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PFAS(有機フッ素化合物)とは?基礎知識からPFAS使用規制とその影響まで解説

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健康や環境への影響が指摘され、使用規制が進んでいることから、産業界で関心が高まっているPFAS(有機フッ素化合物)。この記事では、そもそもPFASとはどんな物質を指すのか、その定義や特性、具体的な用途などをおさらいします。さらに世界的に進む規制のあらましとその影響について紹介しています。PFASの基本的な知識から現在の動向までを押さえておきたい方は、ぜひご覧ください。

1. PFASとは?

PFASの定義と種類

PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)は、有機フッ素化合物の総称です。フッ素樹脂PTFE、PFAなどを含む10,000種以上の物質があります。これらの化合物は炭素-フッ素結合を持つため、非常に安定しており、熱や化学薬品に強いという特性を持ちます。

PFAS分類図

上の図は、PFASの分類を示しています。すべてのフッ素化合物の中で、有機フッ素化合物に属するPFASは、ペルフルオロアルキル化合物(PFOSやPFOAなど)とポリフルオロアルキル化合物(PTFE、PFA、FEPなど)に大別されます。

PFASの特性

先に述べたようにPFASは安定した構造を持つことから、耐熱性、耐薬品性、撥水・撥油性などの優れた特性を発揮します。これらの特性により、PFASは幅広い用途で使用されていますが、同時に環境中で分解されにくく、一部のPFASは生物の体内に蓄積しやすいという問題も抱えています。

2. PFASの用途と応用

身の回りでの使用例

PFASは多くの生活用品に使用されています。例えば、調理器具のノンスティックコーティング、耐油性包装材、撥水加工された衣類やカーペットなどです。

産業での利用例

PFASは産業分野でも広く利用されています。半導体製造、消火剤、電気絶縁体、塗料やコーティング剤など、PFASの優れた特性を活かした用途は多岐にわたります。

国内のニュースで取り上げられるPFASの用途と影響

国内のニュースなどでは、PFASがコーティング剤、消火剤、防汚加工品などに使用され、長期的な使用によって環境汚染や健康への影響があると指摘されています。例えば、河川や地下水、さらに水道水への一定濃度のPFAS(PFOS、 PFOA)の検出が報道されており、自治体や規制当局はその対策に乗り出しています。

3. 健康と環境への影響

PFASの健康上への懸念

PFASに含まれる個々の物質は性質にそれぞれ違いがあり、現在確認されている健康上への懸念についてもすべてのPFASに当てはまるわけではありません。
一般社団法人弗素樹脂工業会(JFIA)ウェブサイトのQ&Aには

とあります。
PFOS、 PFOA、PFHxS(の塩及びそれら関連物質)は“特定PFAS”と呼ばれ、日本も加盟するPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)ですでに製造および使用の廃絶または制限の対象となっています。

環境への影響と問題点

特定PFASは環境中で広範に拡散し、水質汚染や土壌汚染を引き起こしています。特に地下水や河川に蓄積することで、飲料水として利用される水源への影響が問題視されています。PFAS汚染の除去は技術的にも費用的にも難しく、多くの地域で対策が求められています。

4. PFASの規制とは?

世界的な規制状況

難分解性を持つPFASは、環境に長期間残留する可能性が高いため、排出量を最小限に抑えるための規制が世界各国で検討されています。特に欧州では、PFASの使用制限に向けた厳しい規制が提案されています。

日本におけるPFAS規制

日本では「PFASの健康上への懸念」の項で触れたPOPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)に基づき、PFASの一種であるPFOAおよびPFOSを規制しています。2021年にPFOAが化審法の第一種特定化学物質に指定され、2023年4月からPFOAとその塩及びPFOA関連物質の製造・使用等が原則禁止されました。PFOSについても同様に、2010年から規制が行われています。

環境省は、PFOSとPFOAの排出について、水質管理目標設定項目に位置づけ、合算値で50ng/L以下とする暫定目標値を定めています。

EUにおける規制提案

EUでは、以下のような規制濃度が提案されています(2023年現在)

  • 1つの種類のPFASで25ppb未満(0.00000025%未満)(ポリマー除く)
  • PFAS合計で250ppb未満(0.0000025%未満)(ポリマー除く)
  • ポリマーPFAS(フッ素樹脂)合計で50ppm未満(0.005%未満)

これらの提案が採択された場合、EU域内でフッ素樹脂を含むほぼすべてのPFASの使用が制限される可能性があります。

参考記事:PFAS規制について

5. フッ素樹脂の規制の影響について

フッ素樹脂とは?

フッ素樹脂は、その構造上の定義からPFASに含まれますが、有害性、難分解性、高蓄積性が認められているPFOSやPFOAとは区別され、環境や健康への影響が小さいとされています。ただし、製造過程や分解時に有害な物質が生成される可能性があるため、さらなる研究が待たれます。フッ素樹脂は、耐熱性、耐薬品性、撥水性、非粘着性といった独自の特性を持ち、多くの産業で使用されています。

上の図は、フッ素樹脂PTFEの基本構造を示しています。炭素原子(C)とフッ素原子(F)が強固に結合し、この構造が繰り返されることで、フッ素樹脂特有の性質が生まれます。

フッ素樹脂の規制による影響

先に述べたように、EUではフッ素樹脂を含むフッ素化合物全般への規制が提案されています。

フッ素樹脂が規制されることで、EU域内では自動車、半導体、化学工業、航空宇宙、医療医薬など、さまざまな業界での使用が制限される可能性があります。この影響はEU域内に留まらず、世界の産業に広範な影響を及ぼす可能性があります。

フッ素樹脂には完全な代替品がなく、その機能は独自の組み合わせです。仮に代替品の開発が可能であるとしても、数年から数十年かかるため、フッ素樹脂の廃止は、イノベーションや製品開発に大きな影響を与える可能性があります。

6. PFOSとPFOAとは?

PFOSの特性と規制

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)は、1940年代に米国で開発されました。優れた撥水・撥油性、耐熱性、耐薬品性を持ち、撥水剤や泡消火薬剤などに使用されてきました。しかし、発がん性などの健康リスクが指摘され、現在は国際的に規制されています。日本国内でも、化審法に基づき2010年に製造、輸入等が原則禁止されています。

上の図は、PFOSの化学構造を示しています。8個の炭素原子に多数のフッ素原子が結合し、末端にスルホン酸基(SO3H)が付いた構造が特徴です。

PFOAの特性と規制

PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、PFOSと同様の性質を持ち、かつてはフッ素樹脂塗料や包装紙の撥水加工などに使用されていました。しかし、2000年代から発がん性が疑われ始め、主要メーカーは2015年から自主的にPFOAの使用を廃止しています。日本国内では、化審法に基づき2021年に製造、輸入等が原則禁止され、2023年4月からはさらに厳しい規制が施行されました。

上の図は、PFOAの化学構造を示しています。PFOSと同様に8個の炭素原子に多数のフッ素原子が結合していますが、末端にカルボキシル基(COOH)が付いている点が異なります。

参考記事:PFAS、PFOS、PFOA、PTFEは何が違うの?フッ素樹脂との違いまで解説

7. PFASに関する最新情報

最新の研究結果

最新の研究では、PFASの健康影響に関する新たな知見が報告されています。例えば、PFASが内分泌系に及ぼす影響や、特定のがんとの関連性についての研究が進められています。また、PFASの生体内半減期は非常に長く、世代を超えて影響が及ぶ可能性も指摘されています。さらに、環境中でのPFASの分解過程や、食物連鎖を通じた生物濃縮に関する研究も進められています。

今後の展望と課題

PFAS問題の解決には、さらなる研究と規制の強化が必要です。環境中のPFAS濃度を低減させるための技術開発や、健康リスクを低減させるための新たな政策の導入が求められています。また、安全な代替物質の開発も重要な課題となっています。今後もPFASに関する情報を収集し、適切な対策を講じることが重要です。