【新開発】低温加工も可能!「セーフロン®」の潤滑グレード(LF+シリーズ)
この度、吉田SKTは帯電防止タイプフッ素樹脂コーティング「セーフロン®」の新シリーズ「セーフロン®LF+」を開発しました。
セーフロン®LF+の、LFは「Low Friction(低摩擦)」を意味し、潤滑性を向上させるとともに、低温加工が可能となっています。 LF+シリーズの開発によって、機能面だけでなく、色調・膜厚・加工性など条件選択の幅が広がります。
この記事では、「セーフロン®LF+」を詳しくご紹介いたします。
目次 [閉じる]
帯電防止タイプのフッ素樹脂コーティング「セーフロン®」とは
フッ素樹脂コーティングやテフロン™コーティングは、非粘着性、低摩擦性、耐薬品性、耐熱耐寒性、撥水性、電気絶縁性に優れる表面処理です。いっぽうで優れた電気絶縁性のため、静電気が発生する環境においては帯電しやすく、問題になる場合があります。
そこで、低い電気抵抗値を実現し、飛躍的に「帯電しにくい」性質を高めたのが帯電防止フッ素樹脂コーティング「セーフロン®」です。
セーフロン®LF+とは
開発品のセーフロン®LF+は、帯電防止性能は従来のセーフロン®と変わらないまま次の特徴を追加したセーフロン®の新シリーズです。
- 摩擦係数が低く、潤滑性に優れます。
- 機械的強度が高いため塗膜硬度や耐摩耗性に優れます。
- 通常フッ素樹脂コーティングでは400℃近い焼成が必要ですが、セーフロン®LF+は100℃以下で加工が可能な品番があります。
※LF+とはLow Frictionの略です。
セーフロン®LF+は、帯電防止性だけでなく機械的強度が求められるケースなど、これまでのセーフロン®シリーズで十分に対応できなかった用途で新たな選択肢としてお選びいただけます。
また、セーフロン®の加工には通常400℃程度の加熱が必要ですが、加工温度を100℃以下まで下げることを実現し、金属に限らず樹脂に対しても選択が可能となりました。
色のバリエーションも増え、色調の選択肢が広がりました。
ラインナップと物性比較表
今回開発したセーフロン®LF+シリーズのうち、代表的なラインナップの物性を下表にてご紹介します。
基材 | SUS304 | SUS304 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
コーティングの種類 | なし | 【開発品】セーフロン®LF+ | セーフロン® | |||
仕様品番 | ― | YE-3119BK | YE-3219BK | YE-3328GY | YE-3334GN | YE-702 |
色 | ― | 黒 | 黒 | 灰 | 緑 | 白 |
特長 | ― | 低温加工可能 (100℃以下) |
高潤滑 | 高離型 | 高離型 | 高離型 |
最高使用温度 | ― | 160℃ | 220℃ | 150℃ | 260℃ | 260℃ |
膜厚(μm) | ― | 30-60 | 15-30 | 15-30 | 20-40 | 30-60 |
鉛筆硬度(室温硬度) | 9H< | 3H | 3H | 2H | 3H | HB |
動摩擦係数 ※1 | 0.50-0.60 * | 0.06-0.07 | 0.09-0.10 | 0.05-0.06 | 0.06-0.08 | 0.09-0.11 |
接触角(°)H2O | 70-80 | 90-100 | 105-115 | 105-115 | 110-120 | 105-115 |
接触角(°)nHD | ~10 | 35-45 | 50-60 | 45-55 | 45-55 | 45-55 |
溶融PPシート 離型テスト(180℃)※2 |
× | × | × | 〇 | 〇 | 〇 |
漏洩抵抗値(25V) | ― | 103-105Ω | 103-105Ω | 104-106Ω | 103-105Ω | 104-105Ω |
表面抵抗率(10V) ※3 | ― | 106-108Ω/□ | 104-107Ω/□ | 106-108Ω/□ | 106-108Ω/□ | 105-106Ω/□ |
体積抵抗率(10V) ※3 | 7×10-5Ω・cm | 106-108Ω・cm | 105-107Ω・cm | 106-108Ω・cm | 106-108Ω・cm | 106-107Ω・cm |
*基材削れあり
※数値は実測値であり、保証値ではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。
※1 動摩擦係数 測定条件
測定子:SUS304 φ10mm 測定荷重:200g
※2 溶融PPシート離型テスト方法
コーティング面をヒーターで180℃まで加熱し、PPシートを付着させた状態で引きあげた時の樹脂の付着を評価。
○:樹脂残りなし ×:樹脂残りあり
※3 三菱化学株式会社製 Hiresta-Up MCP-HT450にて測定
課題解決事例
新開発のセーフロン®LF+をご採用いただいたお客様の課題解決事例をご紹介します。
有機ELに使用する特殊インクの流路への帯電防止コーティング
解決したかったお悩み、実現したかったこと
インクを扱っているお客様から、インクを入れるパンやタンクへのインク汚れを改善したいとご相談をいただきました。本件で使用されているインクは引火性があるため、引火防止対策が必須でした。そのため防汚性が期待でき、帯電防止性能を併せ持ったコーティングを探していました。
採用されたコーティング:YE-3328GYにより実現できた効果
以前検討されていたコーティングは事前のテストで塗膜の帯電防止性にばらつきがあり、不安視されていました。そこで帯電防止性能に優れたセーフロン®LF+をテストしていただいたところ、帯電防止性能・防汚性能共に良好で、ご採用をいただきました。
安定した導電性を保つことで、帯電防止性能を付与することができました。インクの汚れも改善でき、ご満足をいただくことができました。
焼成によるひずみを低減した帯電防止コーティング
解決したかったお悩み、実現したかったこと
半導体装置に使用される薄肉のアルミ部品へ帯電防止コーティングをしたいとご相談をいただきました。従来のフッ素系帯電防止コーティングは高い加工温度での焼成が必要であったため、アルミ部品のひずみを気にされていました。帯電防止性能を付与でき、薄肉のアルミ部品でもひずみにくいコーティングを探していました。
採用されたコーティング:YE-3119BKにより実現できた効果
帯電防止性能に優れたセーフロン®シリーズのうち、YE-3119BKは最低焼成温度が100℃以下と低く、焼成によるひずみの軽減が期待できるため、ご提案しました。テスト、実機での試作にて帯電防止性能の付与、ひずみ問題の解決が確認できたため、ご採用いただきました。
まとめ
新開発のセーフロン®LF+は、お客様のさまざまな環境や用途に対応できる帯電防止フッ素樹脂コーティングです。吉田SKTでは、耐食性、導電性、離型性に優れたセーフロン®AP+シリーズ、防汚性を高めたAS+シリーズなど、帯電防止フッ素樹脂コーティングでもお客様のご要望に沿える製品の開発に力をいれております。
お困りの際は、ぜひ吉田SKTにご相談ください。