表面処理のご相談

ステンレスの表面処理の種類13選 ~ステンレスの概要や種類なども解説

こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。

吉田SKTではテフロン™フッ素樹脂コーティングや表面処理でお客様の生産設備のお悩みを改善しています。

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ステンレスとは、錆びにくさと強度を合わせ持つ、加工しやすい合金です。日常生活で目にするさまざまなものに利用されており、利用目的によって多種多様な表面処理方法があります。

この記事では、ステンレスの表面処理を検討しているお客様向けに、その種類ごとの特徴を詳しく解説します。またその前に、ステンレスの概要と種類も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ステンレス(SUS)とは

ステンレスとは、英語ではstainless(=さびない)という意味の言葉で、錆びにくさが特徴の合金です。鉄に炭素やクロム、ニッケルなどを混ぜて作られたものがステンレスです。

クロムが含まれていることによって、ステンレスの表面ではクロムと酸素が結合し「不動態被膜」と呼ばれる薄い酸化被膜が形成されます。この被膜があることで、ステンレスは他の合金にはない錆びにくさを実現しているのです。強度がある一方、加工もしやすいため多くの製品に使われます。

ステンレスの種類

ステンレスは細かく分けると100以上の種類に分類されます。ここでは、それらのステンレスを3つに分類し、特徴や違いを解説します。

ステンレス種類

オーステナイト系

オーステナイト系のステンレスは、他の2種類に比べて特に耐食性や耐酸性に優れます。耐食性に優れるだけでなく、靭性が高く常温での曲げ加工や絞り加工もできるため、さまざまな製品に加工しやすいのもメリットです。

また、溶接性も非常に良好です。ただし600℃~900℃の温度帯で加工をすると、耐食性を損なうことがあります。また、他の2種類と違いオーステナイト系だけ磁性がないのも特徴です。

オーステナイト系のステンレスは主に「SUS304」などの名称で知られています。

フェライト系

フェライト系のステンレスは、価格の安さが特徴のステンレスです。加工性や耐熱性にも優れているため、業務用厨房機器をはじめ多くの製品に利用されています。

耐食性はオーステナイト系に比べて劣るので注意が必要です。室内ではほぼ問題ないものの、屋外では錆を生じる可能性が高くなります。衝撃に対する強さはあまりなく、また高熱で溶接を行い急冷すると、溶接部が脆くなってしまうのも気をつけたい点です。

フェライト系のステンレスには主に「SUS430」などがあります。

マルテンサイト系

マルテンサイト系のステンレスは焼き入れを行うことによって、高い硬度を発揮するタイプです。頑丈な強度と耐熱性が必要とされる場面では、棒鋼、平鋼形状のマルテンサイト系ステンレスが用いられることが多いでしょう。

耐食性や耐酸性はあまりなく、通常使用の状態でも錆びることがあります。また、溶接した場合も、溶接割れを起こさないようにするためには予熱や後熱処理が必要です。

マルテンサイト系ステンレスには「SUS410」「SUS403」などがあります。

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ステンレスの表面処理とは

ステンレスの表面処理とは

ステンレスの表面は、一般的に滑らかであるほど耐食性があがるものです。元々、強度があり腐食しにくい性質のステンレスに表面処理を行うことで、美観を高めたりさらに腐食に強くしたりできます。機能性の表面処理を施すことで、撥水性を持たせたり、滑り性を持たせたりも可能です。

表面処理を適切に行うことによりさまざまな用途に使用でき、需要も多様化しています。

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ステンレスの表面処理の種類

ステンレスの表面処理には複数の種類があります。ここでは、主立った表面処理について、特徴や内容を解説します。

No.1|酸洗い

ステンレス表面処理(酸洗い)サンプル

酸洗いとは、熱間圧延後に熱処理と酸洗いを行う表面処理方法です。不純物除去と耐食性向上を目的に、強酸性の液に浸して処理を行います。複雑な形でも対応が可能で、表面に光沢が出ないのも特徴のひとつです。

No.2D

ステンレス表面処理(2D)サンプル

No.2Dでは、冷間圧延後に熱処理、酸洗いなどを行います。表面はわずかに光沢の出る、灰色のつや消し仕上げです。建材や航空機の構造部はNo.2Dによる仕上げが使われています。他にも屋根の樋など強い光沢を避けたい場面で用いられます。

No.2B

ステンレス表面処理(2B)サンプル

No.2D材を軽く冷間加工することによって、No.2Dに光沢を与えた仕上がりを実現したものが、No.2Bです。市販されるステンレス製品の大部分にNo.2Bという表面仕上げ方法が使われています。店舗などでも目にするとてもメジャーな方法です。

No.3

No.3は、建材や厨房用品によく使用されています。No.2DもしくはNo.2Bを♯100~♯120の粗さのベルトで研磨する表面処理方法で、光沢と粗い目が特徴です。厨房のカウンターなどでも使用されます。

BA

ステンレス表面処理(BA)サンプル

冷間圧延後に光輝熱処理を行う方法がBAです。表面が酸化しないよう処理を行い、鏡のような光沢のある仕上がりを実現します。装飾品に使用されることが多いほか、自動車部品、家電製品といった輝きを必要とする部分にも使われます。

#240

ステンレス表面処理(#240)サンプル

No.2D、No.2Bを♯240番程度の粗さのベルトで研磨したものが、#240です。#240は細かい目の仕上がりが特徴で、厨房機器に使用されることがよくあります。仕上がりに細かい目があると小さな傷が目立たず、厨房に使用した場合の快適さにつながります。

#320

ステンレス表面処理(#320)サンプル

#320は、No.2D、No.2Bを♯320番程度の粗さのベルトで研磨したものです。#240より細かい目の仕上がりとなります。用途としてはやはり、厨房機器が最も多いでしょう。光沢を出すよりも細かい目があるほうが適した場面といえます。

#400

ステンレス表面処理(#400)サンプル

#400は、No.2B材を♯400番バフで鏡面のような光沢があり、少しすじのある表面に仕上げたものです。表面はほとんど光沢面に見えますが、小さなすじがあるためにツルツルではなく小さな傷も比較的目立ちません。建材や厨房機器などに使用されることが多くなっています。

No.7|#700

#700は、#400よりも細かい研磨により仕上げをする方法です。高い反射率が特徴で、準鏡面仕上げともいわれますが、研磨目が見られるので完全な鏡面仕上げではありません。建材や、装飾用に主に用いられます。

No.8|#800

ステンレス表面処理(#800)サンプル

#800は「鏡面仕上げ」と呼ばれる表面処理の方法です。細かい粒度の研磨材で研磨し、さらに鏡面用バフで仕上げることで、反射率が最も高い鏡面仕上げとなります。建材や装飾の他に、クリーンルームなどでは反射鏡に用いられることもあります。

エンボス

ステンレス表面処理(エンボス)サンプル

エンボスは、エンボス用ロールやエッチングでの圧延処理によって作られます。エッチングとは、薬品による化学反応で金属をわざと溶解させ、表面に凹凸をつくる方法です。多くが建材、装飾用として使用されます。

ヘアライン(HL)

ステンレス表面処理(ヘアライン)サンプル

ヘアラインは研磨ベルトを使い、わざと表面に細長い筋状の研磨目を付ける方法です。一方向に筋が入った仕上がりが特徴で、すじ目によるつや消しが高級感を感じさせます。建材のなかでも高級感が求められる場所の部材に使われるものです。

バイブレーション

ステンレス表面処理(バイブレーション)サンプル

バイブレーションは、多軸水平研磨を用いた無方向性のヘアライン研磨仕上げです。こちらもすじ状の磨き目が入りますが、方向がランダムなことが特徴といえます。やや光沢を抑え、落ち着いた雰囲気を出したい場所などに、建材として使われます。

その他の表面処理

ステンレスは加工性に優れ錆に強い素材のため、さまざまな工場で使用される機械部品などにもよく利用されます。例えば、製品を搬送する装置のガイド部品や、食品や医薬品の搬送シュートやホッパーにもステンレスが多く利用されています。機械部品の場合は、No.2B材やバフ♯400の表面処理はもちろんのこと、摺動性や離型性を良くするために「フッ素樹脂コーティング」や「シリコーンコーティング」などの表面処理を採用することがあります。

さらに、ステンレスの耐摩耗性を向上させるために「メッキ」や「バイコート」などの高硬度の表面処理も有効です。

まとめ

錆に強い素材として多くの場所で使われるステンレスには、用途によってさまざまな表面処理の種類が存在しています。一般的で安価な方法、高級感を出す方法、光沢を出す方法など、求められていることによって表面処理の方法を選ぶことが大切です。

さらに、一般的なステンレスの表面処理では得ることのできない離型性や摺動性、耐摩耗性などの機能性表面処理の方法を相談するなら、表面処理の専門メーカーを選んでみましょう。吉田SKTは独自の表面処理技術で、用途に合った表面処理をご提案いたします。

表面処理についてわからないことは、ぜひ吉田SKTにご相談ください。

まずは表面処理によってどのようなことが実現できるか、こちらのページで確認してみてください。