生産性向上とは?メリットや取り組み、方法、成功事例まで解説
こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
企業にとって生産性の向上は重要ですが、どのように向上させればよいかわからず悩んでいる企業は多くあります。吉田SKTでは表面処理技術で生産現場の生産性向上に数多くの実績があります。
この記事では、生産性向上について理解を深めたいと思っているビジネスパーソンに向けて、生産性向上の定義や、生産性向上の目的、メリット、生産性を向上させる方法について解説します。業務効率化との違いなども解説しているので、参考にしてください。
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生産性向上とは
生産性向上とは、投入するインプットに対しするアウトプットの比率を増やすことです。投入した経営資源に対して生み出せた成果を指し、「成果(アウトプット)÷生産要素(インプット)」で示される指標です。インプットが縮小するか、アウトプットが拡大することによって、生産性の向上が実現できます。言い換えると同じ若しくはより小さな労働や原材料で、より多く若しくは、同等の商品やサービスを生み出すことと言えます。
生産性向上により、企業や組織の持つ資源(ヒト・モノ・カネ)を活用し、小さな投資で大きな成果を生み出します。それは、収益性や競争力を高めるだけでなく、社会全体の経済成長や福祉にも貢献しますので、どの企業においても生産性向上は必要な取り組みです。
「生産性向上」と混同されやすい「業務効率化」についても後ほど解説します。
生産性向上が必要な理由
生産性向上は企業で必ず取り組まれる重要な課題です。近年「生産性向上」が注目される理由のなかには日本社会の変化があります。ここでは生産性向上が必要な理由について解説します。
少子高齢化による労働力人口の減少
総務省によると、日本は2008年をピークに人口減少時代を迎えているといわれています。2020年には、総人口の28.7%が65歳以上となりました。今後は若手の採用をはじめ、人材確保はより困難になることが予想されるため、生産性向上を実現し、最小限の従業員で成果を生むことが必要とされています。
国際的な労働競争力の低下
公益財団法人日本生産性本部によると、日本の1人あたりの労働生産性(就業者一人当たり付加価値)は、OECD加盟38か国中30位と低い水準であることがわかります。労働人口が減少する日本が国際社会で生き残るためには、生産性の向上は不可欠であるといえます。
※参考:労働生産性の国際比較 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部
生産性の種類
生産性は、従業員1人または労働時間1時間あたりに対して、生産できる成果の割合のことです。企業における生産性には、物的労働生産性と付加価値労働生産性の2種類があります。
物的労働生産性
物的労働生産性とは、生産物の大きさや個数など、物量を単位とする生産性のことです。物価の上昇や下落、技術の進歩などがあっても、生産能力や生産効率の時系列的な変化を正確に測定できます。
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性は、生産物が売れた際に、企業に入る金額の付加価値(粗利益)を単位とした生産性のことです。付加価値は人件費や利益、配当として資本に分けられます。生産性向上の成果を分ける際に欠かせない指標です。
- 物的労働生産性 = 生産量 ÷ 労働者数(または労働者数×労働時間)
- 付加価値労働生産性 = 付加価値額 ÷ 労働者数(または労働者数×労働時間)
参考記事:生産性とは~生産性の算出方法や種類、重要性についても解説
生産性を向上させる4つのメリット
企業が生産性を向上させると、人手不足への対応や国際競争力の向上や「働き方改革」の実現などさまざまなメリットが得られます。ここでは、4つのメリットについて解説します。
1.人手不足への対応
生産性を向上させることで、人手不足への対応力が上がります。日本の労働人口は減少し続けると予想されているので、将来の人手不足に備えて生産性向上に取り組む必要があります。
2.国際競争力の向上
生産性向上を図れば、短い期間で事業展開ができるようになり、価格競争力が高まるため、国際競争力が向上します。また同業他社と差をつけるためにも、生産性向上は有効だといえるでしょう。
3.ワークライフバランスの改善
生産性が向上すれば、従業員の残業時間を削減できるため、従業員のワークライフバランスの改善も図れます。公私ともに充実することで、従業員のモチベーションアップや働き方改革の促進も期待できます。
4.コスト削減
生産性向上によって業務にかける時間を減らせれば、コスト削減につながります。固定費や残業代などを減らすことで、企業の事業拡大や新商品の開発などにかけるコストを増やせるでしょう。
生産性向上に向けた4つの取り組み
生産性向上に向けた取り組みは、大きく4つに分類されます。ここでは、各取り組みについて解説します。
1.インプット縮小型
インプット縮小型は、投入するインプットを減らすことに重きを置いた生産性向上を図る取り組みのことです。現場の業務を見直したり、コストを削減したりすることで、生産性向上を実現させます。
2.インプット大幅縮小型
インプット大幅縮小型は、インプット縮小型をさらに強力に推し進める取り組みのことです。事業の見直しをしたり、不採算部門の縮小・撤退をしたりするなどの方法で、生産性向上を図ります。
3.アウトプット拡大型
アウトプット拡大型は、投入するインプットを増やしながらアウトプットを増大させることで生産性向上を図る取り組みのことです。ITツールを導入したり、社員教育によってスキルアップを図ったりといった方法が挙げられます。
4.アウトプット大幅拡大型
アウトプット大幅拡大型は、アウトプット拡大型をさらに強力に推し進める取り組みのことです。生産性が高い事業にかける投資を増加したり、新たな人材を採用したりするなどの方法を用いて、生産性向上を実現させます。
生産性を向上させる方法
生産性を向上させる方法は、大きく分けて6つあります。ここでは、生産性を向上させる方法についてひとつずつ解説します。
現状分析と課題を整理する
生産性の向上には、現状を把握することが大切です。全ての業務を可視化したうえで、課題を整理しましょう。管理者や経営者のみで現状分析と課題を整理は、現場の意見を聞き出すことも大切です。
現状分析の方法
現状分析の方法としては生産性に関するデータを収集し、生産性の指標や作業フロー、従業員のスキルやモチベーションなどを調査します。これらのデータを収集することで、問題点や改善の余地がある箇所を明確にすることができます。
課題整理の方法
課題の整理では、最初に現状分析で明らかになった問題点を整理します。問題の影響度や改善の難易度、改善にかかるコストなどを考慮し、課題に優先度をつけて整理することが大切です。
無駄な業務を洗い出す
無駄な業務や非効率な業務を洗い出し、効率を妨げている問題点を整理するのも、生産性を向上させる方法の1つです。まとめられる業務はないか、一部の従業員に業務が集中していないかなどを確認し、解決策を検討することがポイントです。無駄な業務を洗い出す手段として、以下の方法があります。
業務プロセスの可視化
無駄な業務を洗い出すには、まず業務プロセスを可視化し、全体像を把握することが重要です。業務の流れを図にすることで、業務の手順や担当者、必要な時間などを把握できます。また、業務プロセスを可視化することで、無駄な作業や待ち時間、手戻りなどが明らかになります。
作業内容から洗い出す
無駄な業務は各作業内容を洗い出すことで見つけることができます。業務ごとに、どのような作業を行っているか、どのようなツールや資料を使っているか、どのような手順を踏んでいるかを明確にします。この作業を行うことで、不要な作業や、手順の煩雑さ、ツールや資料の重複、不要なチェックや確認作業などが明らかになります。
部署内でのヒアリング
同じ部署のメンバーには、日々の業務の中で感じている無駄な作業や問題点があるかを聞き取ります。皆の意見を取り入れることで、より具体的な問題点が明らかになり、無駄な業務の削減につながります。
ITシステムを導入する
ITシステムを導入して作業をシステム化することで、生産性の向上を図る方法もあります。最近では、システムによって業務を自動化できる「RPA(Robotic Process Automation)」の技術や「デジタル化」の促進、「テレワーク」での生産性向上も注目されています。
ワークフロー自動化ソフトの導入システム
ワークフロー自動化ソフトは、業務の流れや手順を自動化することで、生産性を向上させるシステムです。例えば、書類の承認や手順の確認など、人手で行っていた作業を自動化することで、時間と手間を削減することができます。
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールは、プロジェクトの進捗状況やタスクの管理、スケジュールの共有などを行うことができるシステムです。プロジェクトの情報を共有することで、コミュニケーションコストを削減し、生産性を向上させることができます。
クラウドサービス
クラウドサービスは、データやアプリケーションをインターネット上で提供するサービスです。クラウドサービスを活用することで、従来のオンプレミス型のシステムに比べ、コストやメンテナンスの手間を削減することができます。また、リモートワークが増加した現在では、クラウドサービスを利用することで、場所や時間にとらわれずに業務を行うことができます。
AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)システム
AIやRPAシステムは、人間が行っていたルーチンワークや繰り返し作業を自動化することができるシステムです。例えば、データの集計や入力、書類の整理や作成など、単純な作業を自動化することで、生産性を向上させることができます。
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングの活用も生産性を向上させる方法の1つです。アウトソーシングとは、コア業務以外の一部の業務を外部に委託することです。
専門知識・技術の活用
アウトソーシング先には、特定の業務に特化した専門的な知識や技術を持ったスタッフがいる場合があります。そのため、自社では対応できない高度な技術や専門的な知識が必要な業務をアウトソーシングすることで、効率的かつ高品質な業務を実現することができます。
業務のスピードアップ
アウトソーシングによって、業務を委託することで自社の業務の効率化に繋がります。例えば、締め切りのあるプロジェクトや急な業務増加に対応するために、外部の企業に業務を委託することで、スピードアップを実現することができます。
自社業務に注力できる
業務の一部を外部に委託することで、自社の中核業務に注力することができます。これにより、生産性向上に繋がるだけでなく、自社業務のクオリティを高めることができます。また、業務を外注することで、従業員の時間に余裕が生まれ、重要な業務に時間を費やせるようになります。近年アウトソーシングは広がりを見せ、バックオフィス業務やシステム開発などの分野で導入されています。
従業員のスキルアップを図る
従業員のスキルアップを図るのも、生産性の向上に欠かせません。定期的に研修をしたり、意見交換の場を作ったりするなど、従業員がスキルアップを目指せる環境作りをすることが大切です。
研修・トレーニングサービスの活用
研修やトレーニングは、従業員のスキルアップにとても効果的です。社内で研修を行う場合は、社員が社内での知識やスキルを共有し、相互に学び合うことができます。また、外部のトレーニング機関を利用する場合は、新しい技術や知識を取得できる場合があります。
OJT(On-the-Job Training)
OJTは、実際に業務を行いながら、上司や先輩から指導を受けることでスキルアップを図る方法です。実践的なトレーニングにより、現場で必要なスキルを身につけることができます。
オンライン学習
オンライン学習は、自分のペースで学べるため、時間的な制約が少なく、柔軟にスキルアップができる方法です。また、様々な分野のコースがあるため、従業員が自分に合ったコースを選択し、スキルアップを図ることができます。
情報共有の仕組みづくりに注力する
情報共有の仕組みづくりに力を入れるのも、生産性向上を図る方法の1つです。情報共有にかける時間を削減するためには、リアルタイムで情報共有を行えるクラウドサービスやビジネスアプリケーションの利用が有効です。
生産性向上を目指す際の注意点
生産性向上を図る際には、気をつけるべき点があります。ここでは、生産性向上を目指す際の注意点について解説します。
マルチタスクを押し付けない
生産性向上を目指す際には、従業員にマルチタスクを押し付けないようにしましょう。マルチタスクとは、複数の作業を並行して進めることです。過度なマルチタスクは従業員にストレスがかかります。判断力の低下やミスを引き起こす原因となり、生産性を低下させる可能性があります。
長時間・時間外労働につなげない
従業員に長時間労働や時間外労働をさせないことも、生産性向上を図るうえで大切です。従業員数を抑えて一定の労働量を確保するために、1人当たりの労働時間を増やす企業もありますが、この方法は適していません。
業務効率化に固執しすぎない
業務効率化に固執しすぎないことも、生産性向上を目指すにあたって重要です。インプット、アウトプットの両方を広い視野で見て、何を縮小し増大させるべきなのかを考えるようにしましょう。
生産性向上と業務効率化の違い
生産性向上と業務効率化は混同されやすい言葉ですが、意味は異なります。生産性向上は、少ない投入資源で、より多くの生産物を生み出すことを意味します。一方で、業務効率化は生産性向上に寄与する施策の1つで、非効率的な業務を改善して効率化することを指します。
参考記事:生産効率とは?生産性との違いや計算方法、向上させる方法やメリットなども解説
生産性を向上させたら助成金・補助金が割増になる?
一部の労働関係助成金には、生産性要件が設けられており、この要件を満たしている場合は助成金もしくは助成率が割増になります。助成金が割増する背景は、将来的に労働力人口の減少が予想されるなかで、生産性の向上が必要不可欠だと考えられているためです。
製造業界の生産性向上の取り組み事例
製造業界の企業の多くは、生産性を向上させるためにさまざまな取り組みを行っています。製造ラインにおける業務効率化だけではなく、デスクワークの業務効率化にも取り組んでいます。以下は、製造業界の生産性向上の取り組みの成功事例です。
- 会議の実施方法を改善し、月の平均所定労働時間を10時間程度削減
- 作業内容をマニュアル化し、新人教育にかける時間を削減
- 各エリアの営業所で対応していた顧客対応を本社に集約し、従業員の負担を削減
- アウトソーシングを利用して報告書を電子化し、閲覧性・検索性をアップ
- 派遣社員を有効活用し、コストと生産性を両立
- 生産設備の無駄を改善し、業務に人を集中させることに成功
設備投資による生産性向上の成功事例
クリアファイル製造設備での事例
クリアファイルを生産する設備では、薄いPP(ポリプロピレン)シートを切断する工程がありました。1日何万回と切断するため、切断刃にPPシートがくっついてラインが停止するトラブルがおこり、生産性が低下していました。
対策として、刃物へのくっつきを防止を検討し、刃物の切れ味を落とすことなく、PPの付着を防止できるコーティングを採用。
以前は2日に1回のトラブルが発生していましたが、コーティングを実施以降は1ヶ月半もの間トラブルなしという目覚ましい結果を得ました。メンテナンス間隔は20倍に伸び、生産性向上を実現するとともに、不良品による年間数万トンに及ぶ材料ロスを解消することができました。またコーティングにより刃先が守られ、作業者が手を切るトラブルも減少しました。
ポリプロピレン熱溶着設備での事例
ポリプロピレン製のサニタリー用品を製造するお客様では、成形した2つのポリプロピレン部材同士を接着するため、熱板による熱溶着をおこなっていました。
熱板溶着では、接着したいポリプロピレン部材に熱板を当てて表面を溶かしたのち、熱板を外して、溶けた面と面を貼り付けます。溶けたポリプロピレンは粘着性が高く糸引きが起きやすいため、熱板へのコーティングは必須です。お客様ではフッ素樹脂PFAコーティングを使用していましたが、コーティングの劣化が早く、1週間程度で熱板の取り換えが必要でした。取り換える間は設備を稼働できず生産性を悪化させていました。熱板に新しい表面処理を採用することで、以前のコーティングに比べ5倍以上の期間にわたりメンテナンスが不要になり、生産性向上へとつながりました。
以上のように、設備投資を行い生産設備を改善することで生産性向上を実現することができます。
以下では生産設備に表面処理技術を導入することで、生産設備の無駄を改善し生産性向上が成功した事例をご紹介します。リンクから具体的な改善事例をご覧いただけます。
参考:成形設備の事例
参考:搬送設備の事例
参考:切断刃の事例
参考:包装設備の事例
参考:接着設備の事例
参考:溶着・融着設備の事例
ご紹介の事例以外にも表面処理技術の導入による生産設備の改善に興味がある方やより詳しく知りたい場合は吉田SKTにご相談ください。具体的な方法のご紹介や表面処理技術のご提案をいたします。
参考記事:製造業の生産性向上の手法とは?取り組むべき理由やメリット、手順、下がる要因を解説
まとめ
生産性向上は、企業の継続や発展において重要な手段です。生産性の向上を目指すためには、現状分析をして課題を整理したり、無駄な業務を洗い出したり、ITシステムを導入したりするなどの方法があります。自社に合った方法を選択し、生産性向上を目指しましょう。
吉田SKTでは、表面処理を活用した設備改善による生産性向上をご提案しています。
ものづくりの現場での無駄や非効率業務の整理には、生産設備の改善が生産性向上に大きく寄与します。搬送装置の無人化やメンテナンス時間の低減など生産性向上につながる設備改善に数多くの事例があります。ものづくりの現場で生産性向上を目指している担当者は、ぜひご相談ください。