金属の性質とは?種類ごとの特徴と加工への影響をわかりやすく解説
こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
吉田SKTでは、テフロン™フッ素樹脂コーティングや機能性表面処理によって、お客様の生産設備や機械部品に関するお悩みの改善に取り組んでいます。
金属は、建築、自動車、電気・電子など、現代産業を支える代表的な材料です。金属加工の現場では、硬い、伸びる、削りやすい、熱が伝わりやすいといった性質を経験的に理解していても、それぞれの違いを明確に説明するのが難しいことがあります。
この記事では、金属の基本的な性質から、鉄系金属・非鉄金属・合金の違い、切削や塑性加工、溶接への影響、材料を選ぶときの基本的な見方までを解説します。若手や後輩へ説明するときにも使えるよう、比較表を交えながら整理します。
金属の性質は、材種だけで決まるものではありません。合金組成、熱処理、加工履歴、表面状態、温度、使用環境によって変化するため、用途や加工方法、使用条件を踏まえて考えることが重要です。
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金属とは?押さえておきたい基本的な性質
多くの金属には、電気や熱を比較的よく通す、清浄で平滑な表面が金属光沢を示す、塑性変形を利用して加工できるといった特徴があります。これらは、金属が産業で広く利用される理由の一つです。
ただし、金属の性質は「金属なら全部同じ」ではありません。鉄鋼とアルミでは重さも強度も耐食性も異なり、同じ鉄鋼でも成分や熱処理によって性質が大きく変わります。
金属に共通しやすい性質を一覧で確認
| 性質 | 意味 | 主な用途・設計との関係 |
|---|---|---|
| 金属光沢 | 清浄で平滑な表面が光を反射する性質 | 意匠部品、外観品質、表面仕上げ |
| 電気伝導性 | 電気を通す性質 | 電線、端子、コネクタ、モーター |
| 熱伝導性 | 熱を伝える性質 | 調理器具、放熱板、ヒートシンク |
| 展性 | 圧延や圧縮で薄く広がる性質 | 薄板、箔、プレス加工 |
| 延性 | 引張変形に耐えて伸びる性質 | 線材、曲げ、絞り加工 |
| 硬さ | 押し込みや引っかきに対する抵抗 | 刃物、金型、摺動部、耐摩耗部品 |
| 強度 | 降伏や破断に至るまで耐えられる応力の尺度 | 構造材、機械部品、高負荷部品 |
| 靭性 | 破壊までに吸収できるエネルギーの尺度 | 衝撃を受ける部品、割れを避けたい部品 |
光沢・電気伝導性・熱伝導性・磁性
金属光沢が生じる理由
金属光沢は、表面で光が反射しやすいことから生じます。汚れや厚い酸化物、表面の凹凸があると鈍く見えますが、研磨によって表面を清浄かつ平滑にすると、光の反射が増えて光沢が回復します。
ただし、アルミなどは研磨後も表面に薄い酸化被膜を形成します。そのため、外観は表面粗さと被膜状態の両方に左右されます。意匠部品では、研磨方法や表面処理まで含めた管理が重要です。
金属が電気を通しやすい理由
金属が電気を通しやすいのは、内部の伝導電子が移動して電荷を運ぶためです。この性質は、電線、コネクタ、端子、モーターなどに活かされています。
同一電流の条件では、抵抗が小さいほどジュール損失と発熱を抑えられます。ただし、機器全体のエネルギー効率や信頼性は、材料の導電率だけでなく、断面積、配線長、接続抵抗、絶縁、冷却なども含めて評価します。
金属が熱を伝えやすい理由
熱伝導性が高い材料は、熱を拡散しやすく、鍋やフライパン、電子機器の放熱板、ヒートシンクなどに適しています。
ただし、実際の放熱性能は材料の熱伝導率だけで決まりません。部品形状、接触部の熱抵抗、放熱面積、空気の流れなどを含む熱抵抗全体で評価する必要があります。
磁石に付く金属・付かない金属
「金属はすべて磁石に付く」という理解は正しくありません。磁石に強く引き付けられる強磁性は、鉄のほか、コバルト、ニッケルや、それらを含む多くの合金に見られます。
アルミや銅にも弱い磁気的な反応はありますが、通常の磁石ではほとんど吸着しません。また、ステンレス鋼も鋼種や加工状態によって磁石への付き方が異なります。
展性・延性が加工性に与える影響
展性と延性の違い
| 項目 | 意味 | 関係する加工 |
|---|---|---|
| 展性 | 圧縮や圧延によって薄く広がる能力 | 圧延、箔加工、プレス成形 |
| 延性 | 引っ張られても破断せずに伸びる能力 | 線引き、曲げ、絞り加工 |
展性・延性が高い材料は、プレスで曲げたり絞ったり、圧延で薄板にしたり、線引きで細線にしたりする加工に適しています。
ただし、実際の割れやしわ、歩留まりは、延性だけで決まるものではありません。成形限界、異方性、加工硬化、板厚、加工方向、潤滑、金型条件なども成否を左右します。
樹脂・セラミックスと比較した金属の特徴
多くの樹脂は、温度や荷重が加わる時間によって性質が変化しやすく、長期間の使用ではクリープ変形を考慮する必要があります。一方、多くのセラミックスは硬い反面、金属より破壊靭性が低く、欠けや衝撃に注意が必要です。
ただし、金属、樹脂、セラミックスを単純な一つの尺度で並べることはできません。密度、強度、剛性、靭性、耐熱性、加工性など複数の性質を比較し、用途に適した材料を選びます。
硬さ・強度・靭性は何が違う?
| 指標 | 確認する内容 | 主な評価方法 |
|---|---|---|
| 硬さ | 押し込みや引っかきに対する抵抗 | ロックウェル、ビッカース、ブリネルなど |
| 強度 | 降伏や破断に至るまで耐えられる応力 | 引張試験、圧縮試験、曲げ試験など |
| 靭性 | 破壊までに吸収できるエネルギー | 衝撃試験、破壊靭性試験など |
硬い材料が必ず高い強度を持つとは限らず、強度が高くても衝撃で割れやすい材料があります。また、硬さや強度を高める処理によって、延性や靭性が低下する場合があります。
刃物や金型では硬さが重要ですが、衝撃がかかる部品では靭性が不足すると欠けや割れが起きやすくなります。材料の種類、組織、熱処理条件、使用条件に応じて、必要な指標を使い分けます。
引張試験・衝撃試験でわかること
引張試験では、引張強さ、降伏点または0.2%耐力、伸び、絞りなどを確認します。シャルピー衝撃試験では、切欠きのある試験片を高速で破断させ、吸収エネルギーなどから切欠き衝撃靭性の傾向を評価します。
実際の部品では、引張り、曲げ、繰り返し荷重、衝撃、摩耗、腐食など、使用中に受ける力や環境が異なります。用途に応じて、強度、延性、靭性、硬さ、耐食性など、優先して確認する性質を整理することが大切です。
金属の種類|鉄系金属と非鉄金属
金属は大きく、鉄を主成分とする鉄系材料と、鉄を主成分としない非鉄金属に分けられます。ただし、非鉄金属は種類によって性質が大きく異なります。「非鉄金属だから軽い」「非鉄金属だから耐食性が高い」と一括りにしないことが重要です。
鉄系金属と非鉄金属を比較
| 分類 | 代表的な材料 | 選ばれる主な理由 |
|---|---|---|
| 鉄系材料 | 炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、鋳鉄 | 強度、加工・接合性、供給量、コストのバランス |
| 非鉄金属 | アルミ、銅、チタン、マグネシウムなど | 軽量性、導電性、比強度、耐食性など材種ごとの特性 |
材料価格についても、鉄系と非鉄系という分類だけでは判断できません。材料費に加え、加工、表面処理、調達、保守、製品寿命まで含めた総コストで比較します。
鉄鋼の主な種類・特徴・用途
鋼と鋳鉄は何が違う?
鉄を主成分とする鉄基材料には、鋼と鋳鉄があります。鋼には炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼などがあり、鋳鉄は炭素量や組織が鋼とは異なる別の材料群として扱われます。
| 材料 | 主な特徴 | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | 強度、加工性、コストの選択肢が多い。腐食環境では防錆対策が必要 | 構造材、シャフト、ボルト、機械部品 |
| ステンレス鋼 | 不動態被膜により耐食性に優れる。鋼種と環境によって腐食や加工性が異なる | 食品設備、化学設備、配管、外装部品 |
| 鋳鉄 | 複雑形状を鋳造しやすく、種類によって振動減衰性に優れる | 工作機械ベッド、ケーシング、配管部品 |
ステンレス鋼が錆びる原因
ステンレス鋼はクロムを含み、表面に不動態被膜を形成することで優れた耐食性を示します。ただし、鋼種や使用環境によっては孔食、すきま腐食、応力腐食割れなどが起こる可能性があります。
加工硬化や溶接熱の影響も鋼種によって異なるため、耐食性だけでなく、加工方法や接合条件まで含めて材料を選びます。
主な非鉄金属の特徴と用途
| 材料 | 主な特徴 | 選定時の注意点 |
|---|---|---|
| アルミニウム合金 | 軽量で加工しやすく、多くの環境で比較的良好な耐食性を示す | 耐食性と強度は合金系、調質、表面処理、環境で異なる |
| 銅・銅合金 | 電気・熱伝導性に優れ、端子や熱交換部品に使われる | 合金化すると導電率が下がる場合がある。変色や腐食環境も確認 |
| チタン・チタン合金 | 高い比強度と優れた耐食性を得られる | 材料費、加工難易度、摩耗、疲労、適用規格を確認 |
| マグネシウム合金 | 実用金属の中でも非常に軽い | 腐食対策が必要。溶湯、微粉、研削粉、細かい切りくずは火災・爆発対策が必要 |
異種金属を組み合わせるときは接触腐食に注意
異種金属接触腐食は、電位差のある金属が電気的に接触し、水分などの電解質が存在すると起こる可能性があります。
- 組み合わせる金属の種類
- 陰極側と陽極側の面積比
- 接触部の絶縁
- 水分の侵入を防ぐシール
- 結露水などを残さない排水設計
異種金属を組み合わせたからといって、必ず腐食が起こるわけではありません。成立条件と使用環境を確認したうえで対策します。
合金とは?性質が変わる理由と代表例
合金は、二つ以上の元素からなり、金属的な性質を示す材料です。添加する元素には、金属だけでなく、鋼に含まれる炭素のような非金属元素もあります。
多くの構造・機械用途では、強度、耐食性、耐摩耗性などを調整できる合金が中心です。一方、高い導電性などを優先し、純金属に近い材料を選ぶ用途もあります。
合金化と熱処理で性質が変わる理由
添加元素や熱処理によって、固溶、析出、相変態、転位の動き、結晶粒など、材料内部の状態が変化します。これにより、強度、硬さ、延性、靭性、耐食性、導電性などが変わります。
代表的な合金の構成と特徴
| 合金 | 主な構成 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 鋼 | 鉄に炭素や各種合金元素を添加 | 強度、靭性、加工性を広く調整できる |
| 黄銅 | 銅と亜鉛 | 組成により加工性や強度を調整。環境によって脱亜鉛腐食などに注意 |
| 錫青銅 | 銅とすず | 機械部品や軸受などに使用。耐摩耗性は合金、潤滑、相手材で異なる |
| ジュラルミン | アルミに銅、マグネシウムなどを添加 | 軽量で高強度。合金・調質によっては耐食対策が必要 |
用途では「軽くて強い」「錆びにくい」「摩耗しにくい」「電気抵抗による損失を抑える」など、必要な性能を明確にして合金を選びます。
電気用途では、必要な強度、耐熱性、接触信頼性を満たしながら、電気抵抗をできるだけ小さくする材料を選定します。実用導体には電気抵抗があるため、「電気を損失なく流せる」とは限りません。
金属の性質と加工方法の関係
金属加工は、単に形を作る工程ではありません。加工硬化、組織、残留応力、硬さ、表面状態などを変化させ、部品の性能に影響を与える工程でもあります。
加工方法は、形状の複雑さ、必要精度、生産量、コスト、必要強度を同時に満たすように組み合わせます。高精度が必要な部分では切削や研削を仕上げに用いることが多く、量産では鋳造、鍛造、プレスなどで完成形に近い形状を作ってから仕上げる場合があります。
金属加工の種類と特徴を比較
| 加工分類 | 加工方法 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 鋳造 | 溶かした金属を型に流し込む | 複雑形状や大型部品を一体化しやすい |
| 塑性加工 | 圧延、鍛造、プレスなど | 材料を塑性変形させて形状を作る |
| 除去加工 | 切削、研削など | 不要部分を取り除き、高精度に仕上げる |
| 接合加工 | 溶接、ろう付けなど | 複数の部材を一体化する |
| 熱処理 | 焼入れ、焼戻し、焼なましなど | 組織を変化させ、硬さや靭性などを調整する |
| 表面処理 | めっき、塗装、アルマイト、コーティングなど | 耐食性、耐摩耗性、摩擦、外観などを調整する |
塑性加工・除去加工・接合加工を比較
塑性加工の特徴と性質への影響
塑性加工は、材料を大きく削り取らず、塑性変形させて形を作る方法です。圧延、鍛造、プレスなどが代表例で、材料を有効に使いやすく、量産性に優れています。
加工硬化や組織変化によって強度が上がる場合がありますが、常に性能が向上するとは限りません。加工温度、変形量、熱処理、欠陥管理によっては、延性低下や残留応力が生じます。
除去加工の特徴と注意点
除去加工は、切削や研削などによって不要な部分を取り除き、形状を作る方法です。高い寸法精度や複雑な形状に対応しやすい一方、材料ロスや加工時間が増えやすく、工具・砥石の摩耗や加工熱も管理する必要があります。
接合加工の特徴と注意点
接合加工は、溶接やろう付けなどで部材同士をつなぐ方法です。大型構造物の製作や部品点数の削減に有効です。
ただし接合部は、形状の不連続、熱影響、欠陥、残留応力などの影響を受けやすいため、継手形状、施工条件、後処理、検査方法まで含めて設計します。
切削加工と研削加工の違い
| 加工 | 得意な形状・用途 | 主な管理ポイント |
|---|---|---|
| 旋削 | シャフト、ねじ、円筒形状など | 芯振れ、同軸度、チャッキング、切りくず |
| フライス加工 | 平面、溝、段、3D形状など | 基準面、治具、工具摩耗、再現性 |
| 穴あけ | ボルト穴、下穴、位置決め穴など | 位置精度、バリ、穴径、仕上げ工程 |
| 研削 | 高精度仕上げ、良好な面粗さが必要な部分 | 研削焼け、残留応力、クラック、砥石、冷却 |
旋盤、フライス、穴あけは、形状が定まった切れ刃を用いる切削加工です。研削は砥石の砥粒によって材料を微細に除去する砥粒加工で、同じ除去加工でも加工原理が異なります。
鋳造・鍛造・プレス加工を比較
| 加工 | 適した用途 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 鋳造 | 複雑形状、大型部品、一体化部品 | 引け巣、ガス孔、介在物、肉厚、湯流れ、凝固 |
| 鍛造 | ギア、クランク、シャフトなどの高負荷部品 | 粒流線、成形不良、金型費、熱処理、異方性 |
| プレス | 筐体、ブラケット、薄板量産部品 | 割れ、しわ、ばり、成形限界、潤滑、金型条件 |
鍛造品の強度を左右する条件
鍛造は、鋳造組織や空隙の改善、粒流線の形成、再結晶などによって、強度や靭性を高められる場合があります。ただし、効果は素材品質、鍛造条件、熱処理、欠陥管理によって異なります。
溶接・表面処理が金属の性質に与える影響
溶接で生じる熱影響
溶接では金属が局所的に加熱・冷却されるため、熱影響部の組織、残留応力、変形、硬さが変化します。その結果、静的強度は満たしていても、疲労によって早期破壊する場合があります。
溶接部では、材料だけでなく、止端形状、欠陥、施工条件、後熱処理、非破壊検査、疲労評価まで含めて管理します。
主な表面処理の種類と目的
| 表面処理 | 主な目的 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| めっき | 耐食性、装飾性、導電性など | 下地、膜厚、密着性、使用環境 |
| アルマイト | アルミの耐食性、耐摩耗性、外観の調整 | 合金、膜厚、封孔、寸法変化 |
| 塗装 | 防錆、外観、識別、機能付与 | 前処理、密着性、温度、薬品、紫外線 |
| PVDなどの硬質膜 | 耐摩耗性、硬さ、摩擦特性の調整 | 母材硬さ、密着性、膜厚、相手材 |
| フッ素樹脂コーティング | 非粘着性、低摩擦性、耐薬品性など | 基材、前処理、焼成温度、膜厚、使用条件 |
表面処理の分類や目的を理解したうえで、母材、前処理、膜厚、封孔、密着性、形状、使用環境を確認します。表面処理の性能は、処理方法の名称だけで決まるものではありません。
耐食性だけでなく、接触部なら摩耗や摩擦、外観部なら指紋や色ムラ、電気部品なら導通や接触抵抗、精密部品なら被膜による寸法変化まで確認します。
表面処理の種類や機能を比較したい方に向けて、代表的な処理方法と選定の考え方をまとめた資料をご用意しています。
用途に合った金属材料を選ぶポイント
材料を選ぶ際は、一つの性質だけで判断せず、使用環境や加工方法との組み合わせを確認します。ここでは、現場で比較する機会が多い耐食性、耐熱性、疲労の基本的な見方を整理します。
耐食性・耐熱性・疲労を確認する
耐食性は使用環境から考える
耐食性は使用環境から逆算します。湿気や結露、海沿いの塩分、薬品、洗浄条件などによって最適な材料は変わります。
材料変更だけでなく、めっき、塗装、腐食代、排水、すきま回避、異種金属の絶縁、シールなどを組み合わせます。
耐熱性は温度と使用時間から考える
耐熱性は「溶けない」だけではありません。高温での強度低下、クリープ、酸化、スケール生成、熱膨張、熱疲労、組織変化などを、使用温度と時間に対して評価します。
高温部品を常温の強度だけで判断すると、運転時に変形してクリアランスがなくなるなどの不具合につながる可能性があります。
疲労は繰り返し荷重と形状に注意する
疲労は繰り返し荷重によって起こる破壊で、カタログの引張強さだけでは予測しにくい代表例です。角、穴、段差、溶接止端、表面粗さ、傷などは、疲労強度を低下させる要因になります。
形状の丸め、表面仕上げ、溶接止端部の改善などが基本的な対策です。ショットピーニングは、適切な条件で表面に圧縮残留応力を付与し、疲労特性を改善できる場合があります。ただし、表面状態や寸法への影響を実部品で検証します。
金属材料を選ぶ基本手順
- 用途、形状、重量、温度、腐食環境などの条件を整理する
- 強度、軽さ、加工性、耐食性など、必要な性質に優先順位を付ける
- 候補材料を比較する
- 加工、溶接、熱処理、表面処理の影響を確認する
- 調達性、加工コスト、量産性を確認する
- 必要に応じて試作や実機評価を行う
金属の性質が活かされる用途と関連技術
金属の性質と代表的な用途
| 活かす性質 | 代表的な用途 | 材料・工程選定の視点 |
|---|---|---|
| 強度・剛性 | 建築構造、機械フレーム、シャフト | 荷重、疲労、座屈、溶接、重量 |
| 電気伝導性 | 電線、端子、コネクタ、モーター | 抵抗、発熱、接触信頼性、強度 |
| 熱伝導性 | 放熱板、ヒートシンク、熱交換部品 | 熱抵抗、形状、界面、冷却条件 |
| 耐食性 | 屋外設備、化学装置、食品設備 | 腐食環境、洗浄、すきま、表面処理 |
| 耐摩耗性・低摩擦性 | 摺動部、金型、搬送部品 | 相手材、潤滑、表面硬さ、コーティング |
同じ「金属」でも狙う性質が違えば、材料や加工方法も変わります。用途から必要な強度、剛性、質量、導電性、放熱性、耐食性、加工性、コストへ落とし込むことが重要です。
金属へのフッ素樹脂コーティングと焼成条件
金属は、機能性コーティングの基材としても広く利用されています。例えば、多くの従来型PTFE系コーティングでは、塗装後に約370~400℃で焼成する工程があります。ただし、必要な温度と時間は、フッ素樹脂の種類、コーティング製品、膜厚、基材などによって異なります。
コーティング前に確認したい基材の違い
| 基材 | 一般的な考え方 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 鉄鋼 | 高温焼成型フッ素樹脂コーティングの一般的な候補 | 前処理、酸化、ひずみ、溶接部、板厚 |
| ステンレス鋼 | 一般的に施工可能 | 前処理、表面粗さ、薄板の変形、鋼種 |
| アルミ合金 | 施工可能だが、合金・調質による熱影響の確認が必要 | 軟化、過時効、変形、板厚、低温処理の可否 |
| 樹脂・ゴム | 一般的な高温焼成型を適用できない場合がある | 耐熱温度、保持時間、低温硬化型の有無 |
鉄鋼やステンレス鋼は、高温焼成型のテフロン™フッ素樹脂コーティングに用いられる一般的な基材です。アルミ合金にもコーティングできますが、合金の種類、調質、板厚、前処理、部品形状によっては、焼成による強度低下、軟化、変形などが起こる可能性があります。
基材の耐熱温度が焼成条件を下回る場合、変形や劣化が生じます。コーティングを選定するときは、塗膜の性能だけでなく、基材が前処理と焼成条件に耐えられるかを加工業者に確認することが重要です。
軽量化で比較される主な材料
軽量化の選択肢には、高強度鋼による薄肉化、アルミ合金、マグネシウム合金、チタン合金、複合材料などがあります。どの材料が適しているかは、用途、材料価格、加工性、接合性、耐食性、供給体制、リサイクル性によって変わります。
複雑・高精度形状に対応する金属加工
金属AM(積層造形)で造形できる形状
AM(Additive Manufacturing、積層造形)は、3Dデータをもとに材料を付加しながら三次元形状をつくる製造方法です。金属を材料に用いる金属AMは、一般に金属3Dプリンタによる造形としても知られています。従来の加工方法では難しい内部流路や一体化形状を実現できる場合があり、熱設計の改善や部品点数の削減につながる可能性があります。
一方で、造形方式や材料によっては、残留応力、気孔、異方性、表面粗さなどが課題になります。必要に応じて後加工や検査を行い、用途によっては適用規格や認証も確認します。
レーザー加工とCNC切削加工の特徴
レーザー加工やCNC切削加工は、高精度な加工や自動化、複雑形状への対応に用いられます。ただし、CNC切削加工には工具が届く範囲、レーザー加工には加工方向や板厚などの制約があります。
内部流路のように工具やレーザーが直接届かない形状は、切削加工やレーザー加工だけでは対応が難しい場合があります。こうした一体化した内部形状には、金属AMが選択肢になります。
EDM(放電加工)の特徴
EDM(Electrical Discharge Machining、放電加工)は、加工液中で電極と加工物の間に放電を発生させ、その熱作用によって材料を少しずつ除去する加工方法です。電気を通す材料であれば、焼入れ鋼や超硬合金などの硬い材料にも適用できます。
EDMには、電極の形状を加工物へ転写する「形彫り放電加工」と、走行する細いワイヤ電極で輪郭形状を切り出す「ワイヤ放電加工」があります。形彫り放電加工は金型の凹部や底付き形状、ワイヤ放電加工は複雑な輪郭形状の加工などに用いられます。
一方で、加工できる材料は導電性のあるものに限られます。また、加工速度、加工精度、面粗さ、電極消耗、放電ギャップなどが互いに関係するため、必要な形状や仕上がりに応じて、切削加工、研削加工、金属AMなどと使い分けます。
金属のリサイクル性を活かす設計の工夫
多くの金属は、回収して再溶解することで再利用できます。ただし、実際の回収率や再生材の品質は、製品の分解しやすさ、材料の選別、異種材料、表面処理、合金元素の混入、回収コストなどに左右されます。
- 分解しやすい締結方法にする
- 使用材料を識別しやすくする
- 異種材料の複雑な一体化を避ける
- 表面処理や接着剤が再資源化に与える影響を確認する
- 回収後の選別工程まで想定する
設計段階から分解・識別・材料分離をしやすい構造にすることが、資源循環を進めるうえで重要です。
まとめ|金属の性質と加工の関係を押さえよう
金属の性質を理解するときは、光沢、電気・熱の伝導、展性・延性といった基本特性だけでなく、硬さ、強度、靭性の違いまで整理することが重要です。
鋼は、強度、加工性、接合性、コストのバランスから構造用途に広く使われています。非鉄金属は一括りにせず、アルミの軽量性、銅の導電性、チタンの比強度や耐食性など、具体的な材種ごとの特徴を見て使い分けます。
加工については、鋳造、塑性加工、除去加工、接合、熱処理、表面処理の違いを理解します。切削と研削は、どちらも材料を取り除く除去加工ですが、加工原理や管理項目が異なります。
材料を選ぶ際は、強度だけ、軽さだけといった一つの性質で判断せず、加工方法、使用温度、腐食環境、コストなども含めて比較します。必要に応じて試作や実機評価を行い、用途に合う材料と工程を選定します。
金属材料を選ぶときのチェックポイント
- 必要な強度、硬さ、靭性を区別できているか
- 使用温度、腐食環境、繰り返し荷重を整理できているか
- 加工、溶接、熱処理による性質の変化を確認したか
- 表面処理の前処理、膜厚、焼成温度を確認したか
- 異種金属接触腐食やすきま腐食を見落としていないか
- 試作、検査、実機評価まで含めて検証したか
金属材料は、材種だけでなく、形状、加工、熱処理、表面処理、使用環境を一体として考えることが重要です。必要な機能と使用条件を整理し、適材適所で材料と工程を選びましょう。
吉田SKTでは、金属部品へのテフロン™フッ素樹脂コーティングをはじめ、非粘着性、低摩擦性、耐食性、耐摩耗性などの機能を付与する表面処理をご提案しています。基材、使用温度、相手材、必要な機能が整理できていない段階でもご相談いただけます。

