表面処理のご相談

労働生産性を向上させるには?業界別の比較やポイント、事例について解説

労働者が生み出す成果量の指標のひとつが労働生産性です。これを向上させるためには、どのような取り組みを実施すればよいのでしょうか。
この記事では、労働生産性の基礎知識や業界別に見る労働生産性について解説します。労働生産性を向上させる方法についても解説しているため、組織の力を高めるためのヒントにしてください。

吉田SKTは、表面処理技術を通じた生産現場の生産性向上に数多くの実績があります。労働生産性を高めたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。

労働生産性とは何か

労働生産性とは、労働者が生み出す成果を数値化したものです。この数値は、業務効率化や経営効率の改善といった要因で上がります。

たとえば、同じ時間でより多くの商品を販売したり、同じコストでより多くの利益を得たりできれば、労働生産性は高くなります。つまり「労働生産性が高い」とは、同じ労働量で、より多くの生産物を作り出したことを意味します。

業務効率化との関連

業務効率化とは、業務の無駄な工程をなくすことで、時間やコストを削減することです。たとえば、ITツールの導入などが具体的な例として挙げられます。

業務効率化は、労働生産性を向上させる施策のひとつです。業務効率化により、同じ時間でより多くの成果を出すことができれば、労働生産性が高まります。

業界別の労働生産性向上の状況

労働生産性は業界によっても異なります。

一般に、労働生産性が高いのは不動産や電気、ガス、水道、情報通信などの業界で、労働生産性が低いのはサービス業などの業界です。さらには、新型コロナウイルスの影響で、多くの産業の労働生産性が低下したことが指摘されています。特に、宿泊業や飲食店などのサービス業は大きな打撃を受けました。

一方で、製造業は2021年ごろから徐々に労働生産性が改善していることが分かっています。これは、需要の回復やデジタル化の進展によるものと考えられます。

世界と比較した労働生産性向上の状況

日本の労働生産性は、世界と比較しても低い水準にとどまっています。

公益財団法人 日本生産性本部が発表している資料「日本の労働生産性の動向2021」によれば、2020年度、日本における一人当たりの実質労働生産性上昇率はマイナス3.4パーセントでした。新型コロナウイルスの影響で経済活動が大きく落ち込んだことが原因ですが、1995年度以降で最大のマイナス幅を記録しています。

また、同団体の発表している資料「労働生産性の国際比較2021」によると、2020年、日本の時間当たり労働生産性は、49.5ドル(5,086円/購買力平価換算)でした。これはOECD加盟38カ国中23位と、1970年以降、最も低い順位です。

労働生産性が向上しない理由

日本の労働生産性が向上しないのはなぜなのでしょうか。理由をいくつか解説します。

労働時間で決定される給料

日本の多くの企業では、時間給や日給といった方法で給料を算出しています。また、働いた時間が長い人ほど、熱心で責任感があると見なす価値観も根強く残っています。

しかし、このような制度や価値観は、労働生産性の向上にとって障害となります。労働生産性は一定の時間内にどれだけのアウトプットを出せるかという考え方のため、少ない時間で多くの成果を出す人ほど、労働生産性が高いといえます。ところが、時間給や日給では、そのような人は評価されにくいのです。

原材料価格の高騰

原材料価格の高騰は、労働生産性に悪影響を及ぼします。これは特に、付加価値労働生産性と呼ばれる生産性に影響を及ぼします。付加価値労働生産性とは、企業の売り上げから、原価や経費などを除いた額を使って算出する生産性のことをいいます。

近年は、ウクライナ紛争や新型コロナウイルス、円安など、原材料価格が高騰するさまざまな出来事がありました。これにともなって、国内全体の付加価値労働生産性が低下しています。

人や資金の不足

労働生産性を向上させるために、特に近年IT化が重要と考えられています。しかし、ITツールの導入には資金が必要であるほか、ツールを使いこなせる人材も必要です。また、IT人材は需要が高く、大企業並みの高い給与や待遇を求める傾向があります。

結果として中小企業ではITツールを使う環境が整わず、生産性も上がらないという悪循環に陥っています。

労働生産性を向上させるメリット

労働生産性を向上させると、どのようなメリットが生じるのでしょうか。

組織の強みを生かせる

生産性が向上すれば、人件費や原材料費などの固定費を減らすほか、余分にかかっているコストも削減できます。また、労働時間の短縮にもつながります。

注力するべき事業に資金や人材を投入できるため、組織の強みを生かした経営が可能になるでしょう。

顧客満足度を高める

生産性が向上すれば、コストや製造時間の削減により、商品やサービスなどの提供価格を適正なものにできます。これは、顧客にとっても魅力的な要素です。

また、不要な業務に取り組む時間が減ることで、新たなサービスの開発や提供も実施できる可能性が高まります。さらに、接客に時間をかけられるなど、サービスの質も高められるでしょう。

顧客との信頼関係が築きやすくなるほか、組織のブランドも高まるため、総合的な顧客満足度が高まります。

従業員のモチベーション改善

生産性が高まれば、従来よりも労働時間が短くなります。これは、従業員のワークライフバランスを改善することにつながります。プライベートの時間や趣味の時間が増えることで、ストレスが減り、仕事に対する意欲も高まるでしょう。

また、残業時間が少なく、従業員がモチベーションを持って働ける環境は、企業のブランドイメージにも好影響を与えます。社会的にも評価される企業に所属することで、従業員の自信や誇りも高まります。

労働生産性向上の方法

ここからは、実際に組織が労働生産性を向上させるための具体的な方法について解説します。

属人化した業務をなくす

業務が属人化しており、作業担当者ごとに業務の方法が異なると、無駄な工程が発生してしまうことがあります。また、教育の過程でも、混乱が生じる可能性があります。担当者によって教え方や指示が違うと、新人や他部署の人が混乱してしまうかもしれません。

さらに、担当者が休職や退職などで業務に携われなくなった場合、業務が止まってしまうこともあります。特定の人しか知らない情報やノウハウが失われてしまうことで、業務の継続性や品質に影響を与えることも考えられます。マニュアルを作ったり、ITツールを導入したりするなどして、属人化している業務を削減することが重要です。

働きやすい環境の整備

業務改善や新規の事業企画によって労働生産性を向上させるためには、業務時間内の余白を作ることも大切です。常に時間に追われていると、創造性や柔軟性が失われてしまうからです。

リモートワークやフレックスタイムなどの制度を整え、従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。また、従業員のコミュニケーションをうながすことも大切です。チームワークや相互理解を高めることで、業務の効率や品質が向上することが考えられます。

さらに、福利厚生の充実も必要です。健康管理やキャリア支援など、従業員のニーズに応えることで、モチベーションやロイヤリティを高めます。

アウトソーシングを活用する

組織の軸となる業務以外は外注することも検討しましょう。従業員の負担軽減につながります。さらに、専門知識を持った従業員が、企業のメイン業務に関われるようになるため、新たなサービスの開発や業務の改善など、生産性の向上につながるアクションが取れるようになります。

労働生産性の向上にまつわる注意点

労働生産性を向上させる際には、いくつかの注意点があります。それぞれの注意点について詳しく解説します。

数字にこだわりすぎない

労働生産性の数字にこだわりすぎることは、企業の実態を捉え損ねることにもつながりかねません。

たとえば、業界の形態によっては、労働生産性が低く出やすいことがあります。教育や医療、ケア、サービス業などの業界では、人と人との関係性や信頼性が重要であり、時間やコストを削減することが難しいケースも多くあるからです。

また、自社の労働生産性を考える場合、日本国内の全企業と自社の労働生産性を比較するのではなく、業界ごとの労働生産性を見ることも心がけましょう。

労働時間が長くなりすぎないようにする

生産量を高めるために長時間労働をしても、生産性が向上したとはいえません。生産性は、少ない労働時間で生産量を確保できるほど向上するものだからです。

また、長時間労働は、従業員の疲労やストレスを増やし、生産性を低下させる可能性もあります。実際、1人当たりの労働時間が短い国ほど、労働生産性が高くなるというデータも存在します。労働時間が必要以上に長くならないよう、業務効率化ツールの導入なども検討しましょう。

トライアンドエラーを恐れない

生産性を向上させるためには、業務プロセスの見直しやITツールの導入など、さまざまな取り組みが必要です。しかし、1つの取り組みに執着しないことも重要です。

すべての取り組みが成功するとは限りませんし、たとえ成功したとしても、施策直後から生産性が向上することは少ないからです。PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を意識しながら生産性向上の取り組みを続けましょう。

労働生産性を向上させるためのツール

労働生産性を向上させるためのツールには、以下のようなものがあります。

  • ファイル共有ツールやストレージツール
  • タスク管理ツール
  • チャットツール
  • Web会議ツール
  • タブレットなどの端末

組織の業務内容に合ったツールを取り入れて、積極的に労働生産性を向上させましょう。

労働生産性向上の事例

国内の生産現場で、労働生産性が向上したとして紹介される事例に、以下のようなものがあります。

  • 廃棄ロスの削減による生産性向上
  • 製造加工のデータを利用し、工具トラブルの可視化や工具消耗品費の削減などをはかる
  • 原価や工程、在庫などを可視化し、共有
  • 油圧装置の遠隔メンテナンスサービス

どのケースも、これまでの業務に新たなアイデアやツールを導入することによって、生産性を高めていることが分かります。

まとめ

労働生産性を向上させることは、組織の競争力や成長性を高めることにつながります。効果的に生産性を向上させるためには、適切な方法や注意点を把握することが必要ですが、実際に向上させられれば、組織にとっても従業員にとってもメリットが多いでしょう。

吉田SKTは、表面処理技術を通じた生産現場の生産性向上に数多くの実績があります。労働生産性を高めたいとお考えの方は、ぜひご相談ください。