なぜ半導体が不足しているのかをわかりやすく解説 ~半導体不足の影響や今後の展望とは
半導体は、パソコンやスマートフォンにも使用され、もはや日常生活だけにとどまらず社会生活を送るうえに必要不可欠なものです。しかし、2020年後半ごろから発生した半導体不足は何が原因だったのか、2024年現在はどうなっているのか、気になっている人もいるのではないでしょうか。この記事では、半導体がなぜ不足した理由から現在の状況までをわかりやすく解説します。
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半導体とは
電気を通す物体を「導体」、まったく通さない物体を「絶縁体」といいます。その2つの中間の性質をもつものが「半導体」です。半導体は一定の条件のときのみに電気を通すという特性を持ち、電子部品によく使用されます。半導体を使用した電子部品そのものを「半導体」と呼ぶこともあります。一般的に、半導体はシリコンを原料として作られることが多いです。
半導体の種類
半導体が使われる電子部品として代表的なものである、メモリ、センサ、トランジスタ、ダイオードについて解説します。
メモリ
メモリはデータを保存しておく記憶装置のことです。プログラムを動かすために一時的にデータを保管するRAMと、写真や動画など半永久的に保存するROMの2種類があります。CDやDVDなど物理的にデータを書き込む媒体よりも早く読み書き可能で、消費電力も少なめです。
センサ
センサとは、音、湿度、温度、光、電気、速度、加速度などを検知するものです。それらを電子信号に変換し出力するため、環境の変化に応じた動作を可能とします。人間にとっての目、耳、鼻、舌といった受信器官と同じような役割です。
トランジスタ
トランジスタは流れる電流をコントロールする電子部品です。電気信号の増幅作用や、電流を止めたり流したりするスイッチング作用のために使われます。
ダイオード
ダイオードには、電気の逆流を防いだり電圧を一定にしたりするために、電気の流れを整えるはたらきがあります。整流作用、検波、電圧制御のために使用されます。
半導体が使われている製品
半導体を利用した電子部品は、さまざまな製品に組み込まれます。ここでは、そのなかの代表的なものを紹介します。
自動車
自動車は多くの半導体を使用しており、半導体と自動車産業とのつながりは強いです。自動車のエンジンやブレーキのほか、カーナビ、パワーウィンドウ、エアコンなどにまで、ありとあらゆる場所に半導体は使われています。通常のガソリン車と比べ、ハイブリット車や電気自動車はより多くの半導体部品を使用します。
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家電製品
半導体は、日常的に使用する家電製品のほとんどに組み込まれています。エアコンには必ず温度センサがありますし、パソコンには半導体が使用されているCPUやメモリが使われています。炊飯器が適切な温度になるのは、半導体部品により制御が行われているからです。このように、家電製品には数多くの半導体が含まれています。
社会のインフラ
半導体は発電所や水道局などインフラを支える場所でも活躍しています。そのほか、銀行ATM、交通公共機関、介護施設など、生活に欠かせない場所のほぼすべてに半導体があるといっても過言ではありません。もはや生活に欠かせない通信ネットワークにも半導体は使われており、半導体がなければ電話やメールは使用できません。
関連記事:半導体の使い道とは?基礎知識から役割、家庭や社会での用途などを解説
半導体不足が起きた理由
2020年後半から半導体不足は起きました。なぜ半導体不足が起きたのか、その原因について解説します。
需要の拡大
半導体不足の要因の1つとして、急激に半導体を必要とする状況になったことがあげられます。
新型コロナウイルスの影響
2020年からは新型コロナウイルス感染症の影響で外出制限がかかり、テレワークを導入する企業や、リモート授業を始める学校が急増しました。そのためパソコンなどの通信機器の需要が急増しています。家での時間を充実させるために、大型テレビ、タブレット、ゲーム機を買い込む人も増え、半導体を使用する機器の需要が拡大しました。
新たな需要の増加
半導体はIT技術の成長には不可欠なものです。2020年ごろから、通信が次世代の5Gへと変化したり、電気自動車やAIの普及が広がったりと、IT技術は大きく進歩しています。センサを利用して家電を声で操作するスマート家電に広まりもみせていて、半導体を多く使用する製品の需要も増加しました。
供給のひっ迫
半導体の需要が増加しているにも関わらず、半導体供給量のひっ迫も起こっています。
アメリカの禁輸措置
2020年の12月には、アメリカが中国の大手半導体受託製造メーカーを貿易上の取引制限リストにいれ、事実上の禁輸措置を行いました。これは、中国がアメリカの軍事技術を盗むことを防止するためです。そこで、アメリカの企業は台湾などの半導体製造メーカーに依頼するようになりましたが、生産が足らずに供給不足の一因となりました。
災害による工場の操業停止
2020年10月宮崎県の旭化成の工場火災事故、2021年3月の茨城県ルネサス工場の火災事故により、国内での半導体製造量が大幅に減少しました。ルネサス工場のほうは現在復旧されていますが、旭化成は火災前の形での再開は不可能となっています。
2021年2月アメリカテキサス州でも、大寒波による停電で生産停止が起こっています。
工場の生産能力不足
従来の半導体工場では老朽化が進んでいます。使用できない工場も増え、半導体メーカーが受託製造メーカーに依頼するようになっていきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響などで需要が急増したことに対応できず、供給不足につながっています。
半導体不足が及ぼす影響
半導体不足が起こると、社会にどのような影響を及ぼすのでしょうか。半導体不足の問題について解説します。
製品の生産ができない
先程解説したとおり、身のまわりの家電から、社会インフラを支える製品まで、ありとあらゆるところで半導体は使用されています。なかでも自動車は半導体を多く使用するため、半導体不足により製品生産にかなり遅れがみられています。
半導体不足が続くと、注文しても納期が数ヶ月先になることも珍しくありません。自動車のほかには半導体製造装置の制御基板や基盤に半導体を整列させるマウンター機械を操作する基盤の半導体不足に陥っている状況です。
健康や安全が脅かされる
半導体不足により必要な製品が作れなくなると、人間の健康や安全が脅かされるような事態も引き起こします。エアコンなど、健康維持のために絶対に必要なものにも半導体が使われています。これらが半導体不足のため購入できなくなると、命や健康に係わることにもなるでしょう。
粗悪品や偽物が横行する
半導体がなかなか手に入らないという非常事態を狙って、粗悪品や偽物が横行する可能性があります。古い家電から抜き取った劣悪な半導体や、本物のメーカーのロゴシールを貼った偽物の半導体を使用すると、発火や誤作動の原因となります。質の高い正規品がすぐに手に入らなくなると、こういったリスクも生じるでしょう。
半導体不足の今後の見通し
半導体不足は、新型コロナウイルスのパンデミックによる供給チェーンの混乱と、急激な需要増加が主な原因でした。特に自動車産業や家電製品の製造業者が大きな影響を受けました。
供給の改善
2023年末から2024年にかけて、半導体供給は大幅に改善されました。多くの企業が生産能力を増強し、供給チェーンの最適化に取り組んだ結果、半導体不足はほぼ解消されました。例えば、台湾のTSMCや韓国のSamsung、米国のIntelなどが大規模な投資を行い、新しい製造施設を建設しました。
新たなリスク要因
半導体供給チェーンは依然として多くのリスクにさらされています。気候変動による極端な天候や地政学的な緊張が供給チェーンに影響を与える可能性があります。特に、台湾のTSMCや韓国のSamsungなど、特定の地域に集中している製造施設が影響を受けやすいです。また、AIチップの需要が急増しており、一部の企業ではAIチップの供給不足が発生しています。
2024年以降の見通し
2024年には、半導体不足はほぼ解消される見込みです。しかし、逆に供給過剰の懸念もあります。これは、2021年から2022年にかけて多くの新しい半導体工場が建設され、2024年頃から稼働することによって供給が急増する可能性があるためです。このような状況は「2024年問題」とも呼ばれ、業界全体で注視されています。
日本国内での供給を強化
世界に占める日本の半導体メーカーの売上は約1割程度です。そのようななか半導体不足を受け、日本国内でも供給を強化しています。経済産業省も半導体の国内生産強化を掲げており、今後は日本の生産量は増えるのではないかと予測できるでしょう。また、日本では海外企業の半導体製造工場の誘致や設立に関する支援措置等も行っています。
まとめ
2024年現在、半導体不足はほぼ解消されており、供給は安定しています。しかし、新たなリスク要因や市場の需要変動により、引き続き注意が必要です。特に、AIチップの需要増加や地政学的リスクが今後の供給チェーンにどのような影響を与えるかが注目されています。
半導体の種類や役割、使用例を解説したページは参考記事をご覧ください。
参考記事:半導体とは?種類や役割、使用例などを簡単にわかりやすく解説
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