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【新開発】透明性を維持できる帯電防止コーティングのご紹介

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この度、吉田SKTは基材の透明性を損なわずに帯電防止性能を付与できる画期的なコーティングを開発しました。
この記事でご紹介する新開発の透明帯電防止コーティングは、帯電防止フッ素樹脂コーティング「セーフロン®CC」、PFASフリーの「FFCCシリーズ」の2種類です。
加えて開発中のガラス飛散防止用フッ素樹脂コーティング「ノンスキャコート帯電防止タイプ」のご紹介をいたします。

開発経緯

私たちは時々、お客様から透明性の高い素材(ガラスやプラスチックなど)へのコーティングで、帯電防止性能を付加しながら透明性は保ちたいというご要望をいただきます。しかし、帯電防止性能を実現するためには通常、導電性の充填材を添加する必要があり、その結果コーティング膜が着色したり、透明性が低下したりします。そのため、透明性を維持しつつ帯電防止性能の高いコーティングを実現するのは難しい課題でした。

そんな中、私たちはこの課題に対する解決策として、「セーフロン®CC+」および「FFCCシリーズ」の開発に成功しました。これらの製品は、ガラスやプラスチックなどの基材に対して、透明性を損なわずに帯電防止性能を付与することが可能です。さらに、これらのコーティングには100℃以下の比較的低温で加工できる製品ラインナップもあります。そのため、プラスチックやゴムなど耐熱性に不安のある基材への加工も可能です。

ここからは、「セーフロン®CC+」、「FFCCシリーズ」について詳しく解説します。

帯電防止タイプのフッ素樹脂コーティング「セーフロン®

セーフロン®は吉田SKTが独自に開発した帯電防止フッ素樹脂コーティングです。優れた電気絶縁性を持つ一方で静電気が発生する環境においては帯電しやすいという、フッ素樹脂の課題を解決するため、低い電気抵抗値を実現。飛躍的に「帯電しにくい」性質を高めたコーティングです。

新開発「セーフロン®CC+

これまでのセーフロン®シリーズでは、透明性を必要とする用途に対応するラインナップがありませんでした。特にガラスやプラスチックなどの基材に、透明性を損なわずに帯電防止機能を実現することは技術的に大きな挑戦でした。
今回開発した「セーフロン® CC +」は、透明性を損なわないフッ素系のコーティングで、帯電防止性能を付与できるだけでなく、防汚性や撥水・撥油性など、さまざまな機能をもたらします。これにより、ガラスや樹脂といった素材が持つ透明性を生かしたまま、多機能性をもたせることが可能に。これまで透明性が求められるためにコーティングをあきらめていた分野で、大きなメリットがあります。
※CC+は「Clear Conductive」の略です。

新開発「FFCCシリーズ」

FFCCシリーズは非フッ素(pFas Free)で実現した、透明帯電防止コーティングです。フッ素樹脂を使用できない環境での新たな選択肢のひとつとして開発されました。
FFCCシリーズには防汚性と離型性に優れた仕様があり、用途に応じ、より適切な透明帯電防止コーティングをご提案することが可能です。
※FFCCの”FF”は、「pFas Free」の略です。

製品ラインナップと物性比較表

ご紹介しました「セーフロン®CC+」、「FFCCシリーズ」の代表的なラインナップと各仕様の物性表をご紹介します。

セーフロン®CC+ 製品ラインナップと物性比較表

セーフロン®CC+の加工適応表

コーティングの種類 基材のみ 基材のみ フッ素系
PC ガラス セーフロン®CC+
仕様品番 CCC1-F100 CCC1-F200
ガラスへの加工
汎用透明樹脂への加工 ×

セーフロン®CC+の物性比較表

基材 PC ガラス ガラス
コーティングの種類 基材のみ 基材のみ フッ素系
セーフロン®CC+
仕様品番 CCC1-F100 CCC1-F200
加工温度(℃) 260-300 60-80
透明性
(透過率(%)550nm)
90 92 85 86
膜厚(μm) ~1 ~1
鉛筆硬度 ※1 B 9H< 9H< 9H<
接触角(°)H2O 75-85 40-45 105-115 105-115
接触角(°)nHD ~15 ~10 60-70 50-65
離型性
(溶融PPシート
離型テスト(180℃)※2)
×
防汚性
(耐マジック汚染評価 ※3)
× × ◎◎
抵抗値
(表面抵抗率(10V) ※4)
1012Ω/□以上 1012Ω/□以上 105-107Ω/□ 105-108Ω/□

(※1)コーティングの硬度であり、樹脂基材の硬度を上げるものではありません
(※2)溶融PPシート離型テスト方法 
コーティング面をヒーターで180℃まで加熱し、PPシートを付着させた状態で引きあげた時の樹脂の付着を評価
○:樹脂残りなし △:やや樹脂残りあり ×:樹脂残りあり
(※3)耐マジック汚染評価方法
◆評価方法
1、各マジックでテストピース上にラインを書く。(3往復)
2、室温で10分間放置。
3、不織布でマジックのラインを10往復、空拭きする。
4、テストピース上のマジックの残り具合を確認する。

(※4)三菱化学株式会社製 Hiresta-UP MCP-HT450にて測定
※数値は実測値であり、保証値ではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。

「FFCCシリーズ」製品ラインナップと物性比較表

【PFASフリーコーティング】FFCCシリーズの加工適応表

コーティングの種類 基材のみ 基材のみ 非フッ素系
PC ガラス FFCC
仕様品番 FFCC1-000 FFCC1-S014
ガラスへの加工
汎用透明樹脂への加工 ×

【PFASフリーコーティング】FFCCシリーズの物性比較表

基材 PC ガラス ガラス
コーティングの種類 基材のみ 基材のみ 非フッ素系
FFCC
仕様品番 FFCC1-000 FFCC1-S014
加工温度(℃) 60-80 160-220
透明性
(透過率(%)550nm)
90 92 86 90
膜厚(μm) ~1 ~1
鉛筆硬度 ※1 B 9H< 9H< 9H<
接触角(°)H2O 75-85 40-45 50-60 90-105
接触角(°)nHD ~15 ~10 ~20 ~20
離型性
(溶融PPシート
離型テスト(180℃)※2)
× ×
防汚性
(耐マジック汚染評価 ※3)
× × ×
抵抗値
(表面抵抗率(10V) ※4)
1012Ω/□以上 1012Ω/□以上 105-107Ω/□ 105-107Ω/□

(※1)コーティングの硬度であり、樹脂基材の硬度を上げるものではありません
(※2)溶融PPシート離型テスト方法 
コーティング面をヒーターで180℃まで加熱し、PPシートを付着させた状態で引きあげた時の樹脂の付着を評価
○:樹脂残りなし △:やや樹脂残りあり ×:樹脂残りあり
(※3)耐マジック汚染評価方法
◆評価方法
1、各マジックでテストピース上にラインを書く。(3往復)
2、室温で10分間放置。
3、不織布でマジックのラインを10往復、空拭きする。
4、テストピース上のマジックの残り具合を確認する。

(※4)三菱化学株式会社製 Hiresta-UP MCP-HT450にて測定
※数値は実測値であり、保証値ではありません。
※実際の設計・仕様選定にあたっては、必ず当社までお問い合わせください。

動画で帯電防止コーティングの性能をチェック

プラスチックケースにFFCC1-000を施したものと未処理のものを用意し、それぞれに発泡ビーズを入れて振り混ぜることで、その帯電防止性の違いを比較しました。

開発中製品 ノンスキャコートの帯電防止タイプのご紹介

ノンスキャコートの帯電防止

開発中の帯電防止ノンスキャコートは、今回開発した透明な帯電防止コーティング技術を、ガラス飛散防止用フッ素樹脂コーティング「ノンスキャコート」に適用させる新しい試みです。

「ノンスキャコート」とは、ビーカーやフラスコなどのガラス製理化学器具にフッ素樹脂を塗布することで、器具が転倒や落下によって破損した際の、ガラス片の飛散を防ぐコーティングです。研究室や実験室の安全性を大幅に向上させることができるため、多くの研究施設や実験室での採用が進んでいます。
新たに開発中の帯電防止ノンスキャコートは、これに帯電防止機能を追加することで、その利便性と安全性をさらに高めることを目指しています。静電気による粉体の付着や、静電気放電による火花の発生を抑制し、安全性を向上させます。

ノンスキャコートについてくわしくはこちら

まとめ

吉田SKTの新開発セーフロン®CC+とFFCCシリーズは、基材の透明性を損なうことなく、帯電防止性やその他の機能を付与することが可能な革新的なコーティング技術です。これにより、光学的特性が重要な製品においても、安全性と機能性を向上させることができます。

吉田SKTには、耐食性、導電性、離型性に優れたセーフロン®APシリーズ、防汚性を高めたAS+シリーズなど、帯電防止コーティング製品においてもお客様のさまざまなご要望にお応えできる製品開発に力を入れております。
静電気における課題や問題が発生した際は、ぜひ吉田SKTにご相談ください。