【新開発】離型性を向上させ、耐久性も抜群!CAS(セラミックアロイシステム)のご紹介

製造現場では、製品の品質向上と効率化が常に求められます。その中で、多くの企業が頭を悩ませているのが、生産工程における「くっつき」問題ではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、「CAS(セラミックアロイシステム)」という画期的なコーティング技術です。
CASは、セラミック系材料でつくる凸面とさまざまな離型材料を組み合わせることで、表面の離型性を飛躍的に向上させ、かつ耐久性の高いコーティングです。
本ページでは、CASの具体的な特徴やメリットについて詳しく解説していきます。
目次 [閉じる]
CASの特長
CASは、従来のコーティング技術では実現が難しかった、高い硬度と優れた離型性を両立した凸面のあるコーティングです。これと同じように凸面を成形する技術のひとつに溶射がありますが、2つの技術には大きな違いがあります。以下に技術の違いを解説します。
CASの凸面成形技術と溶射の違い

溶射は、基材に直接、高温で溶かした金属やセラミックを吹き付けて凸面を形成します。そのため表面はギザギザとした形状になります。それに対しCASは、丸みをおびたセラミックの凸面を形成することができます。
CASの丸みをおびた凸面は、柔らかい相手材の食い込みを抑え、粘着物の離型性を高める効果が期待できます。そのため、よりスムーズな離型を実現することができます。
また、溶射の上に離型コーティングを加工する方法もありますが、CASはこのような「溶射+コーティング」と比較しても、次のような優れた特長があります。
CASの5つの特長
優れた離型性
CASは、セラミック系の凸面と高離型材料を複合させることにより、従来の溶射技術やサンドブラストによる粗面化と比較して飛躍的に離型性を向上させます。これにより、スムーズな型離れや動作を実現し、製品への付着や汚れも抑制できます。
広い加工性
CASは金属やセラミックを溶融状態で吹き付ける必要がないため、従来の溶射+コーティングでは加工が難しかった形状や薄板にも対応可能です。
用途に合わせた凸面を選択可能
CASは、凸面の大きさを3タイプから選択できます。用途や求められる離型性に合わせて最適な大きさを選ぶことで、より効果的な表面処理を実現します。
ニーズに合わせた離型材料の選択
CASは、フッ素系とシリコーン系の離型材料をラインナップしており、対象物や使用環境に合わせて最適な材料を選択できます。複数の品番をラインナップしていますので、幅広いニーズに対応できます。
再加工が容易
従来の「溶射+コーティング」では、使用による劣化などにより再加工が必要になった場合、基材から削って剥離をしてから再加工をする必要がありました。そのため、基材にダメージを与え、再利用が困難な場合もありました。それに対し、CASはコーティングのみを剥離することができるため、基材へのダメージを最小限に抑え、製品の再利用回数を増やすことができます。
粘着テープ離型データ
吉田SKT の離型に優れるコーティングのひとつに、MRSコーティングがあります。MRSコーティングはシリコーン系のコーティングで、優れた離型性を持っています。
CASはMRSコーティングと比較しても、高い離型性と耐久性を兼ね備えています。
以下に、CASの代表品番と従来品の粘着テープ離型テストのグラフを示します。

グラフからわかるように、CASは従来品と比較して離型性において更なる性能の向上を実現しています。
※データは実測値であり、性能を保証するものではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。
物性比較表
シリコーン系
従来品 | 開発品 | ||||
表面状態 | 平滑 | 凸面あり | 凸面あり | ||
---|---|---|---|---|---|
凸面状態 | ― | ![]() |
![]() |
||
仕様品番 | MRS-014 | CTT-1014 | CAS-CX014 | CAS-CY014 | CAS-CZ014 |
膜厚 (μm) | 1-2 | 50-150 | 100-200 | 100-200 | 150-300 |
Ra (μm) | 0.1-0.5 | 10-13 | 7-11 | 10-14 | 18-22 |
鉛筆硬度(室温硬度) | 9H< | 9H< | 9H< | 9H< | 9H< |
粘着テープ離型テスト ガムテープ (N/cm) |
0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
粘着テープ離型テスト 強力両面テープ (N/cm) |
0.13 | 0.21 | 0.03 | 0.12 | 0.15 |
溶融PPシート離型テスト(180℃)※1 | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
※データは実測値であり、性能を保証するものではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。
(※1)溶融PPシート離型テスト方法
コーティング面をヒーターで180℃まで加熱し、PPシートを付着させた状態で引きあげた時の樹脂の付着を評価。
○:樹脂残りなし ×:樹脂残りあり
フッ素系
従来品 | 開発品 | ||||
表面状態 | 平滑 | 凸面あり | 凸面あり | ||
---|---|---|---|---|---|
凸面状態 | ― | ![]() |
![]() |
||
仕様品番 | TLS-200 | TLS-1200 | CAS-CX200 | CAS-CY200 | CAS-CZ200 |
膜厚 (μm) | 0-1 | 50-150 | 100-200 | 100-200 | 150-300 |
Ra (μm) | 0.1-0.5 | 10-13 | 7-11 | 10-14 | 18-22 |
鉛筆硬度(室温硬度) | ― | 9H< | 9H< | 9H< | 9H< |
粘着テープ離型テスト ガムテープ (N/cm) |
0.00 | 0.42 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
粘着テープ離型テスト 強力両面テープ (N/cm) |
0.75 | 2.16 | 0.20 | 0.36 | 0.34 |
溶融PPシート離型テスト(180℃)※1 | 〇 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
※データは実測値であり、性能を保証するものではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。
(※1)溶融PPシート離型テスト方法
コーティング面をヒーターで180℃まで加熱し、PPシートを付着させた状態で引きあげた時の樹脂の付着を評価。
○:樹脂残りなし ×:樹脂残りあり
まとめ
CASは、離型性を向上させる革新的なコーティング技術です。
優れた離型性、高い耐久性、用途に合わせた凸面の選択など、さまざまな特長を持つCASは、製造現場の生産性の向上や作業の効率化に貢献します。
吉田SKTではCASのほかにも、特殊な凸面構造をもった表面処理を数多く取り揃えています。興味のある方はぜひ他の技術もご覧ください。