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PVC(ポリ塩化ビニル・塩ビ)の特徴やメリット・デメリット、加工例や危険性を解説

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こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。

PVC(ポリ塩化ビニル)という素材をご存じでしょうか。PVCは、石油を原料とする合成樹脂ですが、さまざまな利点をもち、私たちの生活に広く浸透しています。

ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)と並ぶ5大汎用樹脂の1つであるPVCは、他のプラスチック素材とは異なる特性を持っています。

この記事では、PVCの特徴やメリット、デメリット、具体的な加工例に加えて、PE・PET・PPといった他のプラスチック素材との違いについても詳しく解説していきます。プラスチックの一種であるこの素材が、どのようにして身近な製品に活かされているのか、また他の素材とどう使い分けられているのか、ぜひご覧ください。

PVC(ポリ塩化ビニル・塩ビ)はプラスチックの一種

「PVC」とは、Poly vinyl chlorideの略称で、「ポリ塩化ビニル」や「塩ビ」、「ビニール」とも呼ばれています。

ポリ塩化ビニルは熱可塑性プラスチックの一種です。

石油を原料とするエチレンと、食塩水を電気分解して得られる塩素を反応させると、塩化ビニルの単量体が得られます。塩化ビニルは、分子式ではC2H3Cl、示性式ではCH2=CHClと書かれる分子です。

この塩化ビニル単量体を付加重合させ、熱可塑性のあるポリ塩化ビニルが得られます。

ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などと並ぶ合成樹脂の一種であり、製造コストが安いため建築資材や日用品などに幅広く使われています。

PVCの原料は石油と塩

PVC(ポリ塩化ビニル)の「ポリ」とは重合体を表します。単量体である塩化ビニルの、二重結合が開いて連結する「付加重合」で高分子化合物に変化します。

原料としては、天然塩をナトリウムと塩素に電気分解し、苛性ソーダとして利用した副生物の塩素と、原油を蒸留して得られるナフサを熱分解して得られるエチレンをもちいます。

PVCの分子構造式
PVCの分子構造式

PVCは軟質と硬質の2種類がある

PVCは熱可塑性樹脂です。加熱することで軟らかくなり、目的の形に成形できます。

PVCは、可塑剤を混ぜて常温でも軟らかい状態にした軟質PVCと、硬質PVCの2種類があり、一般的に軟質塩ビ、硬質塩ビと呼ばれており、用途に応じて使い分けが可能です。

ここでは、軟質PVCと硬質PVCのそれぞれの製品について説明します。

軟質PVC|手で曲げられる軟らかさ

軟質PVC

軟質PVCの特徴は、手で曲げられるほどの軟らかさです。可塑剤の量を調整することでさまざまな軟らかさに調整できる点も、軟質PVCのメリットといえるでしょう。

農業用のビニールシートや洋服の繊維から、ソファーや椅子などの家具では合皮の一部として、他にも電線やケーブルの被膜まで、さまざまな場所で活用されています。

PCVの特徴として、透明性に優れる、物理的強度が強い、薬品に侵されにくい、耐油性が高い、着色やプリントが容易、電気絶縁性が高いなどがあります。

硬質PVC|曲げようとすると割れてしまうほどの硬さ

硬質PVC

硬質PVCは、手で曲げようとしても割れてしまうほどの強度をもつことが特徴です。

薬品に強い点や着色やプリントが容易な点、電気絶縁性の高さなどは軟質PVCと同様で、軟質PVCよりも引張強さや密度が高い素材です。

そのため、水道管や外壁資材、クレジットカードや看板、レコードなど、丈夫さが求められる場所で活用されています。

常用耐熱温度は60~80℃であり、-20℃以下の低温域では脆化し、衝撃で破損しやすくなります。 

また、酸素指数は45~49と大きく、難燃性に優れた燃えにくい素材です。

PVCのメリット

PVCは、加工の容易さや強度、耐水性などの特徴から、製品に活用する上でさまざまな利点があります。

この章では、PVCを素材として活用する上でのメリットについて説明します。

①幅広い製品に加工できる

PVCは、可塑剤の混合量で、軟らかさを細かく調節可能です。

この特徴から、1つの素材で幅広い加工方法がとれるというメリットがあります。

金型による成形では、射出成形、真空成形やブロー成形、押出成形などさまざまな量産加工方法に対応可能です。

また、可塑性の高さを利用し、液状にしたPVCに別の素材を浸し、コーティングやディッピングを行うという加工方法にも適しています。

衣類の繊維や、合皮への加工も可能です。

②傷つきにくく強度がある

PVCの利点の1つは、他のプラスチック素材に比べ、擦れに強く、傷がつきにくいという点です。高い引張強度と軟らかさが、細かい衝撃を吸収し、小さな傷を防ぎます。

この特性から、クレジットカードや外壁素材など、傷をつけたくない製品に最適です。他にも、電気絶縁性が高いという特徴もあるため、電線の被覆材としても活用されています。

ハンドバックのディッピング加工にPVCが使われているのも、耐候性や耐水性に加え、傷がつきにくいというPVCの特性を加味した結果です。

③耐候性・耐水性があり屋外で使える

PVCは、耐候性と耐水性に優れ、屋外で使う製品にも使用できるというメリットがあります。

耐候性とは、屋外での使用による酸化、紫外線や熱、雨水が原因となる変性に対する強さです。

ベランダに洗濯ばさみを出しておいたら、簡単にぽきっと折れてしまったという経験はないでしょうか。これは洗濯ばさみによく使われるPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)が紫外線で劣化したためです。

PVCは紫外線に強く、また耐水性にも優れているため、屋外で使うビニールシートなどに適しており、農業用のビニールハウスやゴルフ用のキャディバッグにも活用されています。耐水性の観点とあわせ、水道管にも採用されています。

④安価で製造できる

PVCは、PEやPPなどと共に、5大汎用樹脂の1つに数えられます。

加工がしやすいことに加え、安価で大量に生産可能であるためです。

PVCの原料である石油、食塩は原料として安価で、エチレンの精製や塩素の生成に必要な手間も比較的簡易です。

素材としての原価が安いため、PVCは、製品の大きさに関わらず安価に製造できます。さらに加工や着色が容易で、選択肢が広い点が、PVC製品の価格をさらに抑えている要因です。

PVCのデメリット

PVCは多くのメリットをもつ素材ですが、いくつかデメリットもあります。

これらの弱点を把握することで、より適切なPVCの活用が可能です。

この章では、PVCのもつ素材としてのデメリットについて解説します。

①有機溶剤に弱い

PVCは一般的には耐薬品性に優れていると言われます。実際に、ほとんどの酸、アルカリ、塩類、動植物油に対しては高い耐薬品性を持ちます。

しかし、有機溶剤と次亜塩素酸などの塩素系化合物は例外です。容易に侵食され、短時間で強度を落とす場合があります。まれに溶解する場合もあるので、こうした物質に暴露される製品にPVCは不適切であるといえます。

アセトンやアニリン、クロロベンゼンなどの一部芳香族炭化水素への耐性も低いため、注意が必要です。

②耐熱性・耐寒性が低い

PVCは熱可塑性をもち、加工がしやすいという長所があります。しかし逆にいえば、高温で軟らかくなり、耐熱性が低いという点がデメリットだともいえるでしょう。

具体的には、PVCは60~80℃で軟らかくなり、強度が落ちて変形しやすくなります。

また、5℃以下になると衝撃への耐久性が低くなり、割れやすくなってしまいます。

このため、高温地や寒冷地などの環境下では強度や耐久性が大きく落ちることはPVCのデメリットです。

ただし、着火温度は高く、燃えにくいという性質をもつため、耐火性は保たれます。

PVCは危険性が低く環境に優しい素材

1990年代、PVCは環境問題でバッシングを浴びました。問題にされたのは、ダイオキシンの発生です。ダイオキシンは、発がん性をもち、免疫低下、生殖障害などを起こします。分解されにくく、環境に残留しやすい物質です。その発生源が、ごみとしてPVCが燃焼されることにあると指摘されたのです。

さらに、可塑剤であるフタル酸エステルにも、人体への影響の懸念が報じられました。

この結果PVCを忌避する風潮が広まり、生産量が減少したのです。

現在では、ダイオキシンの発生はそのPVCの燃焼そのものではなく燃焼条件にあり、800℃以上の高温では殆ど発生しないことが確認されました。フタル酸エステルの安全性の確認も進み、害のある物質を出す一部可塑剤のみが食品衛生法で規制され、また子どものおもちゃでの使用が制限されています。

PVCの安全性は立証され、石油の使用量が少なく、環境に優しい素材であることが確認されました。

【参考】~塩ビについて理解を深めていただくために~|塩ビ工業・環境協会

PVCと他のプラスチック(PE、PET、PP)の違い

PVCは5大汎用樹脂の1つですが、他のプラスチック素材とはどのような違いがあるのでしょうか。

5大汎用樹脂には、PVC、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、そしてPET(ポリエチレンテレフタレート)が含まれます。

この章では、特に日常生活で目にする機会が多いPE、PET、PPの3つとPVCの特性の違いについて詳しく解説します。それぞれの素材が持つ特徴を理解することで、適切な素材選択が可能になります。

4つのプラスチックの比較表

まず、PVC、PE、PET、PPの主な特性を比較してみましょう。

項目 PVC PE PET PP
正式名称 ポリ塩化ビニル ポリエチレン ポリエチレンテレフタレート ポリプロピレン
耐熱温度 60~80℃ 70~110℃ 150℃(繊維強化時240℃)
※ペットボトルは50~80℃
100~140℃
比重 1.3~1.4 0.93~0.95 約1.4 約0.9
硬さ 可塑剤で調整可能
(軟質~硬質)
柔軟~やや硬い
(種類による)
やや硬い 硬い
耐候性 優れる 比較的優れる 低い やや弱い
耐薬品性 優れる
(有機溶剤は除く)
優れる 良好
(無機酸・高濃度アルコールは除く)
優れる
透明性 透明~半透明 半透明~乳白色 透明 半透明
主な用途 建築資材、パイプ、
合皮、ビニールシート
容器、ラップ、
レジ袋、灯油タンク
ペットボトル、繊維、
フィルム、容器
容器、自動車部品、
繊維、PPバンド
特徴 傷つきにくい
軟質・硬質の使い分け可能
軽量で柔軟
耐薬品性が高い
リサイクル可能
透明性が高い
軽量で強度が高い
熱に強い
PVC、PE、PET、PPの特性比較表

PVCとPE(ポリエチレン)の違い

PE(ポリエチレン)は、PVCよりも軽量で柔軟性に優れたプラスチック素材です。

PVCとの主な違い

  • 比重:PEは約0.93~0.95で水に浮くほど軽量ですが、PVCは1.3~1.4と重い素材です
  • 硬さ:PEは基本的に柔軟な素材ですが、PVCは可塑剤によって軟質から硬質まで幅広く調整できます
  • 耐熱性:PEは70~110℃、PVCは60~80℃と、PEの方がやや高い耐熱性をもちます
  • 耐候性:PVCの方が紫外線に強く、屋外での長期使用に適しています
  • 加工性:PVCはコーティングや着色が容易ですが、PEは接着性が低く、塗装や接着が困難です

使い分けのポイント

屋外で長期使用する建築資材や看板にはPVCが、食品容器やラップなど軽量で柔軟性が求められる用途にはPEが適しています。

PVCとPET(ポリエチレンテレフタレート)の違い

PET(ポリエチレンテレフタレート)は、エンジニアリングプラスチックに分類される高機能な素材です。

PVCとの主な違い

  • 分類:PETはエンジニアリングプラスチック、PVCは汎用プラスチックです
  • 耐熱性:PET素材自体は150℃(繊維強化時240℃)と高耐熱ですが、ペットボトルに加工すると50~80℃程度になります。PVCは60~80℃です
  • 透明性:PETは非常に高い透明性をもちますが、PVCは透明~半透明程度です
  • 強度:PET単体では衝撃に弱くガラス繊維での補強が必要ですが、PVCは傷つきにくく一定の強度があります
  • 耐候性:PVCは優れた耐候性をもちますが、PETは屋外使用で劣化しやすい素材です
  • リサイクル性:PETは社会的にリサイクルシステムが確立していますが、PVCのリサイクルは限定的です

使い分けのポイント

飲料容器や透明性が求められる食品包装にはPETが、屋外の建築資材や傷に強い製品にはPVCが適しています。また、PETは繊維(ポリエステル)として衣類にも使用されます。

PVCとPP(ポリプロピレン)の違い

PP(ポリプロピレン)は、生産量がPEに次いで多い汎用プラスチックです。

PVCとの主な違い

  • 比重:PPは約0.9と非常に軽量ですが、PVCは1.3~1.4と重い素材です
  • 硬さ:PPは硬く強度が高い素材ですが、PVCは可塑剤で軟質から硬質まで調整できます
  • 耐熱性:PPは100~140℃と高い耐熱性をもち、電子レンジでも使用可能です。PVCは60~80℃と低めです
  • 耐候性:PVCは紫外線に強く屋外使用に適していますが、PPは紫外線に弱く、屋外使用では劣化しやすい素材です
  • 原料:PVCは石油と塩を原料としますが、PPは石油のみを原料とします

使い分けのポイント

電子レンジ対応容器や自動車部品など高い耐熱性が必要な用途にはPPが、屋外の建築資材やビニールハウスなど耐候性が求められる用途にはPVCが適しています。

それぞれの素材の得意分野

各素材には得意とする用途があり、適材適所での使い分けが重要です。

  • PVC:屋外建築資材、水道管、合皮、ビニールシート、電線被覆など、耐候性と傷への強さが求められる用途
  • PE:食品容器、ラップ、レジ袋など、軽量性と柔軟性が求められる用途
  • PET:ペットボトル、繊維(衣類)、透明フィルムなど、透明性とリサイクル性が求められる用途
  • PP:電子レンジ対応容器、自動車部品、繊維など、耐熱性と強度が求められる用途

このように、それぞれのプラスチック素材には特性があり、製品の使用環境や求められる性能に応じて最適な素材を選択することが大切です。

PVCの加工例5つ

これまで述べてきたとおり、PVCは、さまざまな用途で製品として活用されています。

その活用例は、身の回りの日用品から建築資材まで幅広いものです。

ここでは、PVCの活用事例を5つ、厳選して解説します。

①フェイクレザー(合皮樹脂)

フェイクレザー

合皮樹脂、フェイクレザーとは、布地の上に合成樹脂を塗り、表面層を皮素材に似せた人工素材です。

PVCは軟らかく加工できるため、肌に触れたり手で触っても天然皮に似た感触を再現でき、フェイクレザーとして利用されています。

バッグや靴、車のシートやソファなどに使用され、高い耐水性から手入れがしやすく、カビやダニの発生も防げるため、子どものいる家庭の家具には最適な素材だといえるでしょう。

素材として安価なため、通常の皮製品と比較してお買い得な商品になりやすいというメリットもあります。

②パイプやホース

パイプやホース

PVCは耐水性や耐候性が高く、電気絶縁性にも優れているため、パイプやホースに利用されています。

可塑剤の量で軟らかさを調整できるため、硬いパイプにも柔軟性が求められるパイプにも加工が可能で、成形しやすさも含め、パイプやホース類には適した素材です。

パイプのジョイント部品も同様のPVCで加工できるため、一部部品だけ耐久年数が異なるという事態を防ぐためにも役立ちます。

電気絶縁性の高さから、電線管にも利用されています。

③雨どい・カーポートなどの建築資材

建築資材

PVCは、素材として安価で、大量生産を行った際にも原材料費を抑えられます。また耐候性や耐水性に優れているため、建築資材として広く利用されています。

特によく使われる場所は、サイディングという建物の外壁に張る仕上げ板材、雨どいやカーポート、デッキや網戸などの外縁部です。

建築資材は、外縁部分のみの資材であっても面積が大きく、また必要量が膨大です。従って、素材として安価なPVCが活用できることは、耐久性や外観を確保しつつ建築費用を減らせるため、非常に効果的です。

④ビニールシート・フィルム

ビニールシート

PVCは、引張弾性が強く、断面積に比べて破れにくいという性質があります。軟らかさを調整できる点や、透明度を確保できる点などにより、シートやフィルムの素材として広く活用されています。

軟らかさを活かし、薄く伸ばしてシート状に加工しても一定の強度の保持が可能です。

この特性から、ラミネートのシートや化粧品、電化製品に張られている保護フィルム、農業用のビニールハウスやレジャーシートなどに利用されています。

熱可塑性があるため、薄く延ばして成形するカレンダー成形という製法にも適しています。

⑤金属や衣類のコーティング

コーティング用途

PVCは加工性が高く、また軟らかさを自由に変えられます。

耐候性や耐酸性、耐水性にも優れているため、金属や衣類のコーティング材として活用されていることも特徴的です。

硬質なコーティングの例としては、排水管や屋外のフェンスなど、経年劣化が懸念される部品によく使用されます。軟質のコーティングとしては、衣類やバックの表面のコーティングが該当します。

金属や他の樹脂の表面にPVCコーティングを施すことで、内部の紫外線や酸性成分による侵食を防ぎ、バッグや衣類では軟らかな手触りや質感の実現が可能です。

まとめ

PVC、ポリ塩化ビニルについて解説しました。PVCは、素材として安価でありながら耐久性、耐候性、耐水性などにも優れており、電気絶縁性が高い、紫外線に強いなどの特徴を備えています。また、熱可塑性が高いために加工しやすく、引張弾性や引張強さが高いという素材としての利点も大きいといえるでしょう。

かつて環境への影響を懸念されたPVCですが、現在では環境に優しく安全な素材として広く活用されています。

身の回りにどれほどPVC素材が活用されているか、確かめてみるとその便利さが実感できるでしょう。