半導体の歴史 ~世界で起きた技術革新とその発明者、今後の日本の動向も考察~

半導体とは、シリコンやゲルマニウムに代表される、導体と絶縁体の中間的な電気伝導性を持つ材料のことです。いっぽうで、文脈によっては電流のオンオフを制御するトランジスタや集積回路などの製品のことも半導体と呼びます。
1950年頃から隆盛期を迎えた半導体は、「いかに小さくたくさん組み込むか」を追い求めた歴史の結晶といえるでしょう。半導体の種類についてはこちらの記事をご参考ください。
この記事では、国内外で起きた半導体の進化の歴史とその発明者たちを紹介し、これからの日本の半導体産業の立ち位置についても考察します。
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1945~1960年|半導体の隆盛期(トランジスタ・集積回路)
トランジスタの原型ともいえる真空管は、1904年にエジソン効果を応用してフレミングが開発した2極真空管を始まりとします。
増幅機能を持つ真空管が相次いで開発され、電話や無線、初期のコンピューターなどに使用されました。
1946年に公開された世界初の電子計算機「ENIAC」は、真空管を使用したデジタルコンピューターで、サイズや消費電力が大きい点で実用性に乏しい製品でした。
その後、1960年頃までにトランジスタの誕生や集積回路(IC)が開発され、半導体産業の隆盛期を迎えます。
トランジスタの誕生|基本的な半導体素子のひとつ
トランジスタは、1947年にアメリカのベル研究所でジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンによって発明されました。
1948年には、ウィリアム・ショックレーが接合型トランジスタを発明し、特許を申請しました。
この開発に関わった3人は、1956年にノーベル物理学賞を受賞しました。
真空管から小型化した半導体へ徐々に移行したことで、携帯ラジオが開発されたり、コンピューターの目覚ましい進化に貢献したりと、製品開発が飛躍的に進歩します。
集積回路(IC)の開発|シリコン基板上に複数の半導体素子を組み込む
1958年にジャック・キルビーが、1959年にロバート・ノイスが、それぞれ独立して集積回路(IC)を開発しました。
ICは、トランジスタやコンデンサなどの半導体素子を1つの基板上に複数組み込んだ電子部品です。
ICの登場は、デジタル機器産業の急速な発展に寄与し、電子機器の小型化や製品の大量生産を可能にしました。
電卓もICを使ったデジタル機器のひとつで、1960年代に小型電卓が開発され、1970年代には広く普及し使用されるようになりました。
1965年以降|ムーアの法則提唱。急速な発展を遂げる
1965年、半導体産業に大きな影響を与える「ムーアの法則」が提唱されました。インテル社の共同創業者であるゴードン・ムーアは、エレクトロニクス誌に「集積回路の価格あたりの部品数は毎年2倍になる」という予測を発表しました。
その後、1975年にムーアは予測を見直し、「集積回路上のトランジスタ数は2年で2倍になる」と修正しました。
1980年代には、デビッド・ハウス(当時のインテル社長)が生産プロセスの改善により「18ヶ月で2倍」になると予測し、これも広く「ムーアの法則」のひとつの解釈として普及しました。近年、技術的な課題や物理的な限界により、ムーアの法則の進展速度は鈍化していると指摘されています。
具体的には、以下の製品に使われるトランジスタの使用数量が当てはまります。
発売製品 | トランジスタの個数 | |
---|---|---|
1971年 | 大規模集積回路(LSI)、マイクロプロセッサ「Intel 4004」 | 約2,000個強 |
1977年 | 世界初のパーソナルコンピュータ「AppleII」 | 約3,500個 |
2023年 | iPhone 15 Pro | 約190億個 |
ムーアの法則は業界の共通認識として使われ、約50年間法則にしたがうようにICの集積率は上がり、半導体は急速な発展を遂げています。
半導体の日本史
1940年代後半にアメリカで発明された半導体素子の活用によって、デジタル機器関連の産業は世界中で伸びています。
一方で、戦後日本の半導体技術の発展には、どのような環境が関与するのでしょうか。
ここでは、日本における半導体の歴史を振り返り紹介します。
トランジスタラジオの発売とトンネル効果
日本初の半導体製品は、1955年に東京通信工業(現在のSONY)から発売されたトランジスタラジオです。
トランジスタラジオに使用する高性能トランジスタを大量生産するための研究を通して、1957年、江崎玲於奈氏がトンネル効果を応用したダイオード(エサキダイオード)を発明し、この業績により1973年にノーベル物理学賞を受賞しました。
トンネル効果とは、量子力学において、粒子が本来越えられないはずのエネルギー障壁を一定の確率で通過する現象を指します。
(参考:読売新聞オンライン「ノーベル賞受賞50年 江崎博士「知の軌跡」 」https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/ckscience/20230925-OYT8T50043/)
光通信の発明
1950年代、西澤潤一氏は半導体レーザー、PINフォトダイオード、光ファイバーなど、光通信の三要素となる技術を世界に先駆けて考案しました。
光通信は、電気信号を光信号に変換し、光ファイバーを通じて伝送し、受信側で再び電気信号に戻して情報を伝達する技術です。
光通信には発光素子、受光素子、伝送路の三要素があり、西澤氏は1950年代にこれらの基本技術を考案していました。
定説にとらわれることなく、基礎と応用をつないで開発に挑んだ西澤氏の姿勢は、多くの発明を残しています。
半導体技術で世界トップレベルに
1980〜90年代の一時期、日本の半導体産業は世界市場でトップのシェアを占め、技術的にもトップレベルに達していました。
その成功の一因として、テレビやオーディオなどの家電製品分野において日本国内メーカー同士の競争が激しかったことが挙げられます。こうした家電製品に使われる半導体の開発も積極的に進められ、品質と信頼性の高い製品が作られました。
1980年代後半、半導体の世界売上ランキングトップ10に日本企業が6社入り、トップ3を日本企業が独占するなど、高いシェアを獲得しました。
2000年代~現在の半導体事情|デジタル化による供給不足
半導体誕生から約80年の歴史で、日本の技術は目覚ましい発展を見せましたが、2000年代以降もデジタル化の進展に伴い、半導体技術や製品には一層の向上が求められてきました。
ここでは、2000年代以降〜現在における半導体産業の事情を紹介します。
NVIDIAを中心とした半導体ファブレス企業の発展
日本の半導体企業は、設計から製造まで自社工場で行い、関係企業と足並みを揃える護送船団方式と呼ばれる文化を構築してきました。
一方、NVIDIAやARMは設計に特化し、製造を外部に委託するファブレス企業として成長しました。
1990年代以降、技術開発の難易度が高まるなか、アメリカを中心にファブレス化が進展しました。
設計や技術開発のみに集中できる環境が整い、技術力をさらに進化させる企業が増え、発展に寄与したのです。
台湾TSMCを筆頭にしたアジア勢のファウンドリ企業
1960年代以降、台湾やマレーシアでは、アメリカの半導体企業からアッセンブリやテスト、半導体後工程のアウトソーシングを担ってきました。
台湾は、後工程においてアジア圏でリードしていた背景があります。
台湾のTSMCは、先端技術製品の開発や製造を行う世界最大手のファウンドリ企業として成長しました。
マレーシアは、アメリカやヨーロッパの半導体メーカーが集積しており、『東洋のシリコンバレー』と称されています。
近年では、外交面や文化面での中立性を活かし、バランスよく各国と交渉を進めています。
今後の半導体業界|短期で不安定も長期では伸長
スマートフォンやタブレットなどの需要が低迷してきたことや、多くの半導体製造工場を完成させ稼働率が上がったことで、一時的に供給過多となり低価格化が進み、日本の半導体業界の衰退が進む可能性があります。
一方で、今後、半導体需要は『6G通信』『AI』『自動車』などの分野で大きく増加すると予想されます。
これらの新技術発展に伴い、半導体の開発や使用は増加すると予想されます。
今後の日本における半導体産業の立ち位置
日本の半導体産業は、IoT関連の技術や製造装置の技術を糧にうまく時流をキャッチできれば、今後も世界各国を相手に活躍できる可能性があります。
日本は、IoT技術に必要なセンサー技術において世界的な競争力を持っています。
センサー技術とは、自動車の安全運転支援システムや、イメージセンサーによる高画質な画像の高速処理などです。
日本は、半導体製造装置、特にリソグラフィ装置やエッチング装置などの高精度技術に強みを持っています。
参考記事:半導体製造装置のシェアと最新の市場動向まで詳しく解説
まとめ
半導体は生活や社会インフラに幅広く使われ、現代社会に不可欠な存在です。その需要は国内外で高く、高機能な電子機器の進化により重要性はさらに増すと考えられます。特に半導体の高性能化は、半導体製造装置の性能に大きく依存しています。
半導体産業は約80年前にアメリカで誕生し、一時期日本がリードしましたが、現在では他国に遅れを取る状況です。それでも、多くの半導体素子が開発され、私たちの生活に欠かせない製品を生み出してきました。今後は新たな技術開拓を通じて、国内外の企業と競い合い、さらなる製品開発が進むことが期待されます。
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