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ポリプロピレン(PP)樹脂とは?化学的性質や、素材の特長、具体的な用途まで解説

身近な容器やおもちゃ、繊維に加えて3Dプリンター用のフィラメントや自動車部品まで幅広い分野で利用されている合成樹脂がポリプロピレン(PP)です。

普段何気なく接している材料ですが、どのような性質や特性をもつかご存知でしょうか。

この記事では、ポリプロピレン(PP)がどのような性質を持つかについて解説します。

ポリプロピレン(PP)とは

ポリプロピレンとは、PPとも呼ばれるプラスチックの一種です。ポリプロピレンは炭素(C)と水素(H)で構成される、有機物の重合体です。重合とは、同じ単量体同士(2種類以上の共重合もある)が化学的結合で鎖状に連なる現象を指します。「ポリ」は「たくさん」「複数」という意味のため、ポリプロピレンとは、たくさんの「プロピレン」が連なったものという意味です。

プロピレンは1つの二重結合をもつアルケンです。分子式はC3H6、構造式はCH2=CH-CH3の形を取っており、石油が熱分解される際に生成されます。1気圧、常温では気体の物質で、合成樹脂のほかに、合成線維や洗剤・溶剤の原料として利用されます。

利用の多いプラスチック

プラスチックは「単量体(モノマー)」という小さい分子が共有結合によってつながった高分子で、「ポリマー」とも呼ばれます。

ポリプロピレンは熱可塑性の線状高分子の構造であり、熱をかけると形を大きく変えられることが特徴です。

そのため好きな形に形成しやすく、プラスチック分野のシェアでは、ポリエチレンの次に利用されています。

また、ポリエチレンは軟らかく紫外線に強い一方で、ポリプロピレンは硬く、紫外線にやや弱いことが特徴です。屋外で使用するものには塗装が施される傾向にあります。

化学的分子構造

ポリプロピレンの分子構造式
ポリプロピレン(PP)の分子構造式

ポリプロピレンは、ポリエチレンの水素原子の一つをメチル基(CH₃)で置換した構造の結晶性プラスチックです。

規則性からの分類

ポリプロピレンはメチル基(-CH3)の立体規則配列によって、アイソタクチック(iPP)、シンジオタクチック(sPP)、アタクチック(aPP)の3種類に分かれます。

①アイソタクチック(iPP)

メチル基(CH₃-)が単一の方向に、規則正しく並んでいる状態

②シンジオタクチック(sPP)

メチル基(CH₃-)が交互に、規則正しく並んでいる状態

③アタクチック(aPP)

メチル基(CH₃-)がランダムに並んでいる状態

一般的なポリプロピレンは、融点が高く、高結晶性で、強度や耐薬品性に優れるiPPが利用されています。

ポリプロピレンの特徴とは

ポリプロピレンはその構造により、強度や弾性率も高く、耐衝撃性に優れている安定した物質です。

現在、ポリプロピレンが持つ特徴を利用して、さまざまな製品が生産されています。

この章では、ポリプロピレンの特徴について解説します。

熱可塑性樹脂のため成形がしやすい

ポリプロピレンは、一定の熱で相転移があり、溶かして冷やすことで簡単に成形が可能です。その加工の容易さから合成樹脂としてのシェアはポリエチレンに続く2番目で、多くの場所で活用されています。

成形方法は作成したい形状・用途によって異なります。また、成形方法は後述の3種類です。

射出成形法 可塑化して金属型に抽出して成形した後冷却する
金型さえあれば形は自由自在に変えられる
押出成形法 可塑化し、大気中に連続的に押し出して冷却
ドーナツ型、棒状のような均質な形での成形に最適
ブロー成形法 可塑化しブロー型内でエアーを吹き込みボトルに成形

他にも熱可塑性樹脂の特徴として、熱溶着によってポリプロピレン同士を張り合わせることができたり、超音波カッターで素早くカットすることも可能です。

参考記事:樹脂成形とは?基本事項から射出成形などの成形方法までご紹介

参考事例:【事例】PPシート連続切断刃のくっつき防止で、メンテナンス間隔が20倍に

参考記事:【事例】PP容器の溶着工程でのPTFEコーティングの熱によるはがれを解決

ポリプロピレンは軽量

ポリプロピレンは比重が約0.9で、水に浮く軽い物質です。

そのため、軽量の製品を製作しやすいというメリットを持ちます。

耐摩耗性があり、傷に強い

人工芝

ポリプロピレンは、結晶化度が40~75%と高いため、衝撃や摩耗に強いという特徴を持ちます。そのため、ブルーシートや、人工芝など耐摩耗性を必要とする目的でも多く使用されます。

半透明性のあるものができる

PP容器

ポリプロピレンは結晶性プラスチックですが、光を透過します。そのため、出来上がった成形品は半透明で内容物を確認できるため、食品保存用の容器などにも利用されます。

熱に強い製品ができる

ポリプロピレンの融点が約160℃です。汎用プラスチックの中では比較的高い耐熱温度で、約120℃まで使用できます。そのため、電子レンジで加熱しても問題なく使用できます。

引っ張り、弾力性に強い

前述の通り、ipp構造は、規則的にメチル基が並んでいるため、結晶化しやすく、結晶化度が高くなります。そのため弾性や塑性に対する強度があり、衝撃に強い物質であるといえます。

紫外線に弱い

ポリプロピレン(PP)は耐候性の低いプラスチックです。屋外で使用すると紫外線によって劣化して、変色や効果、変形などのトラブルが発生します。

ポリプロピレン自体に対するコーティングの塗装、接着を補うには

ポリプロピレンは化学反応を起こしにくい物質であるため、塗料を直接コーティングするにはコツが必要です。

また、紫外線で劣化しやすい性質を持つため、屋外で使用する製品は塗装によるコーティングは必ず行いましょう。

ポリプロピレンにコーティングするためには

ポリプロピレンは、素材としての塗料や接着剤との密着性が非常に低く、コーティングや接着が非常に難しい素材です。難溶性の性質を持つため、他の素材と結びつきにくく、塗料や接着剤との間での化学反応が起こりにくいことが原因です。

そのため、接着や色付けにはさまざまな工夫が必要とされます。

接着剤選びが難しい

ポリプロピレンの接着には、専用の接着剤が必要です。他の多くの材質よりも接着しにくいため、別途プライマーで処理を行い、ポリプロピレン専用と記されたものを購入するとよいでしょう。

塗装が難しい

前述のように、ポリプロピレンは接着が難しく塗装の際にはコツが必要です。

表面を脱脂して、やすりなどで荒らすことで、塗装が入り込みやすい下地を作ります。その後専用のプライマーを塗布し、しばらく待てば準備は完了です。

これらの工程を踏まずに、そのまま塗装を使用とした場合、密着せずに塗膜が剥がれてしまうこともあるので、塗装が必要な場合は必ず行いましょう。

ポリプロピレンの用途

ポリプロピレンはどのような場所で使用されているのでしょうか。

この章では、ポリプロピレンやそれに関わるものの主な使用例と、具体的な使用方法について、解説します。

特徴ごとの製品種類一覧

ポリプロピレンは、日常生活で関わるさまざまなものに使用されています。

一例としては以下の通りです。

  • 容器、レンジケース、バケツなどの安価なプラスチック製品
  • 自動車パーツ、家電パーツ(主にフレームや筐体部分)

このように、ポリプロピレンは小さなものから大きなものまで、身近な範囲でさまざまな用途で使用されています。

3Dプリンター

フィラメント

熱可塑性をもち、頑丈で安価な物質のため、3Dプリンターの印刷フィラメントに用いられます。作りたいものの用途やデザインによって、フィラメントの種類や色を変更できます。

フィラメントは他にも、エラストマーや金属配合のものなどから選択可能です。

完成品の用途次第で決めるとよいでしょう。

繊維材料

繊維材料

ポリプロピレンは、他の化学繊維の材料よりも、化学反応や引っ張りに強いため、ロープのような丈夫さが要求されるものの素材として使われることがあります。

軽くて頑丈である一方、単体では紫外線にはややダメージを受けやすいため、着色でカバーして使用されることがあります。

自動車部品

自動車部品

ポリプロピレンは汎用プラスチックのなかでは融点が高く、比重も0.9ほどなので、自動車の軽量化を支える素材として利用されています。エンジンカバーやドアパネル、フロントグリルや内張りの素材など、国内のPP生産量のうち、23%ほどが自動車用途に使われています。

梱包用(PP)バンド

ポリプロピレンは軽量で強度の高く、安価に大量に生産できることから梱包用のPPバンドとしても広く利用されています。耐熱性も高く、水濡れにも強いため保管場所や使用環境でバンドが弱まる心配がありません。しかし、紫外線に弱いため、長く直射日光に当たるところに置いておく用途では注意が必要です。

ポリプロピレン(PE)とポリエチレン(PE)の違い

ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)は原油から生成される合成樹脂です。どちらも大量生産に適していて、加工成形性が良く、軽量で防水性・耐薬品性に優れています。このように似た性質をもつポリエチレンとポリプロピレンですが耐熱性や強度、耐候性などに違いがあります。

ポリプロピレンの耐熱温度は100℃~140℃ですが、ポリエチレンは70℃~110℃と低くなっています。また、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方が、硬度が高く、強度や耐摩耗性に優れます。

一方、比重については、ポリプロピレン約0.9、ポリエチレン約0.95。紫外線の影響は、ポリエチレンよりもポリプロピレンほうが受けやすく、紫外線が当たると変色・変形が見られます。また、オゾンにさらされると劣化してしまう性質があります。

参考記事:ポリエチレン(PE)とは?特徴や種類、ポリプロピレンとの違いを解説

まとめ

ポリプロピレンは、多岐にわたる用途でわたしたちの暮らしや産業を支えているプラスチック素材です。

非常に安定している物質で、化学反応は起きにくく、熱可塑性をもつため160℃以上の高温の状態で成形することができます。

この性質を利用すると、自由自在に形を変形でき、強靭で化学反応が起きにくい材料として、使用可能です。

また、屋外で使用する際は紫外線からの劣化を防ぐために、塗装コーティングをしましょう。

プラスチック資源の使用削減が謳われている今日、素材を無駄にしてしまわないように、大切に扱うことが重要です。