半導体製造装置のシェアと最新の市場動向まで詳しく解説
こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
弊社は半導体製造装置へのフッ素樹脂コーティングや表面処理を数多く手がける加工メーカーです。本記事では、半導体製造装置市場の最新トレンドを分かりやすく解説します。主要企業の市場シェア、最先端技術の導入と進化、さらには主要国の国家政策の影響についても触れています。急速に進化する技術革新の中で、どの企業が市場をリードしているのか?初心者にも分かりやすい内容になっていますので、ぜひお読みください。
半導体製造装置への表面処理をご検討されている方は、ぜひ吉田SKTまでご相談ください。
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半導体製造装置とは
半導体製造装置とは、半導体デバイス(電子機器の中核となる電子部品)を製造するために必要な装置の総称です。半導体製造工程は大きく前工程と後工程に分かれ、各工程で異なる装置が使用されます。これらの装置は、高度な精密技術を用いて、ナノメートル単位の微細なパターンを作り出すことができます。
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前工程
前工程では、シリコンウエハ(半導体の基板となる薄い円盤状のシリコン板)の生成から各種の加工プロセス、ウェーハの検査までが行われます。この工程で使用される装置には、洗浄装置、フォトリソグラフィ装置(光を使って回路パターンを転写する装置)、エッチング装置(不要な部分を削り取る装置)、成膜装置(薄い膜を形成する装置)、イオン注入装置(特定の原子を半導体に注入する装置)、平坦化装置などがあります。
後工程
後工程では、シリコンウエハ上に作られた半導体チップを細かく切り出してチップ完成まで進めます。この工程で使用される装置には、ダイシング装置(ウェハから個々のチップを切り出す装置)、ダイボンディング装置(チップをパッケージや基板に接着する装置)、ワイヤボンディング装置(チップと外部端子を細い金属線で接続する装置)、モールド装置(チップと配線を樹脂で保護する装置)、検査装置などがあります。
半導体製造装置市場は高度な技術革新が進み、各メーカーが競争を繰り広げています。次に半導体製造装置のシェアを見ていきましょう。
関連記事:半導体の製造プロセスを徹底解説!半導体の仕組み・製造の流れの理解をサポート
半導体製造装置の重要性と市場規模
半導体製造装置は、デジタル社会の基盤となる半導体チップの生産に不可欠です。IoT、AI、5G通信などの新技術の普及により、半導体需要は急増しており、それに伴い製造装置の市場も拡大しています。2023年の世界半導体製造装置市場は約900億ドル規模と推定され、2024年以降もさらなる成長が予想されています。この市場の動向は、テクノロジー産業全体の健全性を示す重要な指標となっています。
主要プレイヤーのシェアランキング
半導体製造装置は、半導体チップの製造プロセスにおいて欠かせない機器です。市場は高度な技術革新が進み、各半導体装置メーカーが競争を繰り広げています。令和5年(2023年)経済産業省の資料に基づき、主要プレイヤーのシェアを見ていきましょう。
描画装置のシェア
- IMS Nano Fabrication(オーストリア): 53.4%
(IMS Nano Fabricationは電子ビーム描画装置のトップシェア企業) - ニューフレアテクノロジー(日本): 26.3%
- Vistec(ドイツ): 11.9%
- 日本電子(日本): 8.4%
露光装置のシェア
- ASML(オランダ): 92.8%(ASMLは最先端の露光装置を製造する世界最大の企業)
- ニコン(日本): 4.6%
- キヤノン(日本): 2.6%
コータ/デベロッパ(フォトレジストと呼ばれる感光性物質を塗布し現像する装置)のシェア
- 東京エレクトロン(日本): 84.1%
- SCREEN(日本): 3.4%
- その他: 12.5%
成膜装置のシェア
CVD装置(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長。気体原料から薄膜を作る装置)
- アプライドマテリアルズ(米国): 35.8%
- Lam Research(米国): 17.2%
- 東京エレクトロン(日本): 14.0%
- ASM(オランダ):11.1%
- KOKUSAI ELECTRIC(日本):8.3%
- その他:13.5%
スパッタリング装置(物理的に原子をはじき飛ばして薄膜を形成する装置)
- アプライドマテリアルズ(米国): 86.5%
LPE装置(Liquid Phase Epitaxy:液相エピタキシー。液体原料から結晶を成長させる装置)
- ASM(オランダ): 44.9%
エッチング装置のシェア
- Lam Research(米国): 37.7%
- 東京エレクトロン(日本): 25.3%
- アプライドマテリアルズ(米国): 23.5%
- 日立ハイテク(日本): 5.7%
洗浄装置(枚葉式)のシェア
- SCREEN(日本): 34.7%
- SEMES(韓国): 24.4%
- 東京エレクトロン(日本): 22.0%
熱処理装置のシェア
- アプライドマテリアルズ(米国): 40.7%
- 東京エレクトロン(日本): 23.2%
- KOKUSAI ELECTRIC(日本): 19.8%
CMP装置(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨で表面を平坦化する装置)のシェア
- アプライドマテリアルズ(米国): 40.7%
- 荏原製作所(日本): 37.0%
イオン注入装置のシェア
- Axcelis(米国): 39.6%
- アプライドマテリアルズ(米国): 23.2%
計測・検査・制御装置のシェア
- KLA(米国): 66.0%
- ASML(オランダ): 12.8%
参考資料:半導体・デジタル産業戦略(経済産業省)
日本企業の競争力と今後の展望
日本の半導体製造装置メーカーは、長年にわたり培ってきた高度な技術力と卓越した品質管理によって、世界市場で重要な地位を占めています。特に、東京エレクトロン、SCREEN、ニコン、キヤノンといった企業は、特定の装置分野で高いシェアを維持し、グローバル市場で存在感を示しています。
日本企業の強み
- 精密技術に基づく高精度・高品質な製造装置の開発力
- 数十年にわたる業界経験から生まれる信頼性
- グローバル顧客との強固な関係性と細やかなサポート体制
- 持続可能な製造プロセスへの積極的な取り組み
これらの強みにより、日本企業は特にウェハー洗浄装置、コータ・デベロッパー、検査・測定装置などの分野で高い競争力を維持しています。
直面する課題
しかしながら、半導体製造装置市場全体における日本企業のシェアは、以下の要因により低下傾向にあります。
- 欧米企業による積極的な統合と規模の経済の追求
- 新興国企業の台頭と価格競争の激化
- 最先端プロセス技術への大規模投資の遅れ
今後の展望
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の日本製半導体製造装置(2024年7月版)の最新予測によると、日本の半導体製造装置産業は今後も着実な成長が見込まれています。
- 2024年度:販売高4兆2522億円(前年度比15%増)
- 2025年度:販売高4兆6774億円(2024年度比10%増)
- 2026年度:販売高5兆1452億円(2025年度比10%増)
※日本製とは、海外拠点含む日系企業の国内外の販売額合計を指す
この成長の背景には、以下のような要因があります。
- メモリー投資の回復見込み
- AI関連半導体(GPUやHBMなど)の需要増加
- ロジック・ファウンドリー分野での堅調な投資
特に、2026年度にはAI関連半導体の需要拡大が本格化し、市場を大きく押し上げると予想されています。
半導体素材市場について
半導体製造装置市場だけでなく、日本企業は半導体素材の分野で依然として世界的に強い存在です。具体的には、信越化学工業やSUMCOなどがシリコンウェーハ市場で大きなシェアを持ち、東京応化工業やJSRなどもフォトレジスト(回路パターンを形成するための感光性物質)などの先端材料を供給しています。これらの企業は高品質な製品を提供し、グローバル市場での競争力を維持しています。特に、信越化学工業とSUMCOはシリコンウェーハの分野で世界トップクラスのシェアを誇ります。
- 信越化学工業 (Shin-Etsu Chemical) – シリコンウェーハの世界的なリーダーであり、半導体材料分野で重要な役割を果たしています。
- SUMCO – 信越化学と並ぶシリコンウェーハメーカーで、世界市場でのシェアも大きいです。
- 東京応化工業 (Tokyo Ohka Kogyo) – フォトレジストなどの半導体製造に必要な化学材料を供給しています。
- JSR – フォトレジストやCMPスラリーなど、先端半導体材料を提供しています。
- 三菱ケミカル (Mitsubishi Chemical) – 幅広い半導体関連材料を提供し、業界における存在感を持っています。
日本企業は、高純度なシリコンウェーハや、高度なフォトレジスト材料の開発力において世界をリードしており、これらの材料は、高性能な半導体デバイスの製造に不可欠な要素となっています。
参考記事:半導体製造に使われるウエハーとは~概要や用途、製造工程などを徹底解説
半導体製造の動向
2024年7月現在、半導体業界は急速な技術革新と地政学的な変化の渦中にあります。ここでは半導体製造技術動向から国際的な政策まで、現在の半導体産業の包括的な概要をお伝えします。記載される情報は、2024年7月時点での状況を反映していますが、この分野の急速な変化を考慮すると、今後さらなる進展が予想されます。それでは、現在の半導体製造の動向について詳しく見ていきましょう。
最新技術の導入と進化
半導体製造装置業界では、微細加工技術の進化が著しく、TSMCやサムスン電子は2025年までに2nm(ナノメートル:10億分の1メートル)の半導体の量産を開始する計画です。また、ラピダスは2025年に2nm半導体の試作ラインを稼働させ、2027年には量産を計画しています。
※計画は変更される可能性があります。
国際的な製造拠点の設立
ASML(オランダ)やLam Research(米国)は日本に支援拠点を設立し、TSMCの熊本工場やラピダスの北海道工場に装置を提供する計画です。これにより、最先端の半導体製造技術が日本国内で利用可能になります。
輸出規制の強化
米国は中国に対する半導体製造装置の輸出規制を強化し、中国への先端技術の流出を防ぐ措置を取っています。これにより、中国の先端半導体製造能力の向上が制約されています。
主要国の半導体政策
米中対立の中で、主要国(日本、米国、欧州)は国家安全保障と半導体製造能力の強化を目指して大規模な政策を実施しています。報道によると、米国は2022年に「CHIPS法」を成立させ、半導体製造・研究開発支援のために527億ドルの資金提供を計画しています。日本、米国、欧州がそれぞれ経済安全保障の観点から国内の半導体製造能力を強化するための支援策を実施しています。一方、中国は自己完結型サプライチェーンの構築を目指し、大規模な投資を行っています。
技術トレンド
最新の技術トレンドとして、微細加工技術の進化(例:2nm技術)や3次元実装技術(チップを立体的に積層する技術)、ヘテロジニアスインテグレーション(異種チップ集積:異なる種類や機能のチップを1つのパッケージに統合する技術)技術が進展しています。
3次元実装技術では、シリコン貫通ビア(TSV)やファンアウトパネルレベルパッケージング(FOPLP)などを利用することで、チップを立体的に積層し、より高密度な実装を実現します。ヘテロジニアスインテグレーションでは、AIアクセラレータやメモリチップなど、異なる機能を持つチップを1つのパッケージに統合することで、より高性能なシステムを実現することができます。さらに、光電融合技術の開発により、高速かつ低消費電力の通信基盤が構築されつつあります。
AI半導体の進展
生成AIの進展やデータセンターでの使用拡大により、AI向け半導体市場が急成長しており、2027年には1194億ドルに達するとの予測もあります。さらに、NVIDIAやGoogle、Amazonなどの大手企業がAI専用半導体チップの開発を進めています。
環境への配慮と持続可能性
半導体製造業界では、環境負荷の低減と持続可能な製造プロセスの確立が重要な課題となっています。多くの企業が、以下のような取り組みを進めています。
- エネルギー効率の高い製造装置の開発
- 水使用量の削減とリサイクル
- 有害物質の使用削減と適切な処理
- 再生可能エネルギーの積極的な導入
これらの取り組みは、環境保護だけでなく、長期的なコスト削減にもつながり、企業の競争力強化にも寄与しています。今後、環境への配慮は半導体製造装置の開発と選定において、さらに重要な要素となることが予想されます。
まとめ
本記事では、半導体製造装置の市場シェアや半導体製造の動向について解説しました。半導体製造装置の基本的な役割と種類や半導体産業の最新動向を深掘りしました。急速に進化する半導体製造装置業界では、技術革新が絶え間なく進んでいます。今後の市場動向や技術革新の方向性を見据えたビジネス戦略を考える一助となれば幸いです。
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