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PET(ポリエチレンテレフタレート) 樹脂の特徴とは?原料、耐熱温度・性質や用途までを解説

PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂は高い汎用性を持つ素材のひとつです。

ペットボトルに限らず、さまざまな用途に使用されています。

この記事ではPET樹脂の特徴を詳細に説明するとともに原料・耐熱温度・安全性、用途やメリット、デメリットまでを解説します。

PET樹脂の特徴とは

 PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂は、ペットボトルに使われている、非常に身近な素材です。

PETは、「(C10H8O4n」で構成される、エステル結合でつながった高分子化合物です。

PETの構造式
PETの構造式

テレフタル酸のカルボキシル基と、エチレングリコールのヒドロキシ基がエステル結合しています。

PETは熱可塑性プラスチックに分類され、加熱することで、成形することができるプラスチックです。

また、プラスチックは主に分子構造や耐熱性などで、構造汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されます。PETはポリエステルとして、構造の似ているPBTとひとくくりでエンジニアリングプラスチックに分類されます。

PETを含む5大エンプラと呼ばれるほかの樹脂には、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)ポリアミド(PA)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PEE)があります。

PET樹脂の原料

PET樹脂の原料は石油です。

石油由来のテレフタル酸とエチレングリコールを元に、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートを作り、270℃~280℃の高温・高真空下で重縮合反応を起こし、PETが得られます。

また、現代の科学技術においては石油ではなく植物を原料としたバイオPET樹脂の生産も進められています。

PET樹脂の耐熱温度

PET樹脂は耐熱性に優れており、繊維強化した場合の熱変形温度は240℃、連続耐熱温度が150℃です。また、低温環境では-60℃まで問題なく利用できます。

ただし、PET樹脂加工物の耐熱温度は、何に加工するか次第で大きく異なります。代表的な用途のペットボトルに加工した場合には、耐熱性は高くありません。

耐熱のペットボトルに加工した場合でも、耐熱温度は約80℃程度です。

そのため、一般的にペットボトルは50℃程度までを限度として利用されています。

PET樹脂の安全性

PET樹脂はリサイクルが推奨されている素材です。

ただし、万一焼却してしまった場合でも焼却炉に負担をかけず、有害な化学物質を出さずに焼却できます。

これは、PET樹脂の燃焼カロリーが、同じプラスチック類であるポリオレフィンの約半分なためです。

また、PET樹脂は酸素、水素、炭素で構成されています。

塩素が含まれていないため、焼却してもダイオキシンが発生しないのです。

PET樹脂の性質

プラスチックには様々な種類があり、それぞれ異なった性質を持っています。

プラスチック製品を作る際には、それぞれの性質を吟味して素材が選ばれているのです。

ここでは、PET樹脂の長所と短所について解説します。

PET樹脂の長所

PET樹脂には以下の長所があります。

1.耐熱・耐寒性がある

加工方法に左右されますが、耐熱温度200℃、耐寒温度-60℃程度です。

2.加工しやすい

薄いフィルムから厚みのある板状、ペットボトルのような曲線を持つ円柱形と、柔軟に加工できます。

3.耐水性がある

PET樹脂は水を通しません。

4.薬品に強い

無延伸フィルムとして用いる際は、良好な耐薬品性を示します。

5.透明性がある

飲料容器に用いても、飲料の色味を損ないません。

PET樹脂の短所

PET樹脂には以下の短所があります。

1.強度が弱い

エンジニアリングプラスチックとしては強度が弱く、工業用途ではガラス繊維での補強が必要です。

2.高温下で加水分解を起こす

高温の水中下のような状況で用いるには困難な素材です。

3.ペットボトルに加工すると耐熱性が低い

PETボトルの耐熱性は50℃程度、耐熱ボトルでも80℃程度です。

4.有機溶剤や無機酸に弱い

無機酸に弱く、有機溶剤耐性はアルコール度数20度が目安です。

5.耐候性が低い

屋外で使用した場合、劣化する可能性があります。

PET樹脂の製品を利用するメリット

PET樹脂は用途に優れた素材です。

前述したように多くの優れた特性を持つため、それを活かす形に加工および利用されています。

特に、他のプラスチック類とは異なる特徴を持つことがPET樹脂の大きな長所です。

ここでは、PET樹脂製品特有のメリットを3つ紹介します。

食品や薬品に利用できる

食品包装

PET樹脂は食品の包装に適しています。これは、軽量で透明性を持つ素材でありながら、-60℃程度の耐寒性を持つためです。

食品容器としての用途には、ペットボトルの他に卵のパックや調味料の容器などがあります。

また、PET樹脂は一部を除き耐薬性があるため、薬品類の包装や医療機器にも使用可能です。

医療機器の例として、注射器が挙げられます。

リサイクルできる

リサイクル

PET樹脂はリサイクルが可能なプラスチックです。

社会的にリサイクルが浸透していることも、PET樹脂を用いるメリットのひとつといえます。

たとえば、ペットボトルや卵のパックは多くのスーパーマーケットで回収されています。

また、ゴミの分別においても、PET樹脂は細かく指定されていることがほとんどです。

近年では、リサイクルされたPET樹脂から生成された繊維をメインに使用するアパレルブランドも登場しています。

このように、リサイクル活動が活発な点は、PET樹脂特有のメリットといえるでしょう。

焼却しても有毒ガスが出ない

有毒ガスが出ない

PET樹脂は焼却しても有害なガスを発生させません。

プラスチックには分子中の塩素が原因となり、焼却の際ダイオキシンが発生するものがあります。PET樹脂は酸素、水素、炭素で構成されており、塩素を含まないプラスチックです。そのため、PET樹脂を焼却してもダイオキシンの発生原因になりません。

リサイクルが困難で廃棄の際に焼却が必要になる用途にもPET樹脂は適しています。

主な例としては、工業製品や医療機器が挙げられます。

PET樹脂の製品を利用するデメリット 

PET樹脂は優れたメリットを持つ一方、同時にデメリットも存在しています。

用途次第ではPET樹脂以外のプラスチック製品を利用する方が適切なこともあるでしょう。

ここでは、PET樹脂製品のデメリットを2つ紹介します。

 PET樹脂単体では傷や衝撃に弱い

衝撃に弱い

PET樹脂は単体では傷や衝撃に弱い素材です。

そのため、傷や衝撃に強いPET樹脂を使用したい場合は、ガラス繊維と組み合わせる加工を行いましょう。

形状が変わりやすい

PET樹脂は形状変化に優れた素材で、特にPET樹脂の代表的な用途のペットボトルはデザインが非常に豊富です。

複雑な曲面に加工でき、ペットボトル程度の厚みなら、人間の握力程度でも形状を簡単に変えられます。

一方、用途次第では、この形状変化の容易さが問題となる場合があります。

PET樹脂はやわらかくたわみやすいため、形状維持が必要な用途に対しては第一選択候補になりにくいでしょう。

PET樹脂の加工例

PET樹脂は幅広い製品に加工できる素材です。

多くの場合、容器として加工されるイメージがありますが、特性に由来して加工できる幅が広く、PET樹脂の用途は容器に限りません。

ここでは、PET樹脂の加工例のうち、代表的なものを3つ紹介します。

繊維・衣類

衣類・繊維

PETは衣類にも多く使用されています。PETはポリエステルの一種とされており、衣類のタグに記載されている原材料のポリエステルの多くは、実はPET樹脂です。

PETは他の糸と組み合わせやすいという特徴を持つほか、摩擦に強かったり、耐久性が高かったりするため、衣類の素材として重宝されています。

また、速乾性の高さから、スポーツウェアにも頻繁に使用されます。

ペットボトル

PET樹脂を用いた製品として代表的なものがペットボトルです。

ペットボトルは、PET樹脂を一度溶かして型に流し込み、空気圧をかけて膨らませることによって作られます。

ペットボトルにも複数種類があり、通常の飲料を保管するためのものから、耐熱のペットボトル、炭酸飲料用として作られた内部からの圧力に強いペットボトルもあります。

このように、PET樹脂は、さまざまな用途に対して柔軟に対応ができます。

フィルム

PET樹脂は加工が容易な素材で、さまざまな形状の製品の製造が可能です。その性質を活かせば、フィルムのような形にも加工ができます。

PET樹脂は薄膜への加工のほか、耐水性や耐薬性、透明性という特徴もある素材です。

そのため、食品の包装フィルムや医療関係のフィルム、ラミネートのフィルムなどにも利用されています。

まとめ

PET樹脂は身近な食品包装から医療機器、工業製品など幅広い用途に活用される素材です。

加工の汎用性が高く、加工した後も軽量で、耐熱性・耐寒性・透明性・耐薬品性に優れています。そのため、非常に扱いやすく、さまざまな場面で重宝されています。

吉田SKTは表面処理、テフロンフッ素樹脂コーティングの専門メーカーです。樹脂の成形工程で問題となる材料のくっつき、ネバ付きを改善する表面処理に実績があります。PET樹脂の成形トラブルでお困りの際は、吉田SKTまでご相談ください。