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ポリエチレン(PE)とは?特徴や種類、ポリプロピレンとの違いを解説

ポリエチレン(PE)は、プラスチック素材の1つです。レジ袋をはじめ、洗剤や化粧品の容器、レジャー・スポーツ用品、自動車部品、産業資材など、あらゆる場面で活用されています。

それでは、ポリエチレンにはどのような性質や用途があるのでしょうか。この記事では、ポリエチレンの製造方法、特徴や種類、ポリプロピレンとの違いや製品に使用する場合のメリット・デメリット、加工方法まで詳しくご紹介します。

ポリエチレン(PE)とは

ポリエチレン(PE)は、プラスチック素材の一種で合成樹脂に分類されます。
合成樹脂とは、石油などを原料にして化学的に製造される人工物質のことです。
大量生産が可能であり、加工性・防水性・耐薬品性に優れているため、あらゆる製品に使用されます。身近な場面では、ポリ袋や、お菓子の包装紙、食品の保存容器などが代表格に挙げられるでしょう。

ポリエチレンの原料と製造方法

ポリエチレンの材料

ポリエチレンの「原料」は、原油です。
原油から「ナフサ」を精製し加熱することで、ポリエチレンの元となる「エチレン」を発生させます。

ポリエチレンの製造方法は以下の通りです。

  • 1.原油を蒸留装置で350℃まで加熱し、それぞれの成分が持つ凝縮温度(=沸点)の違いを利用して「ナフサ」と呼ばれる液体を精製します。
  • 2.「ナフサ」に800度を超える熱分解炉で「エチレン」と呼ばれる無色の気体を発生させます。
  • 3.触媒を加えた「エチレン」に、高温・高圧化で化学反応を起こすことで「ポリエチレン」が完成します。

このように、原油を蒸留して熱加工することで、ポリエチレンの元である「エチレン」が生成されます。触媒や加熱温度等、製造方法を変えることでさまざまなポリエチレンを作ることができます。

ポリエチレンの分子構造

ポリエチレンは、炭素原子と水素原子が結合したものが直鎖状につながった分子構造になっていま
す。

ポリエチレン(PE)の構造式
ポリエチレン(PE)の構造図
ポリエチレン(PE)の構造図

ポリエチレンの特徴

ポリエチレンの特徴には、耐薬品性、耐水性など、さまざまなものがあります。

この章では、ポリエチレンの長所・短所やポリプロピレンとの違いや共通点、ポリエチレンの有毒性について解説します。

長所

ポリエチレンの長所には、さまざまなものがあります。

特筆すべきは、その耐薬品性でしょう。
主に常温では、塩酸・次亜塩素酸・亜硫酸・アンモニア・アルコール・クエン酸・酢酸・過酸化ナトリウム・灯油など多くの薬品から影響を受けることがないため、日用品の保管に適しています。
例えば、食器用洗剤や洗濯用洗剤、カビ取り剤などの住居用洗剤、アルコール消毒液など、さまざまな薬品の容器に活用されます。

また、絶縁性が高いため、ケーブルや電線の被覆材の開発など、多方面に広く用いられることも特徴です。
防水性や衛生面も非常に素晴らしく、耐寒性に優れているため、あらゆる食品の包装フィルム・保管容器に選ばれています。

短所

ポリエチレンは「高温に弱いこと」が短所の1つです。
ポリエチレンは約70℃以上、種類によって90℃以上の熱にさらされると、変形や溶化、燃焼、匂いが生じます。

ポリエチレンの耐候性は比較的高いですが、屋外で長期間紫外線にさらされると劣化し、破損してしまいます。洗濯バサミや看板など、屋外で使用するものは定期的なメンテナンスが必要です。

また「接着性がない」ことも、デメリットの1つです。
他の材料との接着や、印刷・塗装がむずかしく、特殊な技術を要します。

ポリエチレンとポリプロピレンとの違い

ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)は原油から生成される合成樹脂です。どちらも大量生産に適していて、加工成形性が良く、軽量で防水性・耐薬品性に優れています。

このように似た性質をもつポリエチレンとポリプロピレンですが耐熱性や強度、耐候性などに違いがあります。
ポリエチレンの耐熱温度が70~110℃であるのに対し、ポリプロピレンは100~140℃と高く、より高温に強いことが特徴です。
またポリプロピレンは硬く、強度・耐薬品性ともにポリエチレンより優れています。
繊維としても利用され速乾性も高いため、紙おむつや肌着、衣類などの素材としても活用されます。

一方、ポリプロピレンはポリエチレンより紫外線からの影響を受けやすい素材です。
紫外線が当たると変色・変形が見られ、オゾンにさらされると劣化してしまう性質があります。

参考記事:ポリプロピレン(PP)樹脂とは?化学的性質や、素材の特長、具体的な用途まで解説

ポリエチレンが使われている製品

ポリエチレン製品は、日用品用途から自動車部品用途まで、容器やボトルをはじめ、さまざまなものがあります。

代表的なものとして、

  • 灯油タンク
  • シャンプーボトル
  • 食品用ラップ
  • 人工芝
  •  釣り糸・魚網
  •  自動車部品などの産業部品

などが挙げられます。

ポリエチレンコーティング

ポリエチレンは、製品の傷つき防止や防錆、耐薬品性を目的としたコーティングにおすすめの素材です。
衛生面においても高い評価を得ているため、製品の洗浄カゴや、食品関係の器具に最適です。
また、耐候性も認められているため、屋外用のフェンス、標識などにも使用されます。ポリエチレンのコーティングには専用の材料や設備が必要です。コーティングをご検討の際は、吉田SKTまでお問い合わせください。

ポリエチレンコーティンングのお問い合わせはこちら

ポリエチレンのメリット・デメリット

ポリエチレンは、日用品・洗剤・食品の包装や、ケーブルの被覆材、産業資材など広い分野において活用されます。
では、ポリエチレンを製品に使用するとどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

この章では、ポリエチレンを製品に使うことのメリットやデメリットを解説します。

 ポリエチレンのメリット

メリットとして、以下のことが挙げられます。

製品の軽量化

ポリエチレンは水より軽いため、製品の軽量化に役立ちます。

医療系の器具や、科学機器への使用

耐薬品性が優れているため、医療器具や薬品を多く扱う現場などでも使用できます。

安価に大量生産が可能

原料・加工費ともに安価なため、コストをかけることなく大量生産ができます。
日用品や消耗品など、消費のはやい製品に向いています。

食品関係の包装への使用

衛生面に優れているため、食品関係の現場においても使用可能です。
油分・水分をはじき、防湿性が高いため、さまざまな食品の包装材に選ばれています。

寒い環境でも使用可能

ポリエチレンは-20℃の厳しい環境の中でも、その性質を保てます。
そのため、冷凍食品の包装にも使用が可能です。

水に強い

ポリエチレンは、非常に優れた防水性を発揮します。
水の影響を受けず、また、比重が低いため、水に浮かせることが可能です。

ポリエチレンのデメリット

デメリットとして、以下のことが挙げられます。

高温に弱い

ポリエチレンは熱に弱く、70℃以上で変形・溶融の恐れがあります。難燃性樹脂ではないため、高温にさられると燃焼する可能性があります。

摩擦に弱く、傷がつきやすい

傷がつきやすい素材のため、使用しているうちに透明度が失われます。

参考記事:難燃性とは?燃焼の仕組みからプラスチックの難燃性についてまで解説

ポリエチレンよりも耐熱性や機械的強度に優れるプラスチックについてはこちらをご確認ください。

参考記事:エンジニアリングプラスチック(エンプラ)とは?分類や用途、成形方法などを解説

ポリエチレン(PE)の種類と特徴・用途

ポリエチレンには主に「低密度ポリエチレン」「高密度ポリエチレン」「超高分子量ポリエチレン」の3つが存在します。

この章では、それぞれの特徴や用途を解説します。

低密度ポリエチレン(LDPE)

低密度ポリエチレン(LDPE)の製品

低密度ポリエチレン(LDPE)の特徴

低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene=LDPE)は、柔らかく、伸縮性があり、水より軽いことが特徴です。

  • 耐熱性は70~90℃程度
  • 耐寒性は-20℃程度
  • 比重は0.93未満
  • 防水・耐薬品性に優れている
  • 柔軟で伸縮性がある
  • 絶縁性が高い
  • 加工しやすい

以上のような性質が挙げられます。

透明性があり埃や傷、水の侵入を防ぐため、生鮮食品の包装に使われることが多いでしょう。
包装用の袋、ラップ、食品用保存容器などが代表的な製品です。
また、梱包用のプチプチとした緩衝材や、水撒き用のホース、電線の被覆材としても活用されます。

高密度ポリエチレン(HDPE)

高密度ポリエチレン(HDPE)の製品

高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene=HDPE)は、低密度ポリエチレンに比べて硬く、伸びにくいことが特徴です。

高密度ポリエチレン(HDPE)の特徴

  • 耐熱性は90℃~110℃程度
  • 比重0.94以上
  • 透明性が低い
  • 低密度ポリエチレンよりも強度が高い
  • 硬く、伸縮性が低い
  • 防水・耐薬品性に優れている
  • 絶縁性が高い

以上のような性質が挙げられます。

低密度ポリエチレンと比べて透明度の低い乳白色です。
衝撃に強く硬度も高いため、レジ袋のほか、灯油タンク・洗面器・バケツなどに使われます。また、容器以外にも、文房具、コンテナ類など、幅広く用いられています。

超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)

超高子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene=UHMW-PE)は、分子量が100万以上のポリエチレンを指します。溶融粘度が高い一方で、耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性に優れる特徴があります。

超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の特徴

  • 耐衝撃性に優れていて、低温環境でも低下しない
  • 耐摩耗性に優れ、潤滑性をもつ
  • 吸水性が無く耐薬品性に優れる
  • フッ素樹脂なみの耐寒性をもつ
  • 無毒である

登山や船舶用のロープをはじめとするレジャー・スポーツ用品、人工股関節、また、産業機械や重機部品など、低・高気密ポリエチレンより厳しい環境下において活用されます。

ポリエチレンの成形方法

ポリエチレンは、用途や製品によって、成形方法が異なります。

射出成形

大量生産に適した方法で、さまざまなプラスチック素材に加工できます。
形状や大きさ、デザインなども自由に作成できる方法です。

射出成形

ブロー成形

ブロー成形も大量生産に適した方法です。
ペットボトルのように、空洞がある製品の製造に用いられます。

ブロー成形

押出成形

長さがある製品や中空製品の製造に適しています。

押出成形

真空成形

大型の成形品や食品トレイや、カバーなど薄肉な製品の製造に用いられます。

真空成形

加工性に優れるポリエチレンですが成形の際、金型や熱板への張り付きや糸引きが問題になる場合があります。その場合は表面処理で解決できます。解決事例は下のリンク先でご紹介しています。成形トラブルでお困りの際はぜひご確認ください。

解決事例:【事例】ポリエチレン(PE)製容器の溶着糸ひき防止を実現する表面処理

ポリエチレンの有毒性

ポリエチレンは燃やしても、ダイオキシンのような有害物質は発生しません。
ポリエチレンは炭素と水素の化合物であり、燃焼して発生する物質は二酸化炭素・水素・熱の3つです。

人間の体内に入った場合は、消化吸収されず、そのまま排出されます。
ただし、大きさや形状によっては体内から排出できず、そのまま張り付いて固まってしまう恐れがあります。一部だけ排出されるケースもあるため、万が一飲み込んでしまった場合は、医療機関への相談・受診がおすすめです。

また、自然環境にとっては、有毒になり得る場合もあります。
ポリエチレンは腐敗や自然分解が起きないため、土にかえることはありません。放置しているとそのまま自然界にとどまるため、適切な処理が必要です。

まとめ

ポリエチレンは、安価で耐薬品性・防水性・自己潤滑性が高く、食品容器や医療現場など、さまざまな分野において、幅広く選ばれています。

一方で、熱が加わる場所での使用の場合に注意が必要です。100℃を超える環境で使用したい場合は、ポリエチレンの(H)をフッ素(F)に置き換えたフッ素樹脂PTFEのご使用もご検討ください。

また、吉田SKTではポリエチレンコーティングやフッ素樹脂コーティングをご提供しております。

ご検討の際はぜひお問い合わせください。