リチウムイオン電池の種類~それぞれの特徴や安全性、用途などを解説
スマートフォンやPCに使われるなど、生活に身近な電池の1つがリチウムイオン電池です。この記事では、リチウムイオン電池にはどのような種類があり、それぞれどのような特徴があるのかを解説しています。リチウムイオン電池の種類や用途、安全性などを知りたい人は、参考にしてください。
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リチウムイオン電池とは
リチウムという鉱物を使用した電池です。正極と負極の間をリチウムイオンが移動して、充放電する二次電池です。二次電池とは、充電することで再使用できる電池を指し、蓄電池とも呼ばれます。
リチウムイオン電池の特徴
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、急速な充放電が可能です。また、メモリー効果と呼ばれる、充電された電力を使い切らない状態で充電を繰り返すことにより使用可能時間が短くなる現象がありません。そのため充電を繰り返すことの悪影響が少なく、長寿命が期待できます。ただし、鉛蓄電池に比べると価格が高く、高い安全性の確保が必要というデメリットもあります。
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リチウムイオン電池の種類
リチウムイオン電池には多くの種類があります。それぞれどのような特徴があるのか、おもな8つを解説します。
コバルト系リチウムイオン電池
コバルト系は、初めて開発されたリチウムイオン電池です。原材料費が高く価格変動が激しいうえ、熱暴走の危険があるため、現在はあまり使用されません。以前は、モバイル機器を中心に幅広く使用されていました。
ニッケル系リチウムイオン電池
ニッケル系は、今回挙げた8つのなかでもっとも容量が大きいことが特徴です。ただし、安全性に課題があり、実用化は難しいとされています。ニッケル系の課題を克服したのが、次に解説するNCA系です。
NCA系リチウムイオン電池
NCA系は、ニッケル・コバルト・アルミニウムを正極に使用する電池です。ニッケル系の課題とされた安全性を改善して、耐熱性が高められています。高エネルギー密度化に優れ、発熱量が少ないというメリットがあるため、おもに医療機器や電気自動車などで使われています。
マンガン系リチウムイオン電池
マンガン系は、原材料費がコバルトの約1割と安価です。熱安定性に優れるため、安全性が高いというメリットがあります。おもに、電気自動車の車載用電池として使われています。
リン酸鉄系リチウムイオン電池
リン酸鉄系は、熱暴走が起こりづらく、安全性が高いことが大きなメリットです。リチウムイオン電池化する製造コストは高いものの、原材料費はマンガン系よりさらに安いため、安価で製造できます。反面、エネルギー密度が低いことがデメリットです。おもに、電動工具や電気自動車などで使われています。
三元系リチウムイオン電池
三元系は、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)を正極に使用する電池です。コバルト系の安全性を高め、車載向けに改良されました。高エネルギー密度化されていながら発熱量が少なく、低温時の放電特性にも優れています。現在はおもに、医療機器や電気自動車などで使われています。
チタン酸系リチウムイオン電池
負極にチタン酸リチウムを使用する電池で、安全性が高く急速充電が可能な反面、エネルギー密度が低い点がデメリットです。寿命が長いというメリットがあるため、モバイル医療機器や大規模蓄電システムなどで使われています。
リチウムポリマー系リチウムイオン電池
リチウムポリマー系は、電解質にポリマーを加えて、ゲル化した電池です。形状の自由さと重量の軽さがある反面、折り曲げたり衝撃を与えたりすると危険なため、注意が必要です。過充電・過放電によって膨らみ、ショートすると発火・炎上する危険性があります。おもに携帯電話、スマートフォンやタブレット等に使われています。
形状による分類方法
リチウムイオン電池は、使われる材料のほかに、形状による分類も可能です。円筒形、角型、ラミネート型などの種類があり、電池を搭載するスペースに応じて選ばれます。それぞれの形状の特徴を解説します。
円筒形
円筒形は、もっともコストが低く、同じ体積ではもっとも容量が大きくなります。ただし、多数のセルを組み合わせると隙間ができ、密度が小さくなるというデメリットもあります。
角形
円筒形では外装缶に鉄が使われるのに対して、角形では軽量なアルミニウムが主流です。充放電サイクルを繰り返すことによって膨らむため、はじめから考慮して隙間をもたせておく必要があります。
ラミネート缶
ラミネート缶は、角形の金属缶の代わりに、ラミネートフィルムを使用したものです。内部の電解液は従来と同じく液体のものと、ゲルの中に電解液を封じ込めたポリマー風のものがあります。角形と同じく、充放電サイクルによって厚さが増大します。
リチウムイオン電池の用途
スマートフォン、ノートパソコン、タブレット、電気自動車、通信基地、産業用ロボットなど、リチウムイオン電池の用途は幅広くなっています。小型かつ軽量が特徴でしたが、大型のものも開発、実用化され、市場規模は成長を続けています。有害な物質が使われていないことも、リチウムイオン電池が採用される理由の1つです。
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リチウムイオン電池の安全性
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く急速な充放電が可能という特徴が評価され、スマートフォン、ノートパソコンや電気自動車をはじめ多くの商品に使用されています。ただし、強い衝撃や圧力を与えると、リチウムイオンが空気中の窒素、水などと反応する危険性もあります。
リチウムイオン電池の危険性は種類によって異なり、エネルギー密度が高いほど危険性も高いことに注意が必要です。安全性が高い順にリン酸鉄系、リチウムポリマー系、チタン酸系、三元系、マンガン系、ニッケル系、コバルト系となります。
リチウムイオン電池以外の蓄電池
リチウムイオン電池の他にも、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、NAS(ナトリウム・硫黄電池)電池といった蓄電池があります。それぞれの特徴やメリット、デメリットを解説します。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、負極に鉛、正極に二酸化鉛、電解液に希硫酸を使用した電池です。蓄電池のなかで、もっとも長い歴史があります。安定性に優れ比較的安価で、リサイクル体制も確立されています。
繰り返し使用すると性能が劣化し寿命が短くなること、また大きく重いことはデメリットですが自動車のバッテリーや非常時のバックアップ電源などに使われています。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、負極に水素吸蔵合金、正極に酸化水酸化ニッケル、電解液に水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液を使用した電池です。エネルギー密度が高いため過充電・過放電に強く、急速充放電が可能というメリットがあります。
使わなくても電気容量が減るうえ電圧が下がりやすいこと、コストが比較的高いことはデメリットでしょう。乾電池の二次電池、ハイブリッドカーなどに使われています。
NAS(ナトリウム・硫黄電池)電池
NAS電池は、負極にナトリウム、正極に硫黄、電解液にはベータアルミナセラミックスを使用した電池です。エネルギー密度が高く、長寿命で材料も豊富です。コストも比較的安価な反面、常温では動作せず300℃を維持しなければならないというデメリットがあります。ナトリウムと硫黄を使用するため動作確認や保守作業などが必要です。
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参考記事:2次電池の仕組みとは?1次電池との違いや主な種類・用途、メリットなども解説
まとめ
リチウムイオン電池とは、リチウムという鉱物を使用した、充電することで再使用できる電池です。多くの種類があり、安全性やエネルギー密度などにそれぞれの特徴があります。小型で軽量なものだけでなく、大型のものも開発されるなど、市場規模は成長を続けています。
参考記事:リチウムイオン電池とは?種類や仕組み、主な用途や安全性も解説
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