テフロン™コーティングとバイコート®の違いを詳しく解説
機能性のコーティングを検討される際に、よくいただくご質問が「知名度の高いテフロン™コーティングが良いのか?」「吉田SKTオリジナルのバイコート®は何が違うのか?」というものです。
選び方のポイントは、求める機能によって異なります。 「優れた耐薬品性、絶縁性が必要ならテフロン™コーティング」 「高硬度、膜厚精度、PFASフリーが必要ならバイコート®」 という使い分けが基本となります。
本ページでは、両者の違いを比較表にまとめました。また、いくつかの質問に答えるだけで最適なコーティングがわかる診断フローチャートもご用意しています。 ぜひご活用ください。
さらに詳しい仕様を確認されたい方は、各製品のカタログもあわせてご覧ください。
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テフロン™コーティング vs バイコート®比較一覧
両者の特長を一目で比較できるよう、代表的な項目を一覧表にまとめました。
| 比較項目 | テフロン™コーティング | バイコート® (有機無機複合コーティング) |
|---|---|---|
| 概要 | 米国ケマーズ社(旧デュポン)の テフロン™ブランドを使用した ライセンス製品 | 吉田SKTが独自開発した 有機無機複合コーティングシステム ※PFASフリー仕様もあり |
| 主な特長 | 優れた非粘着性、低摩擦性(すべり性) 優れた耐薬品性、絶縁性 耐熱性、耐寒性、耐候性 | 優れた非粘着性、低摩擦性(すべり性) 高硬度、高い膜精度、耐熱性 材料バリエーション豊富 (有機/無機の組み合わせ) |
| 非粘着性 | 優れている ※ガムテープ等の強粘着物は 剥がれにくい場合あり | 優れている (グレードにより異なる) ※シロキサン系はガムテープも 剥がれやすい |
| すべり性 (低摩擦性) | 優れている 低い摩擦係数 | 優れている 用途に応じた選択が可能 |
| 耐熱性 | 優れている PTFE・PFA: 260℃ FEP: 200℃ | 優れている シリーズにより異なる(~260℃) |
| 耐摩耗性 | バイコート®より硬度は低いが 用途により異なる | 優れている (無機材料との複合化により向上) |
| 硬度 | F〜2H程度 (鉛筆硬度) | フッ素樹脂コーティングより高硬度だが シリーズにより異なる (Hv300~Hv1200程度) |
| 膜精度 | ミクロン単位の制御は難しい | 非常に優れている ミクロン単位の精密制御が可能 |
| 電気特性 | 絶縁性 ※帯電防止にはセーフロン®を推奨 | グレードにより異なる |
| 材料 バリエーション | PTFE、FEP、PFA等 フッ素樹脂系 | フッ素系、シロキサン系 複合材料により多様な対応が可能 |
| PFAS対応 | フッ素樹脂を使用 | PFASフリー仕様あり (グレードによる) |
| 採用基準の目安 | ・優れた耐薬品性が必要 ・絶縁性が必要 ・耐寒性が必要 ・耐候性(屋外使用)が必要 ・食品用途など実績重視 | ・高硬度が必要 ・ミクロン単位の膜精度が必要 ・摩耗環境が厳しい ・材料バリエーションで最適化したい ・PFASフリーが必要 |
選定の基本的な考え方
※非粘着性、すべり性、耐熱性はどちらも優れていますが、相手材や使用条件によって最適な選択は異なります。
- 耐薬品性・絶縁性が必要: テフロン™コーティング
- 高硬度・膜厚精度・材料バリエーション・耐摩耗性が必要: バイコート®
撥水性・撥油性の比較
各グレードの撥水性・撥油性を接触角で比較しました。数値が高いほど撥水・撥油性に優れます。
| 加工 | PFAコーティング | バイコート® | ||
|---|---|---|---|---|
| Q2CE-034M | NYK-01 | NYF-11S | NYK-52 | |
| 水 | 110-115 | 100-110 | 105-115 | 105-110 |
| nHD | 45-50 | 40-45 | 45-50 | 10-20 |
※nHD:n-ヘキサデカン(油性物質の指標)
テフロン™コーティングとは?〜世界での信頼と実績〜
「テフロン™(Teflon™)」は、米国ケマーズ社(The Chemours Company)の商標です。
吉田SKTは、1968年にケマーズ社(旧デュポン社)と「ライセンス インダストリアル アプリケーター(LIA)」契約を締結し、50年以上にわたり正規のライセンスに基づくテフロン™コーティングを施工しています。
主な特徴
- 高い知名度と豊富な実績
家電から産業機械まで、あらゆる分野で使用されており、様々な使用実績のあるコーティングです。 - 優れた非粘着性とすべり性
非粘着性、すべり性(低摩擦係数)に優れ、多くの物質がくっつきにくい特性を持ちます。
※ただし、ガムテープのような強粘着物は剥がれにくい場合があります。 - 優れた耐薬品性
酸・アルカリ等の化学薬品に強く、腐食しにくい特性を持ちます。 - 絶縁性
優れた電気絶縁性を持ちます。
※帯電防止が必要な場合は、セーフロン®をご検討ください。 - 耐熱性・耐寒性・耐候性
高温から低温まで幅広い温度範囲で使用可能。
屋外使用でも劣化しにくい耐候性を持ちます。 - 食品適合グレードが充実
食品衛生法に適合したグレードが充実しており、食品製造ライン・焼き型などに広く採用されています。 - 豊富な材料バリエーション
PTFE、FEP、PFAなど、用途に応じた材料選定が可能です。
留意点
フッ素樹脂は本来、柔軟性がある素材であるため、以下のような環境では課題が生じる場合があります:
- 金属同士が擦れるような高荷重の摺動部では塗膜が摩耗しやすい
- 硬い粉体・粒体が衝突・流動する配管・ホッパーでは塗膜が摩耗しやすい
- 繰り返しの摩擦が発生する部位では塗膜が摩耗しやすい
- ガムテープのような強粘着物は剥がれにくい場合がある
このような環境では、より高い耐摩耗性を持つコーティングや、シロキサン系材料を使用したバイコート®の検討をお勧めします。
推奨用途
- 食品の焼き型、成形金型の離型(くっつき防止)
- 薬品タンクの内面コーティング(耐食性重視)
- 一般的な搬送シュートのすべり性向上
- 塗料・接着剤のこびりつき防止治具
- めっき治具の絶縁・保護
- 高温・低温環境での使用
- 屋外での使用(耐候性が必要な場合)
帯電防止が必要な場合
テフロン™コーティングは絶縁性を持つため、帯電防止効果はありません。
静電気対策が必要な場合は、セーフロン®(帯電防止フッ素樹脂コーティング)をご検討ください。
テフロン™樹脂選定に関する注意事項
テフロン™コーティングは、選択する樹脂(PTFE、FEP、PFA等)により特長が異なります。
使用条件に最適な樹脂の選定には、専門的な知識が必要となりますので、当社技術営業員にご相談ください。
バイコート®とは?〜有機無機複合による高機能コーティング〜
「バイコート®」(BiCoat = Bicomponent Coating:二種類の表面処理)は、吉田SKTが開発したオリジナルブランドの有機無機複合コーティングシステムです。
無機材料(セラミックス、金属被膜など)と有機材料(フッ素樹脂、シロキサン系樹脂など)を複合化することで、テフロン™コーティングにはない高硬度と膜厚精度を実現しています。また、バイコート®には、PFASを使用しない仕様もございます。環境規制への対応や、PFASの使用が難しい業界でのご使用にも対応可能です。
主な特徴
- 優れた非粘着性とすべり性
テフロン™コーティングと同様に、優れた非粘着性とすべり性を持ちます。
グレードにより特性選択が可能です。 - 優れた耐熱性
テフロン™コーティングと同様に、優れた耐熱性を持ちます。
シリーズにより異なる(~260℃)。 - 高硬度塗膜
無機材料との複合化により、テフロン™コーティングよりも硬質な塗膜を形成。
傷付きや擦り傷に強い特性を持ちます。 - 優れた膜精度
ミクロン単位(±5μm程度)の寸法精度での加工が可能。
射出成形金型など、厳密な寸法管理が求められる用途に最適です。
これはテフロン™コーティングにはない被膜の精密性です。 - 優れた耐摩耗性
セラミックスや金属被膜との複合化により、テフロン™コーティングと比較して耐摩耗性が大幅に向上。
頻繁な再コーティングが難しい箇所に適しています。 - 材料バリエーションが豊富
フッ素系:非粘着性・すべり性重視
シロキサン系:ガムテープのような強粘着物にも対応、離型性に優れる
用途や使用条件に応じて、最適な材料の組み合わせを選定できます。 - PFASフリー仕様あり
環境規制に対応したPFASを使用しない仕様もラインアップしています。
品番選定に関する注意事項
バイコート®の特徴はシリーズにより異なる場合があります。
品番の選定には、使用条件に応じた専門的な判断が必要となりますので、当社技術営業員にご相談ください。
非粘着性について
バイコート®には、用途に応じて様々なグレードがあります:
- フッ素系グレード:テフロン™コーティングに近い非粘着性を持ちます
- シロキサン系グレード:ガムテープのような強粘着物もスムーズに剥がれる優れた離型性を持ちます
※フッ素樹脂コーティングはガムテープのような強粘着物が剥がれにくい場合がありますが、バイコート®のシロキサン系材料を使用することで、この課題を解決できます。
考慮点
- 用途によっては、テフロン™コーティングよりコストが高くなる場合があります。
- グレードにより特性が異なるため、使用条件に応じた適切な選定が重要です。
ただし、用途に応じて材料や仕様を最適化できますので、「離型性も必要だが、耐摩耗性や膜精度を優先したい」といったご要望にも柔軟に対応可能です。
推奨用途
- 搬送ガイドやシュートなど、摺動頻度が高い場所
- 射出成形金型(ペットボトルブロー成形など、寸法精度が厳しい用途)
- ガムテープ等の強粘着物の離型が必要な箇所(シロキサン系)
- 既存のテフロン™コーティングで摩耗が早く、頻繁な再コーティングでお困りの箇所
- PFAS規制への対応が必要な用途(PFASフリー仕様)
どちらを選べばいい? インタラクティブ診断フローチャート
質問に沿って、最適なコーティングをご検討ください。
最適なコーティングは「使用条件」で決まる
吉田SKTは、テフロン™コーティングの正規ライセンス加工メーカー(LIA)であると同時に、バイコート®(有機無機複合コーティング)をはじめとする機能性コーティングの開発メーカーでもあります。
そのため、
- 「優れた耐薬品性、絶縁性が必要なのでテフロン™コーティングで検討したい」
- 「現在のテフロン™コーティングでは耐摩耗性や膜精度が不足しているので、バイコート®に切り替えたい」
- 「ガムテープのような強粘着物の離型が必要なので、シロキサン系のバイコート®を検討したい」
- 「PFAS規制に対応したい」
といった双方のご要望に対して、豊富なラインナップから最適な仕様を一括でご提案することが可能です。
※非粘着性、すべり性、耐熱性はテフロン™コーティング・バイコート®どちらも優れていますが、相手材や使用条件によって最適な選択は異なります。
こんなお悩みがあれば、ぜひご相談ください
- 現在使用中のコーティングの寿命が短く、再コーティング頻度が高い
- ガムテープのような強粘着物がうまく剥がれない
- 射出成形金型など、ミクロン単位の膜精度が必要
- 「テフロン™コーティング指定」の図面だが、より長寿命な代替仕様を検討したい
- 寸法精度を保ちながら離型性を向上させたい
- PFAS規制案への対応が必要
- テフロン™コーティングに帯電防止効果が必要(セーフロン®のご検討)
まずは、現在の課題やご使用環境についてお気軽にお聞かせください。
吉田SKTについて
- 1963年: フッ素樹脂加工開始
- 1968年: 米国デュポン社(現ケマーズ社)とLIA契約締結
- 60年以上の実績と2,000社を超えるお客様への納入実績
- 名古屋・東京・山口の3拠点体制で全国対応
- 精密部品から深さ6mのタンクまで、多様なサイズに対応可能
- テフロン™コーティングからバイコート®(有機無機複合コーティング)まで幅広いラインアップ
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