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樹脂の種類や特徴、プラスチックとの関係性や用途まで詳しく解説

樹脂とプラスチックにはいくつもの種類があります。それぞれの違いは何か、混乱してしまうこともあるのではないでしょうか。この記事では、樹脂とは何か、あるいはプラスチックとは何かを、それぞれ代表例とともにわかりやすく解説します。樹脂の種類、プラスチックの種類を総合的に把握できる内容となっていますので、参考にしてください。

樹脂とは

樹脂とは、松脂などに代表される有機物です。樹皮を傷つけると分泌する樹液がヤニ(脂)で、これが固まったものを樹脂と呼んでいました。現在では、石油などを原材料として人工的に作られた合成樹脂のことも樹脂と呼んでいますが、もともとの語源は樹木から分泌する天然樹脂に由来するものです。

樹脂の種類

前述したように、樹脂は天然樹脂と合成樹脂に分けられます。それぞれについて解説します。

天然樹脂

天然樹脂

天然樹脂とは、マツなどの樹木の樹液から出る樹脂成分を指しています。また、樹木ではなく、動物由来の天然樹脂、鉱物から採取される天然樹脂もあります。

化学的な合成過程を経なくても得ることのできる樹脂は、基本的にすべて天然樹脂に分類されます。例えば、画材の接着剤や墨の製造などに使用される膠(にかわ)も樹脂の一つです。天然樹脂のなかには良い香りがするものもあり、古代から香料や香油、薬としても用いられてきました。

合成樹脂

合成樹脂

合成樹脂は、人工的に作られた高分子体のことを指します。いわゆるプラスチックで、天然樹脂の代替品として多く活用されている物質です。

原材料は主に石油生成の過程で生じる「ナフサ」という物質で、これにさまざまな化学処理を施してプラスチックを製造します。プラスチックは加工性に優れており、利便性が高いことが特徴です。天然樹脂と比べて、安価で扱いやすく、自由度が高い、水に強い、絶縁性が高いことなどがメリットといえます。

天然樹脂の2つの種類

天然樹脂には、主に植物由来と動物由来の2種類があります。ほかに、アスファルト、タールなどの名称で知られる鉱物由来の樹脂も存在しています。

ここでは、植物由来の天然樹脂と、動物由来の天然樹脂について解説します。

植物由来

植物由来の天然樹脂には、漆、松脂、天然ゴムなどがあります。

漆は、触れるとかぶれることでよく知られている、ウルシ科植物由来の塗料です。接着剤としても使われることがあります。

松脂はマツ科の植物の樹脂です。弦楽器を演奏する際には、弓に塗りつけ、振動を生み出して音を出すという重要な役割を果たします。

天然ゴムはパラゴムノキなどの樹液を固めたもので、古くは防水布、消しゴム、タイヤの素材にも用いられていました。

動物由来

動物由来の天然樹脂には、膠、カゼインなどがあります。

膠の原材料は、動物や魚の皮や筋、骨です。煮出すことでコラーゲンやゼラチン質が抽出され、これを濃縮したものが膠となります。接着剤のほかに、絵画の世界では粉末状の絵の具を溶かす素材にも使われました。日本では着物の染色に膠を使う技法もあります。

カゼインは、牛乳由来の成分です。これを固めたものはカゼインプラスチックとも呼ばれるものです。色は真っ白ですが、染色しやすい特徴を活かしてボタンや印章の製造に使われています。

プラスチックの2つの種類

プラスチックには、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の2種類があります。それぞれについて、特性を解説します。

熱可塑性樹脂

熱可塑性樹脂とは、ガラス転移温度もしくは融点に達したときに軟化し、再び冷やすと固くなる性質をもった合成樹脂のことです。温度によって液体と固体の状態を行き来できる特性をもっています。

熱可塑性樹脂は、固まるとき分子に一定の構造化がみられる結晶性樹脂と、結晶化せずに不規則な構造のまま固まる非晶性樹脂とに分けられます。ポリエチレン、ポリプロピレンなどは結晶性樹脂、塩化ビニル樹脂やポリカーボネートなどは非晶性樹脂です。

熱硬化性樹脂

熱硬化性樹脂とは、加熱すると硬化する樹脂のことです。加熱すると一度は溶けるものの、一定の温度を超えると化学反応のために固まり、冷めたあとに再加熱をしても溶けることがありません。熱可塑性樹脂のように、液体と固体の状態を往復することができなくなります。その分、機械的強度や耐熱性が高く、高温下で利用できるのがメリットです。

熱硬化性樹脂には、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂などがあります。

参考記事:プラスチックと樹脂、ポリマーの違いとは?プラスチックの種類やメリット・デメリットも解説

熱可塑性樹脂の3つの種類

熱可塑性樹脂には、汎用プラスチックと汎用エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックの3種類があります。それぞれについて違いや具体例を解説します。

汎用プラスチック

汎用プラスチックは、プラスチックのなかでもおよそ8割ほどを占める、ごく一般的なプラスチックのことです。代表的な汎用プラスチックには、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあります。

ポリエチレンはコストを抑えられ、また多彩な利用方法が可能なことから現在最も多く利用されているプラスチックです。低温環境や水にも強いことも特徴です。ただし、紫外線に弱い、柔らかく傷つきやすいといったデメリットもあります。

ポリプロピレンはポリエチレンの次に多く生産されています。ある程度高温下でも利用でき、硬度もポリエチレンに比べて高いため、工業用品、医療用品、デザイン性のある日用雑貨などにも使われます。

参考記事:ポリエチレン(PE)とは?特徴や種類、ポリプロピレンとの違いを解説

参考記事:ポリプロピレン(PP)とは?化学的性質や、素材の特長、具体的な用途まで解説

汎用エンジニアリングプラスチック

汎用エンジニアリングプラスチックは、「エンジニアリングプラスチック(通称、エンプラ)」と呼ばれる高性能プラスチックのうち、とくに多く使われる種類のプラスチックのことです。エンプラは強度や耐熱性といった点で、汎用プラスチックに比べて優れています。このうちの9割が汎用エンジニアリングプラスチックです。

汎用エンジニアリングプラスチックには、ポリカーボネート、ポリアセタールなどがあります。ポリカーボネートは硬質で耐久性が高く、電子機器から自動車のヘッドランプレンズ等、さまざまな用途があります。ポリアセタールも高い耐久性を誇り、金属部品の代替品として産業機械などに使われます。

スーパーエンジニアリングプラスチック

スーパーエンジニアリングプラスチックは、汎用エンジニアリングプラスチックよりもさらに耐久性や難燃性が高いプラスチックです。150℃以上の温度にも耐えられ、金属の代わりになるような性能をもっています。

スーパーエンジニアリングプラスチックには、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどがあります。ポリエーテルイミドは、難燃性が高く航空機の機内などに利用されるプラスチックです。ポリアミドイミドは、275℃までの高温にも耐えられ、耐摩耗性も高いことから、自動車のエンジン部品やトランスミッション部品にも使われます。

その他のスーパーエンジニアリングプラスチックについては、主に以下のようなものがあります。

ポリエーテルエーテルケトン

超高性能樹脂ともいわれるポリエーテルエーテルケトンは、耐熱性や耐薬品性に優れている素材です。機械特性にも優れていて、自動車の軸受やギア、医療の分野ではインプラント、その他金属代替等の分野で使われています。

関連記事:PEEK(樹脂)とは?特徴や使用用途について解説

フッ素樹脂

フッ素樹脂にもさまざまな種類があり、いずれも耐熱性・耐薬品性に優れていますが、どの程度の性能になるかは種類により異なります。電気を通さない、くっつかない、滑りやすい特性をもっている樹脂です。

関連記事:フッ素樹脂とは?~種類・特徴から活用方法までまとめ~

液晶ポリマー

液晶ポリマーは、耐熱性に優れた結晶性樹脂です。また、電気特性や振動吸収性能にも優れています。パソコンやスマートフォン、タブレットといった電子機器のほか、今後は自動車分野でもEVに多く使われると考えられています。

熱可塑性ポリイミド

熱可塑性ポリイミドは耐熱性に優れており、高強度であるだけでなく、摺動特性、低吸水性、耐薬品性、難燃性、耐放射線性にも優れています。自動車や航空機の構造部材の素材として使われることもある高性能プラスチックです。

関連記事:樹脂の特性とは?汎用プラスチック、汎用エンプラ、スーパーエンプラの特性、用途を解説

熱硬化性樹脂の主な種類

熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などがあります。

フェノール樹脂は、合成樹脂の歴史のごく初期に登場した、いわば最初のプラスチックです。耐熱性や耐久性が高く、自動車部品から住宅の断熱材まで、今もなお幅広く利用されています。

エポキシ樹脂は、それ自体が製品を形づくることがほとんどありません。絶縁性や耐水性、耐薬品性、耐食性が高く、主に接着剤や、自動車や船舶の塗料、コーティング剤としても用いられています。

まとめ

樹脂の種類は大きく分けて、天然樹脂と合成樹脂の2種類ですが、そのなかには実にさまざまな種類があり、それぞれの特徴がいかされた用途に使われています。樹脂を用いて表面処理やコーティングを行う場合も、基材や用途によって最適なコーティング方法を選択しなければなりません。

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