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耐熱樹脂(プラスチック)を探す!耐熱温度別に11材料を比較・解説

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「高温下で使える耐熱樹脂を探しているけど、どれがいいのかわからない…」そんなお悩みはありませんか?一般的に、樹脂は金属やセラミックスよりも高温によるダメージを受けやすく、変質したり耐久性を損なったりするおそれがあります。

この記事では、耐熱温度を目安に各樹脂の主な特性や活用シーンをまとめました。同じ樹脂でもメーカーやグレードによって性能が異なるため、実際の選定にはデータシートなどの確認が必要です。まずはそれぞれの特徴を知り、用途に合った素材を検討する際の参考にしてみてください。

350℃:PBI(ポリベンゾイミダゾール)

PBIは、ポリベンゾイミダゾール(Poly Benz Imidazole)の略称で、NASA(アメリカ航空宇宙局)やAFML(米空軍材料研究所)で共同開発されました。PBIは、複素環式分子構造を持つ高性能耐熱樹脂です。この構造により、高い耐熱性と耐摩耗性を実現し、350℃の高温環境でも安定しています。航空宇宙産業や半導体製造装置に使用されているほか、熱分解温度が600℃を超えるため、特に著しい高温環境での使用に適しています。

260-300℃:PI(ポリイミド)

 PIは、ポリイミド(Poly Imide)の略称で、構造中にイミド環結合を含む高性能樹脂です。このイミド環結合が高い熱安定性をもたらし、260℃の高温でも安定した性能を保ちます。

その優れた耐熱性と耐久性から、電子基板や宇宙船部品など、耐熱性が求められる場面で使用されています。また、一部の特殊グレードでは短期間であれば500℃に耐えることが可能で、著しい高温環境での利用にも適しています。

260℃:PTFE(フッ素樹脂)

PTFEは、ポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene)の略称で、炭素-フッ素結合による直鎖状の分子構造を持つ熱可塑性樹脂です。この炭素-フッ素結合は非常に強固で、高い耐熱性と化学的安定性を実現しています。

使用できる温度域は約-250℃から260℃と幅広く、極端な温度環境下でも性能を発揮します。そのため、医療機器の部品やライニング材、シール材、コーティング材として広く活用されています。また、耐薬品性が求められる用途でも非常に信頼性の高い素材です。

参考記事:テフロンフッ素樹脂(PTFE)の耐熱性/耐寒性について解説

260℃:PAI(ポリアミドイミド)

PAIは、ポリアミドイミド(Poly Amide Imide)の略称で、アミド結合とイミド結合を含む分子構造を持つスーパーエンジニアリングプラスチックです。この分子構造によって、優れた摺動性と耐熱性が実現されています。連続使用温度は260℃です。

特にギアやベアリングなどの摺動部品に最適で、長期間の使用でも物性変化が少ない点が高く評価されています。耐熱温度が近いPEEKと比較すると、PAIは摺動性に優れるため、精密機械部品での使用に適しています。一方、PEEKは耐薬品性や機械的強度が高く、自動車や航空宇宙分野の高負荷部品に広く用いられています。特性の違いを理解し、適材適所で使い分けることが重要です。

参考記事:ポリアミドイミド(PAI)とは?特徴・用途・PEEKとの比較を解説

260℃:PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)

 PEEKは、ポリエーテルエーテルケトン(Poly Ether Ether Ketone)の略称で、アリール基、エーテル基、ケトン基で構成される、芳香族ポリエーテルケトン、より正確にはポリアリールエーテルケトン(PAEK)の一種です。耐熱性、耐薬品性、機械的強度を兼ね備えています。

耐熱性については、260℃でも物性が安定しており、高負荷環境での使用が可能です。耐薬品性と耐摩耗性に優れているため、自動車や航空宇宙産業のエンジン部品、構造材料として広く使用されています。また、医療分野では、その高い生体適合性を活かし、インプラント素材としても採用されています。

参考記事:PEEK(樹脂)とは?特徴や使用用途について解説

200-240℃:PPS(ポリフェニレンサルファイド)

PPSは、ポリフェニレンサルファイド(Poly Phenylene Sulfide)の略称で、ベンゼン環と硫黄で構成される熱可塑性樹脂です。この分子構造により、優れた耐熱性、耐薬品性、自己消火性が実現されています。耐熱温度は220℃で、融点が280℃と高いため、高温環境下でも安定した性能を発揮します。また、自己消火性に加え、発煙性が低い点も特長です。

こうした優れた特性により、自動車部品や電気電子機器の絶縁材として幅広く活用されています。さらに、金属の代替素材としても利用され、軽量化やコスト削減が求められる分野での使用が進んでいます。

参考記事:PPS樹脂の用途とは?特徴やメリット・デメリット、成形方法も解説

120℃:PC(ポリカーボネート)

PCは、ポリカーボネート(Poly Carbonate)の略称で、カーボネート基を持つ非結晶性樹脂です。透明性と耐衝撃性、耐久性を兼ね備えています。特に透明性で類似するアクリル板と比較して、圧倒的な強度を持ち、耐久性の高さが際立っています。

耐熱性は120℃で、照明カバーや自動車のライトカバー、建材など、透明性と強度が求められる製品に広く利用されています。また、その耐衝撃性から屋外の過酷な環境下でも問題なく使用される点が特長です。

110℃:POM(ポリアセタール)

 POM(ポリアセタール)は、ポリオキシメチレン(Poly Oxy Methylene)の略称で、ポリアセタールやアセタール樹脂とも呼ばれる熱可塑性樹脂のひとつです。POMは、末端以外がアセタール構造のみで構成されるホモポリマーと、間に安定基を持たせたコポリマーに分類されます。
ホモポリマーとコポリマーの、それぞれの耐熱温度は以下のとおりです。

  • ホモポリマー:約85℃
  • コポリマー:約105℃

耐摩耗性、寸法安定性、機械的強度が高く、ギアや軸受けなどの精密機械部品に適しています。また、エンジニアリングプラスチックの中でも5大汎用プラスチックのひとつとされ、金属の代替材としての利用も進んでいます。これにより、軽量化やコスト削減を目的とした多くの産業で幅広く採用されています。

参考記事:POM樹脂とは?用途や特徴、長所・短所、加工方法などについて解説

70℃:PS(ポリスチレン)

 PSは、ポリスチレン(Poly Styrene)の略称で、スチレンを重合して得られる熱可塑性樹脂です。耐熱温度は約60-80℃で、軽量かつ加工性に優れている一方、燃えやすいため著しい高温環境での使用には適していません。

それでもPSは、日常生活で頻繁に使われる汎用プラスチックです。加工性の高さを活かして食品用トレイや容器として利用されるだけでなく、その優れた断熱性から建築用断熱材や梱包材としても幅広く活用されています。

60℃:PE(ポリエチレン)

PEは、ポリエチレン(Poly Ethylene)の略称で、炭素と水素が結合した直鎖状の分子構造を持つ熱可塑性プラスチックです。耐熱温度は種類によって異なり、低密度ポリエチレン(LDPE)の場合は約70℃以上で変形の恐れがあります。

大量生産が可能で安価に製造できることが大きな特長です。このため、食品包装材やパイプ、生活雑貨など幅広い用途で使用され、日常に欠かせない素材となっています。

参考記事:ポリエチレン(PE)とは?特徴や種類、ポリプロピレンとの違いを解説

60℃:ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合樹脂)

 ABSは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene)共重合樹脂の略称で、これらのモノマーを共重合して製造される熱可塑性樹脂です。一般的なABS樹脂の連続使用温度は60-100℃程です。また、各モノマーの配合比率を調整することで、耐熱性や耐衝撃性など、さまざまな特性を持つABS樹脂を製造することが可能です。

まとめ

この記事では、家庭用品から航空宇宙産業まで幅広く使用される耐熱樹脂を、耐熱温度の高い順にご紹介しました。同じ樹脂名でもメーカーやグレードで耐熱温度が変わる樹脂もあるため、最終的な選定には必ずデータシートやメーカー情報を確認しましょう。また、実際の選定は、耐熱性だけでなく、耐薬品性・機械的強度・摺動性などの特性やコスト面も総合的に判断することが大切です。

吉田SKTは、フッ素樹脂コーティングをはじめ、さまざまな樹脂コーティングや表面処理を提供する加工メーカーです。自動車、航空宇宙、医療、化学プラントなど、厳しい環境下で使用される製品に最適な表面処理を提供することで、吉田SKTは業界の発展に貢献しています。

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