表面処理のご相談

PTFEとPFAコーティングの違いと選び方|流動性・膜厚・耐食性・離型性で比較

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部品の断面図で、PTFEは薄いコーティング、PFAは厚いコーティングを示す比較図。纲述の特徴を対比。

製造業の図面でよく目にする「PTFEコーティング 300μm」という表面処理の指定。材料と膜厚を指定したシンプルな指示に見えますが、実はこの通りに加工できるとは限りません。

PTFEは塗装型コーティングで数百μmの厚膜を安定して作るのが難しい樹脂です。300μmという膜厚が必要な背景によっては、PFAコーティングやフッ素樹脂シートライニングを検討した方がよい場合もあります。

この記事では、PTFEとPFAの違いを溶融時の流動性、膜厚、耐食性、表面平滑性、離型性の観点から整理します。あわせて、図面で膜厚を指定するときの確認ポイントや、高温樹脂の離型で起きやすい課題についても解説します。

違いのひとつは「溶融時の流動性」

PTFEとPFAは、どちらも耐熱性と耐薬品性に優れたフッ素樹脂で、化学・半導体・食品・医薬品・産業機械など幅広い分野で使われています。両者の最大の違いは、加熱したときの流動性──溶けたときに流れやすいかどうか──です。

フッ素樹脂コーティングは、塗料を基材に塗布したあと加熱・焼成して塗膜を作ります。この焼成時に樹脂がどう溶けて膜になるかが、PTFEとPFAで大きく異なります。

PTFEは融点を超えても粘度が高く、ほとんど流動しません。加熱しても柔らかくなりにくいため、フライパンやホットプレートなど、加熱調理器具の内面コーティングに利用されています。一方PFAは溶融時に流動しやすい樹脂です。焼成時に樹脂が流れて一体化するため、緻密な塗膜になりやすく、厚膜化や平滑な表面仕上げにも対応できます。炊飯器の内釜のように、ごはんなど粘着しやすいものを離したい用途で使われるのもこの性質によるものです。

  PTFEコーティング PFAコーティング
溶融時の流動性 粘度が高く、流動しにくい 流動性があり、レベリングしやすい
対応しやすい膜厚 数十μm程度が実務上の目安 塗り重ねで数百μm程度の厚膜にも対応
塗膜の特徴 加熱しても硬さを保ちやすい 緻密で表面が平滑に仕上がりやすい
得意な用途 低摩擦・非粘着・熱時の硬さを活かしたい場面 耐食・厚膜・表面平滑性・洗浄性・離型性が必要な場面

注意したいのは、「低摩擦性ならPTFE」「耐食性ならPFA」と単純に分けられるわけではないことです。非粘着性や離型性が目的の用途では、PTFEとPFAのどちらも候補になり得ます。何をくっつきにくくしたいのか、どの温度で使うのか、表面の平滑性や洗浄性も必要か──こうした条件を整理して選定することが重要です。

参考記事:フッ素樹脂PFAの特性やPTFEとの違い~成形方法・製品例まで詳しく解説~
参考記事:PTFEとは?~テフロン™樹脂との違いも解説~

PFAが選ばれる場面:厚膜・耐食性・表面平滑性

PFAコーティングは、塗り重ねと焼成を繰り返すことで数百μm程度の厚膜に対応できる場合があります。これは、PFAが加熱時に溶融・流動しやすく、下層と上層がなじんで一体化した連続膜になりやすいためです。

この性質が活きるのが耐食用途です。薬品タンクや薬液接触部品では、塗膜中のピンホールや微細な空隙、薬液の透過によって基材まで腐食が進むリスクがあります。PTFEコーティングも耐薬品性に優れていますが、耐食バリアとして使う場合はピンホールや空隙の影響を考慮する必要があります。緻密な塗膜と厚膜化のしやすさから、腐食環境ではPFAが選ばれることが多くなります。半導体・医薬品・化学分野で金属イオン溶出を抑えたい工程など、清浄性が問われる用途でも検討されます。

もうひとつのポイントが表面の平滑性です。PFAは溶融時の流動性によって滑らかな面に仕上がりやすく、付着物が残りにくい・洗浄しやすいという利点があります。耐食性に加えて平滑性や離型性まで求められるケースでは、PFAが第一候補になります。

一方、PTFEコーティングは溶融しても流動しにくいため、塗り重ねても層同士が十分に一体化しにくい場合があります。焼成時の収縮や内部応力の影響により、無理に厚膜化するとクラックや剥がれにつながることもあります。そのため、一般的なPTFEコーティングは数十μm程度が膜厚の目安です(塗料、基材、形状、使用環境により変わります)。

非粘着・離型・低摩擦:両方が候補になる領域

非粘着性、低摩擦性、離型性が目的の用途では、PTFEとPFAのどちらも候補になります。PTFEは加熱しても柔らかくなりにくい性質と低摩擦性を活かした用途で検討されます。、一部、ものの付着を改善したい部品でも候補になります。PFAは非粘着性や離型性に加え、表面平滑性・洗浄性・厚膜性・耐薬品性まで重視する場合に選ばれやすくなります。

選定時の判断軸は次のとおりです。

重視したい性能 選定の考え方
付着防止・離型性 PTFEとPFAのどちらも候補。対象物や使用条件で選ぶ
滑り性・低摩擦性 PTFEが選ばれることが多いが、環境によってはPFAも候補
表面平滑性・洗浄性 PFAが適していることが多い
厚膜が必要 PFAコーティング、またはフッ素樹脂シートライニングを検討
薬液・洗浄液が関わる 耐薬品性、ピンホール、薬液透過を含めて樹脂と工法を選ぶ

高温樹脂の離型は「離型性」と「熱時硬度」のジレンマ

溶融樹脂など高温物の離型では、離型性だけでは選定できません。高温下で塗膜がどれだけ硬さを保てるか──いわゆる熱時硬度──も塗膜寿命を左右する重要な要素になります。

ここでPTFEとPFAは正反対の特性を持ちます。PFAは溶融樹脂の離型に優れる一方、使用温度が高くなると塗膜が柔らかくなり、使えない場合があります。PTFEは熱が加わっても硬度低下が小さい一方、PFAやFEPに比べて離型しにくい場合があります。つまり、寿命を取るか離型性を取るか──というトレードオフが生じやすいのが、高温樹脂離型の難しさです。

このジレンマに対し、吉田SKTではFSR(フロロスーパーリリース)というフッ素系離型用コーティングを開発しています。FSRはPFAなみの離型性に加え、200℃以上での使用に耐える熱時硬度を備えており、寿命と離型性の両立が必要な用途で検討されています。

コーティング 強み 注意点
PFA系 溶融樹脂の離型に優れる 高温で硬度低下しやすい
PTFE系 高温時の硬度低下がPFAと比較して小さい 相手材によっては離型性が落ちる
FSR(フロロスーパーリリース) PFAなみの離型性と、200℃以上に耐える熱時硬度を両立 寿命と離型性の両立が必要な用途で検討

PTFEで厚みが必要なら「フッ素樹脂シートライニング」

「どうしてもPTFEで厚みが欲しい」という場合の選択肢が、フッ素樹脂シートライニングです。

シートライニングは、塗料を塗って焼成するコーティングとは異なる工法です。あらかじめ成形されたPTFEやPFAなどのフッ素樹脂シートを、基材に貼り付けて表面を覆います。塗装型では難しい2〜3mm程度の厚みを確保できる場合があり、薬液から基材を保護する用途で採用されています。

ただし、対象物の形状、使用温度、薬液の種類、施工部位、接合部の仕様などによって適否が変わります。「厚膜にしたい」という要件でも、塗装型コーティングで対応するのか、シートライニングで対応するのかは、使用条件に応じて判断する必要があります。

図面で膜厚を指定する前に確認したい6項目

冒頭で挙げた「PTFEコーティング 300μm」のような図面指定を見たとき、まず確認したいのは「なぜその膜厚が必要なのか」です。付着防止や滑り性向上が目的なら、300μmは過剰かもしれません。逆に、薬液から基材を守りたい・表面をより平滑にしたい・厚い樹脂層が欲しいといった目的であれば、PTFEコーティング以外の選択肢を含めて検討した方がよい場面もあります。膜厚の数字だけで判断せず、使用環境と目的をセットで確認することが重要です。

確認項目 ポイント
目的 付着防止/滑り性/耐食性/洗浄性などのうち、何を改善したいのか
膜厚指定の根拠 なぜ300μmなのか。設計上の必然か、過去実績によるものか
接触する物質 薬液、食品、樹脂、ゴム、粘着物、有機溶剤など
使用温度 常温か高温か。温度変化や熱サイクルの有無
使用環境 連続/断続使用、摩耗、摺動、洗浄、圧力などの条件
基材の材質・形状 鉄、ステンレス、アルミなど。加工対象物の形状・大きさ

特に耐食用途では、塗膜の厚みだけでなく、ピンホール、薬液透過、加工箇所の形状なども考慮が必要です。図面の指定と実際の使用条件を照らし合わせることで、目的に合った表面処理を選びやすくなります。

まとめ

PTFEとPFAは、同じフッ素樹脂でも、溶融時の流動性が違うため、対応できる膜厚や仕上がりに違いが出ます。整理すると次のとおりです。

  • 非粘着・低摩擦・離型性が目的なら、PTFEもPFAも候補。対象物と環境で選ぶ
  • 表面平滑性・洗浄性・耐食性・厚膜性が必要なら、PFAが適しているケースが多い
  • 高温樹脂の離型では、離型性に加え熱時硬度と寿命を確認。FSRも選択肢になる
  • 塗装型では難しい厚みが必要なら、フッ素樹脂シートライニングを検討
  • 図面で膜厚を指定するときは、数字だけでなく目的・接触物・温度・環境をセットで確認

「PTFEかPFAか」「コーティングかライニングか」「膜厚はどの程度か」の答えは、使用環境と求める性能によって変わります。樹脂名や膜厚だけで決めるのではなく、何を改善したいのか、どんな環境で使うのかを整理してから選定することが大切です。

吉田SKTでは、お客様の用途や使用条件をうかがったうえで、目的に合ったフッ素樹脂コーティングやライニングをご提案しています。薬液の種類、使用温度、処理対象物の形状、求める性能などをお知らせいただくと、より具体的なご案内が可能です。フッ素樹脂コーティングの選定でお困りの際は、お気軽にご相談ください。