金属腐食とは?原因・種類・対策をわかりやすく解説
こんにちは。「吉田SKT」ブログ編集チームです。
屋外の手すりがざらついたり、自転車のチェーンが赤く錆びたりするのは、金属腐食の身近な例です。設備では、配管の肉厚が減る、タンクに穴があく、ボルトが細る、金属の内部に割れが入るといった形で現れます。
金属腐食の厄介な点は、目で見て分かるものばかりではないことです。表面がきれいに見えても、内側では孔食が深く進んでいることがあります。また、同じ金属でも、水質、温度、薬液、すき間、異種金属との接触などによって、腐食の進み方は変わります。
金属腐食を理解するには、錆の色や量だけでなく、「どのような環境で」「どの材料に」「どのような形の損傷が生じるか」を押さえることが大切です。
この記事では、金属腐食の仕組みから、孔食、すき間腐食、異種金属接触腐食などの種類、材料選定、防食対策までを、一般の方にも分かる言葉で解説します。
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金属腐食とは
金属腐食とは、金属が周囲の物質と化学的または電気化学的に反応し、侵食されたり、材質が劣化したりする現象です。JIS Z 0103(防せい防食用語)でも、同様の考え方で定義されています。
腐食が進むと、外観が損なわれるだけでなく、部品や設備の強度、気密性、摺動性(部品どうしが滑らかに動く性質)、電気特性などにも影響します。見た目の変化が小さくても、局部的に深い穴や割れが生じていることがあるため、表面の状態だけで安全性を判断することはできません。
腐食と錆の違い
「腐食」と「錆」は同じ意味で使われることがありますが、厳密には指している範囲が異なります。
- 腐食:金属が環境との反応によって侵食されたり、材質的に劣化したりする現象
- 錆(さび):腐食によってできた生成物のうち、通常は鉄や鋼の表面にできるもの
一般に「錆」というと、鉄や鋼にできる赤錆や黒錆を指します。広い意味では、銅にできる緑青(ろくしょう)のように、鉄以外の金属の腐食生成物を錆と呼ぶこともあります。腐食生成物とは、腐食によって生じる酸化物や水酸化物、塩などの総称で、錆を含む、より広い言葉です。腐食生成物が金属表面を保護する場合もあれば、鉄の赤錆のように保護性が低い場合もあります。
ただし、腐食した金属が必ず目立つ錆を生じるとは限りません。腐食生成物が流体によって運び去られる場合や、孔食、すき間腐食、応力腐食割れなどが進む場合は、外観から損傷の程度を判断しにくいことがあります。
金属腐食が起こる仕組み
金属腐食は、大きく「湿食」と「乾食」に分けられます。日常環境や水を扱う設備で多く見られるのは湿食です。一方、高温の炉、排気系、熱処理設備などでは乾食も問題になります。
湿食とは
湿食は、液体の水や金属表面に形成された薄い水膜が関係する腐食です。水に塩類などが溶けて電気を通す状態になると、金属表面で電気化学反応が進みます。
湿食では、金属が溶けて電子を放出する場所と、その電子を受け取る反応が起こる場所が同時に存在します。この反応が続くことで金属が少しずつ失われます。
この2つの場所は、次のように呼ばれます。
- アノード:金属がイオンとなって溶け、電子を放出する側
- カソード:アノードから流れてきた電子を受け取る反応が起こる側
鉄を例にすると、アノードでは鉄が鉄イオンとなって溶けます。カソードでは、酸性環境では主に水素イオンが、中性付近の水中では主に溶存酸素が関係する反応が進みます。どの反応が中心になるかは、pH、溶存酸素、温度、流れなどで変わります。
腐食が続く4つの条件
湿食が続くには、金属が溶ける側(アノード)、電子を受け取る側(カソード)、電気を通す液体、電子が流れる金属の通り道が必要です。どれか1つを断つことが、防食対策の基本になります。
塩や酸、アルカリなど、水に溶けてイオンに分かれる物質を「電解質」といいます。電解質が水に溶け、電気を通す状態になった液体が「電解質溶液(電解液)」です。雨水、海水、結露水、洗浄液、薬液なども、含まれる成分によって腐食を進めることがあります。
乾食とは
乾食は、液体状の水が作用しない環境で、金属が酸素や腐食性ガスなどと反応する腐食です。代表例は、金属が高温で酸素と反応する高温酸化です。硫黄分を含むガスがある環境では硫化も起こります。高温酸化や硫化、溶融塩による腐食など、高温で起こる腐食をまとめて高温腐食と呼びます。
乾食の進み方は、温度だけでなく、金属表面にできる酸化皮膜の性質に左右されます。緻密で密着性の高い皮膜が形成されれば、その後の反応が進みにくくなることがあります。一方、皮膜が割れたり剥がれたりすると新しい金属面が露出し、腐食が繰り返されます。
また、設備の起動と停止による温度変化が大きい場合は、金属と酸化皮膜の熱膨張差によって皮膜が損傷することがあります。高温部の材料選定では、使用温度だけでなく、雰囲気ガス、温度変動、付着物、酸化皮膜の安定性を確認する必要があります。
金属によって腐食しやすさが異なる理由
金属の腐食しやすさは、金属そのものの性質だけで決まるものではありません。材料の種類、表面状態、使用環境、異種金属との接触、温度、応力などが組み合わさって決まります。
イオン化傾向だけでは腐食しやすさを判断できない
学校で学ぶイオン化傾向は、腐食を理解する入口にはなりますが、実際の設備での耐食性をそのまま表す順位ではありません。金属表面にできる皮膜や、水質、温度などによって、実際のふるまいが変わるためです。
例えばステンレスは、主に鉄とクロムからできています。イオン化傾向だけを見ると腐食しやすい側に見えますが、表面の不動態皮膜に守られるため、多くの環境では腐食しにくい側としてふるまいます。ステンレスと炭素鋼が水に濡れた状態で接触すると、炭素鋼側の腐食が進みやすくなるのはこのためです。
実務では、イオン化傾向だけで材料を順位付けせず、対象となる薬液や水質、温度、流れ、すき間の有無を含めて評価します。異種金属の組み合わせを検討するときは、実際の使用環境に近いガルバニック系列と使用実績を確認します。ガルバニック系列とは、海水など特定の環境で測定した金属・合金の電位の並びです。表面状態や環境によって順序が変わるため、イオン化傾向と同じものではありません。
不動態皮膜が金属表面を守る
ステンレス、アルミニウム、チタンなどは、表面に非常に薄い保護皮膜を形成します。この皮膜は不動態皮膜と呼ばれ、金属が環境と直接反応することを抑えます。条件が整っていれば、皮膜に小さな傷が付いても再生します。
ただし、不動態皮膜はどのような環境でも安定しているわけではありません。塩化物イオン、強い酸やアルカリ、高温、酸素不足、すき間などの影響を受けると、局部的に破壊されたり、再生しにくくなったりします。
金属ごとの耐食性については、関連記事「金属の耐食性とは?耐食性が高い金属も紹介」でも詳しく解説しています。
主な金属材料の耐食性を見るときのポイント
| 材料 | 一般的な特徴 | 注意したい環境・腐食形態 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | 強度、加工性、入手性に優れ、幅広い設備に使用される | 水分や酸素がある環境では腐食しやすい。「腐食しろ(腐食で減る分を見込んだ厚さ)」、塗装、メッキ、電気防食などを組み合わせる |
| ステンレス鋼 | 不動態皮膜によって多くの環境で高い耐食性を示す | 塩化物、すき間、滞留部、高温に注意する。代表的な成分値から算出した耐孔食指数(PREN)の目安は、SUS304が約19(おおむね18~20)、SUS316が約25(おおむね23~28)で、数値が大きいほど孔食に強い傾向がある |
| アルミニウム合金 | 軽量で、表面の酸化皮膜によって大気中などで耐食性を示す | 酸だけでなくアルカリにも注意する。5000系は比較的耐食性に優れ、2000系は腐食対策が必要など、合金系による違いが大きい |
| 銅・銅合金 | 環境によって保護性のある腐食生成物を形成する | 流速が高い水では保護層が損傷しやすい。循環給湯配管では1.5m/s以内が一つの目安。真鍮はアンモニア環境で応力腐食割れに注意する |
| チタン | 安定した不動態皮膜を形成し、海水を含む多くの環境で高い耐食性を示す | フッ化物を含む薬液や、高温のすき間部など適さない条件もある。薬液、濃度、温度、構造を確認する |
耐食性は、どのような環境でも同じ順番になるわけではありません。ただし、環境を固定すれば比較できます。例えば、海水中の異種金属はガルバニック系列で、塩化物環境のステンレス鋼は孔食指数で比較できます。まず液の種類、濃度、温度、流れ、すき間の有無を書き出し、その条件に合う腐食データと使用実績を確認してください。
※孔食指数について
耐孔食指数(PREN)は、ステンレス鋼に含まれるクロム、モリブデン、窒素の量から、塩化物環境での孔食への強さを比べる目安です。実際の成分によって数値に幅があり、温度、塩化物濃度、すき間、表面仕上げなどでも耐食性は変わるため、指数だけで材料を決めることはできません。
金属材料の基本的な性質は「金属の性質とは?種類ごとの特徴と加工への影響」で、実務でよく比較される材料は「アルミとステンレスの違いとは?強度・重さ・耐食性を比較」で解説しています。
金属腐食を進める主な要因
腐食の発生や進行には、水分、酸素、塩分、pH、温度などが関係します。ただし、それぞれの要因と腐食速度が常に単純な比例関係になるわけではありません。
水分と湿度
湿食では、水分が腐食反応の場になります。雨や洗浄水のように目で見える水だけでなく、結露や高湿度によって金属表面に形成される薄い水膜でも腐食は進みます。
粉じん、塩分、薬液の飛沫などが表面に付着していると、水分を保持しやすくなります。設備を濡らさないことだけでなく、汚れを残さないことや、濡れた後に乾きやすい表面にすることも大切です。
酸素
中性付近の水中では、溶存酸素が腐食反応に関係します。また、酸素の届きやすさが場所によって異なると、酸素濃度が低い部分が金属の溶ける側になり、腐食が局部的に集中します。これを酸素濃淡電池、または通気差腐食といいます。
ガスケットや堆積物の下、ボルトの締結部、地際部などが典型的な発生箇所です。「酸素が少ない場所だから安全」ではなく、周囲との酸素濃度の差がある場所に注意します。
塩分・塩化物イオン
塩類が水に溶けると電気が流れやすくなり、炭素鋼などの腐食を促します。さらに塩化物イオンは、ステンレスやアルミニウムなどの保護皮膜を局部的に破壊し、孔食やすき間腐食を起こしやすくします。
ただし、塩分が濃いほど炭素鋼の全面腐食が速くなるわけではありません。大気に接する中性付近の塩化ナトリウム水溶液では、鉄の腐食速度は質量濃度約3%で最大になる傾向が示されています。塩分がさらに増えると酸素が溶けにくくなるため、全面腐食の速度は低下します。
これは「濃い塩水なら安全」という意味ではありません。ステンレスなどの局部腐食は別の挙動を示します。海水程度の塩分が付着し、濡れと乾燥を繰り返す場所や、塩分が局部的に濃縮する場所を重点的に確認してください。
pH
pHは、金属の溶けやすさや表面皮膜の安定性に影響します。多くの金属は強い酸性環境で腐食しやすくなりますが、アルミニウムや亜鉛は強いアルカリ性環境でも溶けます。特にアルミニウムはアルカリ側で皮膜が不安定になりやすいため、アルカリ性洗浄剤を使う場合は、変色や表面荒れに注意が必要です。
また、酸化性の酸によって不動態化する金属もあるため、「酸性ほど必ず腐食が速い」と一律に判断することはできません。材料、酸やアルカリの種類、濃度、温度を組み合わせて確認します。
温度
温度が上がると、腐食反応そのものは速くなります。ただし、水に溶ける酸素の量も変わるため、実際の腐食速度は単純には決まりません。
大気に接している淡水中の鉄・鋼では、腐食速度は80℃付近で最大になり、それより高温では酸素が水から抜けるため低下する傾向があります。一方、密閉系では酸素が外へ逃げにくく、温度上昇とともに腐食が進みやすくなります。同じ温度でも、開放系か密閉系かで傾向が変わる点に注意してください。
※数値の見方
約80℃という値は、大気に接する淡水中の鉄・鋼について示された目安です。薬液、ステンレス、アルミニウム、密閉設備などへ、そのまま当てはめることはできません。
流れ・滞留・付着物
流れが速すぎると、保護皮膜や腐食生成物が削られ、エロージョン・コロージョンにつながります。反対に、液体が滞留すると、濃度差や酸素濃度差が生じ、すき間腐食や堆積物下腐食が進みやすくなります。
配管の曲がり部、バルブの下流、ポンプ周辺、タンク底部、デッドレグ(配管が行き止まりになり、液が流れずに溜まる部分)は重点確認箇所です。
金属腐食の主な種類
腐食トラブルを調べるときは、腐食の名称を覚えるだけでなく、損傷の形と発生位置を確認することが重要です。腐食形態が分かると、原因候補と必要な対策を絞り込みやすくなります。
全面腐食
全面腐食は、金属表面の広い範囲が比較的均一に腐食する形態です。板厚の減少傾向を把握しやすく、定期的な厚さ測定によって腐食速度や余寿命を検討できる場合があります。
ただし、見た目には全面腐食に見えても、局部的に深い部分が混在することがあります。平均板厚だけでなく、最小板厚や腐食のばらつきも確認します。
孔食
孔食は、金属表面の一部に小さな穴が生じ、深さ方向へ進む局部腐食です。ステンレスやアルミニウムなど、不動態皮膜を形成する金属でも、塩化物イオンなどによって皮膜が局部的に破壊されると発生します。
表面に見える穴が小さくても、内部で深く進んでいる場合があります。外観だけで判断せず、孔の深さや周辺の板厚を測定することが重要です。
すき間腐食
すき間腐食は、ガスケットの下、フランジ面、ボルト周辺、重ね合わせ部、堆積物の下などで起こる局部腐食です。はじめは、すき間の中に酸素が届きにくく、外側との酸素濃度の差によって腐食が始まります。
腐食が進むと、すき間内部では液が酸性側へ変化し、塩化物イオンも濃くなりやすくなります。内部環境が悪化するほど腐食がさらに進むため、外から見えないまま深くなることがあります。対策では、すき間を作らない設計を優先し、連続溶接、適切なシール、排水性の確保、清掃しやすい構造を検討します。
異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)
異種金属接触腐食は、異なる種類の金属が電気的に接触し、さらに雨水、結露水、海水などの電解質溶液が存在するときに起こります。両金属の電位差によって電池が形成され、相対的にアノードとなる金属の腐食が速くなります。
異種金属を組み合わせるときは、面積比にも注意が必要です。特に、小さなアノードと大きなカソードの組み合わせでは、小さい側に腐食電流が集中し、ボルトや薄板などが短期間で減肉することがあります。
例えば、次のような組み合わせは注意が必要です。
- 炭素鋼の部材に、大きなステンレス部材を接触させる
- アルミニウム部材を、ステンレスや銅合金と接触させる
- 炭素鋼配管と銅合金部品を、導電性のある水が流れる状態で接続する
これらは、必ず腐食する組み合わせという意味ではありません。実際の危険度は、金属の種類と表面状態、電解質溶液、温度、面積比、接触部の構造などで変わります。組み合わせを判断するときは、対象環境に対応したガルバニック系列を確認します。
異種金属接触腐食のリスクを下げるには、材料の組み合わせと接合部の構造を次のように見直します。
- 同じ材質同士、またはガルバニック系列で電位が近い材質どうしを組み合わせる
- 異種金属を使う場合は、腐食しやすい側の金属を大きくし、腐食しにくい側の金属を小さくする
- 絶縁ワッシャーや樹脂スリーブを入れ、金属どうしを電気的につながない
- 接合部が濡れない、または濡れてもすぐ乾く構造にする
- 塗装する場合は、両方の金属と接合端部を連続して覆い、塗膜の傷や欠陥を管理する
同じ2種類の金属でも、面積比で結果が変わります。大きなステンレス板を小さな炭素鋼ボルトで留める構造は、ボルト側に腐食が集中しやすい組み合わせです。反対に、炭素鋼の大きな部材へ小さなステンレス部品を取り付ける構造では、腐食電流が炭素鋼の広い面積へ分散するため、相対的にリスクを下げやすくなります。ただし、腐食がなくなるわけではありません。
両方を塗装できない場合は、腐食しにくい側の金属(カソード側)を優先して被覆するのが原則です。腐食する側(アノード側)だけを塗装すると、塗膜の小さな傷へ腐食が集中します。塗装範囲と端部処理をセットで検討してください。
粒界腐食
粒界腐食は、金属を構成する結晶粒の境界が選択的に腐食する現象です。SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼は、およそ550~800℃の温度域にさらされると、粒界の周辺でクロムが不足し、耐食性が低下することがあります。この状態を鋭敏化といいます。
溶接部では、溶接した部分そのものではなく、その周辺の熱を受けた帯状の部分で粒界腐食が起こることがあります。対策には、炭素量を抑えたSUS304L・SUS316Lなどの低炭素材や、SUS321・SUS347などの安定化材を添加した素材を選ぶ方法があります。材料グレード、溶接条件、使用環境を合わせて確認してください。
応力腐食割れ(SCC)
応力腐食割れは、英語の頭文字からSCCとも呼ばれます。割れを生じやすい材料、特定の腐食環境、引張応力の3つが重なったときに発生し、金属全体の減肉が小さいまま割れが進む場合があります。粒界腐食とは別の損傷形態です。
SUS304やSUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼では、塩化物による応力腐食割れに一般に50~60℃を超える温度域から注意が必要です。ただし、水面付近、保温材の下、乾湿を繰り返す部分など、塩分が濃縮する場所では、より低い温度でも発生することがあります。引張応力、温度、塩化物、材料グレードを確認し、材料変更、応力低減、環境改善を検討します。
エロージョン・コロージョンとキャビテーション損傷
エロージョン・コロージョンは、流体や固体粒子による機械的な作用と腐食が重なり、金属の損傷が速く進む現象です。配管の曲がり部、絞り部、バルブ下流、ポンプ周辺などで発生します。
キャビテーションは、流れの中で圧力が下がり、液体中に気泡が発生する現象です。その気泡が圧力の高い場所でつぶれる際の衝撃によって、金属表面が少しずつ失われる損傷を、キャビテーション損傷(キャビテーション壊食)といいます。ポンプの羽根車、バルブ、船舶のプロペラなどで見られます。
腐食環境では、気泡の崩壊による皮膜の破壊と腐食が繰り返され、損傷が大きくなります。流量、圧力、吸込条件、振動、材料の状態を合わせて確認してください。
そのほか注意したい腐食
| 腐食形態 | 概要 | 確認したい場所・条件 |
|---|---|---|
| 微生物腐食(MIC) | 微生物の活動や生成物が関係する腐食 | 滞留水、スライム、堆積物、冷却水系など |
| 保温材下腐食(CUI) | 保温材の内部に侵入した水分によって外面腐食が進む現象 | 屋外配管、保温材の継ぎ目、外装板の損傷部など。国内ガイドラインでは、運転温度が常温~150℃の設備を管理対象の目安としている |
| 脱成分腐食(脱合金腐食) | 合金中の特定成分だけが選択的に溶け出す腐食 | 黄銅の脱亜鉛、アルミニウム青銅の脱アルミニウム、鋳鉄の黒鉛化腐食など |
| 腐食疲労 | 腐食環境と繰り返し応力が重なって疲労強度が低下する現象 | 振動、圧力変動、起動停止を繰り返す設備など |
薬液・洗浄液・消毒薬による腐食を判断するポイント
薬液名だけを見て、金属への腐食性を一律に判断することはできません。同じ薬品でも、濃度、温度、混合物、接触時間などによって腐食性が変わります。
確認する主な条件
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 薬液の種類と組成 | 酸、アルカリ、塩化物、酸化剤、有機溶剤など、腐食に関係する成分を把握する |
| 濃度 | 希釈・濃縮によって腐食挙動が変わる。蒸発や乾燥による局部濃縮にも注意する |
| 温度 | 室温では使用できても、高温では腐食が大きく進む場合がある |
| pH | 金属の溶解や表面皮膜の安定性に影響する |
| 流速・撹拌・固形分 | 保護皮膜の損傷やエロージョン・コロージョンに関係する |
| 接触時間と運転方法 | 連続使用、間欠使用、停止中の滞留、洗浄後の残液で条件が変わる |
| すき間・堆積物 | 局部的な濃縮や酸素濃度差によって腐食が進む場合がある |
| 異物・混入物 | 原料変更、補給水、洗浄剤、消毒薬などの混入で環境が変化する |
材料を選ぶときは、次の順で確認すると判断しやすくなります。
- 薬液のSDSと、材料・表面処理メーカーの耐薬品データを確認する
- 温度や濃度が耐薬品表と異なる場合は、実際の条件以上に厳しいデータを確認する
- 混合液、蒸発濃縮、乾湿の繰り返しがある場合は、実液での浸漬試験や腐食試験を検討する
- 判断が難しい場合は、薬液組成、濃度、温度、接触時間、洗浄条件をまとめて専門メーカーへ相談する
塩素系の洗浄剤・消毒薬では、濃度、温度、接触時間、すすぎ、乾燥状態がステンレスの孔食やすき間腐食に影響します。メーカーが示す使用条件を守り、洗浄後に薬液を残さないことが基本です。
フッ素樹脂の耐薬品性と、薬液ごとに確認すべきポイントは「テフロン™フッ素樹脂の耐薬品性を解説」でも紹介しています。
金属腐食を防ぐ方法
腐食対策は、表面処理だけでなく、材料、構造、環境、運用を組み合わせて考えます。1つの対策だけに頼るのではなく、腐食が起こる条件を複数の方向から減らすことが大切です。
材料を使用環境に合わせる
材料変更は有効な対策ですが、単に高価な材料へ置き換えればよいとは限りません。塩化物環境では孔食や応力腐食割れ、薬液環境では濃度と温度、高温部では酸化皮膜の安定性など、想定する損傷形態に合わせて選びます。
材料グレード、溶接材料、熱処理、加工方法も耐食性に関係します。母材だけでなく、溶接部、熱影響部、ボルト、ガスケットなどを含めて確認します。
水や薬液が溜まりにくい構造にする
腐食しにくい設計の基本は、水分や薬液を溜めないことです。
- 排水できる勾配を設ける
- デッドレグ(液が流れずに溜まる行き止まり配管)や液溜まりを減らす
- 乾燥しやすく、清掃しやすい形状にする
- 不要なすき間や重ね合わせ部を減らす
- 保温材やカバーに水が入りにくい構造にする
- 異種金属の接触部を絶縁する
塗装・コーティング・ライニングで環境を遮断する
塗装、コーティング、ライニングは、金属と水分、酸素、薬液との接触を抑える方法です。素材そのものを変更せずに耐食性を高められる一方、下地処理、膜厚、密着性、ピンホール、端部処理などが性能に影響します。
薬液設備では、フッ素樹脂コーティングやライニングが選択肢になる場合があります。ただし、樹脂の種類、使用温度、薬液の透過、膜厚、ピンホール、熱膨張差、施工可能な形状などを確認する必要があります。
表面処理の種類と選び方は、「表面処理とは?種類や目的、処理方法など知っておきたい基礎知識を解説」でも紹介しています。
塗装やコーティングでは、下地処理と塗膜の欠陥管理が重要です。塗膜の下に油分、錆、水分、塩分などが残っていると、密着不良や塗膜下腐食につながります。端部や角部は膜厚が不足しやすいため、施工と検査の重点箇所にします。
塗膜は、使用中の傷や経年劣化によって環境を遮断する働きが低下することがあります。使用環境や使用期間も考慮して、表面処理の種類や仕様を選ぶことが重要です。
メッキ・化成処理を利用する
メッキには、地金を環境から遮断する方法と、地金より先にメッキ金属が溶けることで保護する方法があります。亜鉛メッキは、鋼材に対して犠牲防食作用を持つ代表例です。メッキの種類と特徴は「メッキとは?種類と特徴、他の表面処理との違い」で詳しく解説しています。
メッキの種類、膜厚、後処理、使用環境によって寿命は変わります。海塩粒子が付着する環境や、濡れと乾燥を繰り返す環境では、消耗や局部的な劣化に注意します。
亜鉛メッキ鋼管を温水で使う場合は、温度と水質の確認が必要です。空気を多く含む約60℃以上の温水で、炭酸塩や硝酸塩を含む条件では、亜鉛と鉄の電位関係が逆転し、下地の鋼に孔食が生じることがあります。給水での実績を、そのまま給湯へ当てはめないことが重要です。
化成処理は、薬品との反応によって金属表面に薄い層をつくり、耐食性や塗装の密着性を高める方法です。単独で使う場合もありますが、塗装の前処理として利用されることも多くあります。
腐食抑制剤を適切に管理する
腐食抑制剤は、冷却水や循環水などに添加し、金属表面の反応を抑える薬剤です。薬剤の種類によっては、濃度が不足すると表面を十分に保護できず、保護されていない小さな部分へ腐食が集中することがあります。「少量でも入れておけばよい」とは考えず、メーカーが定める管理濃度を守ってください。
腐食抑制剤の効果は、薬剤濃度だけでなく、pH、導電率、硬度、塩化物、濁度、微生物などの水質にも左右されます。循環水では、濃縮、補給水、ブロー、停止期間も含め、薬剤メーカーが示す条件に合わせて管理することが重要です。
電気防食を利用する
電気防食は、守りたい金属へ防食用の電流を流し、金属が溶け出す反応を抑える方法です。電流を流す方法には、別の金属を利用する方法と、外部電源を使う方法があります。地中配管、タンク底板、港湾・海洋構造物、船舶などに用いられます。
流電陽極方式
保護する金属よりも腐食しやすい金属を接続し、その金属を優先的に溶かして保護します。犠牲陽極方式とも呼ばれます。
外部電源方式
直流電源を使って必要な防食電流を供給します。広い設備にも適用できますが、電位や電流の設計、迷走電流(本来の経路から漏れ、地中や構造物へ流れる電流)への配慮が必要です。
電気防食では、防食に必要な電位や電流が対象設備、環境、基準電極、適用規格によって異なります。電流を流しすぎる過防食も材料へ悪影響を与えることがあるため、設計は経験のある技術者や専門業者へ相談してください。
環境と運用条件を見直す
材料や表面処理を変更しなくても、環境管理によって腐食を減らせる場合があります。
- 結露を減らす
- 付着した塩分や汚れを除去する
- 薬液濃度、pH、温度を管理する
- 停止時に液体を排出し、洗浄・乾燥する
- 流速や撹拌条件を適正化する
- 腐食抑制剤や水処理薬剤を適切に管理する
防食対策を比較する
防食対策は、腐食原因と設備条件に合わせて選びます。次の表では、代表的な対策を「向いている場面」と「主な注意点」で比較します。
| 対策 | 向いている場面 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 材料変更 | 環境と材料が合っていない場合 | 高級材でも、塩化物やすき間など固有の弱点がある |
| 設計変更 | 液溜まり、すき間、異種金属接触が原因の場合 | 停止工事が必要になることがある |
| 塗装・コーティング | 水分、塩分、薬液との接触を遮断したい場合 | 下地処理、膜厚、端部、ピンホールが性能を左右する |
| ライニング | 薬液設備などで厚い保護層が必要な場合 | 施工形状、透過、熱膨張差を確認する |
| メッキ | 量産部品や鋼材を広く保護したい場合 | 種類、膜厚、温度、水質で寿命が変わる |
| 腐食抑制剤 | 循環水など、液側を管理できる場合 | 濃度不足で局部腐食が悪化する薬剤もある |
| 電気防食 | 埋設・水中の大きな鋼構造物 | 専門設計と周囲設備への影響確認が必要 |
| 環境・運用管理 | 結露、塩分付着、薬液残り、停止時滞留が原因の場合 | 手順が守られないと効果が続かない |
まず、排水や洗浄条件など、設計と運用で腐食の条件そのものを減らします。それでも残るリスクへ、材料変更、表面処理、電気防食などを組み合わせると、過剰な仕様を避けやすくなります。
金属腐食についてよくあるご質問
金属腐食について、よくある質問をまとめます。
Q1:腐食と錆は同じものですか?
同じではありません。腐食は、金属が環境との反応によって侵食されたり、材質的に劣化したりする現象です。錆は、腐食によってできた生成物のうち、通常は鉄や鋼の表面にできるものを指します。目立つ錆がなくても、孔食、減肉、割れが進んでいることがあります。
Q2:ステンレスでも腐食しますか?
ステンレスも腐食します。不動態皮膜によって多くの環境で高い耐食性を示しますが、塩化物を含む水、すき間、滞留部、高温などの条件では、孔食、すき間腐食、応力腐食割れが起こります。材料グレードと使用環境を合わせて確認してください。
Q3:イオン化傾向で腐食しにくい金属を選べますか?
イオン化傾向だけで実際の耐食性を順位付けすることはできません。不動態皮膜、薬液組成、pH、温度、溶存酸素、流れ、異種金属との面積比などによって腐食の進み方が変わるため、使用環境に合わせた確認が必要です。
Q4:異種金属接触腐食はどのように防ぎますか?
同じ金属や電位の近い材料を組み合わせる、絶縁ワッシャーやスリーブで電気的接触を断つ、水が滞留しにくい構造にするなどの方法があります。塗装する場合は、片方だけでなく両方の金属と接合端部を連続して被覆し、塗膜欠陥を管理します。
金属腐食の重要ポイントまとめ
金属腐食は、金属が周囲環境と反応して侵食されたり、材質的に劣化したりする現象です。錆は、腐食によってできた生成物のうち、通常は鉄や鋼の表面にできるものを指します。目立つ錆がなくても、孔、減肉、割れが進んでいることがあります。
腐食の進み方は、金属の種類だけでなく、水分、塩化物、pH、温度、流れ、すき間、応力、異種金属との接触などによって変わります。イオン化傾向だけで耐食性を順位付けせず、実際の使用環境に合わせて材料や防食方法を選ぶことが重要です。
腐食対策では、材料選定、排水やすき間を考慮した設計、塗装・コーティング・ライニング、メッキ、腐食抑制剤、電気防食、環境管理などを、使用環境に合わせて組み合わせます。金属と腐食環境の接触を減らし、腐食が起こりにくい材料や構造を選ぶことが基本です。
吉田SKTでは、金属の使用環境や目的に合わせた防錆・耐食性向上のためのコーティング・表面処理をご提案しています。耐薬品性や腐食対策でお困りの場合は、「防錆・耐食性に優れた表面処理」をご覧いただくか、お問い合わせフォームからご相談ください。

