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金属表面処理の黒染め加工とは?メリットや黒染めに適した素材についても解説

黒染めとは

黒染め加工とは、金属加工で最後に行う表面処理のことです。表面処理にもさまざまな種類がありますが、黒染め加工はメリットも大きく、よく使われる処理方法といえます。

この記事では、金属の表面処理を行う黒染め加工について解説します。黒染め加工のメリットや、工程、注意点などについても紹介します。

金属表面処理の黒染め加工とは

黒染め加工は、金属を化学反応によって処理する方法です。黒染め加工を施した金属は塗ったように真っ黒になりますが、染料を使用して黒く染めているわけではありません。苛性ソーダを多く溶解させたアルカリ溶液に鉄を浸し、加熱することで表面処理を行います。このとき鉄の表面に酸化によって黒さび(四酸化三鉄)が生じ、さまざまな効果を期待できます。

黒染め加工以外にも、SOB、四酸化三鉄被膜、黒色酸化被膜など、多くの別名があります。

金属の表面処理にはさまざまな種類がある四酸化三鉄

金属の表面処理にはさまざまな種類があります。大きく分けると、メッキ・塗装・アルマイトの3つで、それぞれ以下のような方法です。

  • メッキ:金属を溶かした処理液に浸けて電気を流したり、イオン化傾向などを利用したりして液体中の金属を製品の表面に均等に付着させる方法
  • 塗装:金属の表面に吹き付けなどで塗料を塗布して塗膜にする方法
  • アルマイト:アルミニウムを電解処理し、アルミニウム表面に酸化被膜をつくる方法

表面処理で黒染め加工をする理由

さまざまな処理方法があるなかで、鉄の表面処理において黒染め加工を行うのはなぜでしょうか。黒染め加工をする理由について解説します。

鉄鋼材の防錆のため

黒染め加工を行う理由のひとつは、鉄鋼材の防錆のためです。黒染め加工がしてあれば表面が四酸化三鉄(Fe₃O₄)で覆われるため、広範囲に赤さびを防ぎ、腐食から保護できます。

表面処理後の寸法変化を抑えるため

黒染め加工では、表面処理をしても被膜が非常に薄い(1μm~2μm程度)ことが特徴です。塗装では膜厚が厚くて寸法が変わってしまいますが、黒染め加工は寸法をほぼ変えずに防錆処理をしたい場合におすすめの方法です。

表面を黒色にするため

黒染め加工では、表面の加工状態にもよりますが製品を光沢のある黒色にできます。単純に鉄の色そのまま、あるいは塗料などで塗装した場合と比べて、高級感のある外観になります。

安価に表面処理をするため

黒染め処理は、他の表面処理よりもコストが低いのが特徴です。しかも、一度に数多くの製品に対応できる表面処理の方法でもあります。結果的に黒染め加工は、安くて早い表面処理として多岐にわたり重宝される方法です。

黒染め加工のメリット

黒染め加工のメリット

黒染め加工には、多くのメリットもあります。ここでは、黒染め加工のメリットについて解説します。

光沢のある黒色で見栄えがいい

黒染め加工では光沢のある黒色を自然に出すことができます。金属の素材感は損なわずに、光沢のある黒色に仕上げることが可能です。デザインにこだわった製品にあえて黒染め加工が用いられることもあります。

はがれる心配が少ない

黒染めは化学反応によって表面を加工する方法です。メッキや塗装のようにはがれるということはまずありません。使い方によっては黒染め加工はメッキや塗装に比べて長持ちする方法といえます。

寸法精度がほぼ変わらず、摩擦防止効果もある

黒染め加工では表面に処理された被膜が非常に薄いため、寸法精度に影響しません。寸法精度が要求される製品に適しているといえます。さらに処理後にできた被膜はある程度耐摩耗性もあるので摩耗を防ぐという効果も期待できます。

コストが抑えられる

黒染め加工は、塗装やメッキよりもコストが低いのが特徴です。一度にたくさんの製品を処理できるため、1つあたりにかかるコストが低くなります。その分価格を抑えることができ、利益につなげることも可能です。

防錆油で錆の発生防止と潤滑性の向上になる

黒染め加工をする際、処理後に使用する防錆油は、さびの発生を防ぐだけでなく、潤滑性を高める効果も持っています。さらに、防錆剤を用いると、防錆期間が長くなるという利点もあります。金属部品としての使い勝手を良くする効果が期待できます。

素材の強度や性質への影響が少ない

黒染め加工の処理温度は140℃前後と、比較的低温であることが特徴のひとつです。低温での処理になるため素材が変質・変形せず、強度や性質への影響が少ないことがメリットとして挙げられます。

耐熱性が高い

黒染め加工によってつくられる四酸化三鉄の被膜は、耐熱性が高いことも特徴です。黒染め加工をすることで、高熱での環境が予測される機械にも使用できる金属部品を作れます。

錆びた製品は前処理できれば黒染め加工ができる

一度錆びてしまった製品や素材について、錆びた素材を前処理して錆を落とすことができれば、黒染め加工ができるというメリットもあります。買い替える手間や費用の節減になるでしょう。ただし、加工ができるかどうかは、錆の度合いによります。

黒染め加工のデメリット

黒染め加工のデメリット

メリットが多いように見えますが、黒染め加工にはデメリットもあります。ここからは、黒染め加工のデメリットについて解説します。

防錆油を塗布しないと腐食が早まる

黒染め加工には一定の耐食性があります。したがって、黒染め加工をすることで腐食を防ぐことも可能ですが、加工後に防錆油を塗布しないと腐食が早まるのも事実です。防錆油を塗布する手間や費用が掛かるのはデメリットといえます。

黒以外の着色はできない

黒染め加工において、基本の色は黒のみです。加工業者の薬品調合により、赤黒い、青黒いなど多少の色の違いはあるものの、いずれにしてもカラフルな色合いにはなりません。他の色にしたい場合は塗装やメッキによる加工が必要です。

黒染め加工に向き・不向きな素材

黒染め加工での表面処理には、向いている素材と、不向きな素材とがあります。それぞれどのような素材かを解説します。

向いている素材

黒染め加工には、炭素鋼などの鉄系の素材が向いています。実際にほとんどの場合、鉄系の素材に対して使われています。ただし、企業によっては特殊な技術を用いて、鉄以外の素材に黒染め加工できることもあります。

不向きな素材

同じ鉄鋼でも、鋳物や熱処理された製品、ワイヤーカットしたものは、黒染め加工を施すことによって茶色くなってしまいます。黒染め加工の特徴を十分に活かせないケースです。ただし、上記の素材でも前処理したものは可能な場合もあります。

黒染め加工の手順

黒染め加工で表面処理を行うときは実際どのような方法を使うのでしょうか。ここでは、黒染め加工の手順を簡単に解説します。

1. 脱脂

最初に、材料表面の油脂分を十分に落とします。油脂分が残っていると、化学反応が正常に行われないためです。

2. 水洗または湯洗

脱脂に使った脱脂剤が付着している場合も、黒染め加工の化学反応を阻害してしまいます。そこで、水または湯を使い素材を洗います。

3. 黒染処理

140℃前後で沸騰させた黒染液の中に材料を入れ、煮沸する流れが一般的です。

4. 水洗または湯洗

黒染液から製品を引き上げた段階では、製品が高温の状態になっています。表面の黒錆が酸素に触れると赤錆へ変化しますので手早く水ですすぎつつ鋼材を冷ますことが必要です。

5. 仕上げの水洗または湯洗

再びきれいな水または湯を流しながら製品を洗浄し、残留溶液を完全に洗い流します。

6. 防錆処理などの仕上げ

水溶性の防錆剤や、水置換性の防錆剤などを全体に浸漬させ、防錆処理を行います。

黒染め加工をする際の注意点

黒染め加工をする際にも、注意点があります。具体的には、黒染め加工した表面に傷がつくと、傷から錆が進行してしまうという点です。黒染め加工の被膜は塗装やメッキよりも薄く、強度もありません。傷からの錆を防ぐために、どうしても傷に気をつけることが必要です。

黒染め加工には、製品の利用方法によって向き不向きがあります。より柔軟で低コストの製品づくりのため、黒染め加工のメリット・デメリット、補助加工の提案などをしてくれる業者選びをすることも重要です。

まとめ

金属の表面処理のひとつ、黒染め加工には、ほぼ寸法変化がない、表面に高級感のある演出ができるといったメリットがあります。一方デメリットもあるので、黒染め加工が適した場面で黒染め加工を検討しましょう。

金属の表面処理が製品に適しているかどうかは、生産性の良し悪しにも関わります。自社製品の生産性を上げたいときは、表面処理の加工メーカー、吉田SKTへご相談ください。テフロン™コーティングはもちろん、さまざまな独自技術を用いて、効率の良い生産体制を確保するための最適な表面処理をご提案します。さまざま機能や用途でもご使用いただける表面処理の詳細は以下のページでご覧いただけます。