表面処理のご相談

半導体製造装置部品の特徴や種類~一般装置部品との違いや具体例も解説

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こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。

生活家電やスマートフォンなど、幅広い製品に使用される半導体は、私たちの生活に欠かせない存在です。そのような半導体を製造する装置には、実にさまざまな部品が使用されています。
この記事では、半導体製造装置に使用される部品の種類や特徴をわかりやすく解説します。一般装置部品との違いもわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてください。

弊社は半導体製造装置へのフッ素樹脂コーティングや表面処理を数多く手がけてきました。コンタミを防止し金属イオンの変化を防ぐ表面処理は、半導体製造装置部品にとって重要な工程です。半導体製造装置の表面処理をご検討されている方は、ぜひ吉田SKTまでご相談ください。

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半導体製造装置部品の需要が高まる背景

冒頭でもお伝えしたとおり、半導体は私たちの生活に密接に関わっています。

パソコンやエアコン、炊飯器など、電子部品によって稼働する製品には、半導体が必要不可欠です。また、半導体は交通・通信などの社会インフラにも多用されているため、社会のスマート化が進むごとに需要が高まっています。

それと同時に、半導体を製造する装置や、装置を構成する「半導体製造装置部品」の必要性も高まる一方です。高い加工精度や耐久性を実現する、高品質な製造装置部品が求められています。

半導体製造装置部品とは

半導体製造装置部品とは、半導体の製造装置を構成する部品のことです。半導体の製造には工程ごとに多くの装置が必要であり、それぞれにさまざまな部品が使用されています。

「加工品の精度は、それを加工する装置の精度によって決定される」という工作機械の母性原理により、精密な半導体を製造するためには、より精密な部品が求められます。半導体の製造過程で使用される装置は、その1つ1つが高精度の部品で構成されており、高い加工技術によって生み出されているのです。

半導体製造装置部品の特徴

半導体製造装置部品には、一般装置部品とは異なる特徴があります。

部品の加工精度が高い

半導体製造装置に用いられる部品には、一般製造装置よりもさらに高いレベルの加工精度が求められます。

半導体は、微細な傷が1つあるだけで機能しなくなるデリケートな製品です。そのような半導体を製造する装置の部品には、ミクロンレベルの精度が必要とされます。

特殊な材料が使用されている

半導体製造装置部品には、特殊な材料が多用されています。そのような半導体の製造には、高負荷の工程がつきものです。高負荷の工程に耐えるためには、高い強度を持つ特殊な材料が必要になります。また、部品によっては、化学反応を引き起こすための素材が用いられることもあるでしょう。

代表的な素材とその特徴を、以下の表にまとめます。

モリブデン 高温下での形状安定性に優れる高融点金属の一種です。加工性も高く、複雑な形状にも対応できます。
タングステン モリブデンよりもさらに融点が高く、頑強ながらも優れた加工性を持ちます。
セラミック プラズマが発生する製造過程において、耐プラズマ性に優れたファインセラミックが活躍しています。
石英 光学特性に影響を与えず、耐熱性や耐薬品性に優れた石英ガラスが多用されています。
カーボン 耐熱性や導電性に優れたカーボングラファイトが多用されています。

また、半導体製造装置部品にはアルミニウムも多用されていますが、ほとんどの場合「アルマイト」という表面処理が施されます。アルマイトとは、アルミニウムを電解処理して酸化被膜を形成する表面処理のことです。これによりアルミニウムの耐食性が向上し、腐食や摩耗に強くなる効果を期待できます。

材料を直接削る「直接加工」が主流

半導体製造装置部品には高い精度が求められるため、材料のブロックを直接削る「直接加工」が多用されています。溶接や型抜きなどの加工方法は製品に加工跡が残りやすく、ミクロンレベルの精度が求められる部品には不向きなためです。

ただし、架台などの大型部品は溶接で作られていたり、溶接+曲げのように複数の加工方法を組み合わせる場合もあったりと、部品によってさまざま加工方法が用いられています。

半導体製造装置部品と一般装置部品の主な4つの違い

半導体製造装置部品は、一般装置部品と比べて主に以下の4つの違いがあります。

材料 特殊な素材が多く使用されている
形状 複雑な形状が多い
重さ 重量が重い部品が多い
コスト面 コストが高くなりやすい
表面処理 特殊な表面処理が必要

違い1. 材料

一般装置部品にはステンレスや鉄、アルミなどの素材が用いられるのに対し、半導体製造装置部品には特殊な素材が多く使用されています。分類としては合金や特殊樹脂が多く、用途に合わせて最適な素材が選択されます。

代表的な素材は、以下のとおりです。

  • モリブデン
  • タングステン
  • セラミック
  • 石英
  • カーボン
  • チタン合金
  • インコネル
  • 単結晶サファイア

違い2. 形状

半導体製造装置部品は、各工程で特殊な部品が必要です。加工方法も幅広く、一般装置部品と比べて形状が精密かつ複雑なものが多くなります。

違い3. 重さ

半導体製造装置部品には、強度の高い合金が頻繁に採用されています。そのため、一般的な製造装置部品と比べると、重量が重い部品も多いでしょう。その一方で、精密かつ素早い動きが求められるパーツも多く、軽量化を考慮した素材選びがなされています。

違い4. コスト面

上記のとおり特殊な素材が用いられるケースが多いことから、部品あたりのコストは自然と高くなります。高い加工精度を実現するため、技術レベルの高い加工法が用いられることも理由のひとつです。また、複雑な形状ほどコストも上がる傾向にあります。

違い5. 表面処理

半導体製造装置部品は、金属コンタミを嫌うケースがあります。その場合セラミックなど、非金属で強度の高い素材を使用しますが、硬すぎて素材を傷つける懸念や帯電の心配もあります。そのため、セラミックに加工できる帯電防止フッ素樹脂コーティングなど、特殊な表面処理を必要とする場合があります。

半導体・電子分野で選ばれる表面処理

半導体製造装置部品 6つの例

半導体製造装置にはさまざまな部品が使用されています。本記事では、例として以下の6つの部品を紹介します。

固定治具

固定治具とは、その名のとおり加工物(ワーク)を固定するための部品です。素材をガイドに沿って加工するため、途中でズレることのないよう固定する役割を担っています。

チップトレイ

チップトレイとは、半導体チップを保管・運搬するための部品です。半導体は微小な傷やホコリの付着が命取りとなるため、チップトレイに入れることで機能を損なわずに済みます。

真空チャンバー

真空チャンバーとは、装置の内部を真空状態にするための容器です。製造過程でプラズマを用いる装置には、真空装置が必要とされることが多くあります。真空チャンバーは真空装置の中核を担う部品であり、真空ポンプを用いることで真空空間を作り出すことが可能です。

真空バルブ

真空バルブは、上記の真空チャンバーに取り付けて使用する部品です。ガス栓のように大気と真空チャンバー内との接続を切り替えて、圧力差をコントロールする役割を担っています。

露光工程の各種部品

露光工程とは、電子回路のパターンを「ウエハー」と呼ばれるシリコンの板に焼き付ける工程です。

ガラスや石英などに形成したパターンを縮小して焼き付けるため、高性能なレンズが必要とされます。

イオン注入装置の各種部品

イオン注入とは、イオン化した物質を注入することで、固体の持つ特性になんらかの変化を与えることです。半導体の製造工程においては、ウエハーにイオン化した物質を注入し、電気制御を可能にする役割を担っています。

イオン注入装置は、イオン化した物質を注入する「ソースヘッド」やイオンを輸送する「ビームライン」などで構成されており、それぞれ耐熱性や熱伝導性に優れた部品が採用されています。

半導体製造装置の部品におけるコストダウンのポイント

半導体製造装置の部品の製造では、コストダウンの提案を求められることも多いでしょう。ここからは、半導体製造装置の部品におけるコストダウンのポイントを解説します。

最適な素材を選定する

ここまで解説したとおり、半導体製造装置の部品に使用されるのは特殊な素材です。希少な素材を用いると、それだけコストアップにつながります。ときには部品の用途を考慮し、性能を維持しつつ、コストダウンが可能な代替素材を提案することも重要でしょう。

部品の構造を極力シンプルにする

複雑な構造を持つ部品は製造の難易度が上がるため、コストアップにつながります。顧客からの要望をそのまま実現するだけではなく、強度を維持したシンプルな設計を提案し、コストダウンを図ることも大切です。

まとめ

半導体製造装置のなかでは、多種多様な部品たちが働いています。珍しい素材が用いられたり、複雑な構造が採用されたりすることも多く、一般製造装置の部品と比べるとコストが上がる傾向があります。

しかし、希少な素材も複雑な構造も、高精度の半導体を製造するためには必要不可欠な要素です。また、半導体の製造工程は過酷な環境に置かれることも多いため、精度を維持するためには部品を守るための処理が欠かせません。

吉田SKTは、半導体製造装置へのフッ素樹脂コーティングや、表面処理を数多く手がけてきました。半導体製造装置の表面処理をご検討されている方は、ぜひ吉田SKTまでご相談ください。