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電気自動車(EV/BEV)の技術~基礎や仕組み・ハイブリッド車との違い・将来性を解説

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電気自動車(EV/BEV)は、外部から充電したバッテリーの電力でモーターを動かし、電気のみで走行する車です。多くの電気自動車にはリチウムイオン電池が使われており、家庭や商業施設、公共の充電設備などで充電して利用できます。

一方で、電気自動車には、充電時間や航続距離、充電インフラの不足、電池材料の価格変動や供給リスクといった課題もあります。この記事では、電気自動車の基本的な仕組みや、ハイブリッド車との違い、現在の課題や今後の見通しについて解説します。ぜひ参考にしてください。

電気自動車とは

電気自動車とは

電気自動車(EV/BEV)とは、車に搭載したバッテリーの電力だけでモーターを動かし、走行する車です。ガソリンエンジンを使わず、外部から充電した電気を動力源とする点が大きな特徴です。

なお、EVという言葉は、資料や統計によって意味が広く使われることがあります。本記事では、電気のみで走行するバッテリー電気自動車、つまりBEVを「電気自動車(EV)」として解説します。

電気自動車にはリチウムイオン電池を搭載しており、家庭や商業施設などでも充電が可能です。一般社団法人次世代自動車振興センターの統計によると、2024年度末時点のEV保有台数は、乗用車・軽自動車・その他を含むEV小計で358,262台です。また、EV・PHEV・FCVを合わせた保有台数は653,903台となっています。

※参考:EV等 保有台数統計_調査・統計_CEV、外部給電器、EV・PHV用充電設備、水素ステーションの補助金申請の案内行う次世代自動車振興センター

電気自動車の仕組み

電気自動車の仕組み

電気自動車は、充電した電力でモーターを回転させる仕組みで駆動します。車両はアクセルを踏んだ量に応じてモーターに電力を流して走行し、制御装置のインバータで速度の調節をします。電気自動車は電気を動力としていますが、高速道路の法定速度を維持できる性能をもつため、ガソリン車と同じように走行できます。

※参考:全国自動車短期大学研究発表会|電気自動車の使い勝手に関する実証研究(第2報)

電気自動車とハイブリッド車の技術の違い

電気自動車(EV/BEV)は、バッテリーに蓄えた電力だけでモーターを動かして走行します。一方、ハイブリッド車(HV/HEV)は、エンジンとモーターを組み合わせて走行する車です。

ハイブリッド車もモーターを使う車ですが、エンジンを搭載しているため、電気のみで走行するEV/BEVとは仕組みが異なります。ハイブリッド車は、走行状況に応じてエンジンとモーターを併用・切り替えて走行します。車種や制御方式によって、モーターの使われ方やエンジンとの役割分担は異なります。

プラグインハイブリッド車(PHEV/PHV)は、外部から充電できるハイブリッド車です。短い距離であれば電気を中心に走行できる車種もありますが、エンジンも搭載しているため、EV/BEVとは区別されます。そのため、PHEVは「電気自動車そのもの」ではなく、外部充電に対応した電動車の一種として理解すると分かりやすいでしょう。

ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車は、電動化された車である「電動車」には含まれます。しかし、バッテリーの電力だけで走行するEV/BEVとは異なります。

なお、日本では2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指す方針が示されていますが、ここでいう「電動車」にはEV/BEVのほか、FCV・PHEV・HEVも含まれます(詳細は後述)。

電気自動車に用いられている技術

電気自動車は、電力を変換しながら走行する車両です。ここでは、電気自動車に用いられている技術を解説します。

バッテリー

バッテリー

バッテリーは、電気自動車の動力源である電力を蓄える装置です。バッテリーに使われる充電池には、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池などがあります。リチウムイオン電池はエネルギー密度と寿命に優れており、1回の充電あたりの走行距離を延ばせます。小型ながら、鉛蓄電池に比べてエネルギー密度が3倍以上高く、急速充電にも対応しています。

参考記事:リチウムイオン電池とは?種類や仕組み、主な用途や安全性も解説

参考記事:全固体電池とは?仕組みや種類、メリット・デメリットなどを解説

モーター

モーター

モーターは、バッテリーの電力を駆動力に変換する装置です。回転子であるローターと固定子のステーターで構成されており、ステーターで磁力を発生させてローターを回す構造です。モーターには、交流電流の周波数を変えることで回転数を制御できる交流モーターが使われています。
交流モーターに電力を流すと、固定子のコイルの磁極(N極とS極)が切り替わり、その磁界の変化によって回転子(ローター)が回転し、駆動力が生まれる仕組みです。

参考記事:モーターとは?種類や仕組み、役割や特徴などをわかりやすく解説

コントローラー

コントローラー

コントローラーは、バッテリーからモーターへ電力を送る際に、電気の形(電圧・電流・周波数)を変換・制御する装置です。バッテリーから出力される直流電流を交流電流に変換してモーターへ流し、車両の運転状況に合わせて電力を調整します。

コントローラーに該当するのは、電圧を調節する「コンバータ」や、交流モーターを回すための「インバータ」などの部品です。

電気自動車の充電器の種類

電気自動車の充電器は、出力によって「普通充電器」と「急速充電器」の2種類に大きく分けられます。経済産業省によると、2024年度末時点で全国に約6.8万口の充電器が整備されており(急速約1.2万口、普通約5.6万口)、2030年には30万口まで増やす目標が掲げられています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

普通充電器

普通充電器

普通充電器は、交流電源を使ってEVに電力を送る充電器です。コンセント型とポール型の2種類があり、住宅、事務所、宿泊施設、商業施設など、比較的長時間駐車する場所に設置されています。出力は3kWや6kWが一般的で、夜間や滞在時間中にゆっくり充電する使い方に向いています。

充電にかかる時間は、車両のバッテリー容量、充電開始時の残量、充電器の出力、車両側の受入性能によって変わります。そのため、「満充電まで何時間」と一律に考えるのではなく、利用する車種と充電環境に合わせて確認することが大切です。

急速充電器

急速充電器

急速充電器は、外出先や長距離移動の途中で、短時間に充電量を補いたいときに使う充電設備です。高速道路のサービスエリア・パーキングエリアや自動車ディーラー、道の駅、商業施設などに設置されています。従来は20〜50kW級が中心でしたが、近年は高出力化が進んでいます。

経済産業省が2023年10月に策定した「充電インフラ整備促進に向けた指針」では、高速道路では1口90kW以上を基本とし、需要の多い場所では150kW級の急速充電器も設置する方針が示されています。長距離移動の利便性は、これからさらに高まっていくと考えられます。

ただし、実際に充電できる電力量は、充電器の出力だけで決まるわけではありません。車両側の受入性能やバッテリー残量、電池温度、充電制御などによっても変わります。特にバッテリー残量が多い状態では、電池保護のために充電速度が抑えられることがあります。

そのため、急速充電は「短時間で満充電にするもの」というより、必要な分を効率よく継ぎ足す充電方法として理解するとよいでしょう。

電気自動車に使用されている回生ブレーキとは

回生ブレーキとは、車輪が持つ運動エネルギーを電気エネルギーに変換して再利用するものです。回生とは、「生き返る、蘇る」の意味をもちます。通常のブレーキは、運動エネルギーを熱として消費して捨ててしまいます。回生ブレーキを利用すると、捨てていたエネルギーを電気に変換して、バッテリーに充電が可能です。

回生ブレーキの仕組み

回生ブレーキは、走行の減速時にモーターを発電機として活用する仕組みです。運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、バッテリーに電力を戻して再利用できるので、エネルギーを効率よく利用できます。

回生ブレーキのメリット

回生ブレーキを活用すると、ガソリン車の燃費にあたる「電費」(電力消費効率)が改善され、航続距離を延ばせます。また、減速時に回生ブレーキが摩擦ブレーキを補うことで、ブレーキパッドなどの摩耗が抑えられ、メンテナンス費用の節約にもつながります。

電気自動車の技術進化の方向性

電気自動車の技術は、日々進歩しています。ここでは、システムやモーターなどの進化の方向性について解説します。

V2Hシステム

V2Hは「Vehicle to Home」の略で、EVなどに搭載された電池の電力を家庭で活用する仕組みです。専用の充放電設備を使うことで、車に蓄えた電気を家庭に送ったり、家庭側から車に充電したりできます。

災害時の非常用電源として使えることに加え、太陽光発電などと組み合わせて家庭の電力利用を工夫できる点も注目されています。

インホイールモーター

インホイールモーターは、車輪の近くや車輪の内側に直接組み込むモーターです。各車輪を独立して制御できるため、アクセル操作の応答性が高まり、旋回時の挙動もより精密にコントロールできます。

レンジエクステンダー

レンジエクステンダーは、発電用エンジンなどを使って航続距離を延ばす仕組みです。バッテリー残量が少なくなった場合に、車載発電機で発電し、モーター走行に使う電力を補います。ただし、発電用であってもエンジンを搭載する場合は、バッテリーの電力だけで走るEV/BEVとは区別されます。レンジエクステンダーは、駆動用バッテリーの容量以上に、航続距離を延ばせる点もメリットです。

技術的な面における電気自動車のメリット

電気自動車は、走行中の騒音や二酸化炭素の排出を抑えられます。ここでは、技術的な面におけるメリットを解説します。

静かに走行できる

静かに走行できる

電気自動車はバッテリーとモーターで動くため、エンジン駆動時の振動や駆動音を抑えられます。ガソリン車はガソリンを燃やして動力をつくるため振動や騒音が大きくなります。電気自動車は走行中の揺れや騒音も抑えられるため、静かな状態での走行が可能です。

加速が滑らかで力強い

電気自動車は、低回転域から大きなトルク(回転力)を発生できるため、アクセルを少し踏むだけで滑らかで力強い加速が得られます。発進時のレスポンスのよさも、EVの運転感覚の特徴です。

二酸化炭素の排出を減らせる

排出を減らせる

電気自動車は走行中の二酸化炭素排出を抑えられる点が大きな特徴です。ただし、車両を動かすために使う電気の発電過程では二酸化炭素が排出される場合があるため、ライフサイクル全体での評価が必要です。一方、走行中はガソリン車のように二酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物などを排出しません。再生可能エネルギーの導入が進むほど、電気自動車はより環境負荷の小さい乗り物になっていきます。

技術的な面における電気自動車のデメリット

電気自動車は、充電時間や走行距離に課題があります。ここでは、技術的な面におけるデメリットを解説します。

充電時間が長い

電気自動車は、ガソリン車の給油と比べると充電に時間がかかります。急速充電を利用すれば短時間で充電量を回復できますが、車種や充電器の出力、バッテリー残量によって充電時間は変わります。

また、休日の高速道路や利用が集中する充電スポットでは、充電待ちが発生する場合もあります。長距離を移動する際は、事前に充電スポットの場所や利用方法を確認しておくと安心です。

走行可能な距離が短い

電気自動車(EV/BEV)の航続距離は、車種やバッテリー容量によって大きく異なります。また、気温、空調の使用、高速走行、積載条件などによっても実際に走れる距離は変わります。

近年は航続距離の長い車種も増えていますが、長距離移動をする場合は、目的地までの距離だけでなく、途中で充電できる場所や充電にかかる時間も確認しておくことが大切です。

電気自動車の技術の課題

電気自動車のさらなる普及には、いくつかの技術的・社会的な課題に対応していく必要があります。ここでは、特に重要な「充電インフラ」と「電池材料の調達」の2点を見ていきます。

充電インフラの課題

国内の充電インフラは、以前に比べて整備が進んでいます。経済産業省によると、2024年度末時点で整備されている充電器は約6.8万口で、その内訳は急速充電器が約1.2万口、普通充電器が約5.6万口です。2023年度末から2024年度末にかけて、約2.8万口増加しています。

一方で、今後は単に充電器の数を増やすだけでなく、急速充電器の高出力化、集合住宅への設置、商業施設や宿泊施設での目的地充電、充電した電力量に応じた料金体系など、利用しやすい環境づくりが重要になります。

電池材料の課題

電気自動車に使われるリチウムイオン電池には、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛などの材料が使われます。これらの電池材料については、価格動向が一方向ではなく、近年は変動局面にあります。
IEAによると、リチウム価格は2021〜2022年にかけて急騰したのち、2023年以降は大幅に下落しました。黒鉛、コバルト、ニッケルの価格も2024年には下落しています。

ただし、EVや蓄電池の普及により、電池材料の需要は今後も拡大が見込まれます。そのため、現在の課題は「価格高騰」だけではありません。価格の変動、特定地域への供給集中、輸出規制、リサイクル体制の整備など、サプライチェーン全体での安定性が重要になっています。

※参考:蓄電池産業の現状と課題について|経済産業省

電気自動車の将来性

電気自動車を含む電動車市場は、世界的には拡大が続いています。ただし、普及のスピードは国や地域によって差があります。車両価格、補助金制度、充電インフラ、電池価格、各国の環境規制などによって、市場の成長スピードは変わります。

IEAによると、2024年の世界の電気自動車(BEV+PHEV)販売は1,700万台を超え、新車販売に占める割合は20%を超えました。なお、IEAの統計はBEVとPHEVを合算した「electric cars」を指すため、本記事の他のセクションとは集計範囲が異なります。

一方で、欧州では補助金の縮小などにより販売が伸び悩んだ地域もあります。

日本では、2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%を目指す方針が示されています。ここでいう電動車には、EV/BEVだけでなく、FCV、PHEV、HEVも含まれます。そのため、日本の政策を見る際は、「EV」と「電動車」を分けて理解することが大切です。

電気自動車などを対象とした補助金制度は、年度や車両登録日、車種ごとの評価によって内容が変わります。経済産業省によると、令和7年度補正予算のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金では、約1,100億円が措置されています。

補助額は、車両そのものの性能だけでなく、充電インフラ整備や供給の安定性など、自動車メーカーの取り組みも含めて決定されます。購入や導入を検討する場合は、最新の補助対象車両や補助額を確認することが重要です。

充電インフラについては、2030年までに30万口を整備する方針が示されています。この中には、公共用の急速充電器3万口も含まれます。

今後は、充電器の設置数を増やすだけでなく、高速道路などでの高出力充電器の整備、集合住宅への設置、商業施設や宿泊施設での目的地充電など、使いやすい充電環境を広げていくことが重要になります。

参考:令和7年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」

参考:充電インフラ整備促進に関する取組

まとめ

電気自動車(EV/BEV)は、バッテリーに蓄えた電力だけでモーターを動かして走行する車です。技術の進歩により走行中の環境負荷の低減や静粛性の高い走行が実現される一方で、充電インフラの整備、電池材料の安定調達、車両価格などの課題も残っています。

政府は2035年までに新車販売の電動車100%、2030年までに充電インフラ30万口の整備を目指しており、車両側ではモーター・バッテリー・コントローラーといった主要部品の高性能化が引き続き重要になります。電気自動車に関わる生産設備にも、より高い精度と信頼性が求められる時代に入ってきました。

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