な耐性の比較
    • 4.2 摺動性(ベアリング向け摺動グレードで)の比較
    • 4.3 素材としての安定性の比較
  • 5 まとめ

ポリアミドイミドとは

ポリアミドイミドは、融点が300℃前後の熱可塑性プラスチックです。260℃という高い耐熱性と機械強度のため、スーパーエンジニアリングプラスチックの1つに分類されています。

そのほか、耐摩耗性や摺動性など多くの特性を備えており、金属部品の代替としても使用されることもあります。

化学的特徴

ポリアミドイミドは、耐熱性と機械的強度につながるポリイミドと、加工性や強靭性をもたらすポリアミドの特徴を合わせもちます。

優れた物性

ポリアミドイミドは物性の点でも非常に優れています。高い機械的強度や低いクリープ特性により靭性と剛性を合わせ持つことが特徴です。

ポリアミドイミド単体でも自己潤滑性を有していますが、PTFEやグラファイトを配合した摺動グレードになると、200℃以上の温度環境や、高摺動で発生する摩擦熱や圧縮応力による変形に耐えられます。そのため、耐摩耗性やトライボロジー性が求められるベアリング部品に使用されています。

強度と剛性

アフターベーキング(加熱処理)を行ったポリアミドイミドは、強度や剛性がさらに向上します。引張強度は約190MPaになり、非強化プラスチックの中では最高レベルの特性を誇る素材です。

また、少量のPTFEを含んだグレードでは耐摩耗性がさらに向上し、より厳しい要求・用途に対応します。

耐薬品性や紫外線の耐性

ポリアミドイミドは、ほとんどの酸や塩基、各種溶剤に対して浸食されない高い耐薬品性を持ちます。脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素、塩素化およびフッ素化溶媒の影響もほとんど受けません。化学反応に対して良好な耐薬品性を持っている素材です。

また、多くの樹脂で課題となる紫外線による劣化についても優れた耐性を持っており、環境耐性が強い樹脂といえます。

ポリアミドイミドのデメリット

ポリアミドイミドのデメリットは、それ自体がかなり高価な素材である点です。特に、最大の耐摩耗性と耐薬品性を発揮するにはアフターベーキングが必要となるため、生産工程が複雑化して価格が高騰します。

また、架橋をしなければガラス転移温度より高い環境で使用できません。脆弱性をなくして強度を高めるためには結晶化に多くの時間が必要となり、生産性が低下します。よって特性を強化したグレードほどデメリットが顕著となり、単価が大きくなります。

ポリアミドイミドの用途

ポリアミドイミドは、その優れた特性からさまざまな用途に用いられています。例えば金属の代替部品や、要求の厳しい環境向けの高性能コーティング素材などです。

ここからは、ポリアミドイミドの高い性能が求められる用途について解説します。

金属の代替材料

ポリアミドイミドは機械的強度が高く、優れた化学的特性を備えています。

プラスチックは継続的な荷重を受けると徐々に変形が進む、クリープという特性を持ちます。ポリアミドイミドはクリープ特性が低いため、ベアリングなどの耐摩耗部品における金属の代替材料として最適です。

特に高温環境下で優れた耐クリープ性、耐疲労性を発揮するため、自動車産業や航空宇宙産業向けの成形部品、機械加工部品などで採用されています。

高性能のコーティング材料

ポリアミドイミドは、さまざまな厳しい環境下での工業用途向けの高性能、非粘着性、耐腐食性のコーティング素材として広く使用されています。ただし価格が高いため、その優れた特性が必要な場合にのみ使用されることが一般的です。

幅広い温度帯域で安定した電気的特性を維持でき、また難燃性である点も、こうした用途で採用される1つの要因です。空気中の最高使用温度は260°Cほどであり、高温状態が継続する環境下でも素材を腐食や摩耗から保護できます。

ポリアミドイミドとPEEKの比較

ポリアミドイミドと同様、PEEK樹脂も200℃以上で使用できる高性能のスーパーエンジニアリングプラスチックの1つですが、両者は特性が異なります。

ここでは、PEEKとポリアミドイミドの特性を比較します。

主な耐性の比較

両者は強度や耐熱性、耐寒性、耐薬品性の点では共に優れた特性を持っています。

標準グレードを比較してみると、ポリアミドイミドは引張強度が120MPa以上と高く、260℃の高温から-196℃の極低温に対応している点が特徴です。一方で、PEEK樹脂は幅広い種類の薬品に対する耐性に優れています。

靭性と耐衝撃性では、ポリアミドイミドの耐性が優れています。特に、荷重たわみ温度はポリアミドイミドが260℃以上で、PEEKは150℃程です。ただし延性と衝撃強度の点では、PEEKはポリアミドイミドより優れた特性を持っています。

摺動性(ベアリング向け摺動グレードで)の比較

摺動性とは、簡単にいうと滑りやすさを指します。摺動性が高いことは、摩擦係数が小さいことを意味し、ベアリングのような部品同士が繰り返し擦れるような用途への耐性につながります。

それぞれの摺動グレードを比較すると、ポリアミドイミドが持つ摺動性の高さはPEEK以上です。また、50℃以上の温度で使用される際は、寸法安定性や強度においてもポリアミドイミドのほうが優れています

参考記事:PEEK(樹脂)とは?特徴や使用用途について解説

素材としての安定性の比較

素材としての安定性を比較してみると、PEEKは吸水性が低く、安定しています。

寸法安定性の観点でみると、200℃以上の温度では、靭性・熱線膨張係数の違いが顕著になり、ポリアミドイミドが優れています。ただし、150℃までの環境では強度と耐薬品性の観点や延性・衝撃強度などの耐性、バリエーション、費用の面でもPEEKが適切です。

また、ポリアミドイミドは飽和水蒸気、強塩基に対して影響を受ける可能性があります。そのような環境下ではPEEKを選択することがおすすめです。

まとめ

ポリアミドイミドは、優れた特性をもった熱可塑性樹脂であり、スーパーエンプラとして広く活用されています。

合成に時間がかかり高価である点から採用できる局面は限られていますが、ポリアミドイミドだけが対応できる工学的な条件下では、その性能の高さを存分に発揮するでしょう。

ポリアミドイミド同じく熱可塑性樹脂で、耐熱性の高い樹脂にはPEEK以外にもフッ素樹脂PTFEがあります。参考記事をご紹介しますので、ご興味のある方はぜひチェックしてください。

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