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エポキシ樹脂とは?特性・メリット・主な用途について解説

エポキシ樹脂は、一般によく利用されるポリエチレンや塩ビのような熱可塑性樹脂ではなく、加熱で硬化する熱硬化性樹脂の一種です。
この記事では、接着剤やコーティング素材、塗料、電子部品の素材としても活用されるエポキシ樹脂の特性やメリット、用途について解説します。

目次 [閉じる]

  • 1 エポキシ樹脂とは
    • 1.1 機能性の高い熱硬化性樹脂
    • 1.2 エポキシ樹脂の反応
  • 2 エポキシ樹脂の特性とメリット
    • 2.1 あらゆる耐性
    • 2.2 接着性
    • 2.3 電気絶縁性
    • 2.4 素材としての安定性
  • 3 エポキシ樹脂のデメリット
  • 4 エポキシ樹脂の主要な用途
    • 4.1 エレクトロニクス製品の絶縁材
    • 4.2 塗装、コーティング素材
    • 4.3 エンジニアリング接着剤、構造接着剤
    • 4.4 コンポジット材
    • 4.5 光造形3Dプリンターの主要材料
  • 5 まとめ

エポキシ樹脂とは

エポキシ樹脂とはエンジニアリングプラスチックの1種です。分子構造中にエポキシ基をもつことから、エポキシドやエポキシと呼ばれます。加熱すると柔らかくなり冷やすと硬化する熱可塑性樹脂とは異なり、加熱することで化学反応によって硬化する熱硬化性樹脂に分類されます。

機械的な強度が高く、耐熱性、電気特性が高く耐水性、耐薬品性、接着性に優れているため、電気製品や接着剤、塗料などに幅広く用いられています。

機能性の高い熱硬化性樹脂

エポキシ樹脂は機能性が高く、化学反応によって硬化する為、塗料やコーティング剤、接着剤としての需要の高い樹脂です。

また、優れた電気特性は、電子基板や電子材料に最適であると同時に、耐水性・耐薬品性・耐食性が高いため、腐食を防ぐための塗料などにも使用されています。

エポキシ樹脂の反応

エポキシ樹脂は単独で反応せず、硬化剤と混ぜることで反応します。反応はエポキシ環の開環による重合で進行し、副生成物を出さないことが特徴です。また、硬化条件や硬化後の特性が硬化剤の種類や量によって変化するという特徴を持ちます。

ポリアミン系の硬化剤は種類が多く、使用温度幅も大きくなります。脂肪族ポリアミンは常温で反応し2液型の接着剤に使われ、芳香族アミンは高温反応での高い靭性が特徴です。

酸無水物系の硬化剤は固形状から液状まで多くの種類があり、耐熱性や電気特性が良好で、電気絶縁材料として有用です。

フェノール系の硬化剤は、電気特性や耐熱性が高く、熱分解が起こりにくいという特徴を持ちます。

チオール系の硬化剤は硬化温度を低下させることが特徴です。安定性が高く、塩基性の化合物存在下では室温以下(0℃以下)でも反応が進みます。

エポキシ樹脂の特性とメリット

成形品が中心のプラスチック素材と異なり、エポキシ樹脂は接着剤や塗料としての用途でメリットを発揮します。高い電気絶縁性・耐水性・耐食性などの特性によって、コーティング剤や建築素材、接着剤などとして活用されます。

あらゆる耐性

エポキシ樹脂は種類によって多様な特性を持ちますが、基本的な耐性は以下の通りです。

  • 耐水性:耐水性に優れ、水分子を通しません。
  • 耐食性:水分子と同じく、酸素分子も通さないため耐腐食性に優れています。
  • 耐熱性:高い耐熱性を持ち、硬化剤の種類によってはさらに熱分解が抑制されます。
  • 耐薬品性:優れた耐溶剤性、耐アルカリ性を持ちます。ただし耐酸性がやや弱点です。
  • 耐湿性:水分子を通さない特性を持つため、コーティングによって耐湿性を高めます。
  • 耐候性:湿気や温度変化などの耐候性が高く、建築資材の塗料としても使用されます。

エポキシ樹脂はこうした基本的な耐性に加え、硬化剤の種類や、プレポリマーとの混合で分子量を調整することでさまざまな特性を引き出せる素材です。

接着性

接着性が強いため、通常の接着剤としてではなく、構造用の接着剤やエンジニアリング用の接着剤として使われます。また、コンクリートの劣化防止目的でも使用されています。

高い接着力と密着力があるため産業用から民間用まで利用は幅広く、硬化剤の種類を選ぶことで、接着させる材料ごとの最適な組み合わせの選択が可能です。

電気絶縁性

エポキシ樹脂は優れた電気絶縁性を持ちます。体積抵抗率は1012~1017Ω・cmであり、PEEKのような高機能なスーパーエンジニアリングプラスチックと比較しても遜色のない値です。耐熱性にも優れているため、電子基板や電子部品の塗料として適切な素材だといえます。

素材としての安定性

エポキシ樹脂は各種の特性に加え、強度や軽量性、寸法安定度の高さなどにも優れており、素材として多くの用途に使われます。コーティング素材や塗料としての用途が多いものの、成形品として使用されるケースもあります。

耐熱性や耐光性に加えて透明性や柔軟性を持つため、システムキッチンの素材としても使用されており、高機能とクリスタルのような見た目によるデザイン性の高さが特徴です。

エポキシ樹脂のデメリット

エポキシ樹脂のデメリットは、紫外線を受けると白く劣化してしまう点です。そのため、太陽光が当たる場所では表面を塗装する必要があります。

また、低温下で固まるまでの時間が遅い点や靭性が低い点もデメリットです。靭性を向上させるため、ポリウレタンを添加して使用するケースもあります。

エポキシ樹脂の主要な用途

エポキシ樹脂は多様な用途で使用され、その分野は多岐にわたります。例としては以下の通りです。

  • エレクトロニクス
  • 食品
  • 船舶
  • 航空宇宙産業
  • 建築
  • スポーツ用品
  • 家庭用品 など

ここからは、エポキシの主要な用途について解説します。

エレクトロニクス製品の絶縁材

エポキシは高い電気絶縁性を持つため、電子回路や電子部品の素材として多用されています。具体的には、プリント回路の基板・ハイブリット基板・ICなどの電子回路と、変圧器・スイッチギア・発電機などの絶縁材です。

電子部品やICは年々小型化、微細化が進んでおり、電子部品関連に使用されるエポキシも高純度・高性能に進化しています。

塗装、コーティング素材

エポキシ樹脂の用途の1つが、耐水性・耐摩耗性・耐腐食性を活かした塗料やコーティング素材としての活用です。使用される範囲は幅広く、土木建築では防食用の塗料として多用されます。

船舶やプラントのコーティング塗料として、あるいは缶詰などの内部の塗料にも、防食を目的にエポキシの塗料が使われています。

エンジニアリング接着剤、構造接着剤

エポキシ樹脂は一般的な接着剤よりも、構造用やエンジニアリング接着剤としての活用が顕著です。高性能な接着剤としての役割が期待されており、エンジニアリング接着剤はエポキシ以外に、ポリウレタンやアクリル樹脂などを含みます。

硬化剤の選択による多様性のため、ほとんど全ての用途に適合する接着剤が開発されています。

コンポジット材

塗料や接着剤として以外の使用目的として、構造用の複合材料やコンポジット材としての活用が挙げられます。

先端素材のカーボンのファイバーやガラス繊維に混ぜるコンポジット剤として使われ、強化材の役割を果たしています。軽量・高強度で耐熱性を持つため、自動車や航空機での構造の強化材に適切です。また、ゴルフクラブやテニスラケットなどのコンポジット素材としても使われます。これらのコンポジット材はGFRPやCFRPと呼ばれています。

光造形3Dプリンターの主要材料

エポキシ樹脂の近年注目されている用途として、光造形3Dプリンターの材料としての利用があります。光造形とは、硬化性樹脂に紫外線を照射し、デジタルデータから物体を造形するものです。

材料はさまざまですが、エポキシ樹脂はアクリルとともに光造形の二大原料とされます。また、最近では熱可塑性樹脂としての物性を再現した紫外線による硬化性樹脂も登場しています。

まとめ

エポキシ樹脂の優れた特性や幅広い用途について解説しました。

この樹脂は、硬化剤の選択や分子量調整によって今後もより高い性能をもった素材が開発されることを期待されています。将来性のゆたかなエポキシ樹脂を、ぜひ活用することをおすすめします。

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