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シリコーンゴムとは?種類や用途、加工事例を紹介

シリコーンゴムは、ケイ素と酸素による高分子重合体で、結合する有機基に多くの特性が付加された素材です。
この記事では、シリコーンゴムの種類や用途、加工例を解説します。

シリコーンゴムとは

シリコーンゴムとは、ケイ素と酸素が結びついたシロキサン結合に、さまざまな有機基が結びついた重合体です。有機と無機の両方の性質を備えています。その優れた特性から多くの用途に用いられます。

シリコーンゴムの特徴

シリコーンゴムは、耐熱性を始めとして耐水性、耐薬品性、耐候性、耐寒性、耐オゾン性に優れる点が特徴です。その優れた特性から、自動車やOA機器、さらに食品衛生や医療などの分野で利用されています。私たちの身の回りでも、シリコーンゴムを基材としたり部品に使用したりした製品が多く存在します。

シリコーンゴムの安全性

シリコーンゴムの特性のひとつは、高い化学的安定性です。

口から摂取したとしても、体内に吸収される可能性は低く、またアレルギー等の反応も引き起こしにくいとされています。シリコーンゴムの大半は、鉛やカドミウムの含有量やホルムアルデヒドの量が食品衛生法の基準内です。シリコーンゴムの安全性は保証されているといえるでしょう。

ただし、生産段階で着色をして付加的な特性を持たせると、規格基準から外れてしまうケースもあります。

シリコーンゴムの長所と短所

シリコーンゴムの長所は、結合エネルギーが高く化学的に安定している点です。

耐熱性に優れていて、耐寒性、電気絶縁性、撥水性も高い素材です。耐候性や耐オゾン性もあり、経年変化でひび割れや劣化が起きにくい特徴を持ちます。

短所は機械的強度や耐摩耗性に劣る点と、特定の環境状態に弱い点です。こうした短所をカバーして、機械的強度や耐久性、引張強度を改善したシリコーン製品も存在します。

参考URL:STシリコン|吉田SKT

シリコーンゴムの種類

シリコーンゴムは、固形と液状の2種類に分類されます。これは素材段階での特性であり、加硫による硬化を経て製品へと加工される点は同じです。それぞれのシリコーンゴムについて解説します。

固形シリコーンゴム

固形シリコーンゴムは、ミラブルシリコーンゴムとも呼ばれます。

原材料段階では通常のゴム同様固形の状態です。成形時はこれに加硫材を加え加熱硬化させます。硬化温度はおよそ170℃前後で、高温を要する素材です。

素材段階では粘度があり、取り回しや加工する際に扱いやすいメリットがあります。着色や異なる硬度の混合がしやすいところも利点です。

液状シリコーンゴム

液状シリコーンゴムは、原材料段階では比較的低い粘度を持った液体もしくはペースト状の素材です。

硬化温度は比較的低く、室温での自然硬化も可能です。材料が液状で流れやすく、複雑な形状の部品や精密部品で利用されます。

そのまま硬化させる1液性タイプと、混合することで硬化させる2液性、3液性のタイプがあります。

シリコーンゴムの特徴と用途

シリコーンゴムの特徴は、何より多くの優れた特性を持つ点にあります。中でも耐熱性や耐候性、絶縁性はシリコーンゴムの用途を大きく広げる要因です。

シリコーンゴムの特徴と用途について解説します。

耐食性と耐寒性、耐候性

シリコーンゴムは化学的に安定している物質です。

一般的なもので200℃、高温に対応するものでは300℃の高温の状態から-30℃の低温でもほとんど変化がありません。過酷な温度条件下で使用するものに適します。酸素や紫外線にも強く、長時間外に置いていても劣化しにくい点がメリットです。

この性質を活かして、キッチン用品や自動車部品、航空や鉄道関連の部品、ドアの封止やスイッチカバーなどに使用されます。

絶縁性、密閉性

シリコーンゴムは電気を通しにくい性質を持ちます。送電ケーブルや電子部品、コネクタシールはシリコーンゴムの特性が活かされています。

さらに、水に浸しても性能低下がほとんどないため、パッキンやシーリング材にも活用されます。耐水性だけでなく、密閉性と耐久性能にも優れた素材です。

衛生面|医療用シリコーンゴム

シリコーンゴムはその安定性から高い生体適合性を持ちます。

耐薬品性に特化した性能も持っています。ISOの医療規格や、アメリカのUSP(米国薬局方)の適合性試験に合格したものが医療用シリコーンゴムです。

医療用シリコーンゴムは、コンタクトレンズや医療用マスク、各種チューブやカテーテルに活用されています。

透明性|高引き裂きシリコーンゴム

着色をしていないシリコーンゴムは透明性があります。特に高引き裂きシリコーンゴムは、引き裂きに強く、耐久性に優れ、振動によるブレを吸収し、密閉を保つ効果を持ちます。
そのため、フレキシブルジョイントとして使用すると、内容物の確認や製品の流出防止にも役立ちます。

汎用シリコーンゴムと比較して5倍もの引き裂き強度を有していて、高い耐久性で接合部を安定して支えます。

参考URL:STシリコン|吉田SKT

シリコーンゴムの加工例

シリコーンゴムは、通常の金型成形以外にも抜き加工や接着加工などの加工法で活用されています。特性が多様で、加工例は広範囲です。シリコーンゴムの加工例を解説します。

主な加工例

シリコーンゴムの主な加工例は、抜き加工(抜き打ち加工)や押出、圧縮、射出の金型成形、そして切削加工です。

シート成形は素材をシート状に成形する加工で、のちの抜き打ち加工により丸や四角の形に加工されます。切削加工は、試作品や小ロットの製品などで金型の製作なしで行えます。

接着加工について

シリコーンは、分子表面をメチル基が覆っていて水をはじく特性を持っています。また非粘着性や剥離性も特性です。

このため、素材同士を結合する接着加工において課題が生じます。多くの接着剤が適合しないため、難接着素材として扱われます。

シリコーンゴムの接着加工に使われるものは、特殊ポリマーを主成分とする多用途型の接着剤です。プライマーによっても密着力は変わります。

まとめ

シリコーンゴムは、耐水性や耐熱性、耐久性に優れた素材です。またシロキサン結合を主鎖としたケイ素高分子で、付加される有機基によって特性が与えられます。今後も特性や用途が幅広くなることが予想されます。特定の機能性を求められる素材として非常に有用な素材です。