ナイロン6とは?さまざまな場所で使われる樹脂の特徴や用途について解説
ナイロン6は、さまざまな場所で使われる合成繊維の一種です。服やバッグなどの組成表示に「ナイロン」という文字が書かれているのを見たことがあっても、「ナイロン6」と数字がついた表記を見ることは、あまりないのではないでしょうか。
この記事ではナイロン6の化学構造式からメリット、特徴などについて紹介します。
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優れた合成繊維「ナイロン6」とはナイロンの一種
ナイロンは、ポリアミド(PA)系の樹脂で、「ナイロン6」の他に「ナイロン66」「ナイロン11」「ナイロン12」など、さまざまな種類があります。
各ナイロンについている数字は、ナイロンが含む炭素原子の数を表します、ナイロン6の化学式はCO-(CH2)5-NHn で、6つの炭素を持っていることが特徴です。
ナイロン6は、環状構造を持つε-カプロラクタムを材料としており、環状構造を開くようにして重合し、結合することでできています。
ナイロン6は名前の通り6つの炭素原子を有した樹脂で、さまざまな利点を持ちます。
ナイロン6の特徴・メリット
多くの種類が存在するナイロンですが、特に使用量の多いものは、ナイロン6とナイロン66です。この項では、ナイロン6が持つ特徴とメリットを5つ解説します。
日本で開発されている
ナイロン6は1941年4月、日本のメーカーである東洋レーヨンの星野孝平氏らが開発しました。ナイロン6の開発当時、アメリカの化学メーカーであるデュポン社が既にナイロン66を開発していました。そのため、東洋レーヨンはデュポン社の特許を侵害しない独自の技術でナイロン6を作っています。
ナイロン6はε-カプロラクタムで作られる一方、ナイロン66はヘキサメチレンジアミンとアジピン酸で作られており、化学式もナイロン6とナイロン66では異なります。
また、現在でも、日本で作られるナイロンのほとんどはナイロン6です。
丈夫で機械的強度・耐熱性・耐薬品性がある
ナイロン6は強度・耐熱性・耐薬品性において優れています。熱に強く薬品の影響も受けにくいという特性を持つため、ガソリンやオイルを多用する自動車部品の作成に適しています。
また丈夫で消耗しにくく、繊維への加工後は折り曲げる動作にも対応可能な柔軟性も持ち合わせているため、自動車部品だけではなく日用雑貨や電子機器、衣類など幅広い用途があります。
ナイロン66と比較するとナイロン6は若干耐熱性で劣っていますが、実用面で問題があるほどの大きな差ではありません。
染色性に優れている
ナイロン6はナイロン66に勝る染色性を持っており、発色が良く鮮明な色を出しやすいことが特徴です。そのため、衣類に用いられることもあります。重量が軽い点でも、ナイロン6は衣類への活用に適した素材です。
色がついていない白のナイロンは染色性に優れている一方で、直射日光のような紫外線の影響で黄変してしまうという欠点を有します。そのため、日光の当たる場所での使用には注意が必要です。
また、ナイロンは電気を帯びやすいという性質も持っています。衣類として使用する際は、静電気の影響も考慮しておきたいポイントの1つです。
吸水性・吸湿性が高い
ナイロン6は吸水性が高い合成繊維です。ナイロン6が衣類での使用に適している理由は、前述した染色性に加えて吸水性の高さも挙げられます。例えば、吸水性が高いため、汗をかいた際にすぐに吸い取れるというメリットがあります。そのため、ナイロン6は衣類での使用に適した素材です。
吸水性が高いと衝撃には強くなる一方で、引張強さは弱くなります。
また、水を吸うことで膨張するという特性も持っています。一定の形の維持が求められる部品に使用する際は、水による影響を考慮する必要があるでしょう。
吸水性の面では、ナイロン66がナイロン6に比べて若干低いとされています。水の影響がある環境では、ナイロン66の選択が適当です。
ナイロン66の代用品になる
現在ナイロンは十分な供給が滞る可能性のある素材となっています。供給が滞る原因として、寒波や台風などの自然災害が原因で、ナイロンの原料を製造する施設で問題が発生することが挙げられます。例えば、2018年にはナイロン66の原料に使用されるヘキサメチレンジアミンが不足し、ナイロン66を用いている製品が値上がりしました。
このようにナイロン66の供給が滞った際、ナイロン6は代用品として利用されることもあるのです。
ナイロン6はナイロン66に劣らない性能を持つため、ナイロン66の代用品として利用できます。
種類ごとにさまざまな特徴を持つナイロン
ナイロン6は複数あるナイロンのひとつです。
ナイロンにはそれぞれが持つ特徴ごとに、複数の種類が存在します。
ここからは、ナイロン6以外の代表的なナイロンを3つ解説します。
ナイロン6と同程度の性能をもつ「ナイロン66」
ナイロン66は、アメリカのデュポン社によって世界初の合成繊維として開発されました。合成繊維とは化学繊維の一種で、原料は石油や石灰石が使用されています。ナイロン66は現在も大量に生産され、世界中で使用されています。
ナイロン66はナイロン6に比べて水や熱への耐久性が優れており、主な用途は機械の部品です。具体的にはプロペラやギアなど、回転によって摩擦や熱の発生が想定されるものに使用されます。
ナイロン6とナイロン66は近しい性質をもった合成繊維ですが、細かな性能の面では異なります。
ナイロン6とナイロン66の違いについては、以下の通りです。
ナイロン6 | ナイロン66 | |
---|---|---|
耐熱性 | 融点225℃ | 融点265℃ |
機械的強度引張強さ | 62Mpa | 87Mpa |
耐薬品性 | 弱酸に抵抗、強酸に侵される。アルカリ性に抵抗。 | 弱酸に抵抗、強酸に侵される。アルカリ性に抵抗。 |
ナイロン66はナイロン6と比べて高い融点を持っています。ナイロン6の融点も十分に高いものの、ナイロン66と比べた際には40℃もの差があります。そのため、耐熱性ではナイロン66がより優れているといえるでしょう。
引張強さとは、力を加えられる最大の数値です。引張強さに関しても、ナイロン66はナイロン6に比べて大きい数値を持つため、ナイロン66の方が機械的強度に優れているといえます。
ナイロン6とナイロン66はどちらも弱酸に強い抵抗、アルカリ性に抵抗を持っています。ただし、どちらも強酸には弱いことが特徴です。
植物由来で環境に配慮した「ナイロン11」
ナイロン11は、フランスに拠点を置く化学品メーカーのアルケマ社が開発しました。原料にトウゴマという植物の種子から採れるヒマシ油を使用した合成繊維です。
植物由来の合成繊維であるナイロン11は、他のナイロンに比べると環境に与える悪影響が少ないとされています。そのため、持続可能な社会を目指すSDGsの観点でナイロン11は高い評価を得ています。
性能としては柔軟性に優れており、海水の影響を受けにくく、長期間使用しても性能の劣化がほとんど見られません。
そのため、水槽や自動車の部品などに使用されています。また、ポンプ部品などでは、金属製の部品の腐食防止を目的としたナイロンコーティングなどもあります。ご質問やご検討の方は下記よりお問い合わせください。用途や環境に応じたご提案をさせていただきます。
寒さと衝撃に強い「ナイロン12」
ナイロン12はアミノドデカン酸やラウロラクタムから作られる合成繊維です。低温や衝撃に対して十分な耐性を持つため、自動車産業やスポーツシューズなどの材料として主に使用されています。また低温に耐性を持つため、寒冷地のような過酷な環境で使用される製品の利用にも適しています。
前述のナイロン11と比較すると、ナイロン12は製造にかかるコストが低く丈夫な素材ですが、柔軟性や耐熱性では劣ることが特徴です。一方でナイロン12を用いた製品は耐久性に優れており、国土交通省がその高い品質を認め、新技術情報提供システム(NETIS)に登録されているものもあるほどです。
ナイロン6に関するよくある質問
ここまでナイロン6について解説してきましたが、その他ナイロン6に関するよくある質問を2つ取り上げました。
他にもナイロン6の構造上の特徴はありますか?
これまで取り上げた以外にも、ナイロン6の特徴は4つ挙げられます。
- 耐摩耗性
- 耐寒冷性
- 耐衝撃性
- 耐油性
摩耗とは、摩擦・研摩によって、表面が消耗することです。耐摩耗性が高いため、摩擦による摩耗が起きにくいのが特長です。
また、耐寒冷性に優れているため、低温でも物質が劣化しないという特徴もあります。
さらに耐衝撃性も高いことから、金属部品の代用品としての使用にも適しているでしょう。
そして、ナイロン6は油類を若干吸収するものの、劣化したり、恒久的な化学変化を起こしたりしないことも特徴です。
ナイロン6の用途には何がありますか?
前述したように、ナイロン6は自動車部品・日用雑貨・電子機器・衣類に、多く使用されています。
その他の用途としては以下の通りです。
- 燃料チューブ・コネクター等の自動車用品
- 電気電子部品
- スポーツシューズ
- 電線被覆材料
- 結束バンド
- 登山ロープ
まとめ
ナイロン6について、化学構造やメリット、用途について解説しました。
ナイロンにはそれぞれの特徴を持つ複数の種類が存在し、この記事ではナイロン6・ナイロン66・ナイロン11・ナイロン12を取り上げました。各ナイロンについている数字はナイロンが含む原子の数を表しており、ナイロン6は6つの炭素原子を有しています。
ナイロン6は日本で開発され、丈夫で耐熱性・耐薬品性・染色性・吸水性・吸湿性に優れた合成繊維です。そのため、薬品や油と接する自動車部品や、汗に触れるため吸水性を求められる衣服をはじめとして、日用雑貨や電子機器など幅広い用途があります。
また、供給が不足した際は、ナイロン66の代わりとしても使用されます。
種類ごとの特徴を把握して、シーンに最適なナイロンを使い分けましょう。
吉田SKTでは、PEEK素材の活用としてナイロンコーティングをご提供しております。耐水性や耐摩耗性が必要な場合や金属基材の腐食防止コーティングをご検討の際はぜひ吉田SKTまでご相談ください。