フッ素樹脂の色とフッ素樹脂コーティングの関係性とは ~フッ素樹脂コーティング選定のポイントも解説~

フッ素樹脂がどんな色なのかは、身近なフライパンのフッ素樹脂(テフロン)コーティングの色を思い浮かべて、誤解されることが少なくありません。じつは素材としての「フッ素樹脂」と、機能性コーティングとしての「フッ素樹脂コーティング」では色の捉え方が異なります。
この記事では、PTFEとPFAという主要なフッ素樹脂材料それぞれの色とその特徴、そしてフッ素樹脂コーティングの機能と色との関係を、わかりやすく解説します。製造業に携わる皆様にとっては、機能性コーティングの選定にあたって知っておくべき情報となっていますので、ぜひご参考ください。
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フッ素樹脂本来の色は?
工業用途でよく使用されるフッ素樹脂といえば「PTFE」と「PFA」です。この2つについて、色とその特徴をまとめると次のようになります。
PTFEの特徴
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性をもつ代表的なフッ素樹脂で、家庭用フライパンのコーティングでも多く採用されています。フライパンにコーティングとして施された時には黒っぽいものが多く見受けられますが、PTFEの本来の色は「白色」です。
PFAの特徴
もういっぽうのパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)は、「半透明」な樹脂です。この違いは、PFAの分子の結晶化度がPTFEよりも小さいことから生じています。PFAは、PTFEと同じ連続使用温度(260℃)でありながら、溶融粘度が低いという特徴があります。


フッ素樹脂コーティングの色とその要因

先に述べたようにフッ素樹脂そのものは白色や半透明ですが、フッ素樹脂コーティングとなると黒色、茶色、緑色、灰色などと様相が異なり、多少のバリエーションも見られます。これは、コーティング被膜に配合されている充填剤の色調が見えていたり、美観をよくするために着色が施されていたりするためです。フッ素樹脂コーティングの色は、主に次のような要因で決まります。
- 充填剤の色調
コーティング被膜に配合された充填剤の色が見えている - 機能性付与
特定の機能を向上させるために配合された充填剤による - 着色処理
美観をよくするために意図的に着色が施されている
フッ素樹脂コーティングの選定は機能性が第一
色は副次的な要素
フッ素樹脂コーティングには、少ないながらも色のバリエーションがあります。しかし製造現場で、フッ素樹脂コーティングが色をもとに選定されることはほとんどありません。フッ素樹脂コーティングの色の違いは、フッ素樹脂の種類や特徴とはあまり関係がなく、例えば緑色はPFA、黒色はPTFE、というような対応関係もないからです。
フッ素樹脂コーティング選定時に考慮すべき要素
フッ素樹脂コーティングは機能膜として、非粘着性や耐食性、滑り性などの機能を基材に付与します。まずは用途や使用環境など、以下のような要素を検討することが重要です。
- 使用用途
- 使用温度範囲
- 接触する化学薬品の種類
- 機械的負荷
- 電気的要求
- 食品安全性
これらの要素から、適切な樹脂の種類(PTFE、PFA、FEPなど)や膜厚、加工方法を選定していきます。色の選択は、これらの機能的要求を満たしたうえで、副次的に考慮される要素となります。
「色による識別管理」という用途での活用
お客様のなかには、部品のロット管理をしやすくするために、同じPFAコーティングでも黒色、灰色とわざと色調を変えている場合があります。色のバリエーションは少ないですが、機能的に同等であれば、色を識別手段として利用することも選択肢のひとつです。

また実際の製造現場では、機能をもたらすための選定と合わせて、基材との密着性や耐久性も高めるコーティング技術が求められ、適切な下地処理から焼成まで、一貫した技術力が品質を左右します。
よくあるご質問
Q. なぜフッ素樹脂コーティングは地味な色が多いのでしょうか
着色できるにもかかわらず、フッ素樹脂コーティングにピンクや赤などの鮮やかな色が見られず、地味な色が多い理由は、400℃の焼成温度に耐えられる顔料や充填剤が限られているためです。一般的な有機顔料は300℃を超える温度で分解や変色を起こすため、無機顔料や特殊な耐熱顔料のみが使用できます。
また、フッ素樹脂コーティングは機能膜としての役割が重要であり、意匠性よりも実用性が優先されることも、地味な色調が多い理由のひとつです。
Q. 色による性能の違いはあるのでしょうか?
フッ素樹脂コーティングにおいて、色の違いが基本的な性能に与える影響は限定的です。PTFE、PFA、FEPなど樹脂の種類による性能差はあるものの、同一樹脂での色違いによる耐熱性、耐薬品性、非粘着性などの性能に大きな差はありません。
ただし、使われる充填剤や顔料の種類によって、一部の特性に影響を与える場合があります。例えば無機系の充填剤を含む色調では、機械的強度や耐摩耗性が向上する場合があります。
しかし、色選定の主要な判断基準は、あくまでも基本的な樹脂特性と使用環境との適合性です。
まとめ
フッ素樹脂コーティングの色は顔料や充填剤の種類によって決まり、美観のための着色や機能性を与える充填剤によって異なる色調が生まれます。しかし最も重要なのは、フッ素樹脂コーティングの機能性です。
実際の製造現場では、機能性を重視した選定はもちろん、基材との密着性や耐久性も高めるコーティング技術が求められ、一貫した技術力が品質を左右します。求める性能を発揮できる配合のコーティングを選択し、用途に応じた最適な加工選定を行うことが重要です。
私たち吉田SKTは、ケマーズ社認定の正規ライセンスのもと、1963年以来60年以上にわたってフッ素樹脂コーティングの技術開発を続けています。コーティング設計から色選定まで、豊富な実績と専門技術でお客様の課題解決をサポートいたします。