モーターが回転する仕組みとは~知っておきたい基本用語や回転し続ける仕組みも解説
モーターは、家電製品や自動改札機、銀行のATMなど、さまざまなものに使われています。しかし、モーターがどのような仕組みで回転しているのか、具体的にはわからない人も多いようです。
この記事では、モーターの仕組みについて解説します。モーターの種類や、モーターの仕組みで使われる基礎用語も解説するので、参考にしてください。
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モーターとは
モーターとは、電気エネルギーを回転する力へ変える機器です。モーターは、EVやハイブリッド車、扇風機や洗濯機などの家電製品、自動改札機、ロボットなどの動くものに使われており、用途もサイズもさまざまです。モーターには、以下のような3つの利点があります。
- 1. エネルギー変換率がエンジンよりも高い
- 2. 構造がシンプルで制御しやすい
- 3. モーター自体からは二酸化炭素の排出もなく環境に優しい
モーターの種類
モーターの種類は、DC(直流)モーターとAC(交流)モーターに分けられます。ここでは、それぞれについて解説します。
DC(直流)モーター
DC(直流)モーターとは、直流電源で動作するモーターのことを指し、DCはDirect Current(ダイレクトカレント)の略です。直流電源は常に電圧が一定で、一方向にしか電流が流れません。バッテリーや乾電池は、直流電源です。
DC(直流)モーターは、主におもちゃや自動車の部品、冷却ファンなどに使われています。ブラシ付きモーターやブラシレスモーター、ステッピングモーターが該当します。
AC(交流)モーター
AC(交流)モーターとは、交流電源で動作するモーターのことです。ACは、Alternating Current(オルタネートカレント)を略しています。交流電源は、電圧が一定周期で入れ替わるため、常に電流の向きが変化します。発電機や家庭用コンセントからの電気が交流電源です。
AC(交流)モーターは、扇風機や換気扇、ベルトコンベアーなどに多く使われており、誘導モーターや同期モーターが該当します。
モーターが回転する仕組み
モーターはどのような仕組みで回転するのでしょうか。ここでは、DC(直流)モーターを例に解説します。
永久磁石と電磁石の力を利用する
モーターが回転するためには、永久磁石と電磁石の力を利用します。モーターは、両端に永久磁石を置き、真ん中に回転軸のある電磁石を置いた構造です。電磁石に電流が流れると、S極とN極が引き合ったり、同じ極同士が反発したりして電磁石が回転します。この回転する電磁石が、ローターという部品となります。
モーターは、鉄心のような棒に導線をコイル状に巻いて電流を流すことで、磁界を発生させます。導線をコイル状に巻く理由は、磁力を合成させて磁束にするためです。磁力線を通りやすくするには、コイル状の導線の中に鉄心を入れて強い磁力を発生させます。
電流の向きを逆転させる
モーターは、電流の向きがずっと同じ状態だと、磁石の引き合う力により回転が途中で止まります。モーターの回転を止めないためには、電流の向きをタイミングよく逆転させなければなりません。電流の向きをタイミングよく逆転させると、電磁石のS極とN極が入れ替わり、モーターが回り続けます。
モーターの回転を速くしたい場合は、電流を速く逆転させます。また、回転し続ける仕組みについては、次で詳しく解説します。
モーターが回転し続ける仕組み
モーターの電流を逆転させるためには、部品が必要です。ここでは、電流の逆転に欠かせない部品について解説します。
コミテーターで電流の向きを逆転させる
電流の向きを逆転させるためには、コミテーターと呼ばれる部品が必要です。コミテーターとは、コイルへ電流をタイミングよく流す出入り口のことで、別名「整流子」とも呼ばれています。
コミテーターは電磁石(ローター)の軸に設置して、コイルの導線の両端をコミテーターの端と端につなげます。コミテーターを設置すると、コイルへ流れる電流が逆転して、モーターが回転し続けられます。
電磁石に電流を流す出入り口としてブラシを設置する
ブラシもコミテーターと同様に電流を逆転させるために欠かせない部品で、電磁石(ローター)に電流を流す出入り口になります。ブラシは、コミテーターに触れながら電流を流します。コミテーターが回転しているため、ブラシのコミテーターに触れる部分は常にこすられています。ブラシはモーター本体に固定されており、電源から配線がつながっています。
電流を流すとローターが電磁石となって回り始めます。切れ目のところでは電流が切れるためいきおいで通り過ぎて反対側になった途端に、さっきまでと逆向きの電流が流れるのでローターの極が上手く切り替わり回り続けます。
モーターを回転し続けるには3つに分かれたローターを使う
実際にモーターを回転し続けるためには、3つに分かれた形のローターを使います。3つに分かれた形のローターを使えば、まったく電流が流れなくなる瞬間がないため、回転が止まることはありません。
3つに分かれた形のおかげで、ローターの上半分がN極、下半分がS極に保たれて、常に永久磁石に対して引き合いと反発が起こり、モーターが右回りで回転し続けられます。
モーターの仕組みに欠かせない基本用語
モーターの仕組みを理解するためには、さまざまな基本用語を覚えましょう。ここでは、7つの基本用語について解説します。
磁界
磁界とは、磁石の磁力が働いている空間で、磁石や電流が流れている物の周りに発生します。身近なものでは、送電線や電気のコード、家庭電化製品などからも磁界が発生しています。磁界には向きがあり、コンパスがN極を指す方向が磁界の方向です。磁界はN極とS極の間に発生し、両極に近くなるほど強くなります。
電磁誘導
電磁誘導とは、磁界のなかで導体が動くと、導体に電流が流れる現象です。導体に電流が流れることを起電力といいます。
電磁誘導が起こったときの磁界・導体の動き・起電力の方向は、「フレミングの右手の法則」で表されます。右手の親指・人差し指・中指を直角に開くと、親指は導体が動く方向、人差し指は磁界の方向、中指が起電力の方向です。
電磁力
電磁力とは、磁界のなかに電流が流れると発生する力のことです。
電磁力が発生した時の磁界や電流、電磁力の方向は「フレミングの左手の法則」で表せます。左手の親指・人差し指・中指をそれぞれ直角になるように開くと、親指は電磁力の方向、人差し指は磁界の方向、中指が電流の方向になります。
永久磁石
永久磁石とは、一度磁界を与えると磁力を保ち続ける磁石で、エネルギーは消費しません。テレビや冷蔵庫など多くの電化製品に、永久磁石が活用されています。永久磁石にはN極とS極があり、異なる極同士は引き合い、同じ極同士は反発します。永久磁石は粉々に砕いても、破片が新たなN極とS極を持ち、磁力を帯びることが特徴です。
電磁石
電磁石は、電流が流れている間だけ磁石になり、電流が流れないと磁力はなくなります。電磁石が磁力を得るには、電気が欠かせません。電磁石にはN極とS極があり、電流の向きや大きさを変えると、磁極の向きや磁力の強さが変わります。モーターでは、鉄心やローター部分です。
導体
導体とは、電気をよく通す物質のことで、「電気伝導体」や「導電体」とも呼ばれています。導体には銅やアルミニウムなどが使われており、ケーブルや電線の心線部分などに用いられています。モーターの導体は、多くはコイル状です。
磁束
磁束とは、磁界のなかをN極からS極へ放射状に流れる磁力線の量のことで、目では確認できません。磁束が流れる方向は、磁場方向と呼ばれています。磁束が多ければ多いほど、磁力の強い磁石になります。
まとめ
モーターが回転する仕組みは、永久磁石と電磁石の力を利用するだけでなく、電流の向きを逆転させることもポイントです。さらに回転し続けるには、コミテーターやブラシなどの部品も必要になります。モーターは、エネルギー変換率が高く、モーター自体からは二酸化炭素の排出もなく環境に優しいため、今後もさまざま物へ利用されることでしょう。
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