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【新製品】ゴム用低摩擦コーティングGLCシリーズのご紹介

GLCシリーズは、グリップ性のあるゴム素材に、低摩擦性(滑り性)を付与する「ゴム用低摩擦コーティング」です。
この記事では、GLCシリーズの特長について詳しくご紹介します。

ゴム用低摩擦コーティングのシリーズ化の目的

近年、省力化や脱炭素化など軽量化へのニーズの高まりによりさまざまな素材へのコーティング需要が高まっています。なかでも、プラスチック材料やゴム材料へのコーティングのニーズが増え、ゴム材料に関しては、Oリングやパッキンなどの部品に滑り性を付与するなどのご要望があります。

お客様のニーズに応えるためゴムへの滑り性付与を目的としたGLCシリーズをラインナップしました。

GLCシリーズの特長

ゴム材料へのコーティングを実現するために必要な条件をご紹介します。

1)コーティング加工時の温度が、ゴム材料耐熱温度よりも低いこと

コーティングは、被膜を硬化させるために専用の設備で加熱処理を行います。
この処理温度が、ゴムの耐熱温度を超えてしまうと、物性を損なう原因となります。

2)ゴム材料のもつ伸縮性に追従できるコーティングであること

ゴムは弾性のある特殊な材料です。小さな力でも伸びたり縮んだりします。
そのため、コーティングもゴムの変形に対応する必要があります。
変形に対応できないコーティングは、割れてしまい、剥がれの原因ともなり、機能を発揮できません。

GLCシリーズは、低摩擦性を付与しながら、ゴムに対して有効な温度での処理を可能とし、またゴムの伸び縮みといった変形にも対応した画期的なコーティングシリーズです。

ゴムの摩擦係数測定

現在、ゴムの摩擦係数測定には決められた規格はなく、各社さまざまな方法により測定が行われています。

多くの場合、プラスチックフィルム等を測定する際のJIS規格である、JIS K 7125を参考とした独自の方法で測定が行われているようです。

ここで、吉田SKTで行っているゴムの摩擦係数測定方法についてご紹介します。

ゴムの摩擦係数測定方法

ゴム製のテストピースに、固定されたロールで線圧を加え、滑らせたときの摩擦係数を測定します。

ゴムの摩擦係数測定方法

摩擦係数は測定するゴムの材料や硬度、相手材、接触面の条件などにより、異なった値となる場合があります。 そのため摩擦係数を比較する際には、ブランクとしてコーティングを施していないゴムの摩擦係数を測定し、その値を100%としたときのコーティング品の摩擦係数の割合(%)をブランク比として評価しています。

ブランク比の算出式

(評価例)
コーティングなしのゴムの摩擦係数が0.500、
コーティングAを加工したゴムの摩擦係数が0.100だった場合、
上記の計算によりコーティングAの摩擦係数のブランク比は20%となります。

GLCシリーズの摩擦係数低減効果

以下にGLCコーティングを加工したことによる摩擦係数の低減効果をご紹介します。

摩擦係数低減効果グラフ

ゴム材料とコーティングの組み合わせによっては、動摩擦係数の値が1/10以下に低減しています。摩擦係数の低減は、言い換えれば滑り性が向上したということです。

このように、ゴムにGLCコーティングを施すことで、摩擦係数の大幅な低減、滑り性の向上を見込むことができます。

※数値は測定値であり、保証値ではありません。
※ゴムの硬度や相手材など、試験条件が変わると異なった値となる場合があります。
※ゴムは多様な種類、添加剤等を含む場合があるため、事前に十分な確認テストが必要です。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。

GLCシリーズのラインナップと物性比較表

GLCシリーズのうち、代表的な品番についてご紹介します。
ゴムには天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)など多くの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
それぞれのゴムとコーティングとの相性をみるため、ゴムごとに加工、評価を行い表にまとめました。

【試験に使用したゴムと硬度(ショアA)】

ゴム品種 ゴム硬度
NR 65°
CR 65°
NBR 70°
SBR 65°
EPDM 65°
CSM 70°
ウレタンゴム 70°
フッ素ゴム 80°
ブチルゴム 60°
アクリルゴム 60°
シリコーンゴム 70°

【GLC-F101】

GLC品番 ゴム品種 加工推奨 接触角(°)
H₂O
動摩擦係数
低減効果
粘着テープ離型
向上効果
GLC-F101 NR ×
CR ×
NBR ×
SBR ×
EPDM ×
CSM 107.0
ウレタンゴム ×
フッ素ゴム 98.8 ×
ブチルゴム 100.2
アクリルゴム 107.5 ×
シリコーンゴム ×

【GLC-F123】

GLC品番 ゴム品種 加工推奨 接触角(°)
H₂O
動摩擦係数
低減効果
粘着テープ離型
向上効果
GLC-F123 NR 117.2
CR 116.6
NBR 108.9
SBR ×
EPDM ×
CSM 112.7
ウレタンゴム 105.6
フッ素ゴム 111.6
ブチルゴム ×
アクリルゴム ×
シリコーンゴム 111.9 ×

【GLC-M315】

GLC品番 ゴム品種 加工推奨 接触角(°)
H₂O
動摩擦係数
低減効果
粘着テープ離型
向上効果
GLC-M315 NR 103.7 ×
CR 105.0
NBR 105.7 ×
SBR 106.0 ×
EPDM 108.0 ×
CSM 101.0
ウレタンゴム 104.0
フッ素ゴム 97.8 ×
ブチルゴム 104.2
アクリルゴム 104.3 ×
シリコーンゴム 107.8 ×

※摩擦係数・粘着テープ離型 評価方法
「動摩擦係数低減効果」と「粘着テープ離型向上効果」は、以下の計算式で「動摩擦係数」、「粘着テープ離型」のブランク比を算出し、下表の基準で評価しています。

評価方法

参考記事:粘着テープ離型・剥離力測定
https://www.y-skt.co.jp/measure-taperelease.html

参考記事:撥水・撥油・滑落角測定
https://www.y-skt.co.jp/measure-angle.html

ラインナップ

GLCシリーズには今回ご紹介した以外にも品番があります。
膜厚や加工温度など、簡単にご紹介します。

GLC品番 GLC-F101 GLC-F102 GLC-F108 GLC-F113 GLC-F123
膜厚 10μm程度 5μm程度 15μm程度 1μm程度 1μm程度
色調 クリア クリア クリア クリア
加工温度 200℃以下 200℃以下 200℃以下 100℃以下 100℃以下
コーティング材 フッ素系 フッ素系 フッ素系 フッ素系 フッ素系
GLC品番 GLC-S210 GLC-S224 GLC-M315 GLC-M322
膜厚 15μm程度 3μm程度 1μm程度 1μm程度
色調 クリア クリア クリア
加工温度 200℃以下 100℃以下 100℃以下 100℃以下
コーティング材 シリコーン系 シリコーン系 無機系 無機系

※色調:クリアは、コーティング材料の色みであることを意味します。
したがって、黒色のゴムの上にコーティングを施した場合、白っぽく見える場合があります。

まとめ

GLCシリーズは、ゴム素材に加工できる低摩擦コーティングですが、品番によっては非粘着性や撥水性にも優れさまざまな用途にご活用いただけます。

一方で、ゴム素材は用途によって多くの種類があり、同じ品種の同じ硬度のゴムであっても、添加剤などの配合が違うことがあります。コーティングを選定される際は、必ず弊社営業員にご相談頂き、事前のテストを行ってからご採用ください。

吉田SKTでは、さまざまな素材に加工ができるシリーズをラインナップしております。

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