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アルミニウム合金とは?特徴と種類、性質について解説

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こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。吉田SKTは、フッ素樹脂コーティングの分野で60年を超える豊富な経験をもつ表面処理加工メーカーです。

アルミニウム合金は、私たちの身近にある素材です。アルミホイルやジュースの缶などの日頃よく見かける商品から工業機械に至るまで、多彩な用途に使用されています。また、アルミニウム合金にはさまざまな種類があり特性も異なるため、用途ごとに最適な素材を選択できます。

この記事では、アルミニウム合金の種類と特徴、特性について解説します。アルミニウム合金の種類を選択する際は、ぜひご参考ください。

さらに、吉田SKTでは、アルミニウム合金へのコーティングや表面処理を提供しています。詳細は吉田SKTの公式サイトをご覧ください。お問い合わせもお待ちしております。

アルミニウム合金とは?メリット・デメリット

アルミニウム合金は、アルミニウムにその他の金属を混合して作った素材です。純度の高いアルミニウムが柔らかく軽い特性をもつのに対し、合金は混ぜた金属の種類によって伸展性や強度が変化します。これらの特徴を活かし、さまざまな用途に用いられます。

アルミニウム合金全体のメリットとしては、軽量で熱伝導性や電気伝導性に優れている点が挙げられます。比重は約2.7g/cm³で金属としては小さく、表面を酸化被膜が覆っているため、高い耐食性を持ちます。

一方で、アルミニウムの融点は約660℃であり鉄の1580℃と比べても低く、アルミニウム合金の耐熱性は高くありません。また、変形しやすいことや生産コストが大きいこともデメリットです。

アルミニウムとアルミニウム合金の違い

アルミニウムのうち、純度が99%以上のものを「純アルミニウム」と呼びます。純アルミニウムに他の金属を溶かしこんだものがアルミニウム合金です。

純アルミニウムの段階でも耐食性や熱伝導性・電気伝導性に優れた素材ですが、強度が低いため他の元素を加えてアルミニウム合金にすることで強度や腐食性を高めています。

純アルミニウム、アルミニウム合金の物性値は以下のとおりです。

▼普通純度アルミニウム(99.5質量%)

  • 密度:2.7g/cm³
  • 溶融点:650℃
  • 熱伝導度25℃(W/m・℃):225(軟質)
  • 線膨張係数20~100℃(/℃):23.5×10-6

▼アルミニウム合金

  • 密度:種類による
  • 溶融点:477℃~657℃(種類による)
  • 熱伝導度25℃(W/m・℃):種類による
  • 線膨張係数20~100℃(/℃):19.5~23.6×10-6(種類による)

【種類・規格別】アルミニウム合金の特性・用途(利用例)

アルミニウム合金には、4桁の国際アルミニウム合金名がつけられています。1000ごとに含まれている金属が異なるため、番号を見ればアルミにどの金属を加えた合金かが分かります。国際アルミニウム合金名には、1000系から8000系までが存在します。

1000系|高純度99%のアルミニウム

1000系は、高純度アルミニウムが該当します。

  • 特性:熱伝導性・電気伝導性がよく、柔らかく加工しやすい
  • 用途:電気器具や放熱材

やや強度が低めで構造材には向かないものの、熱処理が必要ない素材です。

2000系|銅との合金

2000系は、アルミニウムに銅を加えた熱処理型の合金です。

  • 特性:強度が上がり切削性に優れるが、耐食性が下がる
  • 用途:航空機や機械部品

ジュラルミン(A2017)が有名です。強度は上がりますが、耐錆加工の必要が生じる場合があります。

3000系|マンガンとの合金

3000系は、アルミニウムとマンガンの非熱処理型の合金です。

  • 特性:1000系の加工性と耐食性をそのままに強度が増している
  • 用途:複写機のドラム、アルミ缶、住宅外装 など

容器や建材などの幅広い用途に使われます。

4000系|ケイ素(シリコン)との合金

4000系は、アルミニウムにケイ素(シリコン)を添加した非熱処理型の合金です。

  • 特性:耐熱性・耐摩耗性に優れ、熱で膨張しにくい
  • 用途:建築パネル、ピストン、シリンダヘッド など

アルミニウム合金のなかでも、線膨張係数が特に低いのが特徴です。耐熱性に優れている点に加えて、融点が低いため溶接溶加材にも適しています。

5000系|マグネシウムとの合金

5000系は、アルミニウムとマグネシウムの非熱処理型の合金です。

  • 特性:加えるマグネシウムの量で強度が調整できる
  • 用途:添加量が比較的少ないものは装飾用、多いものは構造材として使用される

多くの種類のアルミニウム合金を作れるため、アルミニウム合金のなかでもメジャーな素材です。

6000系|マグネシウム、シリコンとの合金

6000系は、アルミニウムにシリコンとマグネシウムとシリコンを添加した熱処理型の合金です。

  • 特性:強度と耐食性に優れているが、溶接に用いる際は熱により強度が低下する
  • 用途:船舶・自動車部品、建築用サッシ、家電製品、機械構造材 など

経年損傷に強く、押し出し性に優れています。

7000系|亜鉛との合金

7000系は、アルミニウムに亜鉛とマグネシウムを混ぜた熱処理型の合金です。

  • 特性:アルミニウム合金中、もっとも高強度を誇る
  • 用途:車両、航空機、スキーストック など

熱処理型アルミニウム合金でもっとも強度が強く、日本で開発されたA7075は「最強のアルミニウム合金」と呼ばれています。

8000系|リチウムや鉄との合金

8000系アルミニウム合金は、それまでの系統に属さないその他の材料で構成されています。アルミ-リチウム系合金や急冷凝固粉末冶金合金などが該当します。

さまざまな合金が含まれる系統であり、特徴や用途もさまざまです。例えば、8021は鉄を添加して強度と圧延加工性を付加した、アルミ箔用の合金です。

アルミニウム合金の表面処理

アルミニウムは、耐食性を高め腐食を防ぐ目的で表面処理がほどこされる場合が多い素材です。

ここでは、アルマイト処理やメッキ、塗装など、アルミニウム合金にほどこされる表面処理について、その種類と効果を解説します。

アルマイト処理

アルマイト処理は、電気分解の原理を利用して人工的に金属表面に酸化被膜を形成する表面処理方法です。対象物を陽極側において通電して酸化させることから、陽極酸化処理(アルマイト)と呼ばれます。普通アルマイトと硬質アルマイト、超硬質アルマイト、封孔処理などがあります。

その特性は、耐食性と絶縁性の付与です。また、耐摩耗性や硬度の上昇、熱伝導性の改善の効果も得られます。

カラーアルマイト処理を用いると、素材表面をカラフルに彩ることも可能です。

関連記事:アルマイト処理(表面処理)とは?処理工程やメリット・デメリットを解説

メッキと塗装

メッキは、材料の表面に他の金属を析出させることで、材料を金属被膜で覆う表面処理です。電流による還元作用を用いた電解メッキと、化学変化を用いた無電解メッキの2種類に大きく分かれます。

塗装は、樹脂被膜をスプレーガンなどで表面に吹き付け、付着させる処理です。

板金部品では水溶性の樹脂にアルミを入れ、電気を流して塗装する電着塗装が一般的に用いられています。大量生産に優れており、均一に塗装できる点がメリットです。

関連記事:メッキとは?種類と特徴、他の表面処理との違いやメリット・デメリットまで解説
関連記事:表面処理とは?種類や目的、処理方法など知っておきたい基礎知識を解説(塗装編)

アルミニウム合金の選び方

ここまで見てきたようにアルミニウム合金の種類は数多く、その特性もさまざまです。
ここからは、素材として特に重視したい性質でアルミニウム合金を選ぶ方法について解説します。

強度|系統番号を参照する

強度を基準としてアルミニウム合金を選ぶと、以下の順番になります。

純アルミの1000系合金 マンガンを添加した3000系合金 マグネシウムを添加した5000系合金 マグネシウム、シリコンを添加した6000系合金 銅を添加した2000系合金 亜鉛を添加した7000系

おおむね番号順になりますが、2000系合金は7000系につぐ強度です。

引張強度については60MP(メガパスカル)から590MPまで広範囲に分布しているため、用途に合った合金を選びましょう。

耐食性|1070・1080など

耐食性を重視したい場合、素材がどのような環境下で用いられるかで選ぶべき素材が異なります。環境によっては、腐食促進試験と実際の結果が一致しないこともありえます。

基本的には耐食性が求められる素材ならば、1070や1080の高純度のアルミニウムを検討しましょう。耐水性に関しては、淡水なら3003、海水なら5052や5083が優れています。

素材そのものの耐食性も重要ですが、アルマイト処理を施すことで改善する可能性もあります。

加工性|1100・3003・3004

加工性の観点で考えると、純アルミニウム系統の1100、マンガン系統の3003や3004を選びましょう。

切削材料としての加工性は2011が特に優れていますが、耐食性がかなり劣ります。

また、アルミニウム合金は押し出し加工による種々の断面構造をもった材料の製造が可能なことが利点であり、断面形状を有効利用することでトータルコストの軽減が見込めます。

溶接性|7204・7003・5083

溶接性については、純アルミニウムの1000系列、あるいは亜鉛、マグネシウム系統の7003や7204、シリコン、マグネシウム系の5083が優れています。溶接後の強度を重要視する場合には7204か7003を、耐食性を重視する場合は5083が選択される傾向があります。

6000系のアルミニウム-シリコン系の合金は溶接により強度が低下するため、溶接性を重視するなら選択を避けたほうがよいでしょう。

まとめ

アルミニウム合金は軽量でありながら高い強度を持つことから、航空宇宙、自動車、建築など多岐にわたる分野で利用されています。また、表面処理を施すことによって、これらの特性をさらに強化し、耐久性や耐腐食性を向上させることができます。

株式会社吉田SKTでは、お客様の具体的なニーズに応じたコーティングや表面処理をご提案させていただきます。アルミニウム合金のコーティング・表面処理に関してご質問やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

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