電気自動車の導入が進む背景とは?メリット・デメリットについても解説
環境への配慮や地球温暖化の影響などにより、電気自動車市場が注目を浴びています。この記事では、電気自動車への参入を考える企業の担当者に向けて、電気自動車の概要や導入が進む背景、今後の展望について解説します。電気自動車のメリットや充電方法についても述べているので、参考にしてください。
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電気自動車とは
電気自動車とは、ガソリンを使用せず電気の力で走行する車のことです。「Electric Vehicle」の頭文字を組み合わせて「EV」と称される場合もあります。また、電気を動力にモーターで走行するため、従来のガソリン車とは異なり、エンジンを搭載していません。さらに電気自動車の充電には、公共用に設置された充電スタンドや家庭用のコンセントを使用します。
電気自動車とほかのエコカーの違い
電気自動車は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、クリーンディーゼル車などと同じくエコカーに分類されます。
電気自動車とほかのエコカーの違いは、駆動するための燃料です。ハイブリッド車はエンジンと電気モーターを搭載した車ですが、充電スタンドやコンセントから充電はできないため、走行にはガソリンの給油が必要です。プラグインハイブリッド車は、電気自動車とハイブリッド車を組み合わせた車で、充電とガソリン給油ができます。燃料電池車は、水素と酸素の化学反応でモーターを動かす車で、専用のステーションから水素を補充して走行します。クリーンディーゼル車は、軽油を燃料にして動く車です。
参考記事:EV(電気自動車)とは?HVとの違いやメリット・デメリット、選び方なども解説
電気自動車の導入が進む背景
電気自動車を導入する企業が増えています。電気自動車が注目される背景について解説します。
環境への配慮
温室効果ガス排出による気温の上昇度合いは、年々加速傾向です。地球温暖化を食い止めるための大気汚染対策として、二酸化炭素を排出しない電気自動車の普及が求められています。
また、世界の平均気温の上昇を1.5℃におさえる努力目標が、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で定められました。2030年までに、世界全体の二酸化炭素排出量を2010年比で45%削減する必要があるため、各国は対策に追われています。
※参考:令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第1章第1節 世界の気象災害・我が国の気象災害と経済的影響|環境省
産業育成のため
多くの企業が新事業を立ち上げている電気自動車産業は、市場規模が拡大傾向にあります。中国やインドなど自動車産業で後発の国は、設計製造が難しいハイブリッドや最新エンジンの技術を有していないため、自動車産業において出遅れていました。しかし、EV車の部品数はガソリン車に比べて比較的少ないことから、自国の自動車産業育成につながる有望な産業と捉えています。
電気自動車のこれからの展望
今後、電気自動車市場は世界や日本でどのように展望していくのでしょう。今後の予測について解説します。
電気自動車市場の世界と日本の動き
2021年には世界の電気自動車販売数が660万台に達し、市場規模は拡大傾向です。
日本では、2020年末に経済産業省が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を打ち立て、2030年代半ばには、電気自動車(*1)の新車乗用車販売を100%にするために、電気自動車のインフラ拡大・導入支援や買換を促進する措置を講じると発表しています。さらに2030年には、電気自動車が全自動車の20〜30%に達するとの試算もあり、蓄電池の性能向上や低価格化の研究が進んでいます。
*1 電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車
※参考:2021年の世界のEV販売台数、2.2倍の660万台(世界)| ジェトロ
ゼロカーボンドライブの推奨
環境省は、電気自動車と太陽光や風力などの再生可能エネルギーを組み合わせた、走行中の二酸化炭素排出量をゼロとする「ゼロカーボンドライブ」を推奨しています。また、2022年度からは、社用車にゼロカーボンのシェア車を導入したり、ガソリン車の軽自動車と同じ価格帯で購入できたりする電気自動車の普及に取り組んだりしています。
電気自動車を導入するメリット
日本でも電気自動車の普及が進んでいます。電気自動車を導入するメリットについて解説します。
走行中に排気ガスを排出しない
ガソリンエンジンを搭載しない電気自動車は、走行時に二酸化炭素を排出しないため、環境に影響を及ぼしません。そのため、排気ガスを排出しない電気自動車は、人体への影響も抑えられます。一方で、ガソリン車に含まれる排気ガスには、二酸化炭素のほか、光化学スモッグの原因となる物質を生成する炭化水素や窒素酸化物などが多く含まれているため、人体への影響が懸念されます。
揺れや騒音が抑えられる
ガソリンを使用しない電気自動車は、走行中に揺れや騒音が無く、静かな状態で運転ができます。一方で、エンジンを搭載している自動車は、燃料であるガソリンを燃やして動力を得るため、振動や騒音が発生します。
ランニングコストが抑えられる
電気自動車の動力となる電気エネルギーには、火力や太陽光などさまざまな発電方法があります。ガソリンと比べて、原油価格の影響をあまり受けず、燃料費も抑えられます。また、自宅のコンセントで充電ができるため、ガソリンスタンドに行く手間も省けるでしょう。さらに、深夜料金が割安になっているプランに切り替えて深夜帯のみ自宅で充電すれば、毎月の電気料金も節約できます。
災害時に蓄電池の代わりになる
電気自動車は、災害時に非常電源として活用できるメリットがあります。V2H(Vehicle to Home)を使用すれば、電気自動車に蓄えた電気を家庭に供給できます。V2Hには、V2H対応車とパワーコンディショナーが必要です。
電気自動車を導入するデメリット
電気自動車はガソリン車と比べて、金銭面や充電時間などでデメリットになる部分があります。それぞれ解説します。
本体価格がガソリン車よりも高い
電気自動車の本体価格は、ガソリン車と比べると高い傾向があります。後述する電気自動車購入の補助金を活用すれば費用は抑えられるものの、価格は比較的高めです。また電気自動車を、手が届きやすい価格で提供しようとする動きもあります。
充電に時間がかかる
電気自動車は、数分で給油が完了するガソリン車と比べて、充電に時間がかかるデメリットがあります。ガソリンスタンドと異なり、公共エリアに充電スポットが少ない点もデメリットの1つです。また、電気自動車はフル充電までに8時間を要しますが、急速充電であれば、空の状態から80%まで充電するのに約30分〜1時間で完了します。
航続距離がガソリン車に比べると短い
電気自動車はガソリン車に比べて、充電100%の状態から空になるまでの航続距離が短い傾向です。ガソリン車の航続距離は500km以上ですが、電気自動車の航続距離は200km〜500kmのため、長距離のドライブをするなら、途中の充電スポットで充電が必要です。
電気自動車の充電方法
電気自動車を充電する方法は、普通充電と急速充電の2種類です。それぞれの特徴を解説します。
普通充電
普通充電は、時間をかけて充電する方法です。100V電源では、1時間の充電で約10km走行ができます。200V電源では、30分で約10km走行が可能です。
現在、充電スポットは長時間滞在が多い宿泊施設や商業ビルなどに限られますが、今後はカーディーラー、コンビニ、病院、商業施設、時間貸し駐車場などに設置場所が増えると想定されています。また、家庭では普通充電機を屋外に取り付け、屋内にコンセントを設置します。
急速充電
急速充電は、充電時間を短縮できる充電方法で、緊急時や業務用に車両を頻繁に利用する場合を想定しています。大容量と中容量のタイプがあり、大容量では、空の状態から80%充電するのに約15分〜30分、中容量タイプでは、約30分〜1時間の時間が必要です。道の駅や高速自動車国道のSA、ガソリンスタンド、カーディーラー、商業施設などで設置が進められています。
電気自動車の補助金
電気自動車の補助金は、国から受けられるものと自治体から受けられるものに分けられます。ドイツでは、購入を助成するEV購入助成スキームが追い風となり、電気自動車の登録台数が増加しました。日本国内でも、電気自動車の購入者に対して、CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)の交付を行い、電気自動車販売の促進の後押しにつなげています。
まとめ
環境への配慮や地球温暖化対策の一環として、排気ガスを排出せず、電気の力で走る電気自動車の導入が進められています。世界での電気自動車の市場規模が拡大するなかで、日本国内でも電気自動車の購入を後押しする政策や研究が進行中です。電気自動車には、原油価格の影響を受けにくく、災害時は蓄電池の代わりになるといったメリットがあります。
参考記事:EV(電気自動車)とは?HVとの違いやメリット・デメリット、選び方なども解説
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