リチウムイオン電池の仕組みとは?長持ちさせる方法も解説
人類が初めて電池を発明したのは1800年のことです。それから200年以上のときが経ち、現代では身の回りの多くのものが電池をエネルギー源として動いています。
現代の生活に広く普及しているスマートフォンやノートパソコンは、充電を行うことで繰り返し利用できる電池を使用しています。それらに使用されているいわば最も生活に身近な電池が「リチウムイオン電池」です。
この記事では、リチウムイオン電池について詳しく解説します。
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リチウムイオン電池とは
リチウムイオン電池とは、簡潔にいうとリチウムと呼ばれる金属を使用した、充電して繰り返し何度でも使える電池です。
電池には目覚まし時計やリモコンに入れる使い切りの「一次電池」と、充電して何度も使える「二次電池」があります。
リチウムイオン電池は「二次電池」にあたります。
また、リチウムイオン電池は他の二次電池と比べ軽量化や小型化が可能で、多くの電気を蓄えられることが特徴です。
ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチのような手のひらよりも小さい製品を充電して使用できるのは、このリチウムイオン電池のおかげです。
リチウムイオン電池の仕組み
リチウムイオン電池は、正極にリチウム(元素記号:Li)をあらかじめ含ませた金属化合物、負極にはリチウムイオンの貯蔵ができる黒鉛を使用します。
リチウムイオン電池を大まかに説明すると、電池内の正極負極間を、リチウムイオンが行き来することで放電・充電を行う仕組みを持つ二次電池です。
この章では、リチウムイオン電池の放電・充電時、具体的には何が起こっているのかを解説します。
リチウムイオン電池の放電反応
十分に充電されているリチウムイオン電池は、負極にリチウムイオンが多く集まっている状態です。
リチウムイオンはプラスの電荷をもつため、負極にたまったリチウムイオンを取り出すと負極はマイナスの電荷をもちます。
そのマイナスの電荷を電子として電池から取り出すことで、電力が発生します。これが「放電反応」と呼ばれる反応です。
リチウムイオン電池の充電反応
前述した「放電反応」の逆の現象が「充電反応」です。
充電のために電子機器を電源につなぐと、電池内ではマイナスの電荷をもつ電子が負極に取り込まれます。
そうすると負極はマイナス状態となり、それを解消するためにプラスの電荷をもつリチウムイオンが、負極に引き込まれます。
これが充電反応です。
結果として負極にはリチウムイオンがたまり、再び放電ができるようになるのです。
放電・充電時のリチウムイオンの動き
リチウムイオン電池は、正極と負極、二極を分けるセパレーター、電池内を満たす電解液で構成された電池です。
正極・負極に利用される多くの材料は層状の構造をもち、リチウムイオンはその層の間にたまっています。
放電時には負極にあるリチウムイオンがセパレーターを通って正極へ移動し、充電時には正極から再びセパレーターを通過して負極へと戻ります。
放電・充電時の反応原理
正極をコバルト酸リチウム(LiCoO2)負極を黒鉛(C)とした場合、リチウムイオン電池全体の放電・充電時の反応は以下の通りです。
鉛蓄電池とリチウムイオン電池の違い
「鉛蓄電池」という電池をご存じでしょうか?
鉛蓄電池は100年以上前から存在し、今なお車用のバッテリーとして使用されています。
鉛蓄電池は正極と負極の双方に鉛が使用されていることが特徴です。鉛を使用することで、リチウムイオン電池と比べて非常に安価に製造できます。しかし、金属の中でも重いためバッテリー自体の重量が非常に大きいことがデメリットです。加えて、電圧もリチウムイオン電池が3.6V程度であるのに対し、鉛蓄電池は2Vほどの電圧しか持ちません。
それでも現代で車用バッテリーとして使用され続けている理由は、安価に製造できて信頼性の高い電池であるためです。しかし、電気自動車やハイブリッド車にはすでにリチウムイオン電池が使用されています。このままガソリン車が減っていくのであれば鉛蓄電池の需要も減ることとなるでしょう。
参考記事:リチウムイオン電池の種類~それぞれの特徴や安全性、用途などを解説
参考記事:2次電池の仕組みとは?1次電池との違いや主な種類・用途、メリットなども解説
リチウムイオン電池の寿命と長持ちさせる方法
何度も充電して使用できるリチウムイオン電池にも寿命はあります。この章では、リチウムイオン電池の寿命と、できるだけ長持ちさせる方法を3つご紹介します。
リチウムイオン電池の寿命を測る指標は「使用期間」と「サイクル回数」の2点です。使用期間は文字通り「何年使用できるか」を指します。リチウムイオン電池の使用期間は6年から10年とされています。サイクル回数は「100%充電されている状態から0%になるまでを1サイクルとし、何サイクル利用できるか」を指します。
一般的なリチウムイオン電池を毎日100%まで充電した場合、1年半ほどで500サイクルになり60%ほどの容量に減少します。
満充電の期間を短くする
リチウムイオン電池の劣化を早める原因のひとつは「充電が満タンの状態を継続すること」です。100%充電されているのに充電を継続することを「過充電」といいます。この過充電は、電池の異常発熱を引き起こし、それが発火につながることもあります。充電する際は8割程度で充電を止め、十分に充電されたら充電ケーブルを抜いて使用するようにしましょう。
高温の場所に放置しない
リチウムイオン電池の最高許容温度は45℃です。そのため、45℃を超える環境での利用は劣化を早める原因のひとつです。日本では外気温が45℃を超えることは考えにくいといえます。しかし、直射日光に当たる場所や夏場の車内、浴室など許容温度を超える場面は十分に起こり得ます。こういった場所での長時間の使用は避けましょう。
過放電状態を避ける
前述で充電100%の状態の継続はよくないことをお伝えしましたが、0%の状態もまたリチウムイオン電池の寿命を縮める要因のひとつです。充電0%が継続されることで「過放電」が起こります。過放電状態が続くと、必要最低限の電圧を下回る「深放電」状態になります。深放電になるとリチウムイオン電池は著しく劣化し、再び電気を貯めることは難しくなるでしょう。また、電子機器の電源を切っていてもリチウムイオン電池は少しずつ放電します。しばらく使用しない場合も5割ほど充電がある状態にしてから保存するようにしましょう。
リチウムイオン電池が膨張・発火する原因
リチウムイオン電池は、利用状況次第では膨張してしまい、非常に危険な状態に陥ってしまいます。
長い間使用していたノートパソコンのキーボード部分が、ある日突然浮いてしまうということがあれば、それは内蔵されているリチウムイオン電池の膨張が原因です。
なぜリチウムイオン電池は膨張してしまうのでしょうか。
リチウムイオン電池が膨張してしまう理由は、使用している間に電池内部で材料の劣化が起こり、ガスが発生してしまうためです。適切な使用方法を心がけても微量のガスは発生しますが、過充電や過放電はより多くのガスを発生させます。その結果、形が歪むほどの膨張を起こしてしまうのです。
さらにその膨張したリチウムイオン電池を放置し続けると発火する場合もあります。そのため、燃える素材と一緒にしてしまうと火事の原因にもなりかねません。リチウムイオン電池を処分する際は自治体の指示に従って適切に処理しましょう。
仕組みを理解して安全に使おう
リチウムイオン電池は現代の私たちには欠かせない非常に重要で便利な製品です。便利な一方、取り扱い方を誤れば発火を起こし火事に発展しかねません。この記事がリチウムイオン電池の仕組みの理解、安全な使用のための助けになれば幸いです。
参考記事:リチウムイオン電池とは?種類や仕組み、主な用途や安全性も解説
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