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半導体素子(デバイス)とは?種類や活用例を解説

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半導体素子(デバイス)とは、半導体を組み込んで作られた電気回路のことです。
半導体素子の種類はさまざまあり、組み込む半導体は種類や数によって能力が異なるため、必要に応じた半導体の選定が大切です。半導体の種類についてはこちらの記事をご参考ください。

この記事では、半導体素子や電子デバイスの種類、おもな活用例を紹介します。

半導体素子とは?半導体との違い

半導体とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」との中間的な性質を持つ物質のことで、代表例として「シリコン」や「ゲルマニウム」が挙げられますが、これらは純粋な状態ではほとんど電気を通さないため、絶縁体に近い性質を示します。
しかし、わずかな不純物を添加すると電子や正孔(ホール)の数が増え、電気伝導度が大きく変化して導体に近い挙動を示すようになります。なお半導体には、特定の条件で電流を流したり遮断したりする特性があります。

一方で半導体素子とは、半導体を用いて製造された、特定の機能を持つ電子部品のことで、例えば電流を一方向にしか流さない「ダイオード」や信号を増幅する「トランジスタ」などがあります。

「半導体を材料にして、半導体素子を作る」という違いを押さえておきましょう。

電子デバイスの分類|能動素子(半導体素子)と受動素子

スマートフォンなど私たちの生活に欠かせないさまざまな電子機器を構成する部品である「電子デバイス」には、大きく分けて能動素子と受動素子がありますが、半導体素子はこのうち能動素子に分類されます。

能動素子: 外部からの信号やエネルギーを用いて、電気の流れを制御したり、増幅したりする部品です。例えば、半導体素子であるトランジスタやダイオードはこちらに当たります。

受動素子: エネルギーを貯蔵したり、制御する役割を持つ部品で、電流の方向や大きさを変えることはありません。抵抗器やコンデンサ、インダクタ(コイル)が代表例です。

能動素子(半導体素子)の種類一例と性能

能動素子には、ダイオードやトランジスタのほか、サイリスタなどさまざまな種類があります。
ここでは特に代表的なダイオードとトランジスタについて詳しく説明します。

ダイオード:整流作用

ダイオードは、p型半導体とn型半導体をひとつにつなげ、電流の流れを一方だけにする整流作用を持ちます。
一般的な電源は、交流電流であるため周期的に電流の流れる方向が変わっています。しかしダイオードを組み込むことで決まった方向にのみ電流を流すことが可能です。
ダイオードは、電子回路の設計において欠かせない能動素子です。回路を簡素化し、より効率的に機能させるために広く利用されています。
他にも、ツェナーダイオードによる電圧の安定化や、ラジオ波から音声信号を抽出する検波、光を電流に変える光電変換などの役割があります。

トランジスタ:増幅作用とスイッチング

トランジスタは、電気エネルギーの増幅とスイッチングをする能動素子です。
トランジスタは、ベース・エミッタ・コレクタの3つのうち、ベースへ流れる微小な電流が、エミッタからコレクタへの大きな電流を制御することで増幅やスイッチングが実現されます。
増幅作用を利用した例に、ラジオの微弱な信号をベースで感知し、エミッタとコレクタが増幅してスピーカーを鳴らすことが挙げられます。
スイッチングは、ベース電流の有無によって、エミッタとコレクタの間で電流のオンオフができる作用です。

受動素子の種類一例と性能

能動素子(半導体素子)と対になる受動素子には、抵抗器やインダクタコイル、コンデンサなどの種類が存在します。
これらは、電気エネルギーの検出や制御、貯蔵や放出などが可能な電子デバイスです。

ここでは、受動素子の一例とその性能を紹介します。

抵抗器:制御・検出

受動素子のひとつである抵抗器は、一定の電気抵抗を持った受動部品です。電流を制御し調整する働きや必要な電圧を取り出す分圧や検出などの役割があります。
他の受動素子である、コンデンサやインダクタコイルと同じように重要な役割を持ち、さまざまな電子機器に搭載されています。
抵抗器があると、電流の制御が可能です。電圧がかかり過ぎることを防ぎ、LEDの焼損や電気回路のスムーズな動作に寄与できるでしょう。
抵抗器の働きは、オームの法則で電流の大きさが、電圧に比例し、抵抗に反比例する「電圧(V)=電流(A)×抵抗(Ω)」に基づきます。

インダクタ(コイル):電気⇔磁気の変換

インダクタ(コイル)は、導線をらせん状や渦巻き状に巻いたものや導線中にコアとなる磁性体を入れたもののことです。
インダクタの役割は、電流が流れると磁界を発生し、磁界が発生すると電流を流すことで、電気と磁気のエネルギーを変換することができます。
直流に対しては電気抵抗として振る舞い、交流に対しては周波数に応じたインピーダンス(交流回路における抵抗成分とリアクタンス成分を合わせたもの)を持つ特性があります。
特に、磁気エネルギーの発生する特性を「インダクタンス」と呼び、導線の巻数が増えると、比例してインダクタンスも大きく変化します。

コンデンサ:電気の貯蓄・放出

コンデンサは、「容量」が語源の英語で「キャパシタ」とも言い、電気の貯蔵や放出が可能な素子です。
2つの金属箔や金属の薄い板が、絶縁体を挟んだ状態が基本構造です。
コンデンサの主な性質は、以下の3つがあります。

  • 電気の貯蔵
  • 直流ではなく、交流を通す
  • 周波数の高い交流ほど通しやすい

コンデンサに直流電流を加えると、2つの金属に電荷が流れ込みます。ただし、金属の間には絶縁体が挟まれているため、電荷は流れず金属に貯まります。
一方で、交流電流を流すと、電流の向きが周期的に変わるため、コンデンサはその変化に応じて電荷を蓄えたり放出したりする動作を繰り返します。
周波数が高いほど容量性リアクタンス(コンデンサやコイルが交流の流れを妨げる度合い)が低下し、電流が流れやすくなります。

半導体素子の活用例

半導体素子は以下のような分野で活用され、現代の電子機器に欠かせません。

MPU(マイクロプロセッサ)

MPU(マイクロプロセッサ)は、システム内での命令処理や演算をするシステムの心臓部にあたります。
MPUは、デジタル信号を処理して、高度な計算や制御のシステムを実現する1枚の半導体チップです。
例えば、パソコンに使用されるMPUは、文書作成やインターネットの閲覧、動画再生やゲームなどのソフトウェアプログラムの演算や制御に活用されています。
使用される機器は多く、パソコンやスマートフォンの他にも家電製品や自動車、クラウドサービスなどがあります。

GPU(グラフィックプロセッサ)

GPU(グラフィックプロセッサ)は、数学的計算を高速で行い、画像や映像の処理に特化した半導体素子です。
3Dグラフィックの処理や動画など、大量の画像データを扱う処理には、非常に高度な計算能力が求められます。GPUは膨大なデータ処理ができる、並列処理能力を持っています。
パソコンやスマートフォンに使用されるGPUは、写真や動画の編集や複雑な動きをするゲームなどには不可欠な半導体素子です。
近年では、AIモデルのトレーニングや推論の加速、ビッグデータ分析の計算処理にもGPUが活用されています。特に、ディープラーニングや画像認識技術の進化を支える重要なデバイスとなっています。

CPU(プロセッサ)

CPU(プロセッサ)は中央演算処理装置の略称で、コンピューターの重要なパーツです。あらゆる計算やデータを処理し、コンピューターの頭脳として働きます。
CPUの性能の高さはコンピューターのデータ処理速度に比例します。高性能なCPUを搭載したコンピューターは、多くの作業をこなし、快適な操作を可能にするといえるでしょう。
CPUの性能を知るためには、命令の処理速度を示すクロック周波数と、複数の命令を処理できるコアの数を確認します。

メモリ

メモリは、CPUが処理するデータを一時的に記憶し、必要に応じて読み書きするデバイスです。データは、1秒間に何度も読み書きされるほど高速に処理されます。データの読み書き可能なRAMと読み取り専用のROMの2種類があります。
RAMは一時的にデータを保存するため、コンピューターのメインメモリとして使用されます。一方、ROMは電源を切ってもデータが保持されるため、システムのファームウェアなどに使用されます。

FPGA

FPGA(Field Programmable Gate Array)は、設置後でも設計者が理論回路の構成をプログラムでき、機能を再構成できるデバイスです。集積回路の一種であるLSI(Large Scale Integration)が製造設置後に理論回路を変えられないのに対し、書き換えが可能な集積回路であるPLD(Programmable Logic Device)の1種として知られています。
FPGAは、設置後でもハードウェア回路を再構成できるため、プロトタイプの開発や製品のアップデートが柔軟に行えます。
活用例として通信機器のルーターや医療機器のMRI、超音波診断装置、防衛のためのレーダーが挙げられます。

通信モデムIC

通信モデムICは、データ通信用のモデムが組み込まれた集積回路です。そもそもモデムとは、Modulator(変調)とDemodulator(復調)の頭文字を取った造語です。
デジタル信号からアナログ信号に変換することを変調、アナログ信号からデジタル情報の取り出しを復調と呼び、通信モデムICはこれらの情報をネットワークを介して送受信します。スマートフォンやモバイルデバイス、GPS機器などに活用されます。

関連記事:半導体はなぜ必要?役割や種類、半導体の作り方などを解説

まとめ

半導体素子は、電子機器の中核を支える重要な部品です能動素子と受動素子の2種類に分類されます。これらは、私たちの生活に欠かせないパソコンやスマートフォン、自動運転やIoT、さらには宇宙開発まで、幅広い分野で活用されています。

今後、半導体技術のさらなる進化により、より高性能で省エネルギーなデバイスの開発が期待されています。これにより、社会のデジタル化や環境問題の解決に大きく貢献するでしょう。こうした進化の背景には、半導体製造装置の性能向上が欠かせません。その重要な要素として、表面処理技術が大きな役割を果たしています。

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当社はテフロン™コーティングのライセンス工場としての豊富な実績を有し、半導体製造装置の性能向上に貢献しています。次世代の省エネルギーで高性能な半導体製造を支えるパートナーとして、ぜひ吉田SKTにご相談ください。

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