離型性とは?基礎から離型コーティングまで解説

「離型性」という言葉をご存じでしょうか?製造現場で耳にする機会が多い用語ですが、実際のところ具体的な意味を詳しく知らない方も多いかもしれません。
今回は、吉田SKTの離型コーティングのノウハウをもとに、離型性の基礎から表面処理・コーティングの具体的な活用法まで、分かりやすく解説していきます
離型性(非粘着性)とは何か?その仕組みと特徴
離型性(非粘着性)とは、物質が表面に付着しにくく、容易に剥がれる性質を指します。離型性が十分でないと、生産工程中に樹脂やゴムなどの原材料が金型にこびりつき、不良品や製造ロスを引き起こす原因になります。
離型性に影響を与える要素として、ポイントは次の3つになります。
化学的要因
離型剤や離型層を構成する材料の化学的組成や分子構造が、表面エネルギーの値を決定します。例えば、フッ素原子やシリコーン骨格を持つ分子は、化学的に不活性な構造をもつため、他の物質との間で強い相互作用を形成しにくく、極めて低い表面エネルギーを示します。この低表面エネルギー化によって、離型対象物との濡れ性が低下し、付着が抑制されるため、優れた離型性が発揮されます。
物理的要因
離形層の表面形状を凸面や凹凸にすることで接触面積を低減し、離形性を向上させます。
環境条件
温度・湿度・圧力・滞留時間など環境の影響を受けるため、サンプルテストや実機での評価が必要になります。
これらの要素を適切に組み合わせることで、製品品質の向上だけでなく、生産効率やコスト削減につなげることができます。
離型性が求められる場面・用途
自動車部品・家電業界
自動車部品や家電製品など大量生産を行う分野では、離型性が高い金型を使うことで、製品成形のサイクルタイムを短縮できます。また、不良品発生率が下がり、生産コスト削減にもつながります。
吉田SKTでは、離型性を向上させるコーティング(フッ素系、シリコーン系)を提供し、生産性向上のお手伝いをしています。
食品加工・包装業界
食品加工の現場では、生地やごはんなど?の食品が加工設備に付着しにくくすることで、衛生管理と安定した生産ラインの稼働が可能になります。食品に直接触れる用途では、食品衛生法に対応したコーティングが使用されています。
粘着テープ・フィルム業界
粘着テープやシール材の製造や搬送装置では、離型性を高めた刃物やロール、ガイドなどを使用することで、搬送時やカット時のテープやフィルムのはりつきを防止し、作業効率を向上させています。
非粘着・離型コーティングの具体的な事例にはこちらをにご紹介してます。
離型剤と剥離剤の違い
離型剤と剥離剤は目的や使い方が異なります。ここでは、離型性と剥離剤の違いについてご紹介します。
離型剤とは?
離型剤は製造工程において、成形前の金型などに塗布して、成形品が付着しないようにするものです。製品の取り外しを容易にし、製造工程のトラブル防止や品質維持に役立ちます。使用後は溶剤で洗浄したり、塗りなおしをすることが一般的です。
剥離剤とは?
剥離剤は既に付着した物質(主に塗装や接着剤など)を取り除くための薬剤です。強力な化学作用で付着物を溶かしたり・軟化させたりして剥離しますが、素材にダメージを与える可能性があるため注意が必要です。
特に製造ラインでは、トラブル防止に離型剤が用いられ、すでに発生した問題の解決には剥離剤が使われます。
非粘着コーティング:吉田SKTコーティング選定ガイド
非粘着コーティングにはさまざまな種類があります。適切なコーティングを選択することで、効果的に離型性を付与することができます。ここでは、吉田SKTの非粘着コーティングについてご紹介します。
1) フッ素樹脂コーティング(テフロン™コーティング)
特長:極めて低い表面エネルギー/優れた撥水・撥油性、耐薬品性、耐熱・耐寒性/絶縁性、低誘電特性。
主な用途:樹脂・ゴム金型、フィルム搬送、食品設備など
留意点:粘性の強い粘着剤などの場合はがれないことがある
2) MRSコーティング(シリコーン系コーティング)
特長:非粘着性に加え、従来シリコーンで課題だった耐溶剤性や塗膜硬度を両立。
※特徴は品番によって異ります
主な用途:焼型、包装シール部、成形金型など。
留意点:後工程(塗装・接着)への転写リスクを事前評価が必要。
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3) バイコート®(有機無機複合コーティング)
特長:金属・セラミックス系無機系材料とフッ素樹脂や、シロキサン樹脂を複合し高硬度と非粘着性を両立。
主な用途:耐摩耗や長寿命が要求される金型・搬送部品。
関連記事:バイコート®(超耐久有機無機複合コーティングシステム)とは
4) TP・スーパーTPコーティング(独自凸面コーティング)
特長:フッ素樹脂コーティングそのものに微細な凸面を形成する独自のコーティング。
主な用途:テープのような粘着物、ラベル、シールなどの非粘着。
関連記事:TP、CTT、スーパーアロイ、CAT、CMT(粘着物離型コーティング)とは
5) 新技術:CAS(セラミックアロイシステム)
特長:セラミック系の微細凸面形状と高離型材料を組み合わせ、離型性と耐久性を両立。
主な用途:やわらかい相手材のくいこみを抑えた粘着物の離形。
関連記事:【新開発】離型性を向上させ、耐久性も抜群!CAS(セラミックアロイシステム)のご紹介
他にも吉田SKTではさまざまな非粘着性、離型性に優れたコーティングをお選びいただけます。詳細はリンクよりご確認ください。
まとめ
離型性の向上は、品質向上だけでなく作業効率の改善につながります。表面処理やコーティングを最適に選択し、生産性を高めましょう。
また、相手材や環境条件に合わせた離型剤やコーティングを選定すれば、作業負荷やトラブル発生率の低減が見込めます。特に大規模な量産ラインほど、一度の改善で得られるコストメリットは大きく、設備の延命にも寄与します。
今後も高耐久・環境配慮型のコーティング技術は進化していくと予想されます。製造技術や素材の進歩をキャッチアップしながら、自社の製造環境に最適な離型性対策を導入することで、さらなる生産プロセスの効率化を目指していきましょう。
離型性や非粘着コーティングでお悩みの際は、豊富な実績とノウハウを持つ吉田SKTまでお気軽にご相談ください。