セラミックコーティングとは?工業用のコーティングから溶射まで解説
セラミックコーティングとは、素材の表面にセラミック成分を主体とした被膜形成する表面処理技術です。セラミックコーティングにはさまざまな種類があります。工業分野にとどまらず、自動車のボディやキッチン用品など、幅広い分野で活用されています。
この記事では、工業分野で活用されるセラミックコーティングについて詳しく解説します。
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セラミックコーティングの目的
一般的にセラミックコーティングと呼ばれるものに、PVD法やCVD法による薄膜コーティングがあります。金属材料やプラスチックなどの表面をセラミックを主体とした薄膜で覆い、素材を保護することが目的です。
セラミックの被膜を作ることで元来の素材の耐久性や耐熱性を向上させ、さまざまな負荷から保護します。また、セラミックの成分の種類によって摺動性や耐摩耗性などの新たな機能を付加させることも可能です。
セラミックには靭性が低いという欠点がありますが、セラミックコーティングは耐衝撃性や靭性の部分をコーティングに担わせ、セラミックの持つ利点を素材に付加する相互作用的な側面もあります。
セラミックコーティングには、厚膜加工が可能なセラミック溶射から、遠赤外線効果を期待できるコーティングや非粘着性に優れるコーティングまでさまざまな種類があります。以下では、それぞれのセラミックコーティングについてご紹介します。
セラミックコーティング(PVD法・CVD法)
PVD法やCVD法によるセラミックコーティングでは、加工方法や素材によりいくつかの種類があります。
窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)を用いる窒化物系コーティングは、主に耐摩耗性や耐熱性を向上させます。
酸化アルミ(Al₂O₃)や酸化珪素(SiO₂)を用いる酸化物系コーティングの主目的は、耐熱性や絶縁性の向上です。
炭化チタン(TiC)や炭化珪素(SiC)を用いる炭化物系コーティングは耐摩耗性や放熱性を高め、非晶質炭素のコーティングは耐摩耗性、耐溶着性を高めます。
他にも合金膜や多層化膜によるコーティングも可能であり、さまざまな機能性を付加できます。
セラミックコーティング(セラミック溶射)
セラミック溶射は、セラミックコーティングの加工方法の一種で、セラミック素材を溶融させ、母材の表面に吹き付けることで効率的に厚膜を形成し、コーティングを行う技術です。
プラズマ溶射機を用いて、10,000℃を超える高温で溶融させたセラミック素材を高速で素材表面に吹き付けて成膜を行います。
【目的別セラミック溶射の種類】
目的 | 溶射材 |
---|---|
耐摩耗性 | Al2O3-TiO2 |
耐熱性 | ジルコニア(ZrO2-Y2O3、ZrO2-CaO、ZrO2-MgO) |
絶縁性 | Al2O3 |
セラミックハードコート(CHC)
セラミックコーティングには、フッ素樹脂コーティングの高温耐久性を高めたものもあります。セラミックハードコート(CHC)は、セラミックスを使用した吉田SKT独自のコーティング技術です。セラミックスとフッ素樹脂の複合化により、高温環境下でも塗膜の硬度低下が少なく、フッ素樹脂の特長である「非粘着性・離型性」を最大限に生かすことができるコーティング技術です。
セラミックハードコートとフッ素樹脂コーティングの比較
種類 | フッ素樹脂コーティング PTFEコーティング | セラミックハードコート CHC-1111CR |
---|---|---|
仕様品番 | OCP-033 | CHC-1111CR |
膜厚(μm) | 20-50 | 30-70 |
接触角(°)H₂O | 105-115 | 105-115 |
接触角(°)nHD | 45-55 | 45-55 |
溶融PPシート離型テスト(180℃) (N/cm)※1 | 0.29 一部樹脂残りあり | 0.08 樹脂残り無し |
傷つきテスト(200℃) | 塗膜はがれあり | 塗膜はがれ無し |
セラミックハードコートによる製造業の課題解決と生産性向上
たとえば、自動車バッテリー製造における樹脂付着問題を解決し、生産効率を大幅に向上させたセラミックハードコート技術の事例があります。
従来のPTFEコーティングでは、すぐに塗膜はがれが起きていましたが、耐久性と離型性を兼ね備えた新たなコーティング技術「CHC-1111CR」によりその課題を解決。生産ラインでのテストで数万ショットの使用が可能となり、コーティング寿命を3倍に延ばすことに成功しました。この技術革新は、製造業界における持続可能な生産性の向上に貢献しています。
参考記事:樹脂融着板の離型効果が3倍持続!
参考記事:高温の接着剤付着を防止!膜の傷つきや剥がれにも強いコーティング
セラミックコーティング(SGNコーティング)
セラミックコーティングには、セラミックとフッ素樹脂を組み合わせたタイプのコーティングもあります。吉田SKTのSGNコーティングは、「遠赤外線効果」や「スパッタの付着防止」などの目的で、遠赤効果、耐熱性や非粘着性といった機能を必要とする用途で活用されています。
セラミックコーティングの用途、活用例についてまとめました。
用途 | 目的 | コーティングの機能 |
---|---|---|
ローラー | 高温下での部材保護 | 耐摩擦 防錆 |
溶接ヒーターカバー | 部材保護と溶接スパッタの付着防止 | 耐熱 非粘着性 |
玉子焼き型 | 遠赤外線効果 焼き付き防止 | 遠赤効果 非粘着性 |
食品用天板 | 遠赤外線効果 焼き付き防止 | 遠赤効果 非粘着性 |
まとめ
セラミックコーティングは、素材の表面にセラミック成分を主体とした被膜を形成する技術で、耐久性や耐熱性の向上、さまざまな負荷からの保護を目的としています。
PVD法やCVD法による薄膜コーティング、セラミック溶射、セラミックコーティングなど、多様な方法があります。これらのコーティングは、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性などの特性を素材に付加し、工業製品やキッチン用品など幅広い分野で活用されています。
特にセラミックハードコート(CHC)は、セラミック技術により高温耐久性を高めたフッ素樹脂コーティングで、塗膜の硬度低下が少なく、非粘着性・離型性を最大限に生かすことができます。セラミックコーティングは、製造業の課題解決と生産性向上に貢献する革新的な技術として注目されています。
吉田SKTは、セラミックコーティングを始め、独自の表面処理加工技術が豊富なコーティング加工メーカーです。セラミックコーティングをご検討の際は、一度お問い合わせください。
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