表面処理のご相談

半導体は何からできている?半導体の原材料に使われる主要な物質から将来の可能性まで一挙解説

公開日/  更新日/

半導体は、身の回りの電子機器に必ず使われている物質です。半導体にはさまざまな種類があり、製造に使われる原材料も複数の種類があります。

この記事では、半導体の原材料やその製造工程で使われる材料を挙げ、その将来的な動向についても紹介します。

半導体の主原料はシリコンが主流

半導体は、現代社会において不可欠な存在であり、原材料が枯渇する可能性はあるのか気になる人は多いでしょう。単に半導体と呼ばれるものは、ICチップを指すことが多く、チップの本体部分は「ウエハー」と呼ばれる円盤状の基板上に作られます。
ウエハーは、シリコン(Si)や酸化アルミニウムなどの単一元素から作られるものや、化合物から作られるものがあり、その9割がシリコンを主原料としたものです。
シリコンは、地殻構成元素で酸素の次に多く存在し、二酸化ケイ素という形で岩石や水などの豊富な自然物に含まれ、枯渇の可能性が低いとされています。また、加工のしやすさや安定性の高さも、半導体の原料として多く用いられる理由です。

参考記事:半導体製造に使われるウエハーとは~概要や用途、製造工程などを徹底解説

半導体製造に必須!シリコンウエハーの製造は日本が最多

シリコンウエハーの材料である金属シリコン生産量の世界一は中国ですが、シリコンウエハーの製造については日本が最多で、日本メーカー2社「信越化学工業」と「SUMCO」が、世界シェアの約45%を占めています。シリコンウエハーには、精密さと純度の高さが求められるため、日本の高度な技術によって製造されたウエハーは世界的に需要が高いといえるでしょう。
一方で、二酸化ケイ素から金属シリコンを精製するためには、膨大な電力を使用します。このことから、シリコン原料の生産には、比較的電力を安く使える国が有利であるといえます。

シリコン以外も!半導体の原材料一覧

半導体の原材料には、シリコン以外にも使用可能な元素や化合物があります。ここでは、半導体に使用できる原材料を紹介します。

元素半導体1:ゲルマニウム(Ge)

ゲルマニウム(Ge)は、1948年に真空管に代わる電圧・電流の増幅が可能なトランジスタに使用され、注目を浴び始めました。
ゲルマニウムの特徴は、温度が上がり温まるとマイナス電子が反応し外へ飛び出すことで、増幅や整流の電子的特性を出現させる点です。シリコンが主流になる前はゲルマニウムを使ってダイオードやトランジスタが発明されていましたが、その後シリコンの登場により多くの電子機器が代替されることとなりました。
現在は優れた光学特性を持つことから、赤外線検出器や太陽電池のような光学デバイスへの使用に適しています。

元素半導体2:セレン(Se)

セレン(Se)は、金属硫化鉱に含まれる元素で、純粋な状態で存在することは稀であり、多くはセレン化物として見つかります。
セレンは光や紫外線の強度に応じて電気伝導性を増す光伝導体としての特性を持ち、かつては光電池やセレン整流器の材料として広く利用されていました。しかし、より効率的で安価に製造可能なシリコン整流器の登場により、これらの用途はほとんど廃れています。
現在では、セレンは化学工業分野での触媒やガラスの着色剤など、工業用途において主に使用されています。ただし、体内に取り込まれると発育低下や肝障害などの健康被害を引き起こす可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。

元素半導体3:ダイヤモンド(C)

ダイヤモンド(C)は炭素の同素体で、鉱物の中で最も硬く、熱伝導率の高い鉱石です。
ダイヤモンドはバンドギャップが大きく絶縁体に近い半導体として、1980年代から半導体材料として研究が進められてきました。硬さゆえに加工の難易度が高い課題がありましたが、近年ではその特性を活かしたパワー半導体デバイスの研究が活発化し、実用化が視野に入っています。2023年には、ミライズテクノロジーズとObray(オーブレイ)が、2030年代の実用化を目指した、縦型ダイヤモンドパワー半導体を自動車に適用する共同研究を開始しています。

化合物半導体1:窒化ガリウム(GaN)

窒化ガリウム(GaN)は、結晶構造を持つ化合物で、シリコンよりもバンドギャップが大きいため高温や高電圧に耐えられるのが特徴です。これにより、大量の電流を扱うパワー半導体や高効率の青色LEDの材料として広く利用されています。
大量の電流と高電圧を扱えるパワー半導体に、電力損失の少ない窒化ガリウムを使用することで、省エネ効果が期待できます。GaNは青色LEDの材料としても重要で、この発明は2014年のノーベル物理学賞につながりました。
また、スマ-トフォンやPCの充電器、電車のモーター制御などに実用化され、2025年頃にはサーバー内電圧変換機、2030年頃にはデータセンター内の電源などへの使用拡大も予想されます。

化合物半導体2:炭化ケイ素(SiC)

炭化ケイ素(SiC)は、もともと研磨剤や釣り竿の釣り糸を通すための輪などに使用されていました。さまざまな結晶多系が存在し、特にパワー半導体の材料として注目される4H-SiCは、シリコンと比べて約3倍のバンドギャップがあり、電力損失を約7割防ぎます。
炭化ケイ素は、1980年代頃から世界中で研究が進み、2015年には鉄道車両への実用化が実現したパワー半導体原材料です。
窒化ガリウムと同様に、EV車の開発・普及や再生可能エネルギーの太陽光、風力発電プラントなど幅広い使用が期待されています。
(参考:ビジネス+IT「SiCパワー半導体とは何か? 先頭切るローム、20倍に急成長する「次世代素子」市場で花開くか」 https://www.sbbit.jp/article/cont1/31899)

化合物半導体3:二硫化モリブデン(MoS2)

二硫化モリブデン(MoS2)は、次世代半導体材料として期待されています。その特性として、熱の安定性が高く、電流のオンオフを高精度で切り替えられる点が挙げられます。また、資源の豊富さからシリコン代替材料としての可能性が模索されています。
窒化ガリウムや炭化ケイ素の結晶構造が3次元であることに対して、二硫化モリブデンは2次元であるため、単電子もしくは数電子の薄い半導体層を持つ微細なトランジスタに向いています。
超低消費電力デバイスの開発は、今後の社会にとって不可欠です。

工程別!半導体チップの製造工程で使われる原材料一覧

半導体チップは、前工程と後工程に分かれた製造工程を通して完成します。さらに、各工程は複数のプロセスに分かれ、使用される原材料も工程ごとにさまざまです。

ここでは、半導体チップの工程別に使用される原材料を紹介します。

前工程|酸化・ドーパント(不純物イオン)など

半導体チップの前工程は、ウエハーの上に半導体を並べて回路部分を作るための工程です。
詳細なプロセスと使用する原料を一覧で紹介します。

工程順 工程内容 必要な元素・化合物
1.鏡面ウエハー作り 単結晶のインゴットからウエハーを切り出し、表面を研磨して鏡面のように作り上げる ダイヤモンド砥粒やシリカ粒子などで研磨
2.表面の熱酸化 拡散炉(約800~1100℃)で、ウエハーの表面に酸素ガスもしくは水蒸気ガスを吹き付けて酸化膜を形成 酸素ガス(O2)もしくは水蒸気(H2O)
3.成膜工程 酸化膜の上に金属やガスの薄膜を形成 アルミニウム(Al)やシリコン(Si)など
4.フォトレジストの塗布 フォトレジスト(感光剤)を酸化膜の上に均一に塗布
不要な感光剤は、現像液で除去可能
クレゾールノボラック樹脂やナフトキノンジアジド化合物などの感光剤
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの現像液
5.パターン転写 ICパターン(フォトマスク)を紫外線照射し、ウエハーに現像する  
6.エッチング・洗浄 薄膜をパターン上に加工し、不要な酸化膜を取り除く
エッチング後、微細な塵や油脂を洗い流す
フッ酸(HF)やリン酸(H3PO4)などのエッチング液
硫酸過水(過酸化水素(H2O2)と硫酸(H2SO4)の混合液
7.イオン注入 イオン化した不純物を高電圧で加速し、ウェハに注入する ボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)
8.表面研磨・電極形成 平坦化(CMP)し、ウエハーに金属を埋め込み、電極を形成  
9.検査 ウエハーのチップサイズや汚れ、電気的異常の有無などの検査  

2〜8の工程を繰り返して回路パターンを形成し、検査が終われば前工程は完了です。

参考記事:半導体の製造プロセスを徹底解説!半導体の仕組み・製造の流れの理解をサポート

後工程|接合・パッケージングなど

後工程では、前工程で作り上げたウエハーを切り出して半導体を完成させます。
詳細なプロセスと使用する原料を一覧で紹介します。

工程順 工程内容 必要な元素・化合物
ダイシング 円盤状のウエハーから、ダイヤモンドブレードを使ってICチップを切り出す  
ワイヤボンディング 切り出したチップを金属のリードフレームにボンディングワイヤを使って組み込む 銅合金系素材、鉄合金系素材などのリードフレーム 金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)などのボンディングワイヤ
モールディング ICチップ保護のために樹脂でカバー エポキシ樹脂
最終検査 一定の温度や電圧に耐えられるかを検査  

参考記事:【初心者向け】半導体製造の後工程とは~注目の理由や製造プロセスを解説

まとめ

さまざまな電子機器に使用される半導体は、原材料となる元素や化合物によって異なる特徴を持ち、用途に応じて多様な種類があります。現在、枯渇の可能性が低く加工しやすいシリコンが主原料として広く使用されています。半導体製造は設計、前工程、後工程の3つに大きく分けて進められる複雑なプロセスです。
また、今後のインフラを支え続けるため、電力損失が少ないパワー半導体の重要性が増しています。これに伴い、シリコンに代わり、窒化ガリウムや炭化ケイ素、さらにはダイヤモンドなど新しい材料を半導体に利用する研究が進められています。

こうした半導体製造の進化を支える重要な要素の一つが、製造装置の性能を高める表面処理技術です。株式会社吉田SKTは、表面処理やテフロンフッ素樹脂コーティングを専門とするメーカーであり、独自技術を活かした高品質な表面処理を提供しています。
当社はテフロンコーティングのライセンス工場を有し、半導体製造装置への表面処理において豊富な実績を誇ります。これにより、次世代半導体製造の信頼性や効率向上に大きく貢献しています。
半導体製造装置の性能向上に関する表面処理については、ぜひ吉田SKTにご相談ください。

表面処理のご相談は、こちらのフォームよりお気軽にお問い合わせください。